緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2020/07/31

カナメモチ (要黐) No.240

カナメモチ バラ科



アジアとアメリカに60種ほど分布し、日本には3種が自生する。
別名アカメモチ

本州の静岡県以南から四国、九州地方生け垣などによく植えられているレッド·ロビンはカナメモチとオオカナメモチの雑種




自生の木を見る機会は少ないですが、山地の沢沿いなどに生えている。

小さな白い花が集まって泡立つように咲く「枕草子」に出てくるソバノキは本種で、花をソバの花に見立てたものという。

花期は5月から6月果実は12月頃に熟す寒さに弱いので関東地方より北では成育は困難です。

◉肥料
肥料はあまり多すぎないように与えます。

2月頃、鶏ふんか油粕に骨粉を2~3割混ぜたものを、根元に埋め込むか!リン酸カリ分の多い化成肥料を、根元に穴を掘って埋め込む程度で十分です。

肥料を与える時には、その分量や場所に注意が必要です。

肥料の成分が多すぎたり強すぎたりすると、肥料焼けを起こします。


◆植え付け、移植
日当たりがよく乾燥しない土質が適しています。

特に乾燥には弱いので、土質には注意が必要です。

根づきが悪く寒さにも弱いので、幼木のうちは風よけを立てて寒風を防ぐことが必要です。

垣根に新しく植え付ける場合には、ポット仕立ての苗を購入し、スコップで植え穴を掘り、腐葉土をよく混ぜて2年生の苗ならば、約30㎝間隔くらいで植え込みます。

また、長年植えたままの成木を移植する時は、前年に根回しをしておき、細根を出させてからでないとうまく根付きません。

前年に根切りをして細根を出させます。

この場合もよく腐葉土類をすき込んで、大きめの植え穴に水ぎめで植え込みます。

植え穴に水をたっぷり入れて、土を埋め戻してからさらに水を注ぐ
枝葉も全体に切り詰めて、樹勢の衰えを防ぎます。

時期としては4月から5月が最も適しています。9月から10月中旬も行えます。


(オオカナメモチ、葉や花序がカナメモチより大きい)

◉病気
※褐斑病
葉に褐色から黒褐色な斑紋ができる病気の総称です。

はじめは葉に褐色から黒褐色の小さな斑点が生じ、これが次第に大きくなり5ミリくらいの病斑に拡大します。

病気が進むと樹の下の方から葉が枯れ、落葉することもあります。

発生する時期は5月から10月で、特に夏の初めの高温多湿時に多発する。

病原体のほとんどはカビです。

デンドロビウム(洋ラン)の褐斑病だけは、病原体がバクテリアです。

病原体は病気にかかった葉や、病気になって落ちた葉の上で越冬し、翌年の春に風や風に含まれる水滴などに運ばれ、他の植物に感染します。

他に水媒感染のように雨水に病原体が溶け込み、その水が跳ね返ることによって、感染することもあります。

★治療
病気にかかった葉を見つけたら取り除きましょう。

また、病葉に直接水をかけないように気をつけます。

薬剤は発生期の5月頃から10月まで、ダイセン、ベンレートなどを月に2回くらいの割合で散布しましょう。

この病気は連作したり、管理を怠ると発生しやすくなります。

多湿を防ぐために、要らない古株を冬の間に処分をし、せん定して風通しをよくし、日がよく当たるようにしましょう。

◉ゴマ色斑点病
葉、果実、枝などに直径2~5ミリのゴマ色(黒から黒褐色)の病斑を生じます。

病気が酷くなると葉が落ちてしまい、病気にかかったあとにできる葉も次々に発病します。

葉の裏側には、黒色の分生子層(ふんせいしそう)=発芽のもとになる胞子の塊ができます。

発生時期は4月から9月です。

病原体はカビで、分生子を作るのが特徴です。

このカビは1本の剛毛が生えていて、一見したところ虫のように見えます。

病斑の上で冬を越した分生子が春になると発芽して、空気感染や水媒感染します。

★治療
被害部を見つけたらすぐに除去して処分します。

4月から6月にかけてトップジンMやベンレートを数回散布しましょう。

前の年に病気の発生した場所での連作はなるべく避けましょう。

水媒感染を防ぐために、敷きワラや風通しをよくすることも大切です。

◉害虫
※アオバハゴロモ
葉に綿のようなものがつきます。

綿状の長い毛のようなロウ質物を体につけた虫がいて、脱落したロウ質物が樹幹を白く汚します。

年1回の発生で、枯れた枝に産み落とされた卵で越冬し、5月頃に幼虫が発生します。

成虫は7月頃から現れ、9月頃まで成虫、幼虫が混生しています。

※ダイアジノン、ディプテレックス、デナポンなどの薬剤を散布する。

密植された垣根や、枝の混んだ樹木に多く発生、風通しの悪い庭にもよく見かける。

高温、乾燥の時に多発しやすい。

※アブラムシ
4月から9月に多く発生、薬剤を散布して駆除します。

薬剤には弱いので、ほとんどの殺虫剤が効きます。

※ハマキムシ
5月から8月に発生、葉を巻いて中に隠れているので、葉を開くか葉ごと除去して捕殺します。

薬剤がかかりにくいので、効果は低いですがスミチオン、アセフェートなどは多少効果があります。

※トビモンオオエダシャク
大型のシャクトリムシで色は灰褐色、姿は枯れ枝によく似ています。

老熟幼虫は9㎝くらいの大きさになります。

1年に1回の発生で、幼虫は4月から8月に葉を食害します。

枯れ枝とよく似ているので見つけにくい害虫です。

発生量が多い時は、発生初期にディプテレックス、スミチオンなどを散布しましょう。

※ミノムシ
ほとんどすべての樹木に加害します。

幼虫は7月頃に現れて、10月頃まで葉や枝を食害します。

ミノムシのまま越冬して、翌年の4月から5月に再び食害してから成虫になります。

メスは成虫になってもミノの中で一生を過ごします

発生量が少ない時は捕殺します。

発生量が多い時には、薬剤を散布しますが、ミノがあるため効果が低いので、なるべく幼虫がチイサイ時期に散布しましょう。

薬剤はディプテレックス、カルタップなどが適しています。

越冬中のミノムシは目につきやすいので、見つけたらこまめに捕殺して、春からの被害を減らしましょう。




◉せん定
生け垣として活用されることが多く、年に3回、3月、6月、9月に刈り込みます。

9月に刈り込むことにより、秋にも新芽の赤い色が楽しめます。

樹形が出来上がっている木や生け垣は、軽く頻繁にせん定します。

誤って10月以降に行うと、冬までに充実できず、寒さに負けてしまうことがあるので、注意が必要です。







2020/07/30

モッコク (木斛) No.239

モッコク ツバキ科 常緑広葉樹

モチノキ、モクセイとともに3大庭木の一つに数えられます。

沿岸の山地に生え高さ15㍍ほどになる。

6月~8月に黄色の花が咲きますが、ツバキ科の植物なのに花は小さくあまり見栄えはしません。

秋に赤い実がなり小鳥がよく集まります。

庭木として栽培されることが多い樹種です

日当たりがよく、排水のよい肥沃な土地が適しています。

ただし、強い直射日光の当たる場所は避けてください。

大気汚染や潮風にも強い庭木で、成木は寒さにも耐えますが、幼木は寒さに弱いので防寒対策をしてください。




★樹勢が衰え葉に元気がない
樹勢が衰えている時には、根に注意し、根詰まりを起こしているようであれば、細根の更新が必要です。

根元に放射状の溝を4本くらい掘り、堆肥などを埋め込みます。

★花が例年と比べて多く咲く

多くの樹木で、樹勢が衰えた時まるで最期を飾るように、花を咲かせる事があります。

原因は不明ですが、種を残すために花を咲かせ、実をつけるのだと言われています。

モッコクはあまり花をつける樹ではありませんから、花が例年より多すぎるときは、樹勢が衰えていないか確認し、肥料を与えましょう。

◆肥料
寒肥として、2月に鶏ふんか油粕を根元に埋め込みます。

◉病気
※炭素病
葉の症状は、初めに暗黒色の円形の病斑が現れ、病状が進むと灰白色となり病斑に小さな黒い粒を生じます。

雨が降った後や湿度が高い時に、この黒い粒から鮭肉色(けいにくしょく)の粘液(胞子粘塊)を出します。

病気にかかった葉や枝は見つけ次第処分、発生の多い6月~7月  9月~10月には月に1~2回の割合でダイセン、マンネブダイセン、ベンレートなどを散布。

樹勢を弱めると発病するので、寒害、日焼けなどに気をつけ、樹勢を強く保つようにする。

また、風通しが悪いと病気になりやすいので、せん定して風通しをよくする。

※スス病
アブラムシ類やカイガラムシ類などの害虫な排泄物を栄養として繁殖する病気で、病原体はカビです。

一年を通して発生しますが、特に虫の繁殖期である4月から10月によく発生します。

カビの繁殖が進み葉や幹の全体が真っ黒く覆われて、植物の呼吸作用が妨げられます。

病状の酷いときは薬剤による治療を行う方がよいでしょう。

ダイセン、ダイファー、トップジンMを散布。

スス病の原因となるカイガラムシなどの、害虫を退治しないと再発しやすい。

日当たりや風通しをよくし、害虫を発生させないような環境を作ることが予防になります。


◉害虫
※カイガラムシ
スミチオン、オルトラン、マラソンなどの薬剤を散布。

成虫になると薬剤が浸透しにくいので、捕殺する。

風通しが悪く、日当たりの悪い所を好むので、適度に枝のせん定を行い、風通しをよくしてやると発生が減ります。

樹勢が衰えるので早めに駆除しましょう。


※アブラムシ
薬剤を散布して駆除しますが、アブラムシは薬剤には弱いので、ほとんどの殺虫剤が効きます。

アリと共生関係で、アブラムシを運ぶ。

適度なせん定をして風通しをよくすることも予防。

※ハマキムシ(モッコクハマキ)
6月から10月にかけて発生し、被害は9月頃が多くでます。

葉を巻いて中に隠れているので、直接薬剤がかかりにくいので効果は低いが、スミチオン、アセフェートなどは多少効果がある。

被害を受けた葉を見つけ、葉を開くか、葉ごと除去して捕殺します。

冬の間に綴られた葉を見つけ、幼虫を駆除しておきます。


◉せん定
せん定時期は6月から7月、10月から11月頃。

幼木のうちはせん定せずにそのまま育てます。

樹高が2㍍ほどまで生長したら、不要な枝を落として樹形を整えます。

あとは、年に一度枝先をせん定して、日照や風通しをよくし、中まで日が入るようにします。

枝先が車枝になりやすいので、車枝を見つけたら2~3本残して整理します。

一般的なせん定は6月から7月に行い、秋は古葉を取り除く作業を中心に行います。






2020/07/29

ゲッケイジュ No.238

ゲッケイジュ (月桂樹)クスノキ科

別名ローレル 常緑広葉樹

原産地=地中海沿岸とカナリア諸島に一種ずつ分布。

濃緑色で革質(ひしつ)の葉をつけ、枝と葉が芳香を発し、葉は料理の香り付けに使われます。

日本には、明治時代に渡来しました。

雌雄異株で日本には雌株は少ない。

耐寒性を考え、北関東より南の方が育てやすい。

春には黄色く小さな花を多くつける。




果実は秋に熟して黒紫色(こくししょく)になり、薬用にもなる。

地中海原産なので、暖地性の気候を好みます。

日当たりのよい場所を好み、冬の乾燥には弱いので注意しましょう。

特に北風の当たる場所では、関東地方でも枝先が枯れる事があります。

いろいろな樹形に仕立てやすく、自然樹形の円錐形だけでなく、円筒形に仕立てたり生け垣にもできる。

◉病気
うどん粉病
うどん粉病は、白いカビが若い葉や若い茎、新芽などの表面にうどん粉をまぶしたようにびっしり生える病気の総称です。

病原体の種類はたくさんあり、そのほとんどがカビです。

カビの種類により寄生する樹種が決まっていて、そのカビが他の種類の樹に寄生することはありません。

感染経路は空気による感染がほとんどです。

発生する時期は植物によって異なりますが、高温(20度前後)多湿を好み4月から10月に発生します。

病気は見つけ次第10日毎にモレスタ、トップジンM、ベンレート、水和硫黄剤などを散布しましょう。

うどん粉病は、チッソ肥料を与え過ぎると発生しやすくなります。

チッソ肥料を減らし、カリ肥料を多めに与えましょう。

※カリ肥料=塩化カリウム、硫酸カリウム等その他。

※樹木の場合は、枝で越冬している菌糸を殺すため、1月から2月に石灰硫黄合剤を月に1~2回散布するのも効果的です。

◉スス病
ゲッケイジュは香りのせいか害虫が多くつきます。

特にカイガラムシ類は複数の種類が発生し、スス病を併発するので注意が必要です。

スス病は、アブラムシ類やカイガラムシ類などの、吸汁性害虫の排泄物を栄養としているので、植物に直接影響を与えることはありません。

しかし、カビの繁殖が進み葉や幹の全体が、真っ黒に覆われてしまうと、植物の呼吸作用が妨げられます。

病状の酷いときは、薬剤による治療をした方がよいでしょう。

スス病にはダイセン、ダイファー、トップジンM等を散布しましょう。

しかし、スス病の原因となる害虫を、退治しないと再発してしまいます。

スミチオン、オルトラン、マラソンなどを散布して害虫を退治しておきましょう。

予防法は、植物に寄生する害虫を発生させないような、環境を作ることです。

そのためには、日当たりや風通しをよくすること、冬に落葉した葉を処分することが大切です。

また、冬の間に石灰硫黄合剤を1~2回散布すると効果的です。


◉害虫
※アブラムシ
薬剤を散布して駆除しますが、樹木では適度なせん定をして風通しをよくする。

※カイガラムシ
スス病を併発します。
幼虫の時期なら殻がまだ出来上がっていないので、スミチオンなどを散布します。

成虫になると、薬剤は浸透しにくいので、効果があまりないので捕殺します。

また、冬場ならマシン油乳剤が使えますので、成虫でも駆除できます。

風通しが悪く、日当たりの悪い所を好むので普段から、適度に枝の手入れをして、風通しをよくしてやると発生が減ります。

※ハマキムシ
どの種も葉を巻いたり、何枚かを綴り合わせて葉の中に隠れ、中から葉を食害します。

4月から10月頃に発生して、7月から8月に最も多くの被害がでます。

この虫は巻かれている葉の中にいるので、被害を受けた葉を見つけ、葉を開くか葉ごと除去して捕殺します。

常緑樹では、冬の間に綴られた葉を見つけ、幼虫を駆除しておきます。

※テッポウムシ (カミキリムシの幼虫)
カミキリムシの幼虫は別名テッポウムシと呼ばれます。

成虫は見つけやすいので捕殺します。
成虫が産卵するときに幹に傷をつけるので、傷跡を探してその部分を切り出すか叩いて圧殺します。

食入口を見つけた場合は、穴にスミチオンなどを注入して穴を塞ぎます。

4月の発生時期に、サッチューコートやスミバークなどの薬剤を散布すると効果的です。

しかし、大部分は健全木には加害しないので、樹木の健康を保つ事が一番の予防となるでしょう。

※チャミノガ
代表的なミノムシのひとつです
幼虫は7月頃に現れて、10月頃まで葉や枝を食害します。

ミノムシのまま越冬して、翌年の4月から5月に再び食害してから成虫になります。

雌は成虫になっても蛾にはならずに、一生をミノの中で過ごします。

越冬中の見付けやすいは目につきやすいので、見つけたらこまめに捕殺して、春からの被害を少なくしましょう。

発生量が多い時は、薬剤を使用しますがミノがあるため、効果が低くなるので、なるべく幼虫が小さい時期に散布しましょう。

薬剤は、ディプテレックス、カルタップなどが適しています。




◉植え付け
4月下旬から5月と7月から10月が植え付けの適期。

植え穴には堆肥などをよくすき込んで、大株の時には枝を切り詰め、支柱があると後の手入れが楽になります。

接ぎ木もできますので、その場合は7月から8月上旬に行います。

◉肥料
元肥として、1月から2月に油粕と化成肥料を混ぜて、株回りにばら蒔くか埋め込みます。

追肥として、8月中旬から9月中旬に元肥と同じように与えます。


◉せん定
6月下旬から7月に行います。
萌芽力の強い樹なので、少し強く切っても平気なにで、刈り込みは比較的容易です。

徒長枝や混み合った枝、ヤゴ(ひこばえ)を中心に、日当たりや風通しが良くなるようにせん定します。

また、暖かい地方の場合は、10月から12月上旬の晩秋にも行えます。








2020/07/27

デンドロビューム 洋ラン No.237

デンドロビューム  

洋ラン





一般に園芸店でよく見かける種類は、ノビル系というインド北部から、タイ北部に自生している種類を主にして交配したものです。

この種類の特徴は、他のランに比べて原種が多くこれらを、交配してたくさんの園芸品種ができていることです。

小型から大型まであり、花色も黄色、ピンク、赤系と豊富です。

開花期間も長く主として、秋の終わりから冬~春まで咲くものが多くあります。

※一部の品種で夏咲きのものもある。

原産地は東南アジア、オーストラリアで、日本にあるセツコクもこの仲間です。

他のランに比べてやや低温で育ち、乾燥に強い着生種ですから鉢も小さめで育て、一部の品種を除けばふつう家庭でも育てられます。

◉病気

黒斑病
秋の長雨など低温で多湿になると、黒い斑点ができやがて大きくなって見苦しい葉になります。

風通しをよくし、雨などを当てないようにして、鉢を乾燥気味にさせます。

また、屋外から室内に急に取り込んだりしても黒斑病になります。

少しずつ室内環境に近づけるよう、ならしてから取り入れるようにしましょう。

梅雨時にウイルス病が発生したら他の株と離しましょう。

◆害虫

★ナメクジは屋外で生育中に新芽をよく食害します。

なるべく棚上など風通しのいいところに置き、夜間に出てきた時捕殺するか、ナメクジ駆除剤で退治します。

日中では、鉢底に潜んでいる事があるので、見つけたら駆除します。

★生育期に風通しが悪いと、カイガラムシ類が発生します。


オルトラン水和剤やスミチオンなどを、5月から8月にかけて月に1~2回散布します。

薬剤の効果がない場合は、捕殺します。

★高温期ではハダニ類が発生します。


乾燥が激しい時は、葉に水をかけたりハダニ退治専用のケルセン水和剤などを散布して駆除する。

◉置き場所

春から秋にかけて屋外で育てます。

強い日光に当たる方が丈夫なバルブが育ちます。


7月から8月の暑さにも強いですが、強い西日は避けるようにしましょう。

着生ランなので、木に吊るしたり、地面に直接鉢を置かないようにし、通気性のよい棚などに置きます。

10月頃になったら水を控えめにして、雨水に当たらないように軒下などに移し、徐々に低温に慣らしてから11月下旬には室内に移します。

冬の最低越冬温度は5℃前後ですが、8℃~10℃が理想的です。


◉水やり

5月から9月は屋外で雨に当て、晴天の続く時は毎日一回水を与え、曇っている日が多ければ、株の具合を見ながら与えるようにします。

10月から11月は週に一回程度、冬から4月の開花中または室内温度が10℃以下の時は、軽く霧吹きするか、暖かい日を選んで午前中に少量与えます。

新芽が成長し始める3月末頃からは、週に1~2回、株の生育を見て与えます。

◉肥料

新芽が伸びる4月から6月には、油粕と骨粉を同じ量に混ぜ置肥します。

または、ラン用の粒状化成肥料やマガンプKなど、リン酸カリ分の多い肥料を与えましょう。

7月以降は花芽をつけるので、秋から冬にかけては肥料は必要ありません。

よく生育する4月から6月を除き、小さめの鉢で育てるため肥料の与え過ぎは根の生育によくありません。

※与え過ぎないように注意しましょう。

◉繁殖

株分け、高芽とり、バルブ伏せなどができます。

株分けは大鉢になりすぎたとき、花が終わり暖かくなった春に3~4本ずつに分けます。

根を傷めないようにして、古い水ゴケを取り除き株分けします。

植え付け後は半日陰で育てます。

1週間前後は水を与えず、株分けにより傷んだ根を乾燥させ、回復するまで待ちます。

その後水あげをし、徐々に定期的な水やりを行っていきます。


※デンドロビュームの各部の名称              





★高芽とりは、古いバルブの高いところに新芽が出て小さなバルブができます。

これを丁寧に切り離し、小さな鉢に1本ずつ水ゴケなどで植え込みます。

2年ぐらいすると一人前の株になります。

これはデンドロビューム特有の殖やし方です。

★バルブ伏せは、高芽の出る性質を利用した殖やし方の応用で、茎を1~2節ずつ切り、鉢やパレットに水ゴケを敷きそこに伏せ、または、挿し木をする要領で新芽を出させます。

成長してきたら鉢に植え替えます。







2020/07/26

チッソも自然界で循環   No.236

植物とチッソ



チッソは空気中に体積で約80%含まれる。
常温ては不活性であるが、高温では他の元素と直接化合してチッソ物を作る。アンモニア合成の原料として重要。

化合物は肥料、火薬など用途が広い。

アミノ酸やタンパク質は、生物の体を作っている重要な要素ですが、このアミノ酸やタンパク質を作るためには、炭素とともにチッソが必要です。


ところがチッソは空気の約80%を占めているにも関わらず、ほとんどの生物はチッソを空気から、直接取り入れることができません。

ラン藻植物の一部と、マメ科の植物の根に共生する根粒菌(こんりゅうきん)だけが、空気中のチッソを利用してアンモニアを作ることができます。

これは植物が吸収できる化合物です。

動植物の遺骸(いがい)などによって、含まれているチッソの化合物は、地中の細菌によって植物の栄養となりやすい無機化合物に変えられたり、チッソガスに分解されて大気中に放出されたりします。

植物は、根から吸収した無機チッソ化合物から、アミノ酸やタンパク質などの有機チッソ化合物を作ります。

動物は自分ではこれらの化合物を作り出せないので、植物が作ったタンパク質を取り込んで、いったんアミノ酸に分解し、それぞれ自分に必要なタンパク質に合成し直します。

植物が利用できる無機チッソ化合物という形に変えて、肥料が作られ、チッソ肥料として土壌に与えられているのが、化学肥料です。


チッソ肥料(化学肥料)

※硫酸アンモニア 速効性
アルカリ性の肥料、石灰、草木灰などと混ぜて使用しない。
日数をおく。

※硝酸アンモニア 速効性
他の肥料と混用しない。
貯蔵中は、火気に注意する。

※尿素(ウレア) やや速効

大豆かすと混用しない。

※石灰窒素  速効性
カルシウムを含む。
アンモニア系の肥料と混用しない。
作物に直接接触すると障害が発生するので、追肥としては用いない。
※IBチッソ (イソブチル縮合尿素) 暖効性
科学的に暖効性を持たせた肥料
IBDUともいい、窒素全量28%以上を含む、暖効性窒素肥料である。

粒効果が大きく、大粒ほど肥料効果が遅くなり、細かく粉砕すると尿素とあまり変わらない肥料効果となる。

芝用などでは単肥で使われるが、ほとんどが化成や配合肥料の原料になる。
水稲、畑、果樹など幅広く使用される。




炭素も循環している自然界  No.235


炭素も循環している自然界


動物や植物が吸収して放出した二酸化炭素は、植物の光合成によって糖という有機物に合成されます。

有機物とは、炭素を構造の中心にした物質のことです。

糖は炭素と水素と酸からできている簡単な構造のもので、エネルギーとして利用されます。

これにチッソやリン酸などが加わって、アミノ酸やタンパク質などの複雑な有機物になると、体をつくるのに使うことができます。

小さな節足動物(せっそくどうぶつ)やミミズなどの小動物、またはカビやバクテリア(さいきん)などは、地中で有機物を分解しながら生きています。

中でも、ミミズの役割は重要です。

最初に死んだ植物を食べ、糞として出しますが、この事で有機物が微生物に利用されやすい形に変わり、土に活力がつくとされています。

また、ミミズが土を食べることで、団粒を作るという作用もあるのです。

また、昆虫の幼虫は死んだ植物をかみ砕き分解してくれます。

動物の遺体や糞などの排出物、枯れた植物などに含まれる炭素化合物は、これらの地中の微生物や、小動物の活動によって分解されます。

この時、分解によって二酸化炭素や炭酸塩が作り出され、これがまた循環を続けるのです。


石炭や石油は過去の植物が、光合成によって作り出したものが、化石になって地下に保存されてきたものです。

人間がこれをエネルギー源として燃やすと、二酸化炭素が発生し環境中をめぐるようになります。

一年を通して見ると、植物による二酸化炭素の吸収量と、生物全体の呼吸による二酸化炭素の放出量は、だいたい釣り合いますが、この100年以上に渡る化石燃料の大量消費と、森林の伐採などによって大気中の二酸化炭素は徐々に増加し続けています。

石油、石炭、天然ガスを大量に利用することにより、大気中に二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化イオウ、チッソ酸化物、粉塵などが放出され続けています。

その結果、人間には、気管支炎、ゼンソクなどの呼吸器系の病気が増加しています。

植物への影響は、葉の気孔から有害物質が侵入し、葉の内部構造が破壊されます。

大量の化石燃料の消費と、大規模な森林の伐採により、二酸化炭素の吸収と放出のバランスが崩れて、二酸化炭素が大気中に増え続けているのです。

その温室効果のため、地球の温暖化現象が懸念されています。

空気に混ざっている、イオウ酸化物やチッソ酸化物が大気中で水に溶けると、酸のしずくになります。

これが酸性雨や酸性霧(さんせいむ)として地上に降り、植物の葉に被害をあたえたり、土壌の化学的状態を変化させます。

酸性雨によって、森が枯れるなどの大きな被害が地球規模で、急速に進み全ての生き物に、深刻な状態が起きているのです。






水と植物の関係 No.234

水は移動する資源

地表にある水は、海、湖、川、氷冠(ひょうかん)、氷河、地下水、及び大気中に含まれているものも合わせて、全部で1.9×10の18乗㍑と言われています。

この他に地殻(ちかく)や、マントルに閉じ込められている水があります。

これらの水は、地球が誕生した時から存在してきたものです。

この内の97%が海水で、氷河などの凍った水が2%、残りの1%が陸上生物にとって利用可能な淡水なのです。

降水する水はそのまま蒸発していくわけではなく、土壌に浸透するものや湖や川に入るものもあります。

全体の99%以上は、地下に染み込んで地下水の一部になります。

地下水は何千年もかかって地下の帯水層を満たし、やがて地表にしみ出して、また生物の利用可能な水となるのです。

大気中から降った水は、土壌に染み込み、植物を育てるための必要なものになります。

植物は根から吸った水に、栄養分を溶かして体内に送り、光合成でできた糖分を溶かして、いろいろな部分に送るためにも水を使います。

水分の蒸散によって体温の調整も行っています。

植物は根から吸い上げた水の5%程度しか光合成に利用せず、残りの95%は葉からの蒸散によって、空気中に出ていってしまうのです。

このようにふつう植物は、水の少ないところではよく育ちません。
植物が水不足になると、細胞が大きくなれなかったり、光合成がうまく行われなかったりします。

砂漠に生きるサボテンは枝葉をトゲにかえて、水分の蒸散を抑え茎に水分を蓄えています。

昼間は気孔を閉じて光合成に使う
二酸化炭素は昼間に取り込むなど、環境に適応しています。

植物が生きて行ける環境が壊される事は、人類が生きて行くため必要な水源まで壊してしまう事に繋がって行くのです。






2020/07/25

シンビジューム No.233

シンビジューム

東南アジアやオーストラリアの熱帯や亜熱帯地方が原産地。

中には東洋ランとの交配によって生まれた、小型で寒さに強いものや、芳香性のあるものもあります。

開花期は主として冬から春ですが、一部に秋咲きもあります。

地生種がほとんどですが、熱帯の樹木上で着生し、下に垂れ下がって小輪の花が無数につく種類もあります。

また、花茎は直立が一般的ですが、弓形になるものもあります。

品種は大きく分けて、大輪系、中輪系、小輪系があります。

★代表的品種

◉大輪系 花径10㎝以上 草丈100㎝

センセーション、クリフマスローズ、グレートフラワー
バレリーナ、マイフェアレディ、ホワイトクリスタル
ブリジッドバルドー、ハンタースポイント

◉中輪系 花径8㎝ぐらい 草丈60~70㎝前後

エイコウ、ケニーワインカラー、センハート、ラッキーカワノ
アンミツヒメ、ウララ、ガリガ、ゴールデンカラー
ゴールデンカラーセブン

◉小輪種 花径6㎝ぐらい 草丈60㎝前後

サザナミ、ミネッケン、ショーガール、ハスキーハニー
ミニドリーム、ワカクサ

シンビジュームの花の色は豊富です。

開花期12月から4月、3月から4月が開花のピーク。

冬季で花の少ない時期に花を咲かせ、開花期間が長いのが特徴です。

寒さに強く丈夫な、鉢花の代表種です。


(花言葉=深窓「しんそう」の麗人、高貴な女性)


◆病気
ウイルス病にかかってしまうと手遅れで、ほとんど治りません。

普段から管理に気をつけましょう。

株分けや植え替えの時は、刃物類など消毒し、鉢も新しい物を用意して、手もよく消毒して作業を行いましょう。

◆軟腐病(なんぷびょう)
一度発生するとこの病気は、なかなか止められません。

風通しをよくし、水やりの量を控え目にして、チッ素質の多い肥料は与え過ぎないようにします。

★薬剤散布で予防
水1㍑にベンレート水和剤1㌘、トップジン1㌘、オルトラン水和剤1㌘を混ぜて散布し、病害虫の防除を同時に行います。

★害虫
空気が乾燥しているときにハダニが発生します。

水やりの時に、葉の裏側にも霧のように吹いて、少し湿気を与えます。

発生した場合は、ケルセン乳剤の1000倍液で退治します。

ナメクジは夜間に活動し、新芽や花を食害するので見つけ次第捕殺するか、ナメクジ駆除剤で退治しましょう。

ナメクジは、日中は鉢底に潜んでいることがあるので、見つけ次第駆除します。

◆管理場所
11月から4月までは、屋外の寒さが株の生育や開花に適していません。

年末から2月にかけて開花するものが多いので、室内で育てます。

冬はよく日の当たる室内で、最低温度が7℃~8℃を保てる場所。

5月から10月までは屋外で育てますが、真夏の7月~8月の直射日光は、葉焼けを起こすので半日陰の場所に移動して管理します。

◉水やり
花が終わった後の4月から10月までは、屋外で自然の雨や日光に当ててください。

晴天が続く場合では、鉢の底から水が流れ出るくらい与えます。

バケツに水を汲み、一時間ほど浸すのもいいでしよう。

生育期の水不足は、株の生育が十分にできず、のちの開花まで影響してしまいます。

11月から3月頃までは、部屋の室温に合われて調整します。

温度の低い場合は、水分を控え目にして4~5日おきぐらい。

10℃以上の温度がある場合は、2~3日おきぐらいに与えます。

乾燥し過ぎると、花も咲ききれずに終わってしまいます。

温度の低い日が続いた時は、葉に霧吹きしたり、室温を少し高めにして水を与えるようにします。

★肥料
他のランに比べて多めに与えるようにします。

新芽の出る4月から6月にかけて、油粕に骨粉を等量混ぜ置肥します。

5~6号鉢で大さじ一杯を、月に1回程度与えます。

8月末から9月には、骨粉のみ1回与えます。

臭気などが問題になる場合は、粒状化成肥料か洋ラン専用の肥料を与えましょう。

与える時期を間違えないように注意しましょう。


◉植え替え

花が咲き終わり、株が鉢からはみ出しそうになったり、植え込み材料(水ゴケなど)が古くなったものは、植え替えを行いましょう。

鉢の大きさの目安として、5号から6号鉢、大きくても7号鉢ぐらいを使用します。

今まで植えていた鉢より、一回り大きいサイズにするか、もしくは株分けをして調整します。


◆シンビジュームの各部の名称           




バルブを2~3株に分けて植え込みします。

時期は4月頃が適しています。

植え込み用土は水ゴケだけでもよいし、軽石やバークなど排水の良いものでも構いません。

★植え替え時期が遅れると、その年の生育が遅れ、翌年花をつけない原因にもなるので注意する。

植え替え後は半日陰に置きます。
水やりは2~3日待ち、傷口をよく乾かしてから行います。

根が動き出すまでに約2週間ほどかかります。

それ間の水やりは葉水程度の軽めにします。 

根が動き出したら、日光によく当て水もたっぷり与えます。

◆株分けの目安
開花株から3年~4年以上経ち、中心に葉のないバルブ(リーフレスバルブ)が多い状態の株、バルブが6個以上あり、株分けで殖やしたい時、白い根を残し、古い根や腐った根は取り除きます。

根の量に応じて、鉢の大きさを選び、新芽の伸びる方向に余裕(スペースをあける)を持たせて配置し用土を鉢に詰める。

◉シンビジュームの芽摘み
次の年も花を楽しむためには、体力を消耗させないよう、花茎の一番下の花が萎れたらすぐに切り取ります。

日当たりのよい場所で管理すると、1月から2月にかけて株元から新しい葉芽が出てきます。

全て育てると十分に大きくならないので、1株(茎)に1芽、鉢全体で3~4芽になるように、小さいうちから余分な葉芽を摘み取るようにします。

葉芽の数を調整すると大きく育ち、秋から冬にかけてふっくらとして中がかたい花芽と、細く尖っている葉芽が株元につくので、葉芽を全部摘むと、充実した花を楽しむことができます。









2020/07/23

カトレア NO.232

カトレア 洋ラン

洋ランを代表するカトレアは、花も大輪から小輪まで、花色も多数あって豊富です。

交配によって多くの品種が作られ、春咲き、夏咲き、秋咲き、冬咲きと一年中楽しむ事ができます。

カトレアは中南米産が多いため、性質も中、高温性のものが中心です。

四季のはっきりした日本で育てるためには、ある程度の設備が必要です。

原産地とは異なる温度や湿度、日差しの強弱を調整するため、ハウスか温室が必要になります。


カトレアには4つの属があり、それらを含めてカトレアと一般に言っています。

カトレア(C) ブラサボラ(B)  ソフロニチス(Soph)   レリア(L)
これらは、それぞれ特徴がある中南米原産品種です。

※それぞれの種類の頭文字で略して記号で表す。
例 C=Cattleya



大輪花は20㎝近いものから、小輪花は3~4㎝ぐらいまであります。

高い木の幹や枝、岩などに着生しています。

この属では属間交配を行い、新しい品種が作り出されています。

また、この中で大輪花の咲く種類を一般種といい、ソフロニチス、ロックレリヤのように、低温で育ち小輪花が咲く種類を、小輪種と呼んで分けています。

◉病気

一番怖いのはウイルスです。


これにかかってしまうとほとんど治りません。


株分けや植え替えの時は、刃物類を消毒し、鉢は新しい物を用意して、手もよく消毒してから作業を行います。

風通し、日照、湿度など一般的な事ですが、これが一番大事です。

花が咲く前後に温度が下がり湿度が高いと、花弁に小さなシミが発生します。


これは(ボトリジス)と呼んで、せっかく咲いた花が台無しになってしまいます。

湿度を高めにし、乾燥気味にして防ぎます。

◆軟腐病 (なんぷびょう)

病原体はバクテリア、傷口から侵入し、導管部で繁殖して養水分が地上部に行き渡らなくなり、青枯れ状態になる。

一度発生するとなかなか治療できません。


風通しをよくし、水やりを控え目にして、チッ素の多い肥料は避ける。

※チッ素肥料の与さ過ぎは多発の原因となる。


高温多湿を好む5月~9月頃に発生する。

薬剤散布も予防に重点をおきます。

散布液は、水1㍑に対しベンレート水和剤1㌘、トップジン1㌘、オルトラン水和剤1㌘を混ぜたものを散布し、病害虫の予防と同時に行いましょう。

★害虫類

空気が乾燥している時に発生する、ハダニに注意します。

水やりの時、葉の裏側にも霧のように吹いて少し湿気を与えます。

※発生した場合は、ケルセン乳剤の1000倍液で退治します。

※ナメクジは夜間に活動し、新芽や花を食害するので見つけ次第捕殺するか、ナメクジ駆除剤で退治します。


日中は鉢の底などに潜んでいるので、見つけたら駆除します。

◉管理と手入れ

一般種は、冬期の最低温度が15~16℃以上で育て、5月から10月までは屋外の半日陰(寒冷紗などを利用して50%ぐらいの遮光)の場所で育てます。

11月から4月、5月までは温度の保てるハウスや温室で育てます。
5月に入って、夜の温度が15℃以上になったら屋外へ出します。

約一週間で、徐々に外の環境に慣らしていきます。


小輪種は、冬期の最低温度が10℃前後で、一般住居の日当たりの良い場所でも育てられますが、夏は半日陰の場所で冬は保温設備のある場所で育てます。



(カトレアの花言葉は、優美な貴婦人、成熟した大人の魅力)

◆水やり

5月から10月の間は、屋外で雨に当てるか、晴天が続いて乾燥気味の時は、3日から5日おきに与えます。

梅雨時や台風シーズン、秋の長雨が続く時は、軒下やベランダなどあまり雨が多く当たらない所に置きます。


11月から3月の間は、温室内で14℃~15℃に保てる場合は、新芽が出始めるまでは、週1回、土が乾いてきたらたっぷりと水を与えます。

新芽が出始めたら、2日から3日おきぐらいに与えます。

普通の部屋で10℃以上の温度が保てない場合は、軽い霧吹き程度にして、鉢の表面が乾いてきたら軽く与え、多すぎない様にに注意します。

★肥料

基本的に、根がよく伸びる生育期に与えましょう。

新芽が伸び★バルブが肥大して根がよく活動する4月から6月に、油粕と骨粉を半々に混ぜ玉状にして鉢に置肥します。

固形肥料は7月上旬まで与え、その後は一切与えません。


★バルブ

ラン科の植物で茎が肥大したもの
熱帯地域の雨期や乾燥など、落差が激しい自然環境から身を守るため、水分や養分を蓄えている肥大部分。

着生ランは、バルブから根を出し、繁殖する。

また、生育中の春から秋には洋ラン用の液体肥料を薄めて、月に1~2回水がわりに与える。

油粕、骨粉など有機肥料は臭気が発生し問題になるので、清潔で臭気もない無機質肥料の液体肥料や、粒状化成肥料を使う。

その時、与え過ぎや濃度を間違えないように注意します。

また、花芽が出ている時は与えません。

◉植え替え

春咲きの品種や冬期咲きの品種など、咲く時期によって新芽の伸びる時期が違います。

植え替えをする時は、新芽が伸び始める頃の春が適期です。

水ゴケが傷む前に行うのが目安で、2年おき程度で植え替えを行います。

※新芽の伸びるスペースがないものや、生長が健全でないものは植え替える様にします。


鉢は通気性を考えて、素焼き鉢がいいですが、全体の株の大きさから考えてやや小さめの鉢を使います。

鉢の底には軽石などを入れて植え込みます。

★植え替えの手順として

①支柱を外して、ナイフで鉢と根鉢(根とそのまわりの土)をそっと離します。

株を中央に寄せる感じで行う。

②株を取り出したら、中心から徐々に古い水ゴケを取り除いていきます。

続いて、外側から上に向かって腐った根や古い水ゴケを取り除きます。

③葉のついているバルブを最低でも2~3株ずつつけて、切り離し鉢に植え込みます。

この時、株分けもできますが、新芽を痛めないように注意します。

ウイルス病の原因になります。

④バルブを保護している薄皮を取り除き、カイガラムシを予防します。

⑤新しい水ゴケを根の下からまわし、新芽のすぐ下まで丁寧に包み込みます。

⑥鉢底に軽石などを入れて、根の下から鉢の中に押し込み支柱を立てる。水ゴケは表面を固くし、底は柔らかくするのがコツです。

★植え替え後、株分け後は発根を待つ約2週間から20日は水を与えません。

根が出始めたら、水や固形肥料、液肥などを与えていきます。

★株分けの手順として

株分けは植え替えと同時にできます。

①鉢の中が二股に分かれ、最低でも3バルブずつを取り分けられるものが、株分けできる株になります。

②植え替えと同様に支柱をはずし、鉢から株を取り出します。

3つのバルブを残して、消毒したハサミで2つに切り分けます。

③水ゴケを中心部からほぐし、古い根や腐った水ゴケを取り除きます。

切断した部分には殺菌剤をつけましょう。

④株分けした株をそれぞれ、植え替えの時と同様に水ゴケを巻き、根を包み込んで、鉢底には軽石などを入れ鉢植えします。

※植え替えと同様に株分け後、約2週間は水を与えず、半日陰で管理します。


◆カトレアの各部の名称               



◉カトレアをはじめてする洋ランは、1~2年で徐々に周囲の環境に慣れるため、通常の管理温度より低くても栽培は可能です。

冬の間は乾かし気味に管理するのが基本ですが、つぼみがついたら極端に乾燥させないようにします。

毎日たっぷり水を与えます。(用土により調整する)

通常、1回に与える水の量は鉢の大きさと同じ容量ですが、寒いうちは鉢の半分ぐらいにします。

水不足のカトレアはつぼみが黄色くなり、そのまま萎んでしまいます。

日照時間が短い場合も花は咲きません。

一見よく育っているように見える場合も、バルブが衰えています。

注意が必要なのは暖房機、温風に当たるとつぼみが落ちてしまうことがあります。

更に、カトレアは小さい鉢で育てるのがコツです。

大き過ぎる鉢に植えると、根が張らず株の育ちが悪くなります。

シース(名称参照)からつぼみが伸びていて、花の重みで花茎に負担がかかっている時は、支柱を立てます。

シースもつぼみもできないという場合は、日照不足や肥料不足と思われます。








2020/07/21

シダ植物 No.231

シダ植物

シダ植物は、地球上に約1万種が自生していると言われています。

日本では、雑種や変種も入れると1200種が自生している。

その内の100種類以上が絶滅危惧種となっています。

面積の割に日本にはシダ植物が多く自生している。

それは、南北に延びた列島、その周りを迂回する海流や入り組んだ地形、亜熱帯、温帯、亜寒帯と幅広い気候帯などによって、豊かな森林地帯が形成され、その下草として森に守られているからである。

その事から、シダ植物などの下草が繁栄しているかどうかで、豊かな森であるかどうかの目安にもなるのです。


しかしながら一方で、経済の急速な成長によって環境が悪化し、山が削られ、森林が伐採された結果、絶滅した植物種も多くあるのです。


里山は高齢化により過疎化、衰退し、その環境下で育ってきた種も失われて来ました。

地球規模での人間活動によって地球温暖化が急速に進み、生態系への影響も問題化されています。



自然環境の悪化は、即人類の生活環境にも影響するように、自然があってはじめて人々が生かされている、この事を忘れずに自然を大切にしなければならないのです。

シダ植物は地球が誕生してから、最初に地上で繁栄した植物です。


シダ植物は、種子を作らず胞子で殖えるため、蘚苔(たい)植物(コケ類)と同じ仲間のように見えますが、★被子植物、★裸子植物と同じく吸収した水溶液を送る仮導管と光合成で作られた糖などの水溶液を送る師管がある★維管束植物です。

維管束(いかんそく)

維管束は師部と木部に分かれていて、師部には師管が、木部には導管(裸子植物では仮導管)が通っています。

導管は、水分や養分を根から葉へと伝える役目をしています。

師管は、葉の光合成によってできた糖を体の隅々まで届ける役目を果たしています。

※コケ植物には根がなく、維管束(いかんそく)がありません。


地球の地上に最初に誕生したのはコケ植物ですが、根もない、維管束を持たない事から、繁殖していく速さがシダ植物よりも遅いことから、急速に繁栄して行ったのはシダ植物と言うことです。

★被子植物(ひししょくぶつ)

胚珠が心皮に包まれているのが被子植物

★心皮(しんぴ)は元々葉にむき出しでついていた、生殖細胞をその葉で包んで保護するように進化した葉で、それが一枚または複数合わさって、子房、花柱、柱頭を形成している。

★裸子植物(らししょくぶつ)

胚珠が心皮に包まれていないのが裸子植物
ソテツ、イチョウ、針葉樹などが裸子植物で、被子植物へと進化する前の段階の植物と言われています。

◆胚珠(はいしゅ)

将来種子になる器官のこと

◆心皮(しんぴ)

シダ植物や裸子植物の大胞子葉に相当する。

単心皮、合性心皮、離生心皮

◆胞子(ほうし)

菌類や植物が無性生殖(むせいせいしょく)する時に作る生殖細胞のこと。

◆子房(しぼう)=そう果
受粉し受精後そう果になる。

子房の中の胚珠には、生殖細胞が入っている。

シダ植物と呼んでいるものは、生物学上では自然群ではなく、人為的につけられた呼び方で、維管束植物の内、種子植物以外の植物を総称した名前です。

コケに似たコケシノブ類から木本(もくほん)に似たヘゴ類まで、大きさや形は多種多様である。




シダ植物やコケ植物などの多くの植物は、有性生殖を行う世代と、無性生殖を行う世代とが交代を繰り返しています。

有性生殖を行う世代は、配偶子を作るので配偶体といいます。

無性生殖を行う世代は、胞子を作る胞子体といいます。

シダには★胞子嚢をつける胞子葉と胞子嚢をつけない栄養葉が混ざり合っていますが、胞子を作る植物体と言うことから胞子体と呼んでいます。

★胞子嚢(ほうしのう)

胞子をその中に形成する袋状の構造のこと。

コケ植物の胞子嚢は朔(さく)と呼ばれる。

コケ植物は大きく3つに分かれ、朔の構造はそれによって大きく異なる。

胞子体で胞子嚢ができ、減数分裂して胞子がつくられ発芽したものが、2~4㎜と小さい配偶体(前葉体)で余程注意深く探さなければ、目にする機会が少ないものです。

配偶体にある造卵器と造精器によって受精して胚ができ、大きくなったものが胞子体となる。

シダの中には配偶体で受精することがなく、一部の細胞が分裂して胞子体を作るベニシダ、ヤブソテツなどの仲間がある。

これらを無融合生殖と呼んでいる。


他にヌリトラノオ、コモチシダ、ホソバイヌワラビなどは無性芽も出て栄養繁殖する種もある。

シダ植物も一般の植物と同様に常緑性、夏緑性、冬緑性と生育時期が異なっています。

◉常緑性

ベニシダなど春に葉を出し、翌年春に新しい葉が出るまで葉が枯れないもの。

◉夏緑性

イヌワラビ、クジャクシダなど春に葉を出し、秋に葉が枯れてしまうもの。


◉冬緑性

アオネカズラ、オオハナワラビなど晩夏に葉を出し、翌年の初夏近くになって葉が枯れてしまうもの。

どの緑性も地上部の葉が交代するだけで、根茎(こんけい)より下は生きて、数年も生育する多年草です。

◉シダの葉は一枚の葉

シダ類の多くは、ベニシダやワラビのように根茎から複数の葉を出しますが、変わったものとしてカニクサ(ツルシノブ)は地上部分の全てが一枚の葉で、ツルの部分は葉柄です。

木に見えるヘゴも一枚の葉で、茎のように見える部分が葉柄で、太くなっても年輪はありません。

例えば登山などで弁当を食べるとき、お箸が無い場合、ヘゴの葉柄が箸として利用できます。

◉根茎(こんけい)の形 (地下茎の一種、根のように見える茎)


根茎は、根とも茎とも区別がつきませんが、歴とした茎です。

この根茎は、立ち上がったり、横に這ったりと、形は異なりシダを同じものとする時の決め手となるものです。

根茎には直立、斜上、匍匐(ほふく)の形があります。

★直立は、根茎から出た古い葉柄の内側に新しい葉柄を出すため、立ち上がった様になる形で、ヘゴ、ヤブソテツ類などがある。


★斜上は、根茎の先に葉柄を出して行くため、斜め横に伸びていく様な形で、ベニシダ類、イノデ類などがある。


★匍匐(ほふく)は、根茎が横走りすると、間隔を開けて葉を出すことになります。


長く横走りするものには、ウラボシ類、シケシダ類などがある。

短く横走りするものには、オオヒメワラビ類、オニヒカゲワラビ類などがある。


(葉の裏に胞子嚢が集まった胞子嚢群=ソーラス)

胞子嚢の袋の中に胞子が入っています。


◉鱗片(りんぺん)

シダ植物は、植物全体に鱗片や毛が密生する。

植物の芽や球根を保護する。
複数の小さな葉のようなもの。

葉が変態した変態葉の一種で鱗片葉(りんぺんよう)とも言う。

また、シダ植物には鱗片の辺縁からいちじるしい鋸歯があるものまであって、ベニシダ類、イノデ類、イヌワラビなどでは、この鱗片の色、形が同じものか見極めるポイントになる。

◉シダの効能 


ノキシノブ(軒忍)中国名は瓦葦(がい)昔から民間薬として利用されてきました。


         (ノキシノブ)


利尿、止血、解熱、消腫、消炎などの作用があるので、浮腫、腎臓炎、膀胱炎などの利尿薬。

小児の高熱、神経痛、リウマチ、腰痛、婦人病などにも用いる。


薬用には全草を用います。

葉の背面に胞子嚢群(ほうしのうぐん)のあるものが良品とされています。

全草を5月~8月に採取し、一緒に着生している苔や土などを取り除き洗浄してから、最初は日干しして、柔らかくしてから風通しの良い場所で陰干し、十分乾燥させます。


乾燥したものを刻み、1日量として10~15㌘を水500㍉㍑で煮詰めて半量にします。

1日3回に分けて食間に服用します。






2020/07/20

地球誕生での最初の地上植物は苔植物 No.230

原始的生体のままの苔植物

現在の科学研究によると、地球が誕生したのは今から46億年前とされる。

しかし、そんなの誰も見てないし、よく解るものだと思う。

         (地球の内部)


地球の始まりは、どろどろに熔けていて、生物が生きられる環境ではなかったと言います。

その後地球の表面は、どろどろに溶けた熱いマントルがだんだん冷えて地殻(ちかく)となって固まり、6㌔から60㌔の厚さの岩石となって覆われた。


地球の内部では、地球の自転(地球は24時間で1回転している=自転運動)や対流によって、金属流体にデンリュウや磁場が発生して、マントルは高温のままで固まる事はない。


蒸発した大量の水蒸気が冷やされて、やがて雲となり来る日も、来る日も大量の雨が降り続けた。

やがて水は地表を覆うようになり、海になったのです。

大気中に酸素はなく、二酸化炭素であった。

ようやく海水の中に生命が誕生したのは30億年前です。

その頃誕生した生物は、細菌やアメーバのような微生物でした。

ある日、それらの微生物から突然変異によって、新しい生物が生まれました。

突然変異と言うのは、遺伝子が放射線などによって変化してしまうことです。

地球上の生命の歴史は、宇宙から降り注ぐ放射線との戦いの歴史でもある。

この放射線によって、親とは全く違う生物が誕生したのです。

その新しく誕生した生物は、光合成をする生物で、光合成を行うと酸素を吐き出します。

それ以前の生物にとって酸素は猛毒でした。

光合成を行う生物の出現によって、今までの古い生物のほとんどが全滅してしまったのです。

そして光合成によって二酸化炭素が減り、酸素が増えて行ったのです。

海水中に溶けた二酸化炭素をサンゴなどの生物が石灰質の殻に変化させ、それらの殻が何百万年も積もり続けて石になったのです。

それが現在、コンクリートの材料として使われている石灰岩です。

6億年前には、クラゲなどの単純な生物が誕生し、植物は海の中で藻の仲間が繁殖しました。

植物は太陽の光を使って、自分で養分を生み出します。
この事を光合成といいます。

それから植物は次第に陸上へ進出して行くのです。

水中の植物と陸上の植物の境目に当たるのがコケ植物です。


          (コケ植物)

コケ植物を経てやがて陸上ではじめに栄えたのが、シダ植物です。

これが3億年前のことです。



シダ植物には、ワラビやゼンマイなどがあります。

藻類のワカメ、コケ植物のゼニゴケ、シダ植物のワラビこの植物は胞子またはそれに似たもので殖えます。

          (シダ植物)


この頃まだ種子と言うものは出来ていなかったのです。

胞子はたった1つの細胞で出来ていて、子孫を残したり、殖やしたりするための役割分担ができません。

1億年前になって種子で殖える植物、花が咲く植物が誕生しました。

胞子で殖える植物には、花が咲きません。

つまり種子を作らないのです。

地面に生える植物であるコケの役割は、溶岩や火山灰などの荒れ地に繁殖して、そこに肥沃な土壌を形成することで、初期の地球に土壌が形成されるようになったのです。

★土壌は生物によって生まれ、その結果として生物を支え養う能力を持つようになったものである。

地球の歴史の中で、はじめて海から陸に上がったと言われるコケ植物は、地面から水を吸い上げる根がなく、維管束と呼ばれる水や養分を体内に行き渡らせ、体を支える役割を果たす機能がありません。

コケ植物は、植物の中でずっと原始的な生体のまま、とどまっている植物と言えるでしょう。

そんなコケ植物ですが、何億年もの歴史の中で、厳しい環境変化の中でも、生きていくための進化を繰り返してきたのです。

◆おまけ
海がしょっぱいのはなぜなの?

地球の始まりは、そらが水蒸気や塩素ガスで覆われていました。

地球の温度が下がるに従って、空にあった水蒸気は雨となって塩素を溶かしながら、地球に降り注ぎ窪地に貯まるようになったのです。

これが海の始まりです。

最初海は、塩酸が含まれた酸性の海水だったのが、徐々に岩石に含まれるナトリウムと反応して、中和され現在のような海が出来たのです。

海は塩素とナトリウムだけで85%を占めています。


         ❆地球内部構造図

地球の内部構造はこれまで図のように表されてきましたが、研究調査は継続されており、その結果、地球の中心部の内核にはもう1つの層があるようだとの発表がなされた。

これまで教科書などで示されてきた内容が書き換えられる可能性が出てきたのである。

その事をここに記しておく。
2021年3月6日








2020/07/19

ウンシュウミカン No.229

ウンシュウミカン ミカン科


温州蜜柑

柑橘類は亜熱帯、熱帯に広く分布する植物で、世界中の栽培果実の中で、ブドウに次いで多く生産されています。

ウンシュウミカンは日本が原産の柑橘類で、ミカンの代表種になっている。

日本でウンシュウミカンの原種が発見されたのは約300年前。

温州には同種がなく、鹿児島県下の一地方が原産地で、偶然にできたものが最初と言われています。

ミカン類の中でも、庭植えで年内に収穫できる最も早熟な種類です。

単為結果するため種子がなく、皮が剥きやすく食べやすいことから、人気があり国内生産のミカンの80%を占めています。

★単為結果(たんいけっか)=単為結実ともいう。

植物において、受精なしで果実が生じること。

種子を形成しないまま子房だけが発達し、無種子の果実を形成する事。このようにしてできた果実は通常無核果である。

自然界でもバナナ、パイナップルなどは単為結果し種子のない実をつけることがある。

また、原種に近いものほど種子がみられ、その種子が大きいものが多いと言う特徴がある。

柑橘類の中では寒さに強い方だが、美味しい実を採るには南関東より西の太平洋側の海沿いで、冬期に季節風の避けられる場所、日当たりと排水の良い場合が適しています。


耐寒性のある方ですが、冬場に寒風が当たるような場所では、やはり寒害が出ます。

冬の防寒と霜除けが必要です。
-5℃以下になると枯れる心配があります。

※逆に冬の温度が高すぎると果実の色が悪くなります。


◉代表品種

10月に熟す、早生(わせ)ウンシュウミカンは木が小柄で結実期が早く、風害や寒害を受けにくいので庭植え向きです。

収穫後の長期保存には不向きです。
宮川早生、興津早生

11月に熟す(普通温州)甘味や酸味が強く、風味の良いミカンで保存もできます。

春先まで出回っているのはほとんどが普通ウンシュウミカンです。
大津四号、土橋紅温州

◆肥料
ミカン類は常緑樹で一年中肥料を吸収しているので、肥料切れにならないように注意する事が必要です。

庭植えは、3月に根回りに溝を掘り、堆肥に油粕、鶏ふん、骨粉を混ぜ、化成肥料を加えたものを埋め込みます。(配合肥料)

6月と10月末~11月上旬に3月の半量ぐらいを目安に油粕、鶏ふん、骨粉と少量の化成肥料を加えたものを施します。

※ミカン類は主として、有機質肥料を多めに与えると味の良い実が採れます。

収穫の1ヶ月前に油粕、化成肥料を与えます。

成木の場合で油粕2~3㎏ 鶏ふん1~2㎏ 化成肥料500㌘以内とします。

◉鉢植えは、植え付けから1ヶ月後に玉肥を4個置き肥し、2年目の3月には5~6個に玉肥を増やします。

鉢植えの場合は、水やりも大切になります。

生育期の7月~8月には1日3回必要になることもあります。

日中には葉水を与えます。




◉剪定
花芽は結果母枝の先端につきます。

★結果母枝(けっかぼし)又は種枝と言う。

花芽があってもその枝には、花をつけずにその花芽から次の枝を伸ばして花を咲かせ、結実する枝のことです。

ウンシュウミカンの果実のつき方は、前年枝の先端から今年の春に伸びた新梢に花が咲き果実をつけます。

5月頃に花が咲きますが、受粉しなくても結果する(単為結果)ので人工受粉の必要はありません。

その為の、結果部位の切り方は結果部位が外側に多くなっている場合は、切り返しを行って、側枝を更新し立枝が多い場合は、強い立枝を間引いて下枝に日(光)が当たるようにします。

★側枝の更新の方法として

①樹勢が弱く、結果部位が外側に多くなっている場合は、切り返しを行って樹勢を強くして側枝の更新を行います。

②樹勢が強く立枝が多い場合は、強い立枝を間引いて樹勢を落ち着かせ、下枝に日光が当たるようにします。

短枝に花芽がつくので、徒長枝(とちょうし)や内部の細い枝を切り、基本的には果実に日光が当たるようにします。

夏や秋に伸びた芽はすぐに切り取ります。

果実を着けた枝を中心に切り返すと、内部まで光が良く入り結果母枝となる新梢の発生が良くなります。

この切り返した部分の枝を予備枝と言います。

剪定の対象は予備枝で、果実を着けた枝を中心に切除しますが、枝が混んでいる部分は、結果母枝も切除します。

樹形がある程度出来たら、切り詰め剪定よりも間引き剪定を主に行います。

混み入ってきた時は、主枝を根元から切り、新しい主枝に更新します。

ミカン類は常緑樹なので、剪定すれば時期に関係なく必ず葉を切り落とすことになります。

葉を切ればそれだけ栄養分を消失し、樹木を弱らせることになるので生長も遅くなります。

内部への日当たりを良くし、樹高を止めて管理しやすくするための剪定は必要ですが、できるだけ軽くなるなるようにする事が大切です。

鉢植えでは、幼木は夏枝で樹形を作り、結実するようになると夏枝は切除して、春枝中心の鉢に仕上げ間引き剪定で樹形を保ちます。

鉢植えの樹高は、鉢の高さの約3倍を目安にすると良いでしょう。

◉果実管理
ミカン栽培では、表年、裏年と呼ばれている、隔年結果があります。(1年おきに結実すること)

これを防止して、大きくて良い果実にするためには、摘果が必要になります。

7月中旬に1回目の摘果を行い、8月中旬に2回目の仕上げ摘果を行って1枝に1果実残すようにします。

ただし、早生ウンシュウミカンで表年当たり、着果が極端に多い時は、1回目の摘果時期を6月下旬~7月上旬に早めないと、栄養不足から樹勢が弱まり、良い結実が望めなくなります。

又、ウンシュウミカンには直花(じきばな)が咲きます。

結実母枝から発生した結果枝は、極端に短く花芽だけがつく葉芽のない枝で、花だけが咲きます。

このように葉を持たない花が直花です。結果したものを直花果と言います。

良い果実を得るためには、葉からの養分も必要なので、これらの葉の無い直花果は全て摘果します。

残す果実数の目安は、早生ウンシュウで葉40~50枚に対し1果。

普通ウンシュウでは葉20~25枚に対し1果が適当とされています。

樹形作りをしている期間は、伸ばす枝に着果したときは摘果し、枝がよく伸びるようにします。


強く日が当たる位置に着果しているものは、果皮が日焼けを起こします。

枝先などに着果し、日焼けを起こしそうなものだけでも、摘果後に袋をかけておくとよいでしょう。

庭植え、鉢植えのどちらも3年目から開花結実させることができますが、ある程度樹形が出来上がるまでは、あまり結実させない方がよいでしょう。

収穫は、早いものでは10月頃からできますが、年内には収穫を終えるようにします。

1~2ヶ月貯蔵すると酸味が減り、美味しくなります。




◆代表的な病気
①ソウカ病
病原体はカビです。

新葉や新梢(しんしょう)新芽などの柔らかいところに5月から9月頃に発生します。

このカビは生命力が強いので、一度このかびが寄生すると毎年発生を繰り返すことがあります。



感染経路は、ほとんどが雨のしぶきなどによって感染する水媒感染か、病菌が虫に付着して感染する虫媒感染です。

葉に発生した時の症状の進み方としては、はじめに円形の小斑点が生じ、やがて病斑は灰褐色になり、盛り上がってきます。

病気が進行すると病斑が破れて、葉に穴があいたり変形します。
しかし葉が枯れてしまうことはありません。


病気になった葉はその枝ごと取り除き処分します。

それでも発生を繰り返すのであれば、4月頃に銅水和剤(ボルドー)等を散布しましょう。

水媒感染をするので、病葉に直接水をかけないように注意しましょう。7月~8月頃にダイセン、ダイファー、ベンレート等を散布し予防する。

②カイヨウ病
病原体はバクテリアです。カイヨウ(潰瘍)とは表皮の一部が剥がれることです。
バクテリアは、枝などに潜伏して冬を越し、翌年春に発病します。

感染経路は、空気感染や水媒感染で、病菌は新梢部や花芽、または傷口などから感染し植物体内で潜伏します。

葉、茎、花弁などに発生し、はじめに病斑ができます。
病斑の色は発生する植物によって様々です。
被害部に裂け目を生じて、カイヨウ症状を示し、被害部は枯死する。発生期間は4月~7月

病気の株はすぐに抜き取り処分しましょう。

病気が発生したら、付近の土を入れ替えましょう。
高温多湿を好むので、剪定などして風通しをよくする。
※バクテリアによる病気は治療が困難です、予防に努め発生を防ぐことです。

③灰そ病
病原体はカビで、寄生する植物によっても多くの種類がある。
葉、枝、果実に発生し、特に葉に斑点を作る代表的な病気とされています。

この病気の特徴は、樹勢が強いと発病しないで菌は体内に潜伏し、樹勢が弱まったり、日焼けを受けたりすると発病し、病斑を作ることです。

感染経路は、降雨後などに鮭肉色(けいにくしょく)の粘液(胞子粘塊=ほうしねんかい)が虫、風、雨滴などに運ばれて感染します。

葉の症状は、はじめに暗黒色の円形の病斑が現れ、病状が進むと灰白色となり病斑に小さな黒い粒を生じます。

この黒い粒から粘液を出します。梅雨の6月~7月、秋の長雨が続く9月~10月に多発します。

病気にかかった葉や枝は見つけしだい処分しましょう。
発生の多い6月~7月、9月~10月には月に1回~2回の割合でダイセン、マンネブダイセン、ベンレートなどを散布しましょう。

樹勢を弱めると発病するので、寒害、日焼けなどに気をつけて、樹勢を強く保つようにしましょう。

また、風通しが悪いと病気になりやすいので、剪定をして風通しをよくすることも重要です。


◆代表的な害虫

①アゲハチョウ
幼虫が葉を食害します。
ミカン類や山椒を好み、幼虫も大型で食欲旺盛
初夏から数回発生する。
見つけしだい、補殺する。スミチオン1000倍液、除虫菊乳剤を月に2回ぐらい散布

②ミカンハモグリガ(エカキムシ)
若い葉肉内部に潜って棲むウジムシ状の小さな虫で、食害した葉に絵を描いたような跡が残る。

スミチオンやオルトラン水和剤1000倍液を散布する。

③カイガラムシ
貝のような殻をかぶっている。
樹木の枝などに群棲付着し、樹液を吸汁する。
種類も多く様々な形態をしている。
吸汁することで樹勢を弱らせ、排泄物によりスス病を併発し、枝葉をススを被せたように真っ黒にする。

幼虫の時期であれば、殻がまだ出来上がっていないので、スミチオンなどの散布が効果的ですが、成虫になると薬剤は浸透しにくいため、効果があまりないので補殺します。

また、冬場ならマシン油乳剤が使えますから、成虫でも駆除できます。なお、冬期限定使用の薬剤の為、それ以外の使用では薬害が発生するので注意。


カイガラムシは、風通しが悪く、日当たりの悪いところを好むので、普段から適度に枝の手入れをして風通しをよくしてやると発生が減ります。

◉コナジラミ

白い小さな虫で葉の裏一面に集り、卵がどんどん羽化してスス病を併発する。

成虫は体長1ミリほどで、色は白く羽が白い粉で覆われています。

幼虫が最初に発生する5月下旬から6月上旬頃に、薬剤を散布します。


スプラサイド1000倍液や、アクテリック乳剤1000倍液などの、定期的な散布で虫類の退治をすると同時に、スス病も発生しなくなります。

白い虫が飛び立つのが目印になります。
6、8、10月はコナジラミの発生時期なので注意しましょう。


◆ミカンハダニ

乾燥した天候が続くとよく発生します。

ハダニ類は植物寄生性のダニの1種です。
大きさは0.3ミリ前後で肉眼では、よく見えません。
葉や花などに群棲します。

葉に寄生すると白い小さな斑点ができ、葉が巻いたり成育が悪くなります。

花の場合も色が悪くなり、花の成育が悪くなって早く萎れてしまいます。

ハダニの被害が確認できたら、専用の殺ダニ剤を葉の裏中心に散布します。

ハダニは、強い雨などに弱いので、時々ホースで葉に水をかけてやると、発生を抑えることができます。

ケルセン2000倍液で月に2回ぐらい散布すると効果的です。

※症状だけでは病気と区別できません。
ルーペで葉の裏などを見て、ハダニの被害を判別することが必要です。

★柑橘類は本来、暖地性なので寒害には、十分注意する必要があります。