緑のお医者の徒然植物記

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火曜日, 9月 21, 2021

庭木の突然枯死の原因  No,549

 庭木が突然枯れる原因

元気の良かった庭木が突然枯れてしまうと言う現象は多く見られることですが、その原因をいち早く突き止め、適切な処置を行うことが大切です。

植物の生育や枯死に影響を及ぼす要因として考えられるのは、害虫と病気の二つが主に考えられます。


新梢や葉、枝、幹に発症するものであれば、日頃の観察で把握できるので適切な処置を行うことで、初期の段階で防ぐことが可能ですが、根元や目に見えない土の中の根、幹の中のものは注意をしていても良く分かりません。

気がついたら葉が萎れ始めているなど、被害が進行してからその状況が分かってきます。

また、害虫や病気以外にも原因とされるものがあります。

生育環境の悪化など、自然環境の変化によっても生育障害が起きてしまいます。


なかなか見つけにくい土中害虫の被害

コガネムシ幼虫による被害

代表的な害虫としてコガネムシの幼虫による根の食害がありますが、多くの昆虫の幼虫は新芽や若葉、枝などを食害するのに対し、コガネムシ類の幼虫は土中でも生活し、土壌に含まれる有機質や植物の根を食べて生活しているので、特に数が多いと、木がぐらぐらになってしまう状態になるまで根を食べてしまいます。


有機質肥料の使い過ぎにも気を付ける必要があります。

また、成虫になると葉や花に飛来し食害を続けるので、5月から7月頃に飛来する成虫を駆除する必要があります。

次々と飛来して被害を起こしては飛び去っていくので、見つけたら捕殺するようにします。

大多数のコガネムシの幼虫は、落葉や堆肥などの有機物を食べるだけで無害な虫ですが、しかし、一部のコガネムシ類は生きた木の根までも食糧にします。


その為、根の食害により苗木などが枯死することがあります。

幼虫はジムシ類(ドウガネブイブイ幼虫)と言われ、背中を丸めたイモムシで体色は乳白色です。

種類により異なるが、春から秋にかけて被害を起こし、冬は幼虫のまま土中で越冬します。

春先の植え付け時期に土を耕した時、見つけ次第幼虫を捕殺します。

根に被害を起こすものは一部の種類だけですが、苗木を育てるときには十分に注意が必要です。


幹に孔を開けて樹幹内を食害する害虫

コスカシバの幼虫
太い幹や太い枝の樹皮下に幼虫が入って食害し、樹皮の間から樹脂(ヤニ)や糞が出て多発すると枯死する。

侵入口から胴枯れ病菌などが入り樹が枯れることもある。

成虫は5月から10月に発生し、樹の割れ目などに卵を産みます。

蛾(が)の一種ですが、羽が透明で一見すると蜂のように見える。

侵入口には虫糞と樹脂が付いているので、見つけたら樹皮を少し削り、中の幼虫を捕殺し、樹皮を削ったあとは塗布剤で傷口を保護しておきます。

また、ハンマー等で入り口付近を叩き圧殺する方法もあります。

成虫が卵を産み付ける前に、割れ目や傷口を中心に塗布剤を塗っておきます。

塗布剤には、サッチューコート、スミバークなどがあります。


ゴマフボクトウガの幼虫
カエデやツバキ、サザンカ、ツツジ等にも被害があります。

空中を飛びながら産卵した卵が雑草の中に落ち、羽化した幼虫は雑草を食べて成長します。

やがて雑草から近くの木の細い枝に孔を開けて食入し、枝の先にトンネルを作り進み、食入孔から先を枯らして行きます。

このため樹勢は衰え、幼木が立ち枯れたり被害を受けた枝が強風で折れたりします。


被害は地表近くの枝や幹に多く、内部から孔を開けて、赤褐色の丸い虫糞を排出し、これが地表に積もります。

庭木の根元の雑草などは取り除いておき、丸い糞が見つかったら食入孔から、スミチオンなどの薬剤を注入して中の幼虫を駆除していきます。

薬剤注入後は、孔を土やコルクなどで密閉する方法を取る場合もあります。


カミキリムシの幼虫(別名テッポウムシ)

マツノマダラカミキリムシ
シロスジカミキリムシ
ゴマダラカミキリムシ

幼虫が樹の幹に侵入し内部を食い荒らします。

このため、樹勢が衰えて枯れたり強風などで折れたりします。

根と幹の境目から約50~100㎝の所に産卵し、幼虫は食害しながら樹幹内部に入っていき、食入孔から繊維状の木屑を出しながら二年間、樹幹内で被害を及ぼし樹勢を衰えさせます。


カミキリムシには、松枯れ病に関与するものや草花に加害するものもいます。

成虫は見つけやすいので捕殺します。

また、成虫は葉や小枝などを食害し、産卵するとき幹に傷をつけるので、傷跡を探してその部分を切り出すか叩いて圧殺します。


4月の発生時期にサッチューコートやスミバークなどの薬剤を散布すると有効です。


しかし、大部分は健全木には加害しないので、樹の健康を保つことが一番の予防です。

その他除去法として、振動を木に与える方法などがあります。


コウモリガの幼虫

クリ、クヌギ、ヤナギ、ブドウなど多数の樹木、草花に加害する。

孵化した幼虫は初め草の茎や樹木の新梢に食入します。

やがて成長すると樹木の幹に穿孔(せんこう)して、内部を食い荒らします。

侵入口は主に樹の下の方にあり、木屑と虫糞でフタがされています。

発生は1年から2年に一回で成虫は9月頃に発生し、幼虫は5月頃に孵化します。


侵入口についたフタが目印で、これは幼虫の成長とともに大きくなり目立つようになる。

侵入口を見つけたらフタを開け、中に針金を入れて刺殺。

また、スミチオンなどの薬剤を注入して密閉する方法で駆除する。

近くの草に食入してそこで成長してから樹木に穿孔することがある。

付近に幼虫が食入しそうな雑草がある場合は除去すると予防になる。


地中の根に被害を及ぼす病気

白絹病(しらきぬびょう)

樹木の幹の土と接している部分や株の近くの地表に白い糸状の菌糸が発生し、水がにじんだようになって幹の組織が腐って枯死に至ります。


            「白絹病」


地際部やその近くの地表に小さな粒がたくさん発生します。

これは菌糸の塊で菌核といい、かなり厳しい環境でも地中に入って生きていて、次の年の発生源となります。

真夏の6月から8月に多く発生し、病気にかかった株は抜き取り処分します。

いったん発生した場合、土中に菌核を作って5年から6年間生存している可能性が高いので、5月から10月頃に土壌消毒や石灰を土に混ぜて中性からアルカリ性土壌にします。

この病気は酸性土壌で、夏期高温時の降雨の後などに発生が多い傾向があり、排水不良地、連作地で多発して激しい被害を及ぼす。

汚染土壌はクロルピクリン剤またはダゾメット剤などのガスくん蒸剤で土壌消毒を行う。

尚、PCNB剤、コブトール、ペンタゲンなどの灌注、または散布が病勢進展を阻止するとされ使用されていたが、現在では販売利用禁止農薬として指定されている。

菌核は土中の浅い所に潜伏しますので天地返しをしたり、太陽熱による殺菌をして予防します。

紋羽病(もんぱびょう)白紋羽、紫紋羽


根が侵されるとぼろぼろに腐ってしまい、あっと間に木が枯れてしまう恐ろしい病気です。


         「白紋羽病」


菌糸が繁殖するとやや厚みのある菌膜が根を覆います。

この菌膜の色によって白紋羽病、紫紋羽病に分けていますが、被害状況は全く同じです。

白絹病菌や紋羽病菌は多少なりとも庭土に潜伏しています。

庭木の剪定枝などを庭に戻してやろうと30〜50㎝の深さに掘って埋めると、せっかく眠っていた菌糸を起こしてしまうので、木の枝や落ち葉を庭木の間に埋める時には1m以上の深さが必要になります。

または、庭木の無い場所にビニールシートを敷き、この上に積んで置き、1年から2年かけて完全に腐熟させてから利用すると良いでしょう。

いずれにしても病気に侵され、菌糸膜形成時はすでに末期に近く、ほとんど治療の方法もなく回復は不可能です。


ナラタケ病(根朽病=ねくちびょう)

食用になるキノコ(ナラタケ)に侵される病気で、急に葉が萎れて枯死に至ります。


        「ナラタケ病」


樹勢が著しく弱った木、地上部を強く切り詰めた時などに発症します。

病気が進むと地際部分に白い菌糸がびっしり張り、秋に淡褐色の小さなキノコがたくさん発生します。

発症が分かってからでは治療の方法はなく、病気に侵された木は根まできれいに取り除き、4年から5年は植樹しないか、ナラタケ病にかからないイネ科の植物を植えておくことです。

枯死樹木の跡地は土壌消毒を行います。

樹勢が弱まったら、ベンレートやトップジンMを根元に散布するのも効果的です。

土壌中のナラタケ病菌を捕捉するには、4月から5月頃に直径約6㎝、長さ70㎝のコナラまたはカラマツの杭を地中に打ち込み、10月下旬に引き抜くとナラタケ菌が分布する場所では、杭の周囲に根状菌糸束が付着し、樹皮下に白色扇状の菌糸膜が形成されている。

この方法によって、ナラタケ病菌の生息場所を検診することができる。


強い切り詰めによる枯れ込み

すべての木に当てはまる訳ではありませんが、幹の太い部分で切り詰めていくと、新しい芽が出ずに枯れてしまう場合があります。

この場合、切り口の保護や幹巻きなどを行っておくことにより、ある程度防ぐことは可能です。

ただし、ハナミズキやナツツバキ、ヒメシャラなどは強い切り詰めを行うと年々太い部分が枯れ下がっていくので、細い枝の時から樹高を抑えていくようにします。


台風による枯死

根を多く出して深く地中に張っているものはまず心配ありませんが、根の粗いモクレン類や樹冠の大きくなるギンヨウアカシア、クサアカシアなどは強い風と雨で木が根元から大きく四方に揺すられて、細かい根がちぎれてしまうと風の後、木を支柱で固定しても枯死する事があります。


この場合、ちぎれた根に見合う枝葉の量を減らす為のせん定を行う事が大切です。


植え付け後3年から4年の樹はまだ根が十分に張っていない木も、雨と強風で根元が強く揉まれると細かい根が切れてしまいます。

植え付け後、ある程度の年数は支柱で固定する必要があります。


木の寿命による枯死

現在、観測されている世界一長寿の木は、北米ネバタ山脈の荒野に自生する「ブリッスルコンパイン」で、その樹齢は4787年と見られています。

★ブリッスルコンパイン関連ブログ
世界一の樹齢木ブリッスルコンパイン巨樹
No,253-1


樹木の寿命として柿や桃、栗は約50年
白樺約70年、ミズキやコナラ約80年
トチノキ150〜200年、松は500〜1000年と言われていますが、樹木が生息する自然環境によって、樹齢は個体差の違いがあります。

多くの植物は性質にあった土壌や自然環境下で生息する事で、樹齢の長さも違ってくる。

より良い環境下で育つ事が長く生きて行くための条件と言えるでしょう。