緑のお医者の徒然植物記

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ラベル #アレロパシー、#テオフラスタス、#熊沢蕃山、#ハンスモーリッシュ、#沼田真、#ギリシア、#配糖体、#モノテルペン、#セスキテルペン、 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2021/06/19

植物のアレロパシーとは No,501

 アレロパシー


アレロパシーは、自然界の生物総合関係における化学生態学、生態化学のうちの、植物間の関係であり、ある植物が生成し環境中に放出した物質が、異類もしくは同種の他の植物の生長や発達に影響を与える作用である。

自己の生育地域へ他の植物種の侵入を妨げて、自種群落を拡大させる生態的仕組みになっている。

これらの場合、根から初芽阻害物質や生育阻害物質を分泌しています。

また落ち葉や果皮の浸出液に阻害物質が含まれる事もあります。

アレロパシー現象は古くから知られ、✫テオフラスタスはすでに紀元前3世紀に「ヒヨコマメ」の雑草制圧力について、また✫熊沢蕃山は「アカマツ」から滴り落ちる雨滴が作物の生育に有害である事を記しています。

✫テオフラスタスとは、古代ギリシアの哲学及び科学者でレスボス島エレソスの生まれ。

植物学の「祖」とされるなど、観察や調査に基づく実証的研究に本領を発揮した人で、ギリシアの学問の成立と発展に果たした功績は絶大である。

200に余る著作が有ったとされるが、現存する物は植物誌=9巻、植物発生学=6巻、自然学的小論=数編など他

特に有名なのは「性格論」であったが、後世の文学者はこれをしばしば真似ていた。

✫熊沢蕃山(くまざわばんざん)
(1619〜1691)
江戸時代初期の陽明学者(儒者)


最初にこの種の現象に対して「アレロパシー」と言う語を与え、その概念を明確にしたのはハンス·モーリッシュ、オーストリアの植物学者(1856 ~1937)であるが、彼の定義によれば、アレロパシーの対象は高等植物から微生物まで、また阻害的なものから促進的なものまで含まれる。

しかし実際には、狭義に高等植物間の阻害的な作用だけを指している場合が多い。

アレロパシーとはギリシア語の「相互に」と「被る」と言う語を組み合わせたものだが、アレロパシーの和訳としては、千葉大学の沼田真名誉教授(植物生態学者)により、1977年に「他感作用」と言う語があてられている。

アレロパシーの原因となる物質はアレロケミカル、アレロケミック、他感作用物質などと呼ばれ、植物の種々の「二次代謝産物」がこれに相当する。

✫二次代謝産物とは、生物の細胞成長、発生、生殖には直接的には関与していない有機化合物のこと。

また酸素などの働きによる化合物の一連の変換反応を「代謝」と言う。

これらの化合物は、生物共通の生命維持に不可欠な「一次代謝産物」とは異なり、特定の分類群に固有の代謝系で生産される物質である。

✫一次代謝産物とは、生体を維持するのに必須の物質群であり、各分類群と属する生物にとっては共通に存在するものである。


高等植物に対してだけではなく、動物や病原菌などの周囲の生物に対する防護手段になっている事も多い。

この物質は、生きた植物体の茎葉、果実や種子から雨水や霧粒中に溶脱したり、根から滲み出して土壌に蓄積し、他の植物に吸収される。

植物に含まれる化学成分には、一次代謝産物と二次代謝産物がある。

植物には様々な化学成分が含まれるが、大別すると無機化合物と有機化合物に分けられる。


燃やした場合に灰となって残るものが無機物であり、ケイ酸塩、リン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩などからなる。

植物成分としての無機物が注目される事はほとんどありませんが、人類は太古以来「灰汁」を食品のアク抜きや生薬の加工調製などに利用してきた事から、全く役に立たないわけではありません。

しかし、植物成分として圧倒的に利用されるのは有機化合物であるだろう。

植物に限らず、生物の創り出す有機化合物を「代謝産物」と言う。


ただし、モノテルペン、セスキテルペン類は揮発によって環境中に放出され、更に植物の遺体や落葉から溶脱する場合もある。

✪モノテルペンとは炭化水素類で、炭素と水素で出来た化合物のこと。
特に柑橘系や針葉樹の「精油」に多く含まれる成分である。

✪セスキテルペンとは生理活性物質のこと。

アレロケミカルの中には、体内では毒性の低い配糖体として存在しているが、土壌に入った後、微生物分解によって糖が離脱して、阻害活性が現れ出すものもある。

✭アレロケミカルとは、異なる生物種の個体に作用し、特定の行動を引き起こしたり、生理に何らかの影響を及ぼしたりする化学物質の総称である。

✭配糖体とはグリコシドとも言われ、糖と糖以外の有機化合物とが結合した物質のこと。
また、根粒菌などの微生物に作用し、作物などへの間接的な影響が示される場合もある。


植物保護から見たアレロパシーの重要な側面は①雑草害、防除すべき点②制圧作物、防除において利用すべき点③雑草群落遷移、防除において考慮すべき点の3つである。


アレロパシー活性が、何らかの方法で確認されている雑草は、数十種に及び、ムカシヨモギ属植物やセイタカアワダチソウ、シバムギ、セイバンモロコシ、ハマスゲなど、攻撃的な多年草で多く知られている。


キク科植物が放出するポリアセチレン化合物は、二次遷移(移り変わり)の初期段階において、種の交代に関わっていると考えられている。

尚、作物に対する雑草による干渉(雑草害)には、競合とアレロパシーが含まれるはずであるが、両者を識別してアレロパシーの関与を証明するのは難しい場合が多い。


アレロパシーに関して注意すべき点は、植物によるアレロケミカルの生成、放出された物質の変化してゆく状態、影響を受ける植物の生理状態いずれも環境要因によって、大きく影響されうるため、ある植物にアレロパシーの潜在する可能性があっても、それが生態系で現れ出したりしなかったりする点である。


主なアレロパシー活性植物

他の植物の成長を抑える働き(物質)

ホオノキ、オニグルミ、カルミア、イタドリ、コデマリ、サクラ、スズラン、ソバ、ニワウルシ、マツ、ムクゲアカシア、ムニンフトモモ、ユキヤナギ、ヨモギ、その他