緑のお医者の徒然植物記

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火曜日, 7月 21, 2020

シダ植物 No.231

シダ植物

シダ植物は、地球上に約1万種が自生していると言われています。

日本では、雑種や変種も入れると1200種が自生している。

その内の100種類以上が絶滅危惧種となっています。

面積の割に日本にはシダ植物が多く自生している。

それは、南北に延びた列島、その周りを迂回する海流や入り組んだ地形、亜熱帯、温帯、亜寒帯と幅広い気候帯などによって、豊かな森林地帯が形成され、その下草として森に守られているからである。

その事から、シダ植物などの下草が繁栄しているかどうかで、豊かな森であるかどうかの目安にもなるのです。


しかしながら一方で、経済の急速な成長によって環境が悪化し、山が削られ、森林が伐採された結果、絶滅した植物種も多くあるのです。


里山は高齢化により過疎化、衰退し、その環境下で育ってきた種も失われて来ました。

地球規模での人間活動によって地球温暖化が急速に進み、生態系への影響も問題化されています。



自然環境の悪化は、即人類の生活環境にも影響するように、自然があってはじめて人々が生かされている、この事を忘れずに自然を大切にしなければならないのです。

シダ植物は地球が誕生してから、最初に地上で繁栄した植物です。


シダ植物は、種子を作らず胞子で殖えるため、蘚苔(たい)植物(コケ類)と同じ仲間のように見えますが、★被子植物、★裸子植物と同じく吸収した水溶液を送る仮導管と光合成で作られた糖などの水溶液を送る師管がある★維管束植物です。

維管束(いかんそく)

維管束は師部と木部に分かれていて、師部には師管が、木部には導管(裸子植物では仮導管)が通っています。

導管は、水分や養分を根から葉へと伝える役目をしています。

師管は、葉の光合成によってできた糖を体の隅々まで届ける役目を果たしています。

※コケ植物には根がなく、維管束(いかんそく)がありません。


地球の地上に最初に誕生したのはコケ植物ですが、根もない、維管束を持たない事から、繁殖していく速さがシダ植物よりも遅いことから、急速に繁栄して行ったのはシダ植物と言うことです。

★被子植物(ひししょくぶつ)

胚珠が心皮に包まれているのが被子植物

★心皮(しんぴ)は元々葉にむき出しでついていた、生殖細胞をその葉で包んで保護するように進化した葉で、それが一枚または複数合わさって、子房、花柱、柱頭を形成している。

★裸子植物(らししょくぶつ)

胚珠が心皮に包まれていないのが裸子植物
ソテツ、イチョウ、針葉樹などが裸子植物で、被子植物へと進化する前の段階の植物と言われています。

◆胚珠(はいしゅ)

将来種子になる器官のこと

◆心皮(しんぴ)

シダ植物や裸子植物の大胞子葉に相当する。

単心皮、合性心皮、離生心皮

◆胞子(ほうし)

菌類や植物が無性生殖(むせいせいしょく)する時に作る生殖細胞のこと。

◆子房(しぼう)=そう果
受粉し受精後そう果になる。

子房の中の胚珠には、生殖細胞が入っている。

シダ植物と呼んでいるものは、生物学上では自然群ではなく、人為的につけられた呼び方で、維管束植物の内、種子植物以外の植物を総称した名前です。

コケに似たコケシノブ類から木本(もくほん)に似たヘゴ類まで、大きさや形は多種多様である。




シダ植物やコケ植物などの多くの植物は、有性生殖を行う世代と、無性生殖を行う世代とが交代を繰り返しています。

有性生殖を行う世代は、配偶子を作るので配偶体といいます。

無性生殖を行う世代は、胞子を作る胞子体といいます。

シダには★胞子嚢をつける胞子葉と胞子嚢をつけない栄養葉が混ざり合っていますが、胞子を作る植物体と言うことから胞子体と呼んでいます。

★胞子嚢(ほうしのう)

胞子をその中に形成する袋状の構造のこと。

コケ植物の胞子嚢は朔(さく)と呼ばれる。

コケ植物は大きく3つに分かれ、朔の構造はそれによって大きく異なる。

胞子体で胞子嚢ができ、減数分裂して胞子がつくられ発芽したものが、2~4㎜と小さい配偶体(前葉体)で余程注意深く探さなければ、目にする機会が少ないものです。

配偶体にある造卵器と造精器によって受精して胚ができ、大きくなったものが胞子体となる。

シダの中には配偶体で受精することがなく、一部の細胞が分裂して胞子体を作るベニシダ、ヤブソテツなどの仲間がある。

これらを無融合生殖と呼んでいる。


他にヌリトラノオ、コモチシダ、ホソバイヌワラビなどは無性芽も出て栄養繁殖する種もある。

シダ植物も一般の植物と同様に常緑性、夏緑性、冬緑性と生育時期が異なっています。

◉常緑性

ベニシダなど春に葉を出し、翌年春に新しい葉が出るまで葉が枯れないもの。

◉夏緑性

イヌワラビ、クジャクシダなど春に葉を出し、秋に葉が枯れてしまうもの。


◉冬緑性

アオネカズラ、オオハナワラビなど晩夏に葉を出し、翌年の初夏近くになって葉が枯れてしまうもの。

どの緑性も地上部の葉が交代するだけで、根茎(こんけい)より下は生きて、数年も生育する多年草です。

◉シダの葉は一枚の葉

シダ類の多くは、ベニシダやワラビのように根茎から複数の葉を出しますが、変わったものとしてカニクサ(ツルシノブ)は地上部分の全てが一枚の葉で、ツルの部分は葉柄です。

木に見えるヘゴも一枚の葉で、茎のように見える部分が葉柄で、太くなっても年輪はありません。

例えば登山などで弁当を食べるとき、お箸が無い場合、ヘゴの葉柄が箸として利用できます。

◉根茎(こんけい)の形 (地下茎の一種、根のように見える茎)


根茎は、根とも茎とも区別がつきませんが、歴とした茎です。

この根茎は、立ち上がったり、横に這ったりと、形は異なりシダを同じものとする時の決め手となるものです。

根茎には直立、斜上、匍匐(ほふく)の形があります。

★直立は、根茎から出た古い葉柄の内側に新しい葉柄を出すため、立ち上がった様になる形で、ヘゴ、ヤブソテツ類などがある。


★斜上は、根茎の先に葉柄を出して行くため、斜め横に伸びていく様な形で、ベニシダ類、イノデ類などがある。


★匍匐(ほふく)は、根茎が横走りすると、間隔を開けて葉を出すことになります。


長く横走りするものには、ウラボシ類、シケシダ類などがある。

短く横走りするものには、オオヒメワラビ類、オニヒカゲワラビ類などがある。


(葉の裏に胞子嚢が集まった胞子嚢群=ソーラス)

胞子嚢の袋の中に胞子が入っています。


◉鱗片(りんぺん)

シダ植物は、植物全体に鱗片や毛が密生する。

植物の芽や球根を保護する。
複数の小さな葉のようなもの。

葉が変態した変態葉の一種で鱗片葉(りんぺんよう)とも言う。

また、シダ植物には鱗片の辺縁からいちじるしい鋸歯があるものまであって、ベニシダ類、イノデ類、イヌワラビなどでは、この鱗片の色、形が同じものか見極めるポイントになる。

◉シダの効能 


ノキシノブ(軒忍)中国名は瓦葦(がい)昔から民間薬として利用されてきました。


         (ノキシノブ)


利尿、止血、解熱、消腫、消炎などの作用があるので、浮腫、腎臓炎、膀胱炎などの利尿薬。

小児の高熱、神経痛、リウマチ、腰痛、婦人病などにも用いる。


薬用には全草を用います。

葉の背面に胞子嚢群(ほうしのうぐん)のあるものが良品とされています。

全草を5月~8月に採取し、一緒に着生している苔や土などを取り除き洗浄してから、最初は日干しして、柔らかくしてから風通しの良い場所で陰干し、十分乾燥させます。


乾燥したものを刻み、1日量として10~15㌘を水500㍉㍑で煮詰めて半量にします。

1日3回に分けて食間に服用します。