緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2023/12/09

銀南木の子安イチョウ No,681

 銀南木の子安イチョウ

いちょうのきのこやすイチョウ


青森県にはイチョウの巨木が多く、北金ヶ沢の大イチョウ(青森県深浦)は日本一の幹周りで22m、全国10位以内に4本のイチョウが選ばれている。

銀南木の子安イチョウは、青森県で5位になるが、県指定天然記念物となっている。

字名の銀南木からも、イチョウとともに歩んできた集落であることがうかがい知ることができる。

自らの重さに耐えきれず、幹から剥がれて傾いた枝は、先端が地面に触れて新たに幹として立ち上がり、別の株として生長している。

この子安イチョウは、この地に縁の深い法身国師のお手植えであると伝えられている。

法身(法心)国師(禅師)(1189〜1273年)は、鎌倉時代に常陸国真壁(現茨城県)に生まれました。

真壁の名僧で、俗名は真壁平四郎(法身性西禅師=ほっしんしょうざいぜんじ)

南宋(なんそう=中国の王朝の一つ)に渡り、厳しい修行を積み、後に名僧となり、帰国して国師となった。

瑞巌寺(ずいがんじ)の前身である松島円福寺を開山し、北条時頼の依頼により松島の瑞巌寺を再建したとされる。

また、津軽に法蓮寺を開いた髙僧と言われている。

79歳で故郷真壁に戻り、その後青森県北上郡の草庵で85歳の生涯を閉じました。








✿銀南木の子安イチョウ
所在地=青森県北上郡七戸町銀南木19
銀南木農村公園
樹齢700年以上
樹高24m、幹周り12.2m










2023/12/07

西蓮寺と大イチョウ No,680

 西蓮寺の大イチョウ

西蓮寺の大イチョウは、この寺を創建した最仙上人(さいせんしょうにん)によって植樹されたとされる。

昭和39年(1964)7月31日に県指定天然記念物に登録された。

1号株大イチョウは樹高約25mで幹周り約6メートル
明治16年(1833)の火災で幹が焼けて細くなったとされる。

この時の火災で建造物は消失しました。

現存する建造物は、その後の復興で建てられたものです。

1号株大イチョウの根元には子安観音を祀っています。



   「鮮やかに紅葉した1号株」



「株元が火災により細くなった状態」




 「子安観音を祀っている1号株」


2号株大イチョウは樹高約27mで幹周り約8メートル

大正6年(1917)の台風で幹の中途が折れる被害を受けました。

根元には稲荷社を祀っています。


  「稲荷社を祀っている2号株」



 「緑の葉がまだ見受けられる2号株」



1.2株ともに樹齢は1000年以上と言われ、気根を垂れ下げている、俗に「チチ」と称されるものが数多くついて、イチョウの老樹の特徴を見せている。


「かなり高い部分にもチチが見られる」


老樹である特徴の垂れ下がったチチ(気根)



イチョウは二億年前のジュラ紀から現存する大変古い樹種で、当時は日本にも自生していましたが、古い時代のうちに滅んだと考えられています。

日本で見られるイチョウは、中国浙江(せっこう)省の原産と言われ、飛鳥時代(593〜710年)の仏教伝来とともにもたらされ、初めは寺社を中心に植えられました。

室町時代(1338〜1573年)以降、一般に広まっていったとされる。

太平洋戦争の大空襲で焼け野原になった東京に、最初に芽生えたのもイチョウで、東京都の樹木に指定されています。

◉関連ブログ
イチョウ「銀杏、公孫樹」No,178



西蓮寺(さいれんじ)

西蓮寺は、延暦(えんりゃく)元年、天応2年
西暦782年(奈良時代)天台宗(てんだいしゅう)の僧侶、最澄(さいちょう)の弟子である最仙上人(さいせんしょうにん)によって、創建されたと伝えられている。



    「西蓮寺正門」



 「火災で消失後再建された瑠璃殿」


      「瑠璃殿」

関東地蔵霊場65番札所、関東薬師霊場78番札所、常陸七福神(寿老人)

最仙上人は、天台宗を常陸国に布教する上で大きな役割を果たしたとされる。

天台宗(てんだいしゅう)は中国を発祥とする「大乗仏教=だいじょうぶっきょう」の宗派のひとつで、妙法蓮華経(法華経)を根本仏典とするため、天台法華宗(てんだいほっけしゅう)とも呼ばれる。


大乗仏教は伝統的に、ユーラシア大陸の中央部から東部にかけて信仰されてきた仏教の宗派。

日本の仏教は全て大乗仏教であるが、大乗仏教の経典は釈迦の死後、500年以降に成立しており、仏陀(ぶっだ=釈迦)の直説ではなく、後世に成立した偽経という批判にあった。


西蓮寺の木造薬師如来坐像は、貞観時代(じょうがんじだい、859〜877年)に最仙上人が自作したものと伝えられている、茨城県内最古の木像とされる。


最仙上人、自ら彫ったとされる木像写真






この時代は空海、最澄などの渡唐僧(唐に渡った)が密教美術を伝え、神秘的な木像が多く作られた時代と言われている。


最仙上人は現在の筑西市関本中の茶花(ちゃばな)家に生まれました。

年長になり仏教に信仰を持ち、後に日本から唐に渡って茶の種を持ち帰り、故郷関本で栽培を始めました。


茶花家の茶畑から収穫した初茶を、本尊薬師如来に献上する「献茶の儀式」が昭和初期迄続いていた。

茶花性はここから生まれたとされる。


西茨城県桜川真壁の「椎尾山薬王院」は、最仙上人が西蓮寺創建と同年に開山した古寺とされる。


◉写真撮影日
2023年12月7日

❉西蓮寺
所在地=茨城県行方市西蓮寺504











2023/12/06

三春滝桜 No,679

 三春滝桜

エドヒガン系ベニシダレザクラ 別名=イトザクラ

枝垂れ桜は細い枝が垂れるものをいう。

花弁は変異が多く個体によって形や色、大きさなどがかなり異なる。

枝が垂れる原因について、これまでは枝の上側と下側の生長速度の違いによって起こると考えられてきたが、枝や葉の生長速度が垂れない種類より速いために自重によって枝が垂れ下がり、その後木質化が起こり、垂れが
固定されるということが研究によって解明されました。

三春滝桜は大正11年(1922年)に国の天然記念物に指定されました。

樹齢1000年以上の有名な桜として、岐阜県の根尾谷淡墨桜(ねおだにうすずみざくら)、山梨県の山高神代桜(やまたかじんだいざくら)と並び、日本三大桜のひとつとして選定されている。

滝地区にあることと、滝が流れ落ちるように咲く様子から滝桜の名が付けられたとされる。

毎年開花期には、全国から多くの花見客が訪れる。

三春町の里山の斜面にはたくさんの枝垂れ桜が植えられています。

三春町の名は梅、桜、桃が春一度に咲くことに由来すると言われています。

1960年頃、三春町に植木を育てて三代目という、柳沼吉四郎によって植えられた桜が多く存在する。

また、滝桜の種を全国に普及させたことで、日本各地で滝桜の子孫樹が植樹されるきっかけとなった。

1997年頃、地元の柳沼吉左ヱ門夫妻たちは、桜愛好家の期待に応えて滝桜の種をまき、育てた50本を超える苗を全国に送り出していた。

人によって踏み固められてた滝桜は、当時、樹勢が衰えていたことから町も、樹医の診断などをもとに滝桜の周りの遊歩道の整備を行ったり、堆肥などを根元に入れるなど、土壌改良を行った。

樹勢の回復を願う、滝桜を愛する人たちに大切に守られてきました。







✿三春滝桜
所在地=福島県田村郡三春町滝桜久保296



福聚寺(ふくじゅうじ)桜

天正七年(1579年)安土桃山時代、三春から嫁ぐ事になった大名田村清顕(きよあき)の娘である愛姫(めごひめ)は、わずか11歳で伊達政宗と結婚するため三春を離れました。

その後、愛姫が三春に訪れることはなく、1653年承応2年、86年の生涯を江戸で閉じた。

愛姫のお墓は宮城県松島陽徳院にあります。

三春町御免町の福聚寺には、愛姫の生誕を記念して植えられたのではないかと考えられる桜(福聚寺桜)がある。





✿福聚寺桜
所在地=福島県田村郡三春町御免町135


推定樹齢450年以上のベニシダレザクラは、「愛姫桜」とも呼べるものでこれはひとつの浪漫かも知れません。

三春滝桜の子孫樹が平成18年12月18日(2006年)、仙台市青葉区西公園に植樹されました。

この子孫樹は三春から伊達政宗に嫁いだ正室愛姫にあやかり、愛姫桜と命名されました。









2023/12/03

秀吉ゆかりの巨木枝垂れ桜 No,678

 醍醐寺の枝垂れ桜

秀吉と醍醐寺(だいごじ)といえば「醍醐の花見」が知られています。

この花見は《北野大茶会》とは違って、内々のみで行われ、伏見城から醍醐寺まで柵が設けられ、一般の人々は見ることができない花見でした。

《北野大茶会=きたのおおちゃのゆ》は、天正15年10月1日に京都北野天満宮境内において、豊臣秀吉が催した大規模な茶会のこと。

醍醐寺の花見は、経済的にも京都を潤す目的があったともされ、秀吉なりの考えが色々とあったのではないかと言われています。

一方でその頃(1592年〜1598年)の秀吉は朝鮮出兵を行っていて、多くの武将たちは故郷を離れ戦っていたという事実もある。

さまざまな人々が大変苦しんでいた最中で、花見という遊興にふけっていた事に対し、賛否があったことも事実だろう。

京都伏見の醍醐寺は世界遺産としても知られる。

その広大な境内の中に秀吉ゆかりの枝垂れ桜はあります。

430年ほど前の昔、豊臣秀吉が近隣諸国からおよそ700本もの桜を集めて醍醐寺の花見を催した。

その時の子孫と言われる枝垂れ桜も樹勢の衰えを見せるようになっていました。

醍醐寺は枝垂れ桜をなんとかして後世に伝えたい、住友林業緑化にその相談があったのは1997年のことでした。

桜の治療や樹勢を回復されると同時に、若い後継樹を育てなければならない。

そこでバイオテクノロジーを用いて、枝垂れ桜のクローン作りに取り組むことになった。

住友林業筑波研究所で、組織培養という手法で、桜の芽の先端にあるほんの数ミリの組織だけを取り出し、特殊な培養液が入った試験管の中で殖やす試みが始まりました。

言葉で殖やすというのは簡単ですが、枝垂れ桜は少しでも培養液の成分が気に入らないとすぐ枯れてしまいます。

少しずつ培養液の成分を変え、試行錯誤を繰り返しながら2000年の暮れに、組織培養による枝垂れ桜クローン化の世界初となる、成功事例となりました。


クローン苗は高さ20㌢、花をつけ始めたのは、2004年3月でした。

花を付けたのは約600本のクローン桜のうち4本で、いずれも樹高5m程度で、薄いピンク色の花を咲かせました。

総本山醍醐寺は、東日本大震災後の平成24年(2012年)から、住友林業と京都放送(KBC京都)と共同で、『京の杜プロジェクト~桜がつなぐ架け橋~』に取り組んでいます。




クローン桜の苗が全国各地に寄贈された。

❉秀吉ゆかりの枝垂れ桜
所在地=世界文化遺産 京都醍醐寺
京都市伏見区醍醐東大路町22








2023/11/26

タブノキの話 No,677

 タブノキ(椨の木)

クスノキ科タブノキ属

沿海地に多く自生した常緑高木で、樹高は20メートルほどまで達する。

大木に育ち、材は家具、船材、鉄道の枕木、樹皮からは染料や香料、葉や幹の粉が線香の原料など様々に使用されてきました。

そのため、百を超える地方名がある。

本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾などの暖地及び亜暖帯に広く分布する。

別名をイヌグスといい、一般にイヌビエ、イヌタデなど「イヌ」が付く名を持つ植物は「似ているが性質が劣る、役に立たない」ことから名付けられる場合が多い。

しかし、それは人間が利用する都合によるものであると言えるだろう。


名前の由来は魂(たま)の木、魂の宿る木を表すことから付けられたという説がある。

木に宿る魂は木霊(こだま)と呼ばれるが、木霊とは樹木に宿る精霊や木の精霊を意味し、また木霊が宿った樹木そのものを木霊と呼ぶこともある。


八丈島に古くから伝わる織物である日本三大紬「黄八丈」はタブノキの樹皮を染料として利用したもので、八丈島ではタブノキを「マダミ」と呼ぶ。

八丈島はもともと西方からの漂着船が多くある場所で、江戸時代以降は流刑地としても利用された歴史がある。

いわゆる罪人を島送りする「島流し」である。

史実として、正慶元年1332年には第96代天皇(後醍醐天皇=ごだいごてんのう)の身でありながら、鎌倉幕府によって隠岐の西ノ島に流刑されたという歴史がある。

隠岐(おき)の西ノ島は、島根県、隠岐諸島に属する島の一つです。

八丈島の織物技術は西方からの漂着者や流刑者によってもたらされ伝わり、進化したと考えられています。

発祥は定かではありませんが、室町時代には白紬が献納されたと言われている。

黄八丈は1977年に国の伝統工芸品に指定されている。



波崎の大タブ

波崎の大タブは江戸時代、野火(のび=野焼きの火)が押し寄せ、この木によって難を逃れたと言い伝えられ、また、第二次世界大戦中の焼夷弾の難を逃れたとことから「火伏せの木」として信仰され、護摩を焚き家内安全の祈願をする習わしとなっている。





樹齢は1000年とも1500年とも言われ、県指定天然記念物、新日本名木百選にも選定されている巨樹です。


この巨樹は神栖市波崎の舎利地区の益田山神善寺(じんぜんじ、別名舎利寺)
の境内にある。



神善寺は平安時代の開基というこの地域では、最も古い真言宗の寺院で地名の「舎利=しゃり」の由来となっています。




天喜4年(1056年)に高野山から貞祐上人が十六善神の宝物を持ってこの地に開山したのが益田山神善寺です。

天喜(てんぎ、てんき)は平安時代の1053年から1058年の期間を指す。

真言宗は空海によって9世紀初頭に開かれた大集仏教の宗派で、日本仏教のひとつである。








空海が長安に渡り、青龍寺で恵果(えか、密教僧、空海の師)から学んだ、生きている間に悟りを開けるとする「即身成仏」という教えを持つ中国密教を基盤として、平安時代から続く宗派である。

長安は中国の古都で、現在の陝西省(せんせいしょう)の省都西安市に相当し、シルクロードの起点とされることもある。


「舎利」とは、火葬した後の遺骨を意味しますが、通常は釈迦の御遺骨のことを指します。

多くの釈迦の教えを世界に広めることを目的に、釈迦が亡くなった後、ご遺骨が細かく分けられました。

舎利は塔に納められ供養されますが、安置している塔を「舎利塔」と呼ぶ。

また、舎利は白く小さいお米を連想させることから、舎利という名がついたという説もある。

お寿司の白米がシャリと呼ばれているのはそのためなのだろう。


❉波崎の大タブ
所在地=茨城県神栖市波崎3355
益田山神善寺









2023/11/23

ジンチョウゲが萎れて枯れる No,676

ジンチョウゲが萎れて枯れる原因

ジンチョウゲが徐々に生気を失って萎れて枯れる。

根を掘ってみると、根や根冠部に褐色や紫褐色の菌糸の束が膜状に広がっている。

病気になった部分は腐って乾き固くなっている。

この病気は紫紋羽病(むらさきもんぱびょう)です。

病原菌は担子菌類の一種で、土壌中で生活していて植物の根に被害をもたらす。

発病は根に糸状または、ひも状の菌糸が網目状に絡みつくことから始まります。




防除

森林を開墾して、数年しか経過していないような場所で発生しやすい病気です。

堆肥は完熟したものを土壌に混ぜ込み、小枝や葉などをそのまま入れないようにします。

病気の株は抜き取って焼却処分し、その後にダゾメット粉粒剤で土壌を消毒します。

発病初期ならトップジンМ水和剤1000倍液を灌注します。

✪灌注(かんちゅう)とは、薬液が植物の根から吸収されることにより、有効成分が植物全体に行き渡り効果を発揮する処方法です。

薬液を土壌に注ぎ吸収されることで、また散布と違って展着剤は必要としません。


株を植える前にコブトール、コブナックスなどを土に混ぜておくと効果的です。

被害のでた土壌にイネ科の植物を何年か栽培すると、病菌は自然消滅します。









2023/11/17

ナンテンの花が腐って落花する No,675

 花が腐って落花する原因

ナンテンの花が褐色に変色し、腐って枯れる。

しばらくすると花柄まで褐色になり、腐って枯れる。

さらに、葉柄が腐敗しそこから上に病気が進んで、一番上の葉も腐っていって枯れてしまった。

果実も褐色に変色し、赤くならないうちに枯れてぼろぼろ落果、病気の果実は小さくしなびた状態となる。

この病気は「実腐れ病」で、花、花柄、葉柄に発生します。

病原菌はカビの一種と思われますが、はっきりしません。

発生する時期は年によって変化しますが、大体6月中旬から発生し始めて、7月に急速に病気が進みます。

雨が多い年は病気が発生しやすい傾向があります。






✪防除

病気になった芽や果実は集めて焼却処分

薬剤は病気が発生する前の4月〜8月にかけて、1週間から10日おきにトップジンМ水和剤500倍液に、展着剤を加えて散布すると予防効果があります。


❉ナンテン関連ブログ
ナンテン(南天)No,94
ナンテンの実つきが悪いNo,67








2023/11/11

アジサイの花が変化 No,674

 アジサイの花が変化する原因

アジサイの花に、小さな淡褐色の斑点が現れたと思ったら、そのうち斑点のできた花びら全体が褐色に変色して枯れてしまった。

その後、枯れた花びらの上に粉のようなカビが発生した。

この病気は花に発生する「灰色かび病」です。

粉状のカビは病原菌の分生胞子が、雨や風で周りに飛び散って伝染します。

このカビはウドン粉病などと違って、枯れた植物にも寄生できて、そこからも病気が拡がります。


アジサイは灰色かび病に強い品種と弱い品種があります。

弱い品種にこの病気が発生すると、花の寿命は短くなってしまいます。






防除
花の咲く直前にロニラン水和剤1500倍液、またはロブラール水和剤1000倍液のどちらかを、月に2回〜3回散布すると予防できます。

病気にかかった花や葉を見つけたら摘み取って、焼却処分します。

多湿を好むので水やり過ぎに注意し、せん定して風通しを良くします。

チッソ肥料を与えすぎると株が軟弱に育ち、病気にかかりやすくなるので注意が必要です。









2023/11/08

ツバキの葉に斑点が発生 No,673

 ツバキの葉に発生する灰そ病

ツバキの葉や果実、若い枝などに斑点が発生

斑点は葉の縁の方からできています。

形は円形か崩れた円形で、最初のうち淡い緑色の斑点で、しばらくすると斑点の色は赤褐色に変わり、更に褐色になり、最後には周囲が褐色で中心部が灰色の斑点に変化し、古い病斑の上に黒い微粒子ができます。

これは灰そ病です。




病原菌は子のう菌の一種で、黒い微粒子は病原菌の分生胞子及び、子のう殻(胞子を作る容器)です。

雨が降ったあとや湿度が高いときに、この黒い粒から鮭肉色(けいにくしょく)の粘液(胞子粘塊=ほうしねんかい)を出します。

梅雨の6月から七月、秋の長雨が続く9月から10月頃に多発します。

この病気の特徴は、樹勢が強いと発病しないで菌は樹幹内に潜伏し、樹勢が弱まったり、日焼けを受けたりすると発病し、病斑を作ることです。

感染経路は、降雨後などに鮭肉色の粘液が虫、風、雨滴などに運ばれ感染します。


治療、防除

発生の多い6月から7月、9月から10月には月に1回〜2回の割合で、ダイセン、マンネブダイセン、ベンレートなどを散布

病気になった部分は切り除いて焼却処分

その後、トップジンМ水和剤1000倍液を1週間おきに数回散布する。

風通しが悪いと病気になりやすいので、せん定して風通しを良くします。

樹勢を弱めると発病するので、寒害、日焼けなどに気をつけ、樹勢を強く保つようにします。

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椿油と五島うどんのルーツNo,413
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2023/11/04

コーヒーの効能 No,672

 コーヒーの効能

コーヒーはアカネ科コーヒー属に属する植物の総称で、主に栽培種を指します。

アラビア種の原産地はエチオピア南西部の高地で、多数の野生種がアフリカ大陸西部から中部、そしてマダガスカル島と周辺諸島にかけて分布しています。

野生のまま放置しておくと10m程度まで生長する。





❉コーヒー100mlに含まれる栄養成分

水分        99.5g
タンパク質       0.2g
脂質          0.1g
カルシウム       0.1g
リン         4㎎
ナトリウム     2.0㎎
カリウム      55㎎ 
ビタミンB2    0.01㎎
ナイアシン     0.3㎎


✪疲労回復

コーヒーに含まれるカフェインは、神経や筋肉を刺激する作用があるので、肉体の疲労を回復される効果があります。

✪コレステロールを下げる働き

コーヒーに含まれるニコチン酸(タバコのニコチンとは別物)は、毎日適量を摂ることでコレステロール値を下げる効果があります。

ニコチン酸の効果によって、心筋梗塞などの心臓病を防ぐ働きがあると言われています。

コレステロールとは、人間の体に存在する脂質の一種で、細胞膜やホルモン、胆汁酸を作る材料となっています。

コレステロールは肝臓で作られ、血液(血管)によって全身に運ばれます。

余分なコレステロールは血液で肝臓に戻ってきます。

コレステロールは、脳や肝臓、神経組織などに多く含まれており、生命維持に欠かせない重要な物質である。


✪善玉コレステロールの増加

コーヒーを飲み続けると、善玉コレステロールの高密度リポタンパクが次第に増加します。

リポタンパク(質)とは、血液中において水に不溶な脂質を、吸収部位や合成部位から利用部位へ、運搬するための複合粒子です。


✪ぜん息の発作を抑えます。

ぜん息の発作は、自律神経の一種である副交感神経が緊張している時に、起こりやすいと言われていますが、コーヒーに含まれるカフェインにより、もう一つの自律神経である交感神経を、興奮させる作用があることが知られています。

これによって副交感神経の働きを抑え、ぜん息の発作を起こりにくくします。

副交感神経とは、自律神経の一種で、臓器や器官などの働きを抑制する神経系です。

主に休息している時に優位に働く自律神経で、血圧を下げたり心拍数を低下させたりするなどの役割を持っています。


✪脂肪を分解します。

コーヒーを飲むと、血液中の脂肪酸が分解されますが、この脂肪酸の元が皮下脂肪などです。

ただし、この分解する働きは砂糖やクリームを混ぜると多少低下するようです。

皮下脂肪はジワジワと増え、減らしにくいのが特徴です。

✿体脂肪率による肥満度
軽度肥満
男性は20%以上
女性は30%以上

中等度肥満
男性は25%以上
女性は35%以上

重度肥満
男性は30%以上
女性は40%以上


✪消化を促進します

カフェインが脳の「迷走神経」を刺激して、胃酸の分泌を盛んにして消化を助けます。

迷走神経とは、感覚神経、運動神経のひとつで、嚥下(えんげ)運動や声帯の運動、耳介(じかい)後方の感覚などに関係する神経で、体内で多数に枝分かれして複雑な経路をとり、胸腔内から腹腔内にまで広く分布している。

耳介とは、皮膚と軟骨からできた頭部の両側に突き出した器官(耳)のこと


✪精神のリラックス効果

コーヒーの香りを嗅ぐと脳から出るα波が増加し、気持ちを落ち着かせる効果があることが分かっています。

ただし、最も精神安定効果があるのは、1日2杯から3杯が適量のようです。

✪コーヒーがなぜがんの予防になるの?

大多数の研究結果として、コーヒー及びお茶の通常範囲の摂取では、いかなる部位でもガンとの優位な関連はないことを示しているとなっている。

これは、1997年に世界がん研究基金発表によるものです。

国立がんセンターの調査、研究によると、肝臓がんと子宮体がんの予防に効果が期待できるとされ、肝臓がんを抑える効果はほぼ確実とされ、子宮体がんは抑える効果は可能性ありと判定されています。

脂肪は酸素と結びついて酸化します。

これによってできた物質が、DNAを刺激して細胞の突然変異が起こり、老化やがんの原因になると言われています。

コーヒーに含まれるクロロゲン酸という物質は、体の中の炎症を抑え、酸化するのを抑える働きがあるとされる。

DNAは生物の遺伝情報(ゲノム)を担う物質で、日本語ではデオキシリボ核酸であるが、DNAと呼ばれることが多い。

ポリフェノールの一種のクロロゲン酸は、コーヒー生豆に多く含まれ、この成分は抗酸化作用のほか、脂肪の蓄積を抑える効果などが知られています。

また、糖尿病や肥満の予防のためのサプリメント等に利用されています。

✪カフェインの作用には注意が必要

飲みすぎると現れる症状

何度もトイレに行きたくなる=利尿作用

不眠症になる=覚醒作用

胃もたれ、吐き気、肌荒れ=胃酸分泌

頭痛、疲労=血圧上昇


✪コーヒーに関連するブログ
コーヒーの木 No,346








2023/11/03

ビロウヤシ No,671

 ビロウヤシ 檳榔、蒲葵

ヤシ科ビロウ属 別名=セイタカビロウ

ビロウヤシはインドネシアなどの熱帯アジアが原産地のヤシ科の常緑樹です。




日本では四国の南部から南に分布し、島や海岸付近の山に生える。

四国、九州では3m程で、大きく育ったものでも5m程だが、亜熱帯では幹は直立して高さ15m程になるが、原産地では30m程の高さまで生長する。


種子は嗜好品(しこうひん)として、噛みタバコに似た使われ方をされ、ビンロウジという場合は通常この種子を指すが、発がん性が指摘されている事から「死の実」とも呼ばれる。

日本への伝来は奈良時代とされ、当時は高級な漢方、薬や染料の材料として使用されたが、庶民まで伝わることはなかったようだ。

寒さに強く、多くの地域で屋外でも越冬可能

成長は非常にゆっくりで、関東では年々数センチくらいです。


直射日光には若干弱い傾向があり、夏に葉焼けすることもあります。

九州地方では街路樹などに利用され、その他に扇や笠に利用する。










カラスザンショウ No,670

 カラスザンショウ (烏山椒)

ミカン科サンショウ属 落葉高木
別名=アコウザンショウ/イヌダラ/コメダラ/ヤマザンショウ

サンショウと違って✪アルカロイドを含むので、イヌザンショウとともにイヌザンショウ属に入れる場合がある。

✪アルカロイドとは、窒素を含む塩基性の植物成分の総称で、アルカロイドはアルカリに似た化合物と言う意味で、植物塩基ともいう。

一般に少量で動物に対して強い生理作用をもつ。
ニコチン、モルヒネ、コカイン、アコニチン、キニーネなど

カラスが種子を食べることからついた名前だという。





落葉樹としては塩分に強く、自生は太平洋岸の山地に多いが、ヒヨドリ、ムクドリ、ヤマドリ、メジロなどの野鳥が好んで種子をついばみ、カラスによって散布された種子はよく発芽し、裸地のはじめに生える先駆植物になっている。


枝には鋭いトゲがあり、大木に生長しても樹皮にはイボイボのトゲの痕跡が残る。

花期は7月から8月で花はとても小さく、直径5㍉ほどで果実は赤く、裂開すると黒い種子ができる。


他のミカン類同様、若葉はモンキアゲハやカラスアゲハなどアゲハチョウ類の幼虫に食害されるほか、蜂の蜜源植物にもなっている。








2023/11/02

ヒメユズリハ No,669

 ヒメユズリハ(姫譲葉)

ユズリハ科 別名ユズルハ

本州中南部、四国、九州及び沖縄の主に海岸部に分布し、ユズリハに似た葉が小さい木としてヒメユズリハと名付けられた。




トベラやウバメガシと共に、海岸林の重要な構成樹種である。

雌雄異株の常緑高木で樹高は10m程になる。

西日本では正月飾りとして、ダイダイやウラジロと共に鏡餅などに使われる縁起の良い木とされる。

樹皮や枝葉にはユズリハ同様、有害成分が含まれていて除虫に使われる。

葉や幹が小さく成長が遅いため、一度せん定をした後は次のせん定までの期間を、あける必要があります。

幹や太枝からの萌芽があまり期待できないので、太枝などのせん定は避けた方が無難です。

せん定の時期は花を付けた後の6月頃と、実が落ちた後の12月頃が適しています。

せん定作業は多くても年2回行う程度で十分です。

乾燥に弱く、粘土質でやや湿り気のある土壌が適し、水はけの良い場所では育ちにくいため、堆肥や腐葉土を混ぜ込んだ水持ちの良い土で育てます。

耐寒性があり、日当たりの悪い場所でも植えることができますが、1日中日の当たらない場所では間延びした枝ぶりになってしまうので、植え付け場所は十分に選ぶ必要があります。


エゾユズリハ

北海道及び近畿地方以北の本州、日本海岸内陸部に分布する常緑低木で樹高は1〜3m、雪が多い寒地に適した樹種です。

この他、葉が黄白色の斑が入る園芸品種のフイリユズリハや沖縄、台湾に分布するシマユズリハ、奄美大島に自生するアマミユズリハなどがあります。









シャシャンボ No,668

 シャシャンボ 

ツツジ科スノキ属 別名=ナガバシャシャンボ、シャセンボ




四国、九州、沖縄に分布する
(小小ん坊、南燭)

果実が小さいのでこの名がある。

晩秋に熟す実は昔から食用とされ、「サシブ=烏草樹」という古名で親しまれていました。

粒は小さいが甘酸っぱくて美味しい。

低山の林に生え、3m程の高さになる。

花は上部の葉の付け根から伸びた花茎に、びっしりと下向きにつく。

花期は5月から7月、花には軟毛が密生し、先端部分がわずかに開く。

果実は直径が5㍉ほどで粉白を帯びる。

樹勢が強いためブルーベリーの台木に使われる。









2023/10/29

材質腐朽病(害) No,667

 材質腐朽(ふきゅう)病

この病気は木材から栄養を吸収している「木材腐朽菌類」という、一群の菌類によって引き起こされる病気です。

腐朽すると細胞壁が破壊され、材は強度が低下してしまって、用材としての利用価値を失ってしまいます。

木材腐朽菌類には、担子菌類(キノコなど)のヒダナシタケ目に属する菌類が多く含まれるが、クロサイワイタケ科などに属する子のう菌類や、不完全菌類(無性生殖とされるもの)の一部も含まれます。

シマサルノコシカケやナタタケなどの一部の菌類を除き、木材腐朽菌類は直接生立木(せいりゅうぼく)を枯死されることはありません。

しかし、材質腐朽病害は樹木の材の利用を妨げるだけではなく、しばしば幹折れの原因となり、更に樹木の衰弱の誘因ともなります。

立木の腐朽の仕方は、根株腐れ(根株心腐れ)、幹腐れの2種類があります。

◉根株腐れ(ねかぶくされ)とは、樹木の根系の傷から菌が侵入して腐ることで、原因は土壌や水分と密接な関係があります。

立木が強風に揺らされたり、車などに踏み固められて根系が切断されたことで傷ができ、土壌の中にいた腐朽菌が侵入したりして起きます。


根から侵入した菌で腐朽する場合は、根株の心材が被害を受けて、それから地上部の心材まで、円錐状に被害が広がることが多く、このような侵入方法をとる菌にはレンゲタケ、ハナビラタケ、ベッコウタケなどがあります。

✪根株辺材(へんざい)腐れは、根から侵入しても皮層部分から、樹幹の辺材部分を腐朽される菌です。

これはナラタケ菌によって起きますが、この菌は根に傷がなくても樹が弱っていると、根に侵入できます。

多湿土壌を好むので、水はけの悪いところで被害が大きくなります。

✪幹腐れは樹幹にできた傷から菌が侵入して腐る。

樹と樹の接触が下でできた傷や、動物の食害!間伐のときにできた傷から、菌が侵入して幹が腐ります。

しかし、一番多い原因は枯れ枝で、空中湿度の高い林の中などが菌の最も好む環境です。

幹腐れにも、樹幹心腐れと樹幹辺材腐れの2種類があり、心腐れを起こすものはエゾノコシカケ、チウロコタケモドキ、マツノカタワタケなどがある。

辺材腐れを起こすものは、モミサルノコシカケ、チャアナタケモドキなどがある。

材質腐朽病害の種類

腐朽病害は発生する部により「根株腐朽」「樹幹腐朽」「枝腐朽及び辺材腐朽」「心材腐朽」のように分けられ、これらを組み合わせて樹木の腐朽被害を《根株心材腐朽》《樹幹部辺材腐朽》のように呼ぶ。

また、材の腐朽様式により、材中の❉セルロースと❉リグニンの両方が分解され、リグニンが残される褐色腐朽に大別される。

更に、腐朽材の形状により、海綿状白色腐朽/孔状白色腐朽/立方状褐色腐朽/孔状褐色腐朽などに区分される。

❉セルロースとは、植物の細胞壁及び繊維の主成分で、植物はすべてセルロースを主構成成分として含んでいる。

地球で最も多く存在する炭水化物である。


❉リグニンとは、植物の細胞壁の構成成分の一つで、セルロースとともに二次壁に含まれ、木部での水分移動や植物たちの物理的支持などの役割を果たしている。


防除

この病害は樹材の外見から判断できない場合が多く、早期の発見は難しい。

一般に樹木の枝や幹、地際部腐朽菌類のキノコ(子実体)が発生している場合は、その樹木の材内部では腐朽が進んでいると考えられるので注意が必要です。

樹幹腐朽に関しては、林木では枝打ちを実施して、枯れ枝や傷が生じないようにします。

庭園樹や街路樹では、枝のせん定痕が腐朽菌の侵入口となる場合が多いので、せん定後は切り口にペースト状の殺菌剤(トップジンМペーストなど)を塗布するなどの処理を行います。


根株腐朽の防除は難しいが、林木では間伐や択伐(たくばつ)時に、残存木の幹や根系に傷をつけないようにすることが大切です。

以前に、根株腐朽が発生した伐採跡地に再造林する場合は、地中に原因となった腐朽菌が生息している可能性が高い。

よって、腐朽病害に抵抗性のある樹種に転換する必要があります。

また、老樹や名木に腐朽病害が発生した場合には、腐朽した部分を取り除き、殺菌剤を塗布した後、空洞部を樹脂で充填、または保護対策などの外科手術を行うこともある。

外科的対策では、再生可能な状態になるようにすることが重要です。








2023/10/28

植物に対する温度と湿度 No,666

 植物の生育には温度と湿度が大きく影響しています。

特に冬の寒さ、夏の暑さを生き延びために植物は色々な工夫をしています。


気温と植物の関係

寒さに強い樹、弱い樹
植物の耐寒性は種によって大変な差があり、冬の厳しい寒さにあうと枯れてしまう熱帯起源の植物がある一方、マイナス60度という超低温の中でも生存できる北極地方のワタスゲ、スゲ、矮性低木(チョウノスケソウ)などの植物もあります。


一般に植物は、冬の低温にあって組織が凍ってしまっても、氷が解けるとまた機能を回復するものが多い。

低温に強いかどうかは氷が解けるとときに、機能が回復する力の程度によって決まるようです。

また、低温への適応としては、寒さに強い形で越冬するという植物もあります。

乾燥した種子や、芽、地下茎などの形で越冬するのがその例である。


植物の地理的な分布は、その土地の冬の気温に大きく影響されます。

どのような地域にどのような群系が繁殖しているかを示したものを、植物の生態分布と言いますが、この生態分布は植物同士の相互の関係によっても影響されます。

主な影響を与えるのは、気温や降水量といった気候条件です。

気温は地球の赤道と極からの距離、つまり緯度差による変化が大きい為、降水量は大陸の海岸から内陸へ向かうに連れて変化します。

一般に寒さに強いのは針葉樹と落葉樹で、常緑樹は冬、暖かく年間降水量も多い土地に向いている傾向があります。

落葉樹は冬を生き抜く手段として、葉を落としますが、これは一種の「冬眠」とも言えるでしょう。


暑さに強い樹、弱い樹

植物の高温に対する耐暑性は、耐寒性と同様で種によってたいへん差があります。

高山に育つ陰生植物(日陰を好む植物)や極地に分布する海藻などは、高温に弱く呼吸が光合成を上回ってしまうことで、消耗が激しくなり枯れてしまいます。

植物は光合成によって作られた糖と気孔から吸った酸素を結びつけてエネルギーに変え、二酸化炭素を放出します。

これを「植物の呼吸」といい、光合成と全く逆の反応をしています。

呼吸は光と関係なく1日中行われています。

もっと高温の場合は、葉などの原形質(細胞の生きている部分、核と細胞質)が固まってしまい、枯れることもあります。

同種の植物でも、育つ環境によって耐熱性が向上することもあります。

砂漠や海辺の植物が耐熱性を持っているのは、生育条件と関係があると見られています。

また、ヨーロッパのように涼しい気候のところで育った樹は、暑さに弱いものが多く、高温多湿の土地でうまく育ちません。


湿度と植物の関係

気温とともに植物の生育に関係が深いのが湿度です。

植物は葉の裏にある気孔を通して、蒸散作用を行います。

蒸散は植物の表皮の外側からも行われていますが、ほとんどは葉の気孔を通して行われています。


蒸散により水分が放出されて、葉が水不足になることで、植物が根から水を吸い上げる力となっています。

しかし、あまり高温で水蒸気要求度が高く、水分の蒸散が激し過ぎてしまうと、根からの吸水が追いつかずに植物は消耗してしまいます。

また、冬は根の働きが鈍っているのに、空気が乾燥することで水不足になる傾向があります。


温度、湿度と病原菌の関係

《温度》
一般に胞子の形成に適する温度は、菌糸の生長に適した温度とほぼ一致しています。

イネのいもち病菌では、菌糸の生育適温は28℃で、胞子形成の適温も28℃で両方が一致しています。

また、野菜類の灰色カビ病菌もそれぞれ25℃であり、トマトの萎縮病では28℃である。


《湿度》
多数の病菌では、胞子の形成には低湿度よりも高湿度の方が適しています。

しかし、ウドン粉病菌では、分生子及び子のう殼の形成とも空気湿度が低いときに盛んである。

病原菌の性質を明らかにするため、あるいは殺菌剤の効果を検定するなどのために接種試験を行う場合には、条件を組み合わせて培養すると、接種源として多量の胞子を得ることができる。

湿度は空気に含まれる水蒸気量を表す尺度で、相対湿度(RH)と絶対湿度があるが、単に湿度という場合は相対湿度を指す場合が多い。

相対湿度は観測された水蒸気圧を、観測された気温に対する飽和水蒸気圧で割ったものであり、体感的な空気の湿り具合とよく対応する量である。

絶対湿度は、単位体積の空気中に含まれる水蒸気の質量として定義される。

空気中の水蒸気量を表す概念として、他に露点、比湿、混合比などがある。

露点とは観測された水蒸気圧を、飽和水蒸気圧とする温度である。

気温と露点の差は湿数と呼ばれ、湿度がゼロに近いほど空気が湿っていることを表します。

比湿とは、空気密度に対する水蒸気密度の比であり、混合比は、空気の水蒸気以外の成分の密度に対する水蒸気密度の比である。









2023/10/27

ウイルスによって起こる病気 No,665

 植物ウイルス

植物には500種以上の植物ウイルスが知られています。
ウイルスはとても小さく単純な構造をしています。

ウイルスは基本的に核酸がキャプシドというタンパク質を被って、棒状、ひも状、球状などの形になっています。


     「ウイルスのいろいろな形」


核酸は、体を作る元となる細胞に存在する、新しい細胞を作り出すために必要不可欠な成分で、細胞を作り出す情報を持っDNAと、情報をもとに細胞の材料となるタンパク質を合成するRNAがある。

植物病原ウイルスの大部分はRNA(デオキシリボ核酸)ウイルスであるため、ウイルス核酸を直接解析することは困難である。

しかし、RNAウイルスをDNAシベルで解析、操作することが可能となっている。

RNA(核酸)は、リボースを糖成分とする核酸で五炭糖のひとつで、遺伝情報の伝達やタンパク質の合成を行う。

一番小さな球状ウイルスは直接100万分の20㍉、一番長いひも状のウイルスは直接100万分の11㍉、長さ1000分の2㍉くらいです。

ウイルスは生きている細胞の中だけで増殖できるという点が、カビやバクテリアと一番違うところだろう。

ウイルスは宿主に感染して自分の複製をたくさん作りますが、それに必要なエネルギーやアミノ酸などの原料を、宿主細胞から借用しています。

伝染には昆虫の媒介者が必要な場合が多い。


このため、ウイルスを殺そうとする薬剤は、宿主にも有害な影響を与えてしまうことになるので、ウイルス病を薬剤で治療することは困難です。

従って、ウイルス病は予防が大切であると言えるだろう。

ウイルス病の病徴には多くの形があるが、大別するとウイルスが葉肉細胞などの柔組織で増殖するものと、維管束組織のみで増殖するものとの2つに分けることができます。

柔組織で増殖するウイルスは、モザイク、斑点、輪紋などウイルス病に特徴的な病徴をはっきり現すものが多い。

維管束のみで増殖するウイルスは、黄化、萎縮、葉巻などの比較的はっきりしない病徴を現す。

病徴(びょうちょう)とは、樹木が病原菌に侵されると外部に様々な異常(葉枯、枝枯など)が現れて肉眼でも確認できる、これを病徴という。

これは、養分欠乏症などの生理的障害との区別が難しい場合も多い。

外部病徴
病徴は通常は全身的に現れるが、実験的な接種では接種部位にだけ現れることもある。

病徴はウイルスの増殖の結果であるが、植物体内のウイルスの分布と病徴とは必ずしも一致しない。

無病徴感染
ウイルスに感染していても明らかな病徴が認められない場合は、無病徴感染(潜在感染)という。


植物ウイルスの分類

植物ウイルスは世界では約700種、日本でも少なくとも225種以上が報告されている。

これらについて性質が近い者同士を集めて分類する試みは、1970年代以降、国際ウイルス分類委員会(ICTV)によって集められてきました。

ICTVでは、植物ウイルスもヒトや動物などのウイルスと同様に、科、属、種という階級分類によって統一的に分類しようとしてきました。


しかし、ウイルスについては種という概念が曖昧で、どのような基準で種を設定すべきかについての議論は絶えない。


そこで現在では、一部のウイルスについては動物ウイルス、昆虫ウイルス、菌類ウイルスとも共通な科が設けられている。

1つのウイルスでも性質の違い、系統や血清型などによって更に分類されることもある。


ウイルスによって起こる病気

モザイク病気
時々白いレースのような模様の入った、チューリップの花(斑入り)が咲くことがあります。

斑入りは昔から愛好家の間で珍重されてきました。

しかし、20世紀になってからこの模様が、モザイク病というウイルスによる病気の症状であることが分かりました。


モザイク病は、ウイルスによる病気の代表的なもので、タバコモザイクウイルス、キュウリモザイクウイルスなどが有名です。

近年では、遺伝的に斑入りの品種を作ったりしていますが、普通のチューリップに混じっているようなものは、ウイルスの感染によるものです。

モザイク模様のチューリップは、葉や茎がねじれたり生育が悪くなったりします。

現在、球根の生産農家では花を咲かせて、モザイク病のチューリップを見つけると抜き取って捨てています。

それはチューリップの球根によって病気が伝染するからです。


ウイルスの伝え方

植物ウイルスは昆虫によって伝搬されるのが一般的です。

アブラムシ(アリマキ)、ウンカ(稲の害虫)、ヨコバイ(セミ類に近い一群)などの虫たちによって運ばれますが、一番重要なのはアブラムシで、160種以上の植物ウイルスを運びます。


アブラムシは多くの植物にモザイク病を起こす、キュウリモザイクウイルスやルテオウイルスを運びます。

✪ルテオウイルス=アブラムシ永続伝搬性であり、植物の師管内部で増殖して、植物体を黄化、萎黄萎縮症などを引き起こすとされている。

衣服や手で触っただけで、接触伝染するタバコモザイクウイルスは昆虫では伝搬されない。

しかし、製品化されたタバコにしぶとく残っていて、農作業を通してトマトやナスに感染することもあります。

稲の萎縮病はヨコバイの卵を経て、次の世代に伝わります。


ウイルスが地中の線虫や菌類によって伝搬されることを、ウイルスの土壌伝搬という。


ウイルスフリー

近年、バイオテクノロジー研究の進展に伴い、種子を利用せず、さし木、株分け、分球などにより増殖される栄養繁殖性の作物の多くが、ウイルスに感染している。

ウイルスに感染した株でも生長点にはウイルスが存在しないため、生長点を培養することにより、ウイルスに感染していないウイルスフリー苗を作ることができる。

イチゴ、株ネギ(在来種)、ジャガイモ、サツマイモ、キク、カーネーションなどでウイルスフリー化された苗が栽培されている。

これらの作物のウイルス病は主に、アブラムシ類によって媒介されるため、ウイルスの再感染を防ぐことを目的として苗の増殖は網室で行われる。


しかし、通常の栽培では圃場(ほじょう=農作物を育てる場所)全体を網で覆うわけに行かず、再感染が大きな問題となる。

近年、種子繁殖性の作物のウイルス病対策も含めて、ウイルス媒介害虫の防除技術の開発や、強毒ウイルスに抵抗性を示す弱毒ウイルスの利用などの保護技術の開発が行われている。









2023/10/25

バクテリアによって起こる病気 No,664

 単細胞でも多様なバクテリア

バクテリアは、菌類(カビ)よりずっと小さい直径1000分の1㍉、長さ1000分の1〜3㍉の生物です。

ソーセージ形(桿菌=かんきん)や球状のものなど、形は色々あります。

細い糸状の放線菌は土壌中で抗生物質を生産します。







また、らせん状の形をしたバクテリアの「スピロヘータ」は、梅毒や回帰熱などの病原体です。

スピロヘータは、ヒトの病原細菌としてよく知られ、今から約100年前、野口英世博士が梅毒トレポネーマをはじめとして、様々な病原性スピロヘータの研究を精力的に行ったことでも有名である。


スピロヘータは感染した動物の便に、汚染した手や食品を介して口から感染します。


このため、家族や室内で飼育しているペットから感染する可能性があり、感染すると何ヶ月も長く続く下痢を引き起こします。


バクテリアは単細胞生物で分裂によって増殖できるので、本質的には性行動は必要ありませんが、バクテリア同士が結合してDNAの組み換えを行います。


これは遺伝子を混ぜ合わせて、多様性を高めているのだと考えられます。

バクテリアは環境の変化に適応して、生き残るために工夫しているのです。

バクテリアによって起こる病気

①野菜類軟腐(なんぷ)病
ハクサイやキャベツの真ん中の部分が変色して、腐ったり嫌な臭いがしたり、他にも色々な野菜や果物が腐ります。

これは野菜類軟腐病菌というバクテリアによって起こる病気で、アイリスやシクラメン、ランや観葉植物などにも発生します。


バクテリアは『ペクチン質』を分解しながら増殖しますが、このときペクチナーゼという酵素を出します。

この酵素は、植物の葉などの細胞を溶かしてバラバラにして腐らせます。

ペクチン質は、ガラクツロン酸を主とする多糖の一種で、セルロース繊維などとともに植物の細胞壁を構成しています。


このバクテリアは土壌によって伝染します。

土の中で雑草の根の表面や、病気になった植物の体の一部などに付いて、新しい植物が植え付けられるのを待っています。


バクテリアは菌類と違い、自分で植物たちの表面に孔を開けることができないので、農作業や風雨、害虫の食害などによってできた傷口を探して侵入するので、この病気は害虫の多い畑で多発する。

②フジコブ病
マツコブ病はカビによって起きますが、フジやサクラのコブ病はバクテリアが病原となります。

若い茎や枝の傷から侵入して発病し、小枝が枯れて花の数も少なくなります。


枯れないものは樹とともに成長して、コブのくぼみが害虫の産卵場所になります。

また、虫こぶはクリやブドウ及び一部の植木などでは問題になる。

クリタマバチはクリの芽に産卵する。

ブドウネアブラムシはブドウの根に生息し、ともに虫こぶを形成する。

これらは難防除害虫であるが、その他の作物では虫こぶの形成はあまり問題とされない。


③根粒バクテリア
植物の生育にとって悪い影響を与えるものではないので、病気とは考えられませんが、本来の植物の生理を考えると病気と言えます。

植物病理学からみた病気とは、一定時間以上何らかの刺激を受け続けた結果として、植物が元々持っていた機能や形が正常でなくなった状態のことを言う。

何らかの刺激というのは、例えば微生物の感染などによる刺激を言います。

病気の原因となるものが植物の体内に侵入して、植物から栄養を取るようになることを感染といい、感染した植物の形に異常が起きたときに発病したと言います。


④その他、
立ち枯れ病の一部やコウヤク病もバクテリアによる病気です。

この病気の症状は、青枯れ病や萎凋(いちょう)病の症状と似ていて見分けにくい場合が多い。


いずれの場合でも病原体は、根の傷口から侵入します。

根を傷つける原因は、虫による傷口か、作業用スコップなどで傷をつけることなどが考えられます。

✪コウヤク病については関連ブログ
樹木の五大病気①コウヤク病
No,657に記載しています。









2023/10/24

薬剤の形と分類 薬剤について No,663

 薬剤の形と分類と役割


植物を病害虫から守る重要な事は、植物を丈夫に育てることです。

特に樹木の場合は、農作物の栽培などとは違って、薬剤の積極的な使用はなるべく避けたいところであり、薬剤に頼らない防除を基本にしながら、薬剤は合理的に使用したいものです。


薬剤防除が必要なケースとしては、害虫の異常発生が起こり、大きな被害が予想されるときや実害がそれほどなくても、著しく時間を損なうときや観賞価値を落としてしまうとき、また幼苗期から育成期にかけての防除として使用する場合などがあげられます。

薬剤には乳剤や液剤、水和剤などの様々な形態のものがあります。

同じ種類の薬剤でも形態によって使い方が違ってきますので、十分な注意が必要となります。





《乳剤》
有効成分を石油類などの有機溶媒に溶かし、そこに乳化剤が加えられています。

使用方法として、有効成分は高濃度であるため、水で薄めて使用します。

水を加えると白く濁るのが特徴です。


《液剤》
有効成分を水に馴染みやすい溶液に溶かしてあります。
使用方法として、水で溶かして使用します。

水に溶かしても白く濁りません。


《水和剤》
有効成分は石の細かい粉(タルク)などに吸着させてあります。

使用方法として、水で薄めて使います。
有効成分は高濃度で粒状ですので粒剤と間違わないようにします。


《水溶剤》
薬剤そのものが水に溶けやすい性質です。

使用方法として、そのまま水に薄めて使います。

《粉剤》
薬剤はタルクなどの粉末で増量しています。

使用方法として、そのまま散布します。

有効成分は低くなっています。

《粒剤》
有効成分は鉱物粉末に吸着させて粒状にしてあります。
使用方法として、土壌に与えるものに多く見られる薬剤です。

《油剤》
有効成分を油性溶媒に溶かしてあります。

使用方法として、そのまま使います。

薬剤は使用目的により大きく4つに分けられる

①殺菌剤
病原菌の殺菌や予防、病気の治療に使います。

②殺虫剤
害虫の駆除に使います。

③除草剤
農家が除草を目的に使う強い薬剤です。
薬剤の乱用によって、環境への影響が危惧されている。

④生理活性剤
ケミカルコントロールに使う薬剤です。

薬剤で植物の生理作用をコントロールすることをケミカルコントロールという。

植物の成長過程で重要な働きをする植物ホルモンは、植物が自分で作り出すもので、これとよく似た作用を持つ植物成長調整剤を使うと、植物の生理作用を人工的に進ませたり、抑えたりできます。

なお、植物はどの植物にも同じような作用をするわけではありません。

植物によって、目的が同じでも薬剤が違う場合もあり、また、薬剤が同じでも植物や使う時期によって様々な作用が現れます。


ケミカルコントロールで使う調整剤

《生育促進剤》植物ホルモン剤
植物を早く生育させたい、または、早く大きくしたいときに「ジベレリン」を使うと、生育促進、伸長促進などの効果があります。

ジベレリンは、ブドウの「タネなし化」などにも使われています。

ジベレリンは、植物細胞そのものを大きくするので、植物が軟弱に育ってしまう傾向があります。

使用するときは、施肥などの栽培管理に注意が必要です。


《伸長抑制剤》
植物を大きくしたくない、コンパクトに育てたいときに「アンチジベレリン」矮化(わいか)剤を使います。

植物の細胞が小さくなり、葉と葉の茎を短縮させるので、ボリューム感のある姿にします。

また、伸長が抑えられた結果、抵抗力が付く場合もあります。

シャクナゲやツツジに使うと花芽の数が増えます。


《発根促進剤》
挿し木やさや挿し芽の発根を促進させます。

挿し木や挿し芽の切り口に薬剤をつけ、さし床に挿すだけのことで、根の数が多くなるといった効果があります。

良い苗ができるので順調な生育が可能になります。


《着果促進剤》
落果を防止する効果があります。

イチゴやグミにはジベレリン、メロンやスイカにはベンジルアミノプリン剤が着果の促進剤となります。


《開花促進剤》
花を早く咲かせたい、多く咲かせたい、花を大きくしたいときに使います。

開花促進に使うときは、つぼみを確認してから使用するのがポイントです。

つぼみのできる直前に使ってしまうと、花芽が無くなる心配があります。

ツバキにジベレリンを使うと花を大きくすることができます。


✿殺菌剤はその効果により、予防薬(予防殺菌剤)と治療薬(直接殺菌剤)との2つに分けられます。

病気を予防、治療するための殺菌剤
《直接殺菌剤》
病原菌や菌糸に直接作用して殺してしまう薬剤です。

病害予防の要とも言われる薬剤で、発病後できる限り発病初期に使用します。

殺菌剤には両方の効果を持つものが多くありますが、予防と治療は分けて考え、計画的に薬剤を使用しなければならないのは当然のことです。

ベノミル剤、チオファネートメチル剤、オキシカルボキシン剤、トリホリン剤、ポリオキシン剤などはこれに属します。

病害に応じた適切な薬剤を選び、発病の初期に使うとかなりの効果が期待できます。


《予防殺菌剤》
病原菌の侵入や伝染を防ぐ薬剤です。

病気の多くは植物の気孔(きこう)や害虫がつけた傷口から侵入するので、発病前から散布しておけば予防効果が期待できます。


ジネブ剤、マンネブ剤、マンゼブ剤、銅水和剤、キャプタン剤などがこのグループになります。

予防を目的とする薬剤なので、発病後に散布を行ってもそれ以前に侵入した病原菌にはあまり効果がありません。

発病しやすい時期の少し前から散布することが重要です。


その他の殺菌剤
ガス化して土壌中の病害虫を殺すガス剤(くん蒸剤)、幹にできた傷口に塗って秒巣の進展を防止する塗布剤などがあります。

殺菌塗布剤=トップジンМペースト、トップジンМオイルペーストなど


《抗菌剤》(農業用抗生物質)
微生物の抗菌作用を利用して、菌で菌を防除する薬剤です。

ストレプトマイシン剤、ポリオキシン剤、バリダマイシン剤、カスガマイシン剤などがあります。

特定の病気には特効薬となる薬剤となります。

植物の病原の8割はカビの仲間です。
残りの2割はほぼバクテリア(細菌)とウイルスで占められています。

殺菌剤の大半はカビを病原の対象とするものであり、バクテリアやウイルスに有効なものはあまり多くありませんが、バクテリアを対象とする薬剤としては抗菌剤があります。

これは、人間の病気に用いられる抗生物質を植物用に応用したものです。

ウイルスに有効な治療薬は現在ありません。

予防薬としての抗ウイルス剤はあるが、昆虫による伝染を防ぐことはできません。


害虫を駆除するための殺虫剤

殺虫剤はその効果により、大きく3つに分けられます。

①食毒性殺虫剤=消化中毒剤
葉や茎に付着した薬剤により食毒死させる。

植物の茎や葉についた薬剤を害虫が食べると、食中毒を起こして死んでしまうという薬剤です。

表面に薬剤の付着した葉や茎を害虫がかじって、薬剤が体内に取り込まれると、消化管の中で効果を発揮します。

そのため、毛虫やイモムシなどのそしゃく性口器(こうき)を持つ害虫には有効です。

しかし、吸収性口器を持つ害虫、アブラムシ類、カメムシ、ハダニ類などには効果がありません。


②接触毒殺虫剤=虫の体に直接付着させて中毒死させます。

薬剤が虫の体に直接つかないと効果がないものに、除虫菊剤、硫酸ニコチン、DDVP剤(劇物)があります。

多くの有機リン剤(オルトラン)やカーバメート系(デナポン水和剤など)の殺虫剤は、茎や葉についた薬剤の上を害虫が這っても有効なので、飛来しては食害する害虫にも使えます。

しかし、この薬剤はハマキムシ類や虫こぶを作る害虫、穿孔性(せんこうせい)害虫にはほとんど効果がありません。


③浸透移行性殺虫剤=薬剤を植物体内に浸透させ食毒死させる。

薬剤な有効成分が葉や茎から植物体内に浸透し、植物全体に行き渡るので、食害する害虫を中毒死されます。

エストックス、キルバール、アンチオ、ジメトエートなどの薬剤があります。

小型の吸収性害虫に効果がありますが、食葉性害虫には孵化(ふか)直後のイモムシやケムシにしか効きません。

《ガス剤》
有効成分が散布後に揮発してガス化し、このガスを吸った害虫が中毒死します。

《その他の殺虫剤》
特定の害虫を対象とした専用剤の殺ダニ剤や殺ナメクジ剤等がある。

トリモチを応用したハエ取り紙のような粘着剤もある。

カミキリムシ類の産卵を防止する樹幹塗布剤(アルバリンなど)などがあります。


◉薬剤の使用濃度

薬剤の多くは取り扱いの都合上、高い濃度のままで市販されているので、そのまま使ってはいけません。

❉薬剤は決められた濃度になるように必ず水で薄めて使います。

その場合、風呂の残り水や洗濯のすすぎ水といった生活用水、海水、腐敗水などを使うことは薬害の原因となります。

必ず新しい水で薄めるようにしましょう。

使用濃度は薬剤の容器のラベルに記載されていますが、ほとんどの場合1000〜2000倍と広い範囲が示されています。

これは低い濃度、この場合なら2000倍が低い濃度になりますが、2000倍に合わせても十分に効果があり、高い濃度の1000倍でも薬害が出ないことを示しています。


殺菌剤は薄めにして、葉の裏まで満遍なく散布します。

殺虫剤は少し濃くして、害虫に集中的に散布することが理想的です。


薬剤の薄め方

『乳剤、液剤の場合』
①バケツや噴霧器のタンクなどに水を正確に計量して入れます。

容量がはっきりわかるもの、計量器がない場合などは、牛乳パックやビールびんなどを利用すると良いでしょう。


基本的には、注射器やメスシリンダーなどで計量したいものです。

②薬剤を計量したら水に加えて棒などでよくかき混ぜます。


『水和剤、水溶剤の場合』
水和剤や水溶剤は、水に溶けにくいので、少量の水を徐々に溶かしていきます。

最初から大量の水に入れるとよく混ぜたつもりでも、上側と下側では濃度がまるで違ったものになります。

混ざりが悪いと上側の溶液は効果がなく、下側の溶液では濃度が高くなって薬害を起こす原因となります。

水和剤はそのまま水の中に入れてかき混ぜても、なかなか溶けません。

①水を正確に計量し、バケツやカップに入れます。

②小さな容器に正確に計量した薬剤を入れ、少量の水を加えながらかき混ぜます。
このときに展着剤も加えます。

十分にかき混ぜながら水を加え、薬剤がよく混ざったら水に入れてよくかき混ぜます。


❉また、乳剤には展着剤は必要ありませんが、その他の薬剤には最後に加えるようにします。


❴薬剤の混用❵

病気と害虫は同時に発生することが多いので、2種類以上の薬剤を混ぜて使用することがあります。

この場合、相性の悪い薬剤を混ぜて使うと効果が落ちるだけではなく、薬害が出たり人肉毒性が高くなることがあります。

混ぜてはいけない組み合わせを、ラベル表示で確認する必要があります。

石灰硫黄合剤とマシン油乳剤(機械油乳剤)は単用した方が安全です。

なお、殺虫剤のスミチオンやマラソンと殺菌剤のジネブ剤、TPN剤(ダニコール)は混用しても差し支えありません。


また、混用の組み合わせは水和剤なら水和剤というように同じ形態の薬剤同士にします。


❴薬剤散布の基本❵

《乳剤、液剤、水和剤、水溶剤の散布》
薬液が細かい霧状になるように、噴霧器を使って散布します。

病原菌の多くは葉の裏にある気孔から侵入します。

アブラムシやハダニ、アザミウマなどは葉の裏で活動することが多い害虫です。

従って、薬液をうまく葉の裏に散布、付着されることが重要となります。

噴霧器の噴射口を上向きにして、下から霧を吹き上げるように散布します。

薬剤を散布したとき、葉先から薬液がポタポタ落ちるようではかけ過ぎで、かえって薬剤が付着しません。

噴射口を植物から30〜50㌢程度離して散布しましょう。

《粉剤、粒剤の散布》
粉剤をまく散粉剤器を使用して散布しますが、薬剤をガーゼで包み、棒で軽く叩くようにしても散布できます。

やりすぎると薬害を起こす原因となるので、薄っすらと霜が降りた程度を目安にします。

《散布の注意点》

日中の好天気に薬剤散布を行うと、物理的にも科学的にも薬害が起こりやすくなります。

できるだけ散布は曇りの日や夕方に行うようにします。

病原菌は雨が降ると拡散するものが多いので、雨のすぐ後に散布するか、翌日には雨の降りそうな日に行なうと良いでしょう。

風のない日なら最適です。

薬剤は散布後30分でだいたい乾いてしまうので、散布した夜に雨が降っても、散布をやり直す必要はありません。

散布を行うとときは、風向きをよくみて、常に風下に進むように、風上から散布を始めます。

また、散布中に器具が故障してもゴム手袋やマスクをしたままで、調整、修理を行うようにしましょう。

散布中の飲食や喫煙は厳禁です。

散布後の注意点

使った器具やゴム手袋、マスクなどはよく洗います。

桶などに水を汲んで洗い、水は土の中に流して処理し、また、残った薬液も穴を掘って流し込んで処理します。

薬液を下水溝や川に流すと、その流入によって魚が死ぬこともあります。

また、使い残しの薬液の保存はできません。

薬剤は冷暗所で保管し、低毒性の薬剤であっても鍵のかかる薬剤専用の保管箱で、きちんと管理する必要があります。

散布面積と薬液の分量 (1㎡当たりの分量)

散布する植物 /薬液の目安 
1m以下の草花類、野菜類 /100cc程度

1m以上の草花類、野菜類 /200cc程度

丈の低い庭木類 /100〜200cc程度

2m程度までの庭木類 /3〜5リットル程度

長さ1m程度の垣根 /5リットル程度

どんな植物でも粉剤は2〜3㌘

どんな植物でも粒剤は4〜6㌘

鉢物なら粒剤は1株当たり1〜2㌘


知っておきたい薬剤の毒性

薬剤は法律(農薬取締法)によって、特定毒物、毒物、劇物、普通物の4種類に分けられます。

毒物はは劇物より強い毒性

普通物以外は自由な売買が制限されていて、毒物と劇物は鍵のかかる保管場所に入れることが義務付けられている。


特定毒物は個人で使うことはできない薬剤です。


殺菌剤のトリアジン(普通物)などが皮膚につくと、酷くかぶれることがあります。

ジネブ剤(普通物)やマンネブ剤(普通物)でもかぶれることがあります。

原液や原体を扱うときや、また薬剤の保管にあたっても細心の注意を払うようにすることが重要です。

《薬害》

薬剤散布をしたあと数日して、葉が赤く枯れたり、ひどい場合には全部葉が落ちてしまうことがあります。

この症状が薬害ですが、薬剤散布が無駄になるだけではなく、植物を傷めてしまう結果となります。

薬害は濃度調整のミスなどの人為的原因で起きますが、因果関係がよくわからない場合もたくさんあります。

その大部分は植物の生理状態、天候、温度などに原因があるとされています。

樹木の薬害については、野菜類に比べると解明が進んでいないと言うのが現状です。

長雨なあとや高温のときには、薬剤の規定濃度の上限で散布したほうが安全です。

規定濃度が1000〜1500倍なら、1500倍に薄めて散布しましょう。









2023/10/22

カビ(菌類)によって起こる樹木の病気 No,662

 カビは植物の最大の敵

カビはPH2.0~8.5の広い範囲で生育し、細菌は大部分が中性付近のPHで最も生育する。

また、腐敗菌はPH5.5以下では生育が殆ど抑制される。


カビは人間の病原菌となることはあまりありませんが、植物の病原としては一番多いものです。

カビは酵素と言う強力な武器を持っているため、植物細胞の頑丈な細胞壁を溶かして侵入することができます。

カビは担子菌類と★子のう菌類に分けられますが、子のう菌と言うのはキノコの仲間で、★有性生殖によって担子胞子と言う胞子を作って増殖します。


★子(し)のう菌類とは、有性生殖によって子のうと言う袋の中に子のう胞子と言う胞子が作られるものの仲間です。

★有性生殖(ゆうせいせいしょく)とは、二つの異なる個体の生殖細胞が結合することによって、新しい遺伝子の組み合わせを作り出し、多様性を生み出す方法のこと。


カビによる病気は種類が多く、症状も斑点のできるもの、カビが生えるもの、枯れたり萎れたりするものと様々です。


♣斑点の形による病名


角斑病(かくはんびょう)
葉脈に区切られて多角形になる
ハナズオウ、ユウカリ

円星病(まるほしびょう)
円状の小さな斑点が多数できる
ナラ類、ソウジュ

褐色円星病
斑点が褐色のもの
クチナシ、カエデ

円斑病(えんはんびょう)
斑点が大きい円状のもの
アラカシ、コナラ

輪紋病(りんもんびょう)
病斑や子実体が同心円状
シンジュ、ポプラ類、ニセアカシア

斑紋病(はんもんびょう)
斑点の形や色が不鮮明なもの
クロバイ、ネズミモチ、シャシャンポ

葉枯病(ようこびょう)
セプトチス、ペスタロチア
葉先や葉の縁に大きくできるもの
クヌギ


穿孔(せんこう)病、穿孔褐斑病
斑点に穴のあくもの
サクラ、サクラ属樹木

斑点病
グミ、アオキ、ヒュウガミズキなど

葉斑病(ようはんびょう)
ツツジ、シャクナゲ


★斑点の色による病名

褐斑病=マサキ、カナメモチ、ケヤキなど

白斑病(はくはんびょう)=シャリンバイ、アラカシ

灰斑病=マサキ、ハコネウツギ

黄斑病(おうはんびょう)=ヤツデ

紅斑病(こうはんびょう)=ナンテン

白葉枯病(はくようこびょう)=マツ、クスノキ、イヌマキ

♣子実体の特徴による病名

◈子実体(しじつたい)とは、菌類において胞子が形成される部分が集合して塊状となったもの。

いわゆるキノコは大型でよく目立つ子実体である。

葉スス病
斑点の表面に黒いすす状につくもの
マツ

裏スス病
斑点の表面に黒いすす状につくもの
ヒメユズリハ

スス葉枯(ようこ)病
斑点の表面に黒いすす状につくもの
マツ、ナラ類、アラカシ

スス紋病
斑点の表面に黒いすす状につくもの
ブナ、イヌシデ

黒やに病
黒い光沢のある扁平な円状のものができる
ビロウ、ササ類

黒紋(こくもん)病
黒い光沢のある扁平な円状のものができる
カエデ、ヤナギ、モチノキ

白カビ葉枯病
斑点の表面に白い胞子の塊(かたまり)をつくる
クルミ

ゴマ色斑点病
黒いゴマ粒状の塊を密生する
ナシ科樹木


◉カビによるいろんな病気

病名  /発生箇所  /症状  /発生樹木

炭素病 /葉、枝に発生 /葉に灰白色の病斑、枝に黒い病斑、果実に黒い斑点ができ、広がって腐る /アオキ、アジサイ、コデマリ、サザンカなど

ソウカ病 /新葉や新梢、新芽に発生/はじめに円形の小斑点を生じ、やがて灰褐色になり、盛り上がってくる。
病斑が破れて葉に穴が開いたり、葉が変形したりすが枯れてしまうことはない。
/ヤツデ、ザクロ、アケビ、イチジク、クルミ、ウメ、ニンジンなど

トウソウ病 /新梢や葉に発生 /葉の中央に穴があく。白色の小斑点を密生したり、褐色や灰褐色のカサブタ状斑点をつくるもの、黒い斑点をつくるものなどある。 /ケヤキ、マサキ、コウゾ、ポプラ類、ヤツデなど

サビ病 /葉の表面、裏面、葉柄、幼茎、枝幹に発生 /黄橙色、またはサビ色の粉のようなものを多量に生ずる。
2つの宿主の間を往復して生活するものが多い。
/ビャクシンとナシ、クロマツとサンショウなど


モチ病 /新葉、花、芽に発生 /花や若葉の一部または全体が大きく膨らむ。
はじめ淡い緑色で光沢があるが、すぐに表面が白い粉に包まれる。
/ツバキ、サザンカ、ツツジ、シャクナゲ、クロキ


天狗巣病(てんぐすびょう) /幹、枝に発生 /幹や枝の一部からたくさんの不定芽をだす。
次に小枝が茂って小枝の塊ができる。
ウイルスによるものや、非伝染性の遺伝的突然変異によるものがある。
/サクラ、カンバ、ハンノキ


マツコブ病 /枝、幹に発生 /枝や幹の一部にはじめ豆粒くらいの膨らみができ、年毎に大きくなってコブになる。
コブの部分はもろく、害虫等が侵入しやすくなる。
サビ病菌の仲間により起こる。
/マツとブナ科の樹木のナラ、クヌギ、カシワなどを往復して生活する。


タフリナ病 /新葉、新梢、幼果に発生 /局部が肥大し、天狗巣ができたり、葉が縮んだりする。
患部の表面に白色または灰色の粉がつく。
鮮紅色(せんこうしょく)や黄色の場合もある。
やがて患部は褐色になり落ちたり、枯れたりする。
/ゼンマイ、ハシバミ、ハンノキ、スダジイ、モモなど

サクラ天狗巣病
タフリナ属の菌は高等植物の寄生菌で、寄生した植物の枝や葉に天狗巣病など様々な症状を起こす原因となる。

サクラ天狗巣病はカビの一種のタフリナ菌が原因で起こる伝染病で、ソメイヨシノはこの病気にとても罹りやすく、発病した枝を放置したままにしておくと花が咲かなくなり、やがて樹全体に広がり枯れてしまいます。

多くのソメイヨシノは、この病気によって寿命が短いという原因となっています。


葉ふるい病 /葉に発生 /針葉樹の葉に褐色の斑点ができ、酷いときは、葉の色が一見して悪いとわかる。
病気が進むと、病気の葉は枯れて落葉することから別名落葉病とも言う。
/アカマツ、クロマツ、モミ、ヒノキ、サワラ、アスナロ

リゾクトニア病 /多様だが主に地下部に発生 /植物の幼弱な時期や老衰期に侵す多犯。
地際部に茎腐れ、葉に病斑、根がしらや根の中央部が腐る。
茎が腐ったり芽が枯れたりする、その他、菌糸が絡みついたりする。
/広範で多様な植物、ラジノクローバー、ダイズ、トウモロコシ、イネ、サトウダイコン、ニンジン、ジャガイモ、樹木の苗、牧草類など

リゾクトニア属菌は、野菜類だけでなく普通作物、花木、牧草、材木などを侵します。

また、病原菌自身にも多くの系統があり、被害を受ける種類や病徴は複雑です。

野菜類では苗立ち枯れ病として、代表される病気です。

病原菌はカビで日本国内での問題の菌は、リゾクトニア·ソラーと呼ばれています。

リゾクトニア菌は、黒褐色化した古い有機物から栄養を取り、増殖することはほとんどできません。


新しい有機物のみから栄養を取って繁殖しています。








2023/10/21

樹木の五大病気⑤スス病 No,661

スス病

スス病は、アブラムシ類やカイガラムシ類などの吸汁性害虫の、排泄物を栄養として繁殖する病気です。





従って、アブラムシ類、カイガラムシ類のつく植物のほとんどに発生します。


主として葉に発生しますが、枝や幹に発生することもあります。

葉の表や裏、枝、幹の表面が煤(すす)を被ったように真っ黒になった植物を見たら、スス病だと考えてよいでしょう。

黒い煤のようなものは病原となるカビの菌糸です。

このカビに覆われると酷く汚れるので、美観が損なわれてしまいます。


スス病の発生している植物には、必ずアブラムシやカイガラムシ、キジラミ、コナジラミ等が寄生しています。


葉の裏や枝、幹を観察するとこれらの害虫が見つかるはずです。

一旦発生したスス病は、虫が寄生している間は症状が消えることはありません。


★発生しやすい植物

サツキ、ツツジ、シャクナゲ、ツバキ、サザンカ、カエデ類、ケヤキ、マツ類、カキ、ミカン、キク、ベゴニア類

その他、アブラムシ、カイガラムシのつく樹にはすべて発生します。


♣特徴

スス病は大変多くの植物に発生しますが、このカビは植物に直接寄生するものと、その植物に寄生しているアブラムシやカイガラムシなどの、害虫の排泄物を栄養として生活するものがあります。


ほとんどは害虫の排泄物を栄養として生活するものです。

4月~10月の害虫繁殖期に最も多く発生します。

また、温室などでは一年中害虫が活動できるため、冬でもスス病が発生する事になります。


虫についたスス病の場合、カビは植物体の表面を覆っていますが、布で拭いたり剥がしたりすると植物体は全く傷ついていません。


直接植物に悪影響を与えるとは言えませんが、あまり酷いと呼吸作用が妨げられる事になるので、薬剤による治療が必要となります。



◉予防対策

スス病そのものにはジネブ剤やチオファネートメチル剤、ダイセン、ダイファー、トップジンM等を散布すると効果がありますが、しかし効果は一時的でまたすぐに発生してしまいます。


根本的にスス病の原因となる害虫を駆除することが重要です。

害虫を退治しないと再発の恐れがあります。

害虫の排泄物を無くしてしまえば、スス病は自然に消滅して行きます。

害虫にはスミチオン、オルトラン、マラソン等を散布して害虫を駆除します。

冬の間には、冬期限定薬剤の石灰硫黄合剤を1~2回散布すると効果的です。


日陰で風通しが悪く、湿気の多い環境では害虫が発生しやすくなるので、混み入った枝を切り取ったり、落葉を集めて焼却したりして環境を良好にする。








2023/10/18

樹木の五大病気④褐斑病 No,660

 褐斑病(かっぱんびょう)

植物の葉に発生する病気のうちで、斑点性病害の中で最も代表的な褐色斑点性の病気です。

褐斑病は葉に褐色から黒褐色の班紋ができる病気の総称です。




斑点性の病気は病原菌の種類も多く、症状も様々なので病斑の色調や形によってたくさんの名前が付けられています。


褐斑病以外に、角斑(かくはん)病、黒点(こくてん)病、白星(しらほし)病、赤星(あかほし)病などがあり、葉に茶色から黒褐色の班紋ができていたら褐斑病と考えられます。


たくさんの植物に発生する褐斑病は、菌の種類も様々ですがほとんどの病原菌はカビです。


発生する時期は4月~10月で、特に6月くらいの温度の高い高温多湿時に多く発病します。


病状の進め方は、はじめは葉に褐色から黒褐色の小さな斑点が生じ、これが次第に大きくなり五ミリくらいの病斑に拡大します。

病気が進むと樹の下の方から葉が枯れ、落葉することもあります。


♣発生しやすい植物

アオキ、ツツジ類、バラ、ボタン、カイドウ、カキ、ナシ、リンゴ、キク、ケイトウ、コデマリ、シャクヤク、ハイビスカス、ホウセンカ、ライラック、アスパラガス、エンドウ、キュウリ、シソ、レタス、ノギク類など他多数

★特徴

黒斑病と症状が似ていますが、発生する時期も対策も一緒なので間違えても問題ありません。

どちらかと言えば、病斑の縁が曖昧なのが褐斑病で、はっきりしているのが黒斑病と覚えておけば間違いないでしょう。


病原菌は病葉(わくらば)の上で越冬し、雨で伝染します。

連作したり管理が悪く、不要なものを植えたままにすると発病しやすくなるので注意します。

また、湿度が高いと発病しやすくなります。



★予防対策

病葉を発見したらすぐに摘み取り焼却処分

古株でもう必要がないものは冬の間に処分し、鉢植えの用土は新しいものにします。


じめじめしていると発病しやすいので、剪定をして風通しを良くし、陽がよく当たるようにする。


感染の初期はダイセンやマンネブダイセン液等を10日おきに2~3回散布しておきます。


水媒感染を起こすので水やりのとき、葉に直接水をかけないようにきをつける。








2023/10/16

再開発が招く都市部高温化(神宮外苑問題) No,635

ヒートアイランド(都市部高温化)

神宮外苑問題 


人々が快適な生活を送る上で、樹木の果たす役割は大きなものがあります。

大気中の二酸化炭素を酸素に変えて、空気をきれいにしてくれるだけではなく、美しい景観で人々の目を楽しませ、心を豊かにし、生活に潤いと活力を与えてくれる存在です。

人々は樹木の重要性を昔から深く理解して、これまで樹木の生育にとって理想的な環境作りを進めて来ました。

しかし近年、公共施設開発などのために、自然環境を維持してきた森林帯まで切り拓く計画がなされ、豊かな自然が失われようとしています。



1000本近い樹木の伐採計画がある明治神宮外苑地区の再開発について、東京都知事(現、小池百合子)をはじめ東京都は、「新たな植樹などで緑は増える」と繰り返し説明している。

この地区の樹齢100年級の巨木が切られ、代わりに植えるのは若木のため、木の本数は増えてもボリュームは減り、緑の質(機能性)は大きく変わってしまいます。


地球温暖化が叫ばれる中、記録的な猛暑が続くと気温上昇は避けられません。


専門家からの反発する声が上がるのは当然です。



★引用、転載
中央大の石川幹子教授が調べた結果、伐採される可能性があるとされる樹木(上写真)

2022年4月13日
東京都新宿区霞ヶ丘町
大林太一撮影



大木を切り倒し、より多くの植樹をしたとしても、100年の大木と若木では樹木の冷却効果のレベルは全く違うものになり、緑の持つ効果は増えるどころか確実に損なわれることは間違いないことでしょう。

木陰は直射日光を防ぎ、夏場のアスファルトの路面温度は50度を超えることもあるが、木陰では20度程下がります。

さらに樹木は、表面が温められると葉から水蒸気を放出し、その際に周囲の熱を奪う特性があります。

このような樹木の性質がヒートアイランドの緩和に役立つのです。

木が大きい方がその効果も大きくなるのです。


★ヒートアイランドとは、都市部の気温がその周辺の郊外部に比べて高温を示す現象で、都市化が進むほどヒートアイランドも強くなり、高温の長時間化や高温域の拡大が起こる。


   「ヒートアイランド現象」


新しく植えた若木が、現状の木と同じ冷却効果を発揮するのは100年後とされる。

神宮外苑の再開発では高層ビルを建てる計画で、コンクリートは熱をため込み、ビルの空調設備の排気熱などで都市部を温めるため、ヒートアイランドの一因となる。


これは天然のクーラーを減らし、ストーブを作るようなものであり、樹木の自然機能破壊の何物でもない。


植物の葉は二酸化炭素を原料として、糖と酸素を作り出していることは多く知られていることだろう。


人や動物は酸素を吸収して二酸化炭素を吐き出して生きています。

また、糖は全ての生命が活動するためのエネルギーになります。

植物の葉は、地球上で動物が生きて活動していくために最低限必要な条件を作り出すと言う、大変重要な働きをしているのです。

植物と動物の共存は必要不可欠なことなのです。



樹木の減少は自然界でも温暖化を招き、植物は衰退していく。

やがて荒野となる事にも繋がって行くのです。



多くの樹木を伐採するなどの問題がある、明治神宮外苑の再開発について、周辺住民ら59名が東京都に対し事業認可取り消しを求めるいる。


神宮外苑訴訟の第1回口頭弁論が6月29日、東京地裁で行われた。



「訴訟の報告集会で報告する原告ら」

原告らは小池百合子知事に対し、本当に適切な基準に従って認可したのかと問うている。


★明治神宮外苑の再開発では高さ3㍍以上の樹木1904本のうち、743本が伐採されるほか、256本が移植される計画です。


オンライン署名
https://chng.it/xh28gMHpQS


◉神宮外苑問題 ブログで発信
漫画家 ちばてつやさん




2023年10月16日しんぶん赤旗より抜粋


ちばてつやのブログ
『ぐずてつ日記』



♣サザンオールスターズ「Relay~杜の詩」




波紋が広がっている明治神宮外苑の再開発。

故·坂本龍一氏や村上春樹氏などの著名人が疑問を呈し、見直しを求める署名も多く集められている。

この動きに「サザンオールスターズ」も反応。

シングル「Relay~杜の詩」が話題を呼んでいる。




坂本龍一氏からインスパイアされたと明かした桑田佳祐さん。

未来を★憂う時代に 身近な場所で何が起こってるんだ?

★麗しいオアシスが

アスファルト·ジャングルに変わっちゃうの?

そんな内容の歌詞は痛烈と言えるだろう。




★憂う(うりょう)の意
思い悩んだり、心配すること、特に将来や行く末などのことが気掛かりである場合などに使われる言葉で、「愁う」とも書く。

★麗しい(うるわしい)の意
よく整って美しいこと