緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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日曜日, 9月 22, 2024

全く日の当たらない場所での植樹 No.720

 日光が当たらない場所の植樹

植樹の場所としては狭く、家の軒下やその陰になったり、日が当たらない場所でも植木を楽しむことができます。

家の北側など日が当たらない場所では、庭木を植える事は不可能に思えますが、日陰の原因である軒よりも高い木を植えると、葉に日光が当たるので生長することができます。


  「日の当たらない場所での植樹」


この場合、部屋の窓からは主に幹を眺めることになるので、木肌が美しいシャラやヒメシャラなどの高木が適しています。あ

ただし、小さな苗木から育てることは困難なので、1㍍前後の高さの樹木を利用する必要があります。


      「ナツツバキ」

✿シャラは一般的に「シャラノキ」と呼ばれることが多いナツツバキのことで、夏にツバキのような花を咲かせるのでこの名がある。

山地に生え、高さが15㍍程になる落葉高木で、樹皮は古くなるとまだらに剥げ落ちる特徴があります。

他には、樹木を鉢植えにして時々移動して日に当てることもできます。

また、狭い場所では樹木だけではなく、庭石やその他のアクセサリーを置いて、景色に変化をつけるという方法もあります。

鉢植えの樹木を北向きの部屋の中で育てる場合、洋風の観葉植物や陰樹を置くことが多くありますが、時々外気に触れる機会を与えるようにすることが大切です。

日は当たらなくても窓際に配置することが重要です。










土曜日, 9月 21, 2024

庭木のトラブルと対策② No,719

 花がつかない時の原因と対策


①日照不足

花木の大半は初春から晩夏までに開花します。

花木の花芽分化期は概ね4月から9月ですが、生長期に当たるこの時期は、樹木の活動が最も活発な時です。

日光を十分に浴びた葉が光合成を行い、樹幹内に栄養を蓄え、その栄養分が芽に集まり花芽を形成します。

この生長期間に日照が不足すると、花芽分化に必要な栄養分が不足して花芽がつかなくなります。

対策として、こまめなせん定で茂り過ぎた込み枝を整理し、樹の中の葉までよく日光が当たるようにすることです。


また、樹木が日陰になるときは、日陰になる原因を解決することも大切です。

日陰になることを避けられない場合は、移植する事も考える必要があります。


②土壌の養分過多

樹木の生育には、土壌の養分が豊富であることは大事なことですが、多過ぎても花が咲かない原因になります。

元気の良い若木に花芽がつかないのは、大半の養分を幹や枝葉の生育に使われるためです。

成木(生り木)でもある程度の年数が経ち、樹勢が落ち着くまでは栄養過多が原因で、花芽がつきにくくなることがあります。

チッ素系の肥料が効き過ぎると、養分が幹や枝の生長に回り、肝心の「花芽」が育たない全部が「葉芽」になる場合があります。


油かすや鶏ふんなどのチッ素系肥料の投与を控え、チッ素成分が少ない化成肥料を与えるようにします。

✼主なチッ素肥料
硫酸アンモニア、過リン酸石灰
尿素、石灰チッ素

✼主なチッ素の多い有機肥料
油かす、魚かす、鶏ふん、骨粉


また、チッ素は土壌有機物や堆肥にも多く含まれていて、地力チッ素として年々蓄積していきます。


土壌有機物とは、土壌中に存在する有機物で、主に植物残渣や動物残渣、微生物による溶解等によって生成される黒色の腐植物質のことで、「腐植=ふしょく」とも呼ばれる。

✼植物残渣(ざんさ)とは、植物の収穫後に残る茎や葉、つる、根などの残骸物を指します。

作物栽培地では作物残渣とも呼ばれます。


根の張り具合が良すぎても養分過多になることがあります。

この場合は、株元から少し離れた周辺にスコップ等を入れて断根すると効果的です。

更に、土壌水分が豊富過ぎても養分過多の原因になります。

花芽がつきにくい場合は、断根などで根の活動を調整する必要があります。


③土壌の養分不足

養分の不足で新芽が伸びないか、伸びても弱々しいと花芽はつきません。

原因は、肥料不足や土壌乾燥、日焼けによる葉の衰弱や前年に多くの実をつけ過ぎたことなどがあります。

施肥と土壌管理に加え、日頃の樹木の健康管理が栄養不足を防ぐポイントになります。

また、鉢植えの樹木は根が鉢いっぱいに広がって根詰まりを起こして、栄養不足になることがあるので、一回り大きな鉢に植え替える必要があります。


④せん定によるミス

花後せん定を正しい時期に行わないと、花芽を切ってしまいます。

特に、春から夏にかけて咲く花木の大半は、開花とほぼ同時に新芽が伸びるので、花後せん定の時期がずれると、花芽分化が終わっているので注意が必要です。


⑤病虫害による衰弱

花芽分化期に病虫害が発生すると、葉が弱って栄養不足になったり、花芽そのものを食べられたりして花が咲かない原因になります。

適切な予防と早期発見や駆除が重要となります。

また、燃焼等に伴い発生する「煤煙=ばいえん」などの公害や、海岸地の潮風によるの衰弱も花芽をつけない原因になります。

早めに防煙、防風対策、移植や幹巻きなどの保護を行うことが大切です。









金曜日, 9月 20, 2024

庭木のトラブルと対策① No,718

 植木がよく育たない、枯れる

庭に植えた樹木がよく育たない、枯れてくるという場合は、主に4つの原因が考えられます。

①栽培環境の不適
樹種が庭の環境に適していない。

樹木は、基本的には環境の変化に対する適応力がありますが、高山性の植物を平地で育てたり、暖地性のものを寒地で育てたりする場合などは特に注意が必要です。

花木に比較的このようなケースが多く見られます。

それぞれの樹種に合った温度、乾燥に対する適性、空気の汚れや土壌などを調べて、植える樹種を選ぶことが大切です。

すでに植えているものは、できるだけ自生地の環境に近づくように、管理する必要があります。


②肥料の与え過ぎ、石灰の与え過ぎ
速効性の肥料を一度にたくさん与え過ぎると、葉が黄色く変色したり、ひどい場合は徐々に枯れてくる場合があります。

✿速効性のある主な肥料として
硫酸アンモニア、硝酸アンモニア
石灰窒素、IB窒素、過リン酸石灰
熔成リン肥、塩化ナトリウム
魚かす、他、やや速効性の尿素(ウレア)などがあります。

シャクナゲ、ツツジ、サツキなどの根が細い浅根性(せんこんせい)の樹種の場合は特に注意が必要です。


また、ツツジやサツキ、カルミアなど微酸性を好む樹種は、土壌改良に使う石灰(アルカリ性)を嫌います。

基本的には、これらの樹種を植える用土に石灰を与えると、速効性肥料の与え過ぎと同様の症状を起こすことになります。


③土の中の害虫
土の中で害虫に冒(おか)されているのが原因で、樹勢が弱ってくることがあります。

コガネムシの幼虫は、放っておくと重要な細根を全部食べてしまうので要注意です。

例えば、鉢植えで引っ張っただけで抵抗なく植木が抜けてしまう場合は、コガネムシによる根の食害が考えられます。

ひどい場合は、一見健康そうな樹木が強い風が吹いただけで、倒れてしまうこともあります。

イヌマキ、ネムノキ、サクラなどはコガネムシの成虫がよく集まり、産卵するので注意が必要です。

その他の樹種でも近くにコガネムシを見つけたら、幹の周辺にダイアジノン粒剤やオルトラン粒剤などを撒いて防除します。

防除は、産卵期の6月下旬から7月にかけて行うと効果的です。

また、同じ場所に同一種の樹木を繰り返し植え付けていると、これも細根を食い荒らすネグサレセンチュウが発生しやすくなるので注意が必要です。


その他に、幹に穴を開け樹幹内に入るテッポウムシ(カミキリムシの幼虫)にも注意が必要です。

はじめは樹皮の近くを食べていますが、次第に中の方に侵入して、幹の中まで食い荒らして大木を枯らしてしまうこともあります。

幹の株元表面に白い粉状のフンが見えたら、テッポウムシに食害されている証拠です。

食い入った穴を見つけたら、針金を中に突き刺して殺すか、オルトランなどな殺虫剤をスポイトで穴に注入して、入口を粘土などで塞ぎます。

卵が孵化する7月頃が処置の適期です。


④下層の土の状態が悪い
都会の庭などでは、土の下層全面にコンクリートの破片が混じっていたり、砂利混じりの土を埋めて突き固めている場合があります。


このような場合は、根の部分が乾燥しやすく、葉が黄色くなる原因になります。

幹周りに敷きワラをしたり、水やりの回数を増やして乾燥しないようにします。

逆に、水田を埋め立てた住宅地やコンクリート、アスファルトで固めた地盤に土を覆った住宅地では、水はけが悪くなり、根腐れなどを起こしやすくなります。


コンクリートが下層にある地盤では、根が必要以上に下まで伸びきれず、生育不良になることもあります。

このような場合は、排水溝を設けて水はけを良くしたり、太い鉄棒などを数箇所に打ち込んで、コンクリートの盤層を破って根が入り込めるようにする必要があります。









水曜日, 9月 18, 2024

樹木の移植(4) No,717

 断根法による根回し

断根法による根回しは、育成中の苗木等に適用され、適当な鉢の大きさを考えながら根元の周囲に、エンピやスコップ等を突き刺して、土中の根を切断する方法です。

    「断根法による根回し」

溝堀法による根回し

溝堀法は、樹木の根元を掘り下げて、そこに現れた根を切断する方法です。

この時、一度にすべての根を切ってしまうと風で倒れたり、水分の吸収量が不足して枯れてしまう事があります。


太根を3〜4本ほど残して、その根の皮だけを10㌢前後の区間を剥ぎ取っておくようにします。

この処置を「環状剥皮=かんじょうはくひ」といいますが、こうすることによって養水分の吸収能力が損なわれることもなく、風で倒れることもありません。


      「環状剥皮」


やがて剥ぎ取った部分や切断された根から、新しく細根が多数発生して、移植しやすい状態になります。


「埋め戻しておくと細根が発生する」

根回しを行う時の鉢の大きさは、移植を行うときの鉢の大きさに比べて、少し小さめにしておく必要があります。

鉢の大きさの基準として、根元直径の4〜5倍の直径とする。


これは移植を行うときの鉢の大きさの範囲に、根回しを行った後で生じた細根が、鉢の中に納まるようにするためです。


根回しを行うと、根が切られるため樹木の水分吸収量は一時的に減少します。

従って、地上部の蒸散作用とのバランスをとるために、枝葉をせん定して水分の蒸散量を抑えます。

大木では、移植した時と同じように幹巻きをして支柱を施すのが安全です。


その後、掘り起こした土を埋め戻してよく灌水(かんすい)しておきます。

埋め戻しを行う際、堆肥などを切断した根に接して与えておくと、細根の発生が促進されます。


根回しを行った樹木は、新たに植え付けた樹木と同じように時々見回って、乾燥しているようであれば灌水する必要があります。









火曜日, 9月 17, 2024

樹木の移植(3) No,716

 樹木の根回し

普通根回しは、移植6ヶ月から1年くらい前に行いますが、新根の発生量は樹木の休眠期よりも生長期の方が旺盛です。

大切な老木などでは、根元を半周ずつ2年から3年にわたって根回しを行うこともありますが、根の再生力の強い樹種では、移植の1ヶ月前に根回しを行っても、その効果が大きい場合があります。


造園では、細根が少なくて移植のために、根回しをする必要のある状態の根を「根が荒れている」といいます。

一般に若木で生育の盛んな樹は、根の荒れ方が早く、前回の移植からまだ期間が短くても根回しを行った方が良い。

老木は根の荒れ方が遅いとされる。

前回の植え付け後、根が荒れて再移植のために根回しをしないと危険な植物の目安


❉植え付け後、2年以上経過で根回ししないと危険な植物

常緑樹=ピラカンサ、コトネアスター
落葉樹=サンショウ、カラマツ

1年以上経過で、なるべく根回しした方が良い。


✼植え付け後、3年以上経過で根回ししないと危険な植物

常緑樹=ジンチョウゲ、シャリンバイ
チャイニーズホーリー、トベラ
クチナシ、ウバメガシ、オオカナメモチ

2年以上経過で根回しした方が良い


✼植え付け後、4年以上経過で根回ししないと危険な植物

常緑樹=タイサンボク、キャラボク
オガタマノキ、クスノキ、タブノキ

落葉樹=カキ

3年以上経過で根回しした方が良い

クスノキ、タブノキ等の枝をすべて切り落とし、寸胴で移植する場合は根回しは不要

✼植え付け後、8年以上経過で根回ししないと危険な植物

常緑樹=ツバキ、サザンカ、モチノキ
モッコク、マテバシイ、ヒイラギ
クロガネモチ、カナメモチ
ゲッケイジュ、シイノキ

常緑樹=ハナミズキ、ヤマボウシ
ナツツバキ

4年以上経過でなるべく根回しした方が良い

✼植え付け後、10年〜15年以上経過で根回ししないと危険な植物

針葉樹=ヒマラヤスギ、スギ
コウヤマキ、ヒノキ、クロマツ、アカマツ
カイズカイブキ

常緑樹=モクセイ

4年以上経過でなるべく根回しした方が良い

クロマツ、アカマツ、カイズカイブキ、サルスベリは、5年以上経過でなるべく根回しした方が良い


サツキ、ツツジ類、マサキ、ニシキギ
アベリア、マユミ、ドウダンツツジなどは細根が極めて多く、根の再生力も強いため常に根回しを必要としない。


関東ローム層に生えているクロマツも、適期に適切に移植を行えば、通常は根回しを必要としません。

イチョウ、プラタナス、メタセコイアなどは、根の再生力強い樹種なので適期に適切に移植を行えば、普通は根回しを行わなくても安全です。

また、針葉樹は、広葉樹に比べて一度根回しを行ったものは、根が荒れにくい性質があります。









月曜日, 9月 16, 2024

樹木の移植(2) No,715

 移植の時期

移植の時期は常緑樹であるか落葉樹か、あるいは地域などによって異なります。

落葉樹では、一般に12月から1月の厳寒期を除く休眠期間(落葉期間)が適期とされますが、その中でも初春の萌芽前が最適期です。

やむを得ず、入梅期(6月〜7月)などの生長期間中に移植する場合は、地上部の葉をすべて取り除いて、蒸散作用を抑制するようにします。


常緑広葉樹は、3月頃から秋までの期間のうちで、新芽が伸長しつつある時期と、一番暑い真夏の頃を除いた時期が、移植の適期です。

そのうち初春の萌芽前、または梅雨期が最適期です。

常緑針葉樹は樹種によって異なりますが、2月下旬から4月までの萌芽前が最適期で、10月から11月の秋期も適期とされています。


北海道などの寒冷地ではすべての樹種において、雪解けから1ヶ月くらいの短い初春の時期が最適期となり、また、9月から10月の間にも樹種によっては移植可能なものがあります。

熱帯地方が原産のものは、一般に真夏に移植する方が活着率が高い傾向にあります。


また、何回も移植して細根がよく発達しているものや、鉢植えにされているものを鉢から抜いて、そのまま露地に植え替えるような場合には、地域に関わらず必ずしも適期に移植しなくてもよく活着します。









日曜日, 9月 15, 2024

樹木の移植(1) No.714

 移植とは

樹木の根は、しっかりと地上部を支えるように直根=主根が発達し、表土など地中のなるべく広い範囲から養水分を吸収できるように、側根が伸びているのが理想です。


樹木を移植する場合は、側根が伸びていることよりも幹の周りのなるべく主幹に近い範囲に、細い根が多く生じているが好ましい。

このような根を持った状態の樹は、植え替えても枯れたり、樹勢が衰えたりすることがありません。

造園樹木では、細い根が多くある樹木が好まれます。

長年同じ場所に植えられていた樹木は、根が長く伸びていて、株の根元近くに細根が発達していません。


このような状態の樹木をいきなり移植すると、移植のために掘り取りする際、細根の大部分は切り取られてしまいます。

従って、植え付け後に水分の吸収ができないために、枯れてしまうことが少なくありません。

このような事が起こさないために、移植の数ヶ月から1年くらい前にあらかじめ根元近くで太い側根を切断、もしくは環状剥離をして再び埋め戻し、株元近くに多くの細根を新たに発生させる処置を行います。

この作業を「根回し」といいます。


✼移植後に樹木が枯れる

移植によって樹木が枯死する主な原因は、堀り取る際に樹木の細根が著しく減少して、水分や養分の吸収が困難になりますが、それにも関わらず葉面から水分が蒸散し続けるために、植物体内の水分のバランスが保たれないと言う理由からです。


移植した樹木を活着させるためには、バランスを崩さないように処置をすることです。

一方で、もともと移植が容易な樹種もあります。

サツキやツツジ類のように、根元近くに細根が多く発生する性質があるものは、根を切られてもすぐに再生するという性質を持っています。

また若い苗木は、側根がまだ遠くまで伸びていないので、移植に際して切断される根が少なくすみ、若木の活力も手伝って移植は一般に容易と言えます。

葉面からの水分の蒸散を抑えれば良いので、移植時に枝葉をせん定して葉数を減らしたり、蒸散抑制剤を散布することで活着率を高めると言う効果もあります。


場合によっては、移植時にほとんどの葉を取り除いても、活着すれば再生することができます。

移植によって相当弱った樹木でも、活着する見込みがある場合には、葉柄の根元に「離層」が形成されて、樹木が自ら古葉を落としてしまいます。

✫離層(りそう)とは、葉が落ちる前に葉柄に生じる特殊な細胞層のこと

この状態を「とやする」といいますが、移植後葉が枯れる場合でも、離層が形成されて自然落葉するときには、活着する前兆と判断する目安になります。

樹種によってはクスノキのように、ある程度(目通り30㌢)の太さに生長したものの方が、細い苗木の時よりも移植が容易なこともあります。

これは、樹幹内に水分を蓄える性質があって、幹が太いほど含有水分が多くなったり、生長するにつれて移植に対する抵抗力が増すためと考えられています。