緑のお医者の徒然植物記

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2020/04/29

ライラック 〈紫丁香花〉No.199

ライラック 

モクセイ科ハシドイ属落葉樹

別名 リラ、ムラサキハシドイ

ライラックの仲間は世界で約30種の自生が確認されている。

中国を中心とするアジア原産のもの、ヨーロッパ南東部を中心とするヨーロッパ原産のものとに大別できます。

アジア系のものが20種以上と多数を占めていますが、現在、日本で庭木として親しまれているライラックの原産は、ヨーロッパ原産のもので、明治23年、アメリカの宣教師スミス女史が故郷から持ち込んだものが、日本で最初の苗木として記録されています。

ライラックは英名で、フランスではリラと呼びます。

北海道に多く自生する類似種のハシドイの花(白色)に似た青紫の花をつけることから、ムラサキハシドイと名付けられました。
和名=紫丁香花

しかし、和名が使われることはほとんどなく、今でもライラックやリラの名で呼ばれる事が多い。




4月から5月に紫やピンクの小花を房状に咲かせ、同じモクセイ科のキンモクセイやジャスミンなどと同様に、甘い香りを放ちます。

16世紀のフランスでは香水としても珍重されました。

ヨーロッパでは日本のサクラのように春を代表する花のひとつで、春の遅いイギリスでは5月祭の花になっています。

また、花びらは通常4枚ですが、まれに5弁花が咲く事があります。

ヨーロッパではこれを見つけると幸福になると言う、言い伝えがあります。

日本では特に北海道札幌市の花が有名で、市の花に指定されています。

当地での開花期は5月から6月で、5月下旬から開かれるライラック祭りには多くの観光客が訪れます。

暖かくなるこの時期の一時的な寒の戻りを「リラ冷え」と言うほど、札幌市民の生活に定着している人気の花木です。

ライラックの色と言えば一般に、青紫を指しますが、品種改良により、赤紫、青、ピンク、藤色、白色など多彩な園芸品種があり、その数は100種以上といわれています。

元来暑さには弱いため、関東以北で栽培されることの多い樹種てすが、中国原産のものと交配した耐暑性の強い品種が開発されており、関東地方でも開花が見られるようになりました。

ただし、寒地よりも花つきは多少落ちます。

◉生育管理、手入れ

日当たり、水はけのよい、腐植質に富んだ肥沃な場所を好みます。

土質は特に選びませんが、暑さと湿気を苦手とします。

強い西日の当たる場所や、排水性の悪い場所への植え付けは避けるようにします。

移植には比較的強く、大木でも一年ほど根回し、枝を切り詰めれば活着します。

移植後はしっかり幹巻きをして保護、乾燥しないように気をつけます。

移植時期は、一般にイボタノキを台木に接ぎ木した苗木を2月から3月頃と、11月から12月に植え付けます。


花を楽しむためには、ほかの木の混植は避け、単植するか2~3本の混植にします。

★肥料(施肥)

通常の土壌であれば肥料はほとんど必要ありません。

花つきをよくするには、必要に応じて花後と9月頃に油粕と化成肥料を混ぜ、株元にまくか、株回りに穴を掘り埋め込みます。


花木類は、一般的に草木の焼いた灰やくん炭(モミガラを焼いたもの)を堆肥などに混ぜ込むと、根や幹がよく発育し、病気などに対する抵抗力が増します。

◉病害虫

スス病を誘発するカイガラムシが発生する。

カイガラムシは、新梢が伸びはじめてつぼみがふくらみはじめる頃から発生するので、枝葉の付け根や幹をよく観察して発見しだい駆除する。

カイガラムシ類には、幹などに殻をかぶって定着するものと、足があり移動するものがいます。

カイガラムシの予防として、冬期の11月から2月頃の間に、石灰硫黄合剤10倍液を10日おきに3回位、幹を中心に散布する。

また、成長期にカイガラムシが発生した場合は、オルトラン水和剤1000倍液を月に2回程度、カイガラムシが発生しやすい幹を中心に散布します。

※テッポームシも大敵で、その被害が大きいと枯れてしまいます。

テッポームシは、幹を食害して穴をあけ、木の芯に入り込みます。

食害されれば栄養分が枝葉に行き渡らなくなり、しおれたり葉がしだいに黄変し、枯れてしまいます。

そのような場合は、害虫を疑うようにします。

テッポームシの食害の場合は、その穴にスミチオン10倍液をスポイトなどで注ぎ、土を練ってその穴をふさいで駆除します。

テッポームシの駆除はまず、その虫穴を発見する必要があります。

◆剪定

花芽は今年伸びた新梢の頂芽が分化するので、樹高が高くなり過ぎると花を観賞しにくい。

花が終わった直後に伸び過ぎた枝を間引き、下の方から新梢(開花枝)が出るように促します。

開花が多すぎると※隔年(かくねん)開花になることがあります。

※隔年開花=一年おきに開花すること、毎年咲かない。

冬の間に細枝や込み枝、からみ枝などの不要枝を整理し、枝数を減らしておくと隔年開花を防ぐとともに花房も大きくなります。

剪定時期=1月~2月、5月
新梢は3~4芽を残して切る。
枝が交互に出るように切る。
株を小さく保つためには、花後に花房の下の段か次の段でで切り戻す。

◉殖やし方

挿し木、接ぎ木で殖やします。
挿し木は充実した新梢を15~20㎝に切ってさし穂にし、赤玉土などの水はけのよい用土に挿します。

接ぎ木は、イボタの実生苗を台木にして春に充実枝から取ったつぎ穂を切りつぎにします。

いずれも活着率は良いですが、生育には2年から3年を要します。