緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2020/10/31

バラ 11月の管理 No,314

 バラの11月管理

この季節になると気温は下がって、朝露が目立つようになりますが天候は安定して、日中は小春日和となる日も多く過ごしやすい季節と言えます。


下旬には休眠期を迎えますが、バラはゆっくり咲き続けます。

①咲き柄摘み
花が咲き終わって、咲き柄摘みは楽になりますがまだ、開花期なので残っていると美観を損ねます。

3日に1度は咲き柄摘みをやっておきたいものです。




②病害虫の防除
気温の低下と共に病害虫の活動は鈍ってきます。

薬剤の定期散布は中旬で打ち切ります。

③施肥
庭植え、は鉢植えともこの月からは全く不要です。


④水やり
庭植えには基本的に不要です。

鉢植えには、表土が乾かないうちはやる必要はありません。

⑤除草、清掃
雑草を丁寧に取って処分します。

⑥来年に向けての構想を練る
場所が適さなかった株の移植や、気に入らない株の抜き取りなどを考えます。

また、バラ販売業者各社のカタログが発行されている時期なので、それを取り寄せたりインターネットで各社のホームページを見たりして購入する品種を決め、どうしても欲しいバラは早めに注文して確保します。







2020/10/30

ユキヤナギ No,313

 ユキヤナギ バラ科シモツケ属 

(雪柳) 別名=コゴメヤナギ 「小米柳」落葉低木

日本では関東南西部以西に自生しています。

葉が柳に似ていて細長く、枝いっぱいに雪が降り積もった様に白い小花を、咲かせる事から名付けられました。

自生種は河川の岩場を好んで生える事から、古代はイワヤナギ(岩柳)と呼ばれていたようです。


      (ユキヤナギ)


一つ一つの花は小さな米粒の様に見えることからコゴメヤナギ(小米柳)と言う別名もあります。


暖冬の年は12月下旬や1月頃から花が咲き始め、3月下旬までには一気に開花します。


シモツケ属の植物は小ぶりのものが大半ですが、ユキヤナギはその中では比較的大きく、2㍍程の高さに生長します。

植物としてよく使われているのは、在来種と小庭向きの「蒲田種」です。


シモツケ属の仲間は小花を咲かせるものが多く、アイズシモツケ、ケナシアイズシモツケなどがあります。

ユキヤナギと並んで最もポピュラーなのが、中国原産のコデマリです。

葉の形は少し違いますが、よく似た大きさの白い花を咲かせます。

しかし、枝からの花の出方が違います。

ユキヤナギは数個の花が直接枝から、束になって咲くのに対し、コデマリは一端枝から※花梗が出てその先が半球状に丸くつきます。

「小手鞠」と言う名前の由来です。

※花梗とは花を直接支える枝、茎のようなもの。

開花期もユキヤナギよりも若干遅く4月から5月になります。

花のつき方も大きさもユキヤナギにそっくりの品種に、中国原産で八重咲きの白い小花が咲くシジミバナがありますが、これもシモツケ属の仲間です。


       (コデマリ)

◉生育管理、環境
樹勢が強く基本的にはあまり土質を選びません。

1日中日が当たり、しかも株元が乾燥しないような所を最も好みます。

庭植えにする場合は適度な湿気があり、しかも水はけのよい肥沃な土質の場所がよいでしょう。


日当たりが悪いと、樹勢が弱くなり枝枯れの原因になります。

花つきも極端に悪くなります。

また、夏期にひどく乾燥しても枝先が枯れ込むので水切れに注意しましょう。


◆肥料
生育状況に合わせて、花後と9月頃に油粕と粒状の化成肥料をばら撒きます。

生育があまりよくない場合は、2月頃に油粕、鶏ふん、骨粉などを混ぜ合わせ寒肥として株回りに浅くすき込みます。

肥料の与え過ぎはよくないので注意しましょう。

◉病害虫
初夏から盛夏にかけて、うどん粉病やアブラムシが発生する場合があります。

放置すると病巣が広がるので、うどん粉病にはトップジンM水和剤やベンレート水和剤などの殺菌剤を散布します。


アブラムシには、スミチオン乳剤やマラソン乳剤などの殺虫剤を、葉を中心にして散布し防除します。

それぞれ1週間おきに2~3回散布すると効果的です。

◆せん定、整姿 (1月~5月)

放任しても整った樹形になるので、基本的には花が終わった頃に、伸びすぎた枝を切り詰める程度で十分です。


この時、内芽からの枝の分かれ目で切ると、ユキヤナギ特有の弓なりの姿を保つことが出来ます。

枝が古くなると花つきが悪くなり、枯れ枝も目立つようになります。


古い枝は花後から5月下旬までの間に、地上30㎝程度の所から刈り込んで新しい枝に更新します。

すぐに新芽が伸び、秋には若々しい姿になります。


小柄に仕立てたい時には、毎年根元から刈り込んで更新すれば小さな樹形に育てられます。


◉殖やし方

株分けは大株を掘り起こし、鋭い刃物で4~5つに切り分けて植え付けます。

植え穴には完熟堆肥や腐葉土をすき込み、少し高植えにします。


挿し木は充実した前年枝を15~20㎝に切ってさし穂とし、日当たりのよい少し湿った場所に植え付けます。


翌年植え広げると2年目には、立派な若株に生長します。

株分け、挿し木とも適期は2~3月ですが、早咲きの園芸種は11月~12月に株分けします。


◉ユキヤナギが告げる春の到来
南北に長い日本列島では、南から順番に花々の開花が春の到来を告げます。


一般には桜(ソメイヨシノ)の開花情報が馴染み深いですが、様々な色の花々が咲き始めるその中でもユキヤナギの花の美しさは、暖かな陽光と共に春の到来を印象づけてくれます。


ユキヤナギは正月から節句の間は、主に切り花として楽しまれますが、やはり本当の美しさは庭に咲き春風にそよぐ姿ではないでしょうか。


ユキヤナギの起源には様々な説があり、元々日本に自生していたと言う説や中国から渡来したと言う説、あるいは日本原産のものが中国に渡り、それがまた日本に伝来したと言う説があり、いずれにせよ東洋的な風景にはユキヤナギの持つ風情はよく似合うものです。










2020/10/29

オウバイ No,312

 オウバイ モクセイ科 落葉低木

原産地=中国北部 「黄梅」
別名=迎春花(げいしゅんか)

名前の由来は、梅の咲く時期にウメによく似た黄色い花が咲き乱れる事によります。

地方によっては黄梅を「きうめ」と訓読みする所もあるようです。

植物学的にはウメとは全く別種で、オウバイの花にはウメのような良い香りはほとんどありません。

ジャスミン属にぞくしますが芳香はありません。

中国では早春に春を迎えるように
咲くことから迎春花と言う別名があります。


茎とともに緑色で角張った形状の
枝は半ツル性で直立せず、次第に垂れ下がる性質があります。

そのため、庭木としては石垣などによく植えられる事が多い。


日本に渡来したのは、江戸時代初期と言われており、小ぶりで小さな花をよくつける事から、盆栽などの鉢植えとしても古くから親しまています。


花には香りがほとんどありませんが、枝を折るとショウガに似た香りがします。

オウバイは暖地性のものが多いジャスミンの仲間ですが、温帯性で寒さに強く日本でも各地で露地栽培が可能です。


また、暖地では次第に常緑から半常緑にかわるなど、栽培する地域によってかなり趣きが異なるのが特徴である。


園芸種には一重咲きのものと八重咲きのものがあります。

他に樹高が20~30㎝と小ぶりのヒメオウバイがありますが、耐寒性はオウバイよりも少し弱くなるようです。

近縁種にオウバイよりも大きな花を咲かせるオウバイモドキ「別名ウンナンソケイ」があり、この種は中国雲南地方原産の常緑樹です。

モクセイ科の仲間として「キンケイ」などがある。




◉生育管理、環境
日当たりの良い場所なら特に土質は選びません。

排水性が良い方が好条件になります。

反対に日陰になるような湿気の多い土質では、新梢が軟弱になったり花つきが悪くなったりします。

そう言うことから、水はけがよく
やや乾燥気味の石垣の上などは
適した植え付け場所になるでしょう。


◆肥料
肥料をあまり多く与えると、枝葉を多く茂らせてしまい、花つきが悪くなるのでチッ素分の少ない肥料を与えます。

基本的には成木として、油粕500gや骨粉200g~300g、粒状の化成肥料を少量混ぜて、花後か9月上旬頃に株元にばら蒔くか、穴を掘り埋め込みます。

◉せん定、整姿 4月~5月、11月~1月

花芽は小枝に夏頃形成されます。

花が終える頃が、樹形を整える
せん定の適期です。

枝を四方によく伸ばし、垂れ下がった枝が地面に接すると、接地部から根を出し更に生長します。

せん定には強いので強く切り詰めて大丈夫でしょう。

株立ち状の自然樹形で楽しむのが一般的ですが、下枝を整理して1本立ちの、スタンダード仕立てにする事も出来ます。

自然樹形の場合は、極端に樹形を乱す枝を間引く程度で十分ですが、枝を伸ばしたくない場合は、状況に応じて切り戻します。

整姿は花後すぐに行いますが、弓なりに枝が垂れる独特の枝振りを生かすのがポイントです。

鑑賞する場所から見て手前の枝を短く、奥の枝は長く(高く)残すと奥行きが出て花の見栄えがよくなります。

せん定の際は、必ず枝の分かれた所で切るようにしましょう。

葉芽のない部分で切ると葉芽の節まで枯れ込みます。

また、間引く時も同様です。

◆殖やし方
※とり木が地面に触れるとそこから自然に発根するので、3月から4月に切り離して新しい株とし、別の場所に植え付けます。


※挿し木は生育のよい枝を、10~20㎝の長さに切ってさし穂とし、水あげした後赤玉土や鹿沼土のさし床に挿して管理します。

4月下旬から9月上旬頃までが挿し木の適期です。

★植え付け、移植適期
3月~4月、9月~10月








2020/10/27

ベニシタン盆栽 No,311

 ベニシタン 盆栽 紅紫檀 バラ科

卵方の小さな葉が木材としてよく使われるシタン(紫檀)の葉に似ている。

秋から冬にかけて果実が、鮮やかに紅熟する事から名付けられた。

紫檀はマメ科の高木ですが「ベニシタン」はバラ科の小低木で、植物学的にはあまり深い関係はない。

園芸界ではベニシタンも含め、属名のコトネアスターの名で親しまれ、多くの園芸品種が出回っています。

中国南西部からヒマラヤ地方にかけての原産で、日本に伝えられたのは昭和初期と、比較的最近ですが今では人気樹種の一つとなっています。

初夏の頃、枝に沿って可憐なピンク色の小花を咲かせます。

花弁は全開せず、控えめな印象の花で、味わいがありますが、盆栽界樹としての魅力は、秋に紅熟し秋が深まるにつれて一層赤みを帯びる果実にある。

「実もの盆栽」としては、柔らかな曲がりをした模様木に仕立てる場合が多いようです。


その他の品種にベニシタンの変種で、白い花が咲くシロシタンも人気があります。

果実はベニシタン同様鮮やかな紅色に熟す。





◉置き場所
春から秋までの間は、日当たり、風通しのよい屋外で管理し、特に開花中は十分に日光を当てると秋に充実した果実を楽しむ事が出来ます。

冬は鉢土が凍らないような軒下や、明るい室内などで管理するようにします。

◆水やり
鉢土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまで十分に水やりします。

特に開花中は多くの水分を必要とするので、こまめに鉢土をチェックして水切れに注意しましょう。

花後も緑色の幼果が落果するような場合は、水分不足なので、水やりの回数を増やすようにしましょう。

◉肥料
油粕8、骨粉2の割合で混ぜたものを梅雨期を除き、5月から10月まで毎月1回与えます。


◉せん定
模様木の樹形に仕立てるには、挿し木の3年苗が理想的です。

最初から針金で幹を模様木風にくねらせてある苗木を見かける事がありますが、かえってその後の幹や枝の矯正が難しくなるので避けます。

1年目は樹形づくりに必要な枝だけを残して不要な枝を切ります。

残した枝は役枝となるので、十分に伸ばして充実させます。

生育中は新梢がよく伸びるので、5月から6月に芽摘みと切り戻しを行い、樹形を保つようにします。

針金は4月から6月頃にかけ、9月下旬頃に外すと言うサイクルを繰り返します。

模様木に仕立てると言っても、極端に曲げるのではなく、緩やかな曲線を持たせることがバランスのよい樹形にするコツです。


幹の立ち上がりから何回も曲がる樹形は「タコづくり」といって、嫌われるので注意しましょう。

また、ベニシタンの枝葉は水平に広がりやすく、そのまま伸ばすと、模様木独特の立体感が出てきません。


       (石付きのベニシタン)


水平に伸びた小枝にも針金をかけ、やや上向きに捻っておきます。

その状態で芽摘みを行うと、そこから発生する新芽は上向きに伸び、模様木の持ち味である立体感が生まれます。


2年目以降は徒長枝を中心に不要枝をせん定します。

樹形がある程度できてからの整姿は、3月下旬から4月上旬に花芽を持たない新梢を、2~3節残して切り詰めます。

また、不定芽が出やすい性質があるので、見つけ次第早めにかき取るようにします。


◉植え付け、植え替え
新芽が伸び始めた3月下旬から4月上旬が植え付け、植え替えの適期です。


植え替えの際は根鉢の土を3分の1程ほぐし、長く伸びた根は切り詰めて植え付けます。

生育の度合いにもよりますが、若木、成木とも2年に1回を目安に植え替えるようにします。


植え付けの用土は赤玉土8、腐葉土2の割合の混合土を用いるのが一般的です。


★病害虫
アブラムシ、アカダニ、カイガラムシなどが発生する場合があります。

発生が少量の時はその都度捕殺しますが、予防を兼ねて冬期に、石灰硫黄合剤の30倍液を散布すると効果的です。









2020/10/26

ケヤキ No,310

 ケヤキ ニレ科 落葉高木

別名=ツキ 「槻、欅」

日本の代表的な落葉広葉樹のひとつで、北海道を除く日本各地の山地に幅広く自生しているが、山野の湿り気の多い場所や、川の辺りや沢沿いなどの肥沃な所に多い。

分布の範囲は朝鮮半島、中国、台湾に及びます。

耐寒性、耐暑性とも強く、現在では北海道でも栽培されたものを見ることが出来ます。

樹高は通常10~20㍍程ですが、生育条件が良ければ50㍍に達するものも珍しくありません。

特に、関東ローム層の土壌が適している様で、関東地方の公園や街路樹などで多く見かける樹種です。

新緑から秋の黄葉、落葉後の冬の樹形がとても美しく、その雄大な樹姿を「神木」として崇め、古くから寺社などに植えられていました。

ケヤキの名は「けやかき(際立った)木」と言う古語に由来すると言われています。

萌芽力が強く、せん定にも耐えることから庭木として用いられる他、街路樹や公園樹としても幅広く親しまれています。

風には強いが大気汚染、潮風に弱い。

雌雄同株で新葉が展開する時期と、ほぼ同じ4月から5月にかけて淡黄緑色の花をつけます。

雄花は新梢の下部、雌花は新梢の上部葉の付け根の葉腋にそれぞれ開花しますが、どちらも葉の色に似ていてあまり目立たない。

果実は葉の付け根につき、4㍉程のいびつな球形をし、10月頃に成熟する。

枝から離れて落下するものと、小枝ごと風に運ばれるものとがあり、枝についた果実は遠方まで飛んで繁殖します。


葉は晩秋に黄色く色づくが茶褐色に枯れてしまうものが多い。

木材は家具材、楽器、器具材、船舶材などに古くから幅広く利用されてきました。

園芸品種は特にありませんが、庭園樹木としてエノキ、ハルニレ、アキニレなどが親しまれているニレ科の樹木です。

特に9月頃に開花する「アキニレ」は「ニレケヤキ」の名で、盆栽樹として多くの愛好家に親しまれています。


        (黄葉したケヤキ)


◉生育管理、環境
日当たり、水はけのよい腐植質に富んだ肥沃な場所を好みます。

太い根を土中深く伸ばす深根性の樹種なので、出来るだけ深い層まで土壌が肥えている事が理想です。

◉植え付け、植え替え、移植
広い場所に植え付けます。

植え穴は大きく掘り、元肥として完熟堆肥を十分すき込みます。

移植には強く、かなりの大木でも1年程前から根回しをしておけば、比較的容易に活着します。

乾燥に弱いので、植え付け後は十分に水やりをし、必要に応じて幹巻きなで水分の蒸散を防ぎます。

植え付け、植え替え、移植の適期は3月と10月~12月です。


◆肥料
肥料を与えると徒長枝が伸びやすいので、極端な痩せ地でない限り必要ありません。

必要に応じて、油粕、鶏ふん、化成肥料などの寒肥を与える。

◉病害虫
まれにクワカミキリムシの幼虫に幹を食害されることがあります。

食害を受けた部分を放置すると、腐朽する場合があるので、スミチオン乳剤などを食入口に注入し駆除します。

また、夏に成虫を見かけた場合は産卵を防ぐためにもすぐに捕殺します。

◉せん定
放任しても独特の箒(ほうき)状の樹形にまとまります。

通常、庭木として楽しむ場合は、若木のうちに目標の高さを決め、その3分の1程度の樹高で芯を止めます。

高さは2㍍程の所で切るのが一般的です。

切り口から強い枝が分枝し、以後は随時切り戻す度に上へ上へと分枝して、箒状の樹形になります。

せん定の基本は徒長枝や込み枝、下垂枝などの不要な枝を付け根から切り取って透かしていきます。

若木のうちに地際近くで切り戻して、株立ち状の樹形を楽しむ事も出来ます。


◆殖やし方
秋に落果した種子をすぐに蒔くか、低温貯蔵して翌春の3月から4月頃に蒔きます。

自然落果して発芽した苗をそのまま育てる事も出来ます。

接ぎ木は2月から3月に行います。






2020/10/25

ヒマラヤスギ No,309

 ヒマラヤスギ マツ科 常緑針葉高木

別名=ヒマラヤシーダー ヒマラヤスギ属
原産地=ヒマラヤ地方北西部からアフガニスタン東部にかけての一帯

日本に伝えられたのは、明治時代の初期と言われ、広く全国に植えられている。

原産地では樹高50㍍にも達しますが、日本では20~30㍍程です。

円錐形の自然樹形が雄大で美しい針葉樹です。

公園樹、庭園樹として世界中で親しまれ、材は建築、器具、包装材などに使われる。

コウヤマキ、アラウカリア(オーストラリア原産のナンヨウスギ科の針葉樹)と並んで「世界三大公園樹」の一つに数えられている。

学名の「デオドーラ」は「神の木」に由来する。

気候の適応力が強く、日本でもほぼ全国で栽培されています。

樹形が「スギ」に似ていることから和名には「スギ」の名が付けられていますが、葉の形を見るとマツ科の植物であることが分かります。

10月から11月にかけて開花します。

雌雄同株で雄花は黄褐色で、長さ3㎝の円柱状でよく分かります。

雌花は浅緑紫紅色で約5㍉と小さく、数も少ないためほとんど目立たない。

受粉した雌花は12月に入ると3㎝程の球果(マツカサ)を作ります。

この球果は果鱗(かりん)と呼ばれる鱗状の片に分離して落下します。

一片の果鱗には2つの種子が付いていて、風に乗って飛散して繁殖します。

生長が速く強いせん定をしてもよく芽吹くため、各種の仕立て物や高生垣など利用出来ますが、車の排気ガスに弱く街路樹には適しません。


ヒマラヤスギの仲間は2~3種が知られています。

園芸では針葉がヒマラヤシーダーより短く、やや小ぶりの「レバノンシーダー」横に広がった枝が下垂する「シダレヒマラヤスギ」などが親しまれています。

※アトラスシーダー
北アフリカのアトラス山脈を原産地とする、ヒマラヤスギの仲間で原産地では、成長が早く大木となるため建材としての需要が高い。

葉の雰囲気はヒマラヤスギよりもゴヨウマツに近い。


※レバノンシーダー(スギ)
西アジアのレバノン、キプロス島及びシリア、トルコに分布、タウルス山脈トルコ(南部)を原産地とする。

ヒマラヤスギの仲間でレバノン国旗にデザインされている。

ノアの箱舟はこの木で造られたという。

◉生育管理、環境
日当たり、水はけのよい適度な湿度を保った場所を好みます。

土質は特に選びませんが、アルカリ性土壌は好ましくありません。

耐隠性はあるがなるべく日当たりのよい場所を選びます。

◆植え付け、植え替え、移植
庭での植え付けは、生長を考えて出来るだけ広い場所にします。

植え穴は大きめに掘り、元肥として完熟堆肥をすき込みます。

大木になる割には根が浅く、乾燥にも弱いので移植後は支柱を立て、株元をマルチングして乾燥を防ぐようにします。

植え付け、植え替え、移植の適期は3月、10月から11月です。


★肥料
生育状況に応じて、2月頃に堆肥、腐葉土、鶏ふんなどの有機肥料を株回りに環状施肥します。


◆害虫
マツ科の植物につく、マツカレハ、ツガカレハによる葉の食害が発生する場合があります。

幼虫の早期発見と補殺が大切です。

薬剤はスミチオン、カルホスを散布します。


◉せん定
地際に近い程、枝を広げて下垂させ円錐形の美しい自然樹形になります。

刈り込みにも強く自然樹形以外にも、円筒形仕立て、ロウソク仕立て、段造り、散らし玉、生垣仕立てなど様々な樹形を楽しむ事が出来ます。

樹勢が強く、萌芽力も旺盛な樹種ですが晩秋のせん定や刈り込みは、軽めに行うようにします。


基本せん定は春から初夏に行います。

大きく枝が広がるので、庭などでは形のよい側枝を残して主枝を切り、幅を抑えるようにします。

枝を切り戻す時は葉の付いた小枝を残すようにします。

細い枝は枯れやすいので弱い枝は整理して、太さの揃った枝で樹形を整えます。

根が浅いことから強風で倒れやすいので、適度な枝抜きで風当たりを少なくすることも大切です。

また、強い日射しを浴びると幹焼けを起こしたり、樹木の表皮が割れたりする事があるので、初夏に
枝を抜いた後は緑化テープやコモなどで、幹巻きするなどし保護します。


◉殖やし方
晩秋から冬に落下した、果鱗を乾燥させないように低温貯蔵し、翌年の2月から3月頃に蒔きます。

挿し木も(6月~7月頃)可能ですが、挿し木苗は枝がきれいに四方に伸びず、寿命も短いと言われあまりお勧め出来ません。







2020/10/22

ガマズミ No,308

 ガマズミ スイカズラ科 落葉低木

別名=ヨウゾメ、ヨシズミ 
「莢迷」

原産地=日本、朝鮮半島、中国一帯

日本では北海道南部から四国、九州に至る全国の原野や低山地に幅広く分布し、雑木林や林縁に多い。

5月から6月にかけて、多数の可憐な白色小花が傘状に付く、★散(繖)房花序を形成する。

★散(繖)房花序=さんぼうかじょ
花軸につく花の柄が、下部程長く上部は短いため全体がドーム状になる。

葉は広い卵形で長さ10㎝以上と大きく対生する。

葉の両面に毛が生えているのも特徴で、触るとザラッとする。

10月頃から12月にかけて、球形の果実が一斉に結実します。

果実は最初、鮮紅色で次第に暗褐色に熟して行く。

自生種は林の奥深い所よりも、人里に近い林縁付近の明るい場所を好んで生育するため、人目を引きやすく古くから庭木や道具材などに、幅広く利用されていました。

樹高が2~4㍍と低く、扱いやすいことから初夏の花、晩秋から冬にかけての紅葉と色鮮やかな果実など、四季を通じて楽しめることから、鑑賞木としての価値は高い。

果実が赤くなる頃に葉もわずかに色づくが、時に真っ赤に色づくこともある。

赤い果実は、霜が何度か降りると透明になり、白い粉をふいたようになると、やわらかくて食べ頃となり、地方によっては食用にもされた。

昔の子供たちはおやつ代わりに食べたので、そんな記憶を持つ人もいる事でしょう。

味は甘酸っぱい、各地の山野にごく普通に見られるので、ヨシズミ、ヨソゾメなどの地方名も多い。

名前の由来には諸説あり、神つ実(神の実)の転訛で昔は果実を冬の神前へ供えたとする説や、果実を衣料などの染料に用いた「別名ヨウゾメ」ことから、「染め」が「スミ」になったとする説などが有力です。

ガマズミの果実は生食にする他、リキュールに漬けると美しいピンクの果実酒になります。

木材は堅く丈夫で、杖やハンマー🔨(金づち)の柄などの材料として利用されています。

ガマズミには同属の近縁種が多く、日本だけでも30種以上あると言われています。

※特に園芸品種で親しまれて居るのは果実が黄色い「キミノガマズミ」

※淡紅色を帯びた白色でほのかな芳香のある「チョウジガマズミ」

※葉の大きい「オオバチョウジガマズミ」

※花数、枚数ともガマズミより少ない「オトコヨウゾメ」

※ガマズミよりやや高地に自生し、北海道中部でも生育可能な「ミヤマガマズミ」などがあります。


◉生育管理、環境
日当たりを好みますが、一日中日の当たる場所より半日くらいの日の当たる、強い西日が当たらない場所がより適しています。

水はけがよく腐植質に富んだ土が理想的ですが、土質は特に選びません。


極端な乾燥は嫌いますが、適度に湿った土からやや乾燥した土までよく育ちます。


      (ガマズミの花)


◆植え替え、移植
植え付けは植え穴をやや大きめに掘り、根元にピートモス、完熟堆肥などを敷いて植え付けます。

ガマズミは比較的根が粗いので、植え鉢の土を崩さないように丁寧に扱うことと、乾燥を避ける事が大事です。

また、必要に応じて支柱を立てるようにします。

植え付けの適期は落葉期の2月~3月または、11月下旬~12月です。

活着してしまえば丈夫でほとんど手のかからない樹種です。

移植は11月下旬から12月と2月から3月

◆肥料
極端な痩せ地でない限り、肥料はほとんど必要ありません。

樹勢が弱い場合は、2月頃に油粕、骨粉を混ぜた有機肥料を一握り程度株元にまきます。


◉せん定
放任しても株立ち状によく樹形がまとまります。

萌芽力は強い方ですが強せん定は好みません。

自然樹形で育てるのが一般的です。

徒長枝やひこばえを整理して、3本立ち程度にして株元をすっきりさせるとよいでしょう。


花芽は枝の基部に近い短枝につきます。

せん定は12月から2月頃に、徒長枝や樹冠内部の混み枝を間引く程度にとどめ、枝の途中で切らないことが大事です。

花後は特に手を加える必要はありません。

★殖やし方
晩秋から冬にかけて熟した果実をとり、果肉を落として湿った砂などに入れて低温貯蔵します。

翌春、暖かくなり始める3月に蒔き、乾燥に注意して半日陰で管理します。







2020/10/20

シャコバサボテン No,307

 シャコバサボテン サボテン科

別名=クリスマスカクタス

多肉植物


ブラジル、リオデジャネイロ州の山岳地帯を原産とする、古木や岩肌に着生するサボテンの1種で、クリスマスシーズンに美しい花を咲かせるので、「クリスマスカクタス」と言う別名がある。

明治時代から栽培されている植物で園芸品種も多い。

反り返った花弁が可憐で花色も多いのが特徴です。

サボテンと言ってもトゲはなく、葉に見える多肉質の茎が「シャコ」の節の様に見えることから日本では「シャコバサボテン」と呼ばれています。

同種で「カニバサボテン」と言うのがありますが、こちらは滑らかな丸い葉が、カニの足に似た形をしています。

花色は赤、ピンク、白、黄と多彩で「ホワイトクリスマス」「マリー」「コールドチャーム」の名前で市販されています。

デンマークでシャコバサボテンの品種改良が盛んに行われ、様々な花色がある。

トゲがあるサボテンが、雨の降らない乾燥地に生えているのに対し、シャコバサボテンの自生地は標高が高く、気温も一年を通して10~20℃と涼しいため、日本の暑い夏はあまり得意ではありません。




◉生育管理、環境
開花株を入手する場合は、花付きが多くツボミの大きさが揃っている物を選ぶようにします。

原産地が熱帯で安定した気候にあるため、寒さや環境の変化に弱い面があります。

鉢植えを移動する場合は、屋外に近い玄関などから徐々にならしてから行いましょう。

また、ツボミが付いたらなるべく移動は避けます。

花芽が付いた後も急に屋外から、室内へ移動させると、花芽が落ちてしまう事があるので要注意です。

ツボミが1㎝以上に育つまでは移動させないようにします。

ツボミの落下を避けるには、霧吹きで葉にスプレーした後株全体に、ビニール袋をかけるなどして湿度や温度をしばらくの間、安定させてやります。





原産地では山地の岩や樹木に着生している種類で、同じサボテンでも砂漠に生育する仲間とは異なり、比較的水分を好みます。

他の一般的な植物より水やりは少なめにしますが、花期に乾燥させ過ぎると落花させる原因となり、春からの生育にも支障が出るので、用土の様子を見ながら、乾いたらたっぷり水を与えるようにしましょう。

また、花を上手に咲かせるには夏にあえて水やりを控えて、休眠状態にした方がよい場合もあると言われています。

★花をたくさん咲かせるには、早春の芽摘みと植え替え、そして秋口の新芽摘みです。

芽を摘むときは、前年に伸びた節を1~2節残します。

ハサミなどは使用せず、節の所を「くるっと」回して摘み取ります。

先端部をきっちり揃えるより、少しでこぼこを残す方が、開花時に高低差ができユニークな姿で花が咲きます。

芽摘みと植え替えが終わった株は、春から秋まで屋外の半日陰で管理します。

秋口の新芽摘みでは、赤みを帯びた1~1.5㎝以下の新芽は摘み取り、1.5㎝以上に育った芽には花芽が付くので残します。

11月からは屋内に入れ、窓ガラス越しに日の当たる場所に置きます。

4年目以降は株が老化してくると木質化し、芽が出にくくなるので、根元から茎節を摘むのは避け、先端部を芽摘みします。

茎節が混みすぎている場合は、間引くように摘み、風通しをよくするなど蒸れない様にする工夫も必要です。

根が鉢いっぱいに広がると水はけが悪くなり、株が弱るため2年に1度は植え替えを行います。

根鉢全体を軽く崩し、一回り大きな鉢に植え替えます。

用土は、市販のシャコバサボテン用の土、又は、赤玉土小粒3、完熟腐葉土3、パーライト3、珪酸塩白土1の混合土に植え付けます。

葉が痩せたり、色あせたりしているよう様なら、植え替えや挿し木をして株を更新しましょう。

※サボテン用の用土は不可

花が終わったら花柄を取り、室内で4℃前後に保ちながら、春の植え替えに備えます。




◉肥料
緩効性の化学肥料を4月から6月にかけて与え、9月頃には肥料の効力が切れるようにします。


余分な肥料が残っていると、栄養が株の生育にまわって花のつきが悪くなります。

また、新芽も花が付きにくいので、ツボミを付ける前の9月に一段摘み取っておきます。

ツボミは冬に近づき日照時間が短くなると付き始めるので、この時期に明るい室内で管理するとツボミを付けません。

一日の日照に当てる時間が長すぎると、花芽を付けない植物です。

       「11月7日花芽がつき始める」


夜間の照明に当たると、日照時間が長くなっている可能性があり、ツボミが付きにくいと考えられます。

一日の日照に当たる時間を8、9時間前後にして管理する必要があります。

◆短日処理を行います。
10月から11月の夜間は箱などで覆ってやると冬に花が楽しめます。


◆殖やし方
さし芽の時期(4月から5月)

葉を切り取って挿しますが、1枚では生育が遅くなったり失敗したりするので、2~3枚の葉節を挿すとよいでしょう。

切り取った直後の葉節(くびれた所をよく切れるナイフなどできれいに切る)は、2~3日程陰干しをして切り口を乾かします。

3号ポット程度のビニールポットや鉢にバーミキュライトなどを入れ、切り口を傷つけない様に挿します。

挿す深さは2㎝程度が適切です。


        (挿し芽、8月21日撮影)


★ポインセチアも同様に短日植物です。
参考ブログ、ポインセチア No,47


◉植物からの危険信号
葉が赤くなったり、節の途中から根が出たりしているのは、植物からの危険信号です。

根が傷んでいるサインです。

水切れもしくは、逆に過湿による根腐れで水やりに問題があります。

水やりの頻度を調節する必要があります。

症状が重い場合は、傷んだ株や根を取り除き、すぐに植え替えを行いましょう。









2020/10/19

ハボタン No,306

 ハボタン アブラナ科 一年草

別名=ボタンナ (葉牡丹)

冬枯れで寂しなくなった花壇を華やかに、彩ってくれる貴重な草花として、挙げられるのがハボタンです。

外観からも分かる様に植物学的には、キャベツやカリフラワーと同様のアブラナ科の一年草です。

★ブロッコリーはイタリア原産、カリフラワーは地中海沿岸が原産地ですが、両種はキャベツの変種です。

また、カリフラワーはブロッコリーが突然変異で白化したもので、2000年前から栽培されてきたものと言われている。


原種は食用として江戸時代に、ヨーロッパから導入されたもので、幕末の頃から観賞用としての改良がなされ、園芸品種として定着しました。

やがて明治時代になると、葉の重なる様子が「ボタン」の花弁に似ていることから、「葉牡丹」の名で親しまれる様になりました。

葉が発色するのは、霜が降りて空気が一段と冷えてくる頃で、畑で育てていたものを植え付けて観賞用としますが、あまりに寒さが厳しかったり乾燥した日が続いたりすると、早く傷んでしまう事があります。

逆に、10月下旬~11月上旬に気温が下がらない様な事があると、色づきが悪くなる事もあります。

ハボタンは、葉の形によってそれぞれの呼び名があり、いくつかの系統に分けられています。

①葉が丸いのが特徴の東京丸葉系

②葉に細かい縮れがある名古屋ちりめん系

③東京丸葉系と名古屋ちりめん系、両方の特徴を持つ大阪系があります。

この他に、葉に深い切れ込みがある切れ葉系などが知られています。

葉の色は、赤系と白がありますがこの2色を使って花壇を美しく植え付けるには、それなりの技術と経験が必要とされます。





◆生育管理、環境
日当たりを好むので生育期は、北風にさらされない暖かい日溜まりを選んで植え付けます。

霜が降りない暖地で上手に育てれば、冬も葉を増やし、春に花穂を立てます。


◉植え付け

9月から10月頃に、花壇に残った草花の古株を片付け、そこにポットや畑などで育てておいたハボタンを植え付けます。

ハボタンは掘り取りする時に、あまり土を根に付けないので、植え込みが遅れたり、植え付けまでに乾燥させたりすると根付きが悪くなったり、すぐ枯れてしまいます。

注意が必要ですが、植え込んだ後上手く根付けば暖冬ならば、2月頃まで楽しむ事が出来るでしょう。


よく育つと茎も長く伸びるので花壇では、あらかじめ深植えにしておきます。


また、茎が曲がっていたり徒長した株があれば、植え込む深さや角度を調整して、中心で鑑賞出来るようにします。

鉢植えにする場合は、大きな植え木鉢に一本、又は2~3本寄せ植えし、霜の降りない暖かい玄関や軒下に置いて楽しみます。

寄せ植えには同じサイズの株ではない大、中、小組み合わせて植えると、変化があって見た目にも華やかです。

花壇でも鉢植えでも同様ですが、冬の間に晴天が続くと乾燥して元気がなくなってしまいます。

その様な場合は、小春日和となる暖かい日を選んで、根元に十分水分を与えるようにしましょう。


◉殖やし方
種蒔きの適期は7月、8月頃でばら蒔き、又は筋蒔きにします。

蒔き終わったら、軽く土をかけて涼しい場所に置きます。

本葉が3枚程になったら、3号ビニールポットに入れ、7~8枚程度になったら4号ビニールポットに移植して、根付くまで半日陰で管理します。

いずれの場合も用土は、赤玉土や黒土などの重い土を用いて、1ヶ月に一度の割合で緩効性化成肥料を置き肥します。

尚、ハボタンの場合は、植え付けの際やその後の肥料は不要です。

多肥になるとむしろ葉の着色が悪くなります。








2020/10/18

ネーブルオレンジ No.305

 ネーブルオレンジ ミカン科

原産地=インド東部、ヨーロッパ、アメリカ

英語で「ヘソ」と言う意味を持つネーブルは、その名の通り果実の頂部に、ヘソ状の窪みがあるのが特徴です。

いわゆる「バレンシアオレンジ」と同じ「スイートオレンジ」類で、一般的には「ダイダイ」など酸味の強い「サワーオレンジ」類とは区別されます。


                     「ネーブルオレンジ」


オレンジの原産地は中国雲南から、インドアッサムにかけての照葉樹林地帯であるとされており、中国では紀元前にすでに大規模な、オレンジ栽培が行われていたと考えられています。

国産ネーブルのほとんどは、アメリカ産の「ワシントンネーブル」を母品種としており、高い糖度とバランスの良い酸味があり、柑橘類の中でも特に完成度の高い食味を誇ります。

温州みかんより耐寒性で劣るので、冬暖かく夏涼しく、雨の少ない地域が栽培の適地です。

温度管理が比較的容易な鉢植えなら、全国で育てる事が出来ますが、庭植えする場合は、紀州半島以西の暖地で雨の少ない地域に限られます。

年間平均気温が16℃以上、最低気温がマイナス4℃以下にならないことが条件です。

◉植え付け 3月中旬~4月中旬
一般に出回っている苗木は接ぎ木した、1年から2年経過した苗木です。

日当たり、水はけの良い場所を選び、接ぎ木部分が地表に出るように植え付けます。

植え付けの約一ヶ月前に深さ50㎝、直径50㎝の植え穴を掘り、掘り上げた土の半分に堆肥または腐葉土10~15㍑、鶏ふん1㍑、溶リン2握りと苦土石灰150㌘を混ぜて埋め戻します。

さらに埋め穴中央を山型に盛り、植え付けた苗木は約60㎝の高さで切り戻します。

植え付け後は、乾燥しないように落ち葉やワラを株元に敷いておきます。

◉肥料
元肥として3月に堆肥を約6~12㍑、油粕200㌘、化成肥料50㌘を施します。

樹木を中心とした半径50㎝に、円を描くように浅く溝を掘って、落ち葉などと一緒に埋め戻します。

10月には追肥として化成肥料50㌘を、樹木の周囲に蒔き土にすき込みます。

鉢植えは3月に、玉肥を5~6個
8月と10月に各2~3個置き肥します。

◆生育管理、環境
大きく質の良い実を成らせるためには、ネーブルでも摘果を行いますが、木自体が多すぎる実を落とす「生理落果」が7月上旬までにあるので、これ以降に摘果を行います。

小さな実や傷ついた実、1ヶ所に集まってついた実を間引き、基本的には葉40枚に対して1果の割合で残すようにします。

鉢植えは全体でバランスよく、3~5果残します。

冬期での鉢植えは、室内に入れて保護出来るので、寒冷地でも育てる事が出来るでしょう。

マイナス3℃以上を保てば越冬させる事が出来ます。

夏は出来るだけ戸外に置いて、寒冷紗で遮光して育てる方が強い株に育ちます。

鉢植えは赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、日当たりの良い場所へ置きます。

早生のネーブルは12月中旬から1月に収穫して、2月から4月まで貯蔵してから生食します。

晩生種は冬の寒さによる落果を防ぐために、袋かけを行い2月から3月に収穫します。

最も収穫の遅いバレンシア·オレンジ🍊は、5月から6月に収穫したらすぐに生食します。


また、袋かけは年間平均気温が17℃を下回る地方では、防寒や★回青防止のために行うと効果があります。

★回青=(かいせい)とは果実が熟し、濃黄色に着色してきた時、春の新梢が伸び始めると再び果実の色が緑色に戻ってしまう現象の事です。

◉病害虫
カイヨウ病や黒点病などの病気に注意します。

若い葉や果実の表面に、病斑やかさぶた状のものが出来たらカイヨウ病です。

その部分を取り除き5月から9月頃にアグレプト水和剤1000倍液か、タレフノン200倍液を加えたコサイド水和剤2000倍液を散布します。

花や果実に黒い点が現れたら黒点病です。

5月から8月頃にラピライト水和剤500倍液を散布します。

◉せん定
前年の秋に伸びた枝は、その夏に伸びた枝との境で切り落とします。

適期は2月下旬~3月中旬です。
樹木の内側に光が十分届くように側枝を開きます。

全体に枝を開くように仕立てると実つきが早くなります。

ミカン類はネーブルも含め、生長がやや緩やかなため、樹木が高くなり過ぎることはありません。

せん定は枝が低く垂れてきた時点で切る程度にしましょう。

2年目は全体の枝数を2~3本にし、支柱を用いて開くように誘引します。

花芽は新しい枝の先端部に付くので、不用意な切り詰めせん定をすると、花芽を切ることになり結実しません。

このため間引きせん定を主にします。

込みすぎた枝弱った枝は根元から切り取り、通風日当たりをよくします。

また、側枝を更新して新梢を毎年発生させ、必要数の結実枝を維持するようにします。

◉ミカンの昔話
ミカンの原種は数千年前から知られていた様です。

それがヨーロッパに渡り、更に南北アメリカへと広がって行ったと言われています。

長い年月の間に各地へ移植されて行ったミカンは、その土地に適した品種が、次々と栽培されるようになり、現在の様に多くの品種となりました。

日本原産のミカンは「右近の橘=うこんのたちばな」
として有名な「タチバナ」です。

「温州みかん」は日本原産ですが、その原種は中国から来た物の内の一つが、偶然に実生したものではないかと言われています。

日本で最初に栽培品種となったのは「紀州ミカン」で、熊本から和歌山へ苗木を移植し育てられたものです。

江戸時代には、紀州の地がミカンの本場とされ、紀伊国屋文左衛門が20代の頃、紀州ミカンを江戸へ船で運んで財を成したとされる。

ミカンが不足していた江戸で、ミカンが高く売れ、嵐を乗り越えて江戸の人たちのために頑張ったと言う事で、江戸っ子の人気者になった。

文左衛門は人物伝によると、不明な点が多く半ば伝説上の人物である。

架空の人物とする説もあるが、実在したとする説が主流である。

※東京都江東区三好に紀伊国屋文左衛門之碑がある。

❆紀伊国屋文左衛門の碑

                「浄土宗寺院、成等院」






2020/10/15

ジャノメエリカ No.304

 ジャノメエリカ ツツジ科

常緑低木

別名=ヒース 原産地=南アフリカ
ヨーロッパ

「エリカの花散るとき」昭和38年に西田佐知子のヒット曲で、日本人にも広く知られるようになった、エリカは冬から春にかけて小さな花を小枝いっぱいにつける。

日本ではエリカ属で一番普及している。

品種によって明るく、桃、紫、白、黄、橙、緑など様々な花色があります。

また花の形も筒状や盃状、鐘状、壺状と多彩です。

品種では、スズランエリカやクリスマスパレード、カナリーヒースなどがよく知られ、いずれも鉢植えに適しています。

高さは2㍍にもなり、よく分枝して小枝の先端に3個ずつ花をつけるのが特徴です。

株全体では、かなりの花数となり冬期に寂しくなりがちな、庭を鮮やかに彩ってくれます。

花は小さな鐘形で明るいピンク色をしており、中心部には黒い★葯が見られます。

★葯とは
雄しべの先の花粉が入った袋、花粉を作る袋状の器官のこと

「ジャノメエリカ」と言う和名は、この花から黒い葯が蛇の目の様に覗くところから、名付けられたものです。





◉生育管理、環境
ヨーロッパや南アメリカの日当たりの良い、荒れ地に自生する植物で、英国では湖水地方より北方の大地でよく見かけます。


それぞれの原産地では、夏は乾季で雨が少なく、冬は寒さもそれほど厳しくない湿潤な気候です。


夏は高温多湿で冬は乾燥が続く日本で、生育させるのは簡単な事ではありません。

比較的耐寒性のある品種ですが、日陰や湿地、極端に寒い所を嫌います。

冬の寒風にさらされない、日当たりの良い場所を選んで植える必要がある事から、植え付け場所も限られます。

また、乾燥にも弱く根は細根で浅根性なので、水を切らさないように管理しなければなりません。

一端水が切れてしまうと、枝先が曲がったり葉が一斉に落ちてしまいます。

この様になると回復が望めない事になるので、要注意です。

夏の暑さには強いものの、多湿を嫌うので特別にデリケートな植物と言えるでしょう。

◉せん定
基本的には自然な樹形で育てますが、数本の主幹を作って枝数を決め他の枝は整理します。

花後の3月がせん定の適期です。

葉の付いている部分であればどこを切ってもよく、枝の分岐点のすぐ上で切るようにします。

葉がない状態の所で切ると枯れることがあります。

枯れ枝や込み合った枝は、根元から切り取り除きます。

花柄は自然に落ちる事がないので、この時に一緒に取り除いて置きましょう。

また、植えてしばらく経つと花つきが悪くなったり、下の葉がなくなったりします。

この様な枝は地際から5~10㎝ほど残した位置で、すべて切り取り株を更新する事です。


◆殖やし方
株分けは3月から4月中旬と10月から11月中旬に行います。

挿し木は4月中旬から6月
さし床は浅鉢などを利用し、パーミキュライトの用土に水あげしたさし穂を挿します。

受け皿に水を張った中に鉢を入れ、底面給水しながら明るい半日陰で、管理すると1ヶ月程で発根します。

発根後は、ビニールポットに仮植えし、1~2ヶ月後に定植します。

日当たりの良い場所が植え付けに適していますが、真夏は直射日光を避けて、風通しの良い半日陰で育てます。

◉肥料
3月に緩効性の化学肥料を施します。

◆病害虫
春から秋にかけて、ツツジグンバイムシが発生することがあります。

この虫は、湿気を嫌うので水をかけて吹き飛ばすか、マラソン乳剤、スミチオン乳剤を虫に直接散布して駆除します。









2020/10/14

シェフレラ 「盆栽」 No.303 

 シェフレラ盆栽

シェフレラは、葉の形がパンヤ科のカポックに似ていることから、カポック、ホンコンカポック(ホンコン)などとして親しまれています。

実は別種でウゴキ科フカノキ属の園芸品種で、昔から観葉植物として親しまれてきました。

原産地は中国南部で「ヤドリフカノキ」とも呼ばれています。

枝変わりや実生の違いで多くの品種があり、小葉が丸みを帯びる濃緑色の「ホンコン」や、これに黄色の斑が入る「レナタ·ヴァリエガタ」などが代表的です。

高さは3~7㍍になり、よく分枝して気根を出します。

挿し木で殖やすことが出来るので、ミニ盆栽に仕立てやすいのも特徴です。

◉仕立て方
プラスチック製の鉢などで挿し木して殖やします。

鉢に植え替える場合は、枝を整理して双幹に仕立てます。

切り戻して、側枝を出させるか、あるいは何株かまとめて、植えると全体的にボリュームが出て、見栄え良く仕上がります。


◆置場所
観葉植物としてはかなり丈夫な部類なので、日陰にも置けますがもともと強い光線を好むので、通常は戸外の日当たりのよい場所に置くのが無難です。

室内の場合は、直射日光を十分に当たる窓越しがよいでしょう。

冬は霜が降りる前に暖かな室内に置くようにしましょう。

◉水やり
春から秋にかけて鉢土の表面が乾いた時点で水やりをします。

水分が蒸発しやすい夏は、こまめに鉢を観察するようにし、毎日欠かさず水やりします。

冬は土の表面が乾いているくらいが調度良いでしょう。

水やりをしっかり行っているのに、葉に元気がない場合は、根詰まりを起こしている可能性があります

鉢土の上に根が這っているか調べ、必要なら植え替えを行います。

★肥料
春から秋にかけて緩効性化成肥料を2ヶ月に1度の割合で与えます。

◉せん定
基本的に伸び過ぎた枝は、どこで切り詰めてもそこから芽が伸びてきます。

シェフレラは光線不足になると、枝が曲がってくるので切り戻しを行って整姿します。

切り戻しは芽の出ている部分の上で切るようにします。


せん定後に出てくる枝もまっすぐ伸びず、斜め上に伸びる性質があるので、ある程度伸びた所で取り除く必要があります。

胴吹き芽がよく伸びる性質があるので、不要なものは早めに切り、樹形に必要になるような胴吹き芽は生かして、枝にするとよいでしょう。

シェフレラは常緑なので、せん定は春から生長期が適期です。


◉植え替え
鉢土の表面に根が見え始めたら植え替えます。

2~3年に1度のペースで、気温が安定して暖かくなってから行います。

適期は5月から9月頃までです。 

葉が枯れ気味になり、落葉するようになった場合は、根詰まりを起こしているので、このような場合も植え替えます。

植え替え後は、日当たりの良い所に置き、夏は半日陰、秋は十分に日か当たる場所に置きます。

★病害虫
新しい葉が伸びる頃、アブラムシが発生することがあります。

よく観察して、見つけ次第スミチオン乳剤を散布して駆除しましょう。

乾燥した室内では、カイガラムシが発生する事があるので、スプラサイド乳剤などで早い時期から防除するようにしましょう。






2020/10/12

チャノキ「 茶之木」No,302

 チャノキ    ツバキ科    常緑広葉中低木

原産地=中国南西部

平安時代末期、宋、(そう、宗)の国「現、河南省」に渡っていた、日本臨済宗の開祖で千光国師とも言われる、栄西禅師が帰国の際にチャノキの種を持ち帰り、蒔いたのが日本伝来の最初と言われている。

栄西(えいさい)は「茶は養生の仙薬なり」の一説で始まる「喫茶養生記」を承元5年(1211)に著した。

この書物は上下二巻からなり、茶の薬効、栽培敵地、製法まで細かく記されています。

お茶の効能について記した最古の記述は、鎌倉時代の記録書として有名な「吾妻鏡」である。

栄西禅師は緑茶の効用を説くなど広く茶の普及に尽力しました。

その後、栽培されたチャノキが野生化し、関東以南の日本各地に分布するようになりました。

一部にチャノキは日本の九州地方が、原産であると言う説がありますが、「茶」と言う呼び方は中国の「チャー」に由来しており、日本独自の名前と思われるものが存在しないことから、中国原産説が有力です。

ツバキ属の仲間で、ツバキの花に似た5弁の白色花を葉腋に沿って10月から11月に咲かせます。

ツバキの花には花柄がなく、チャノキの花には花柄が有るので見分けがつきます。

茶の材料となる若葉同様、花も芳香を持っています。

扁円形をした直径2㎝程の果実は、翌年の秋に熟し表皮が裂けて、中から三角形の3つの種子(そう果)が顔を覗かせます。

葉は肉厚で光沢があり、先端が尖って細かな鋸葉があります。

カテキンなどの成分を含む緑茶は、健康食品として注目されていますが、元来疲労回復や利尿、健胃薬として用いられていました。

尚、緑茶、紅茶、烏龍茶はいずれも同じチャノキの葉を原料としています。

摘んだ葉をそのまま蒸し、緑を残したものが緑茶、半発酵させたものが烏龍茶、健全に発酵させたものが紅茶です。

緑茶、烏龍茶は中国産の小型種、紅茶はインド産の大型が主に使われています。

茶畑などで見かけるチャノキは、緑茶を取るために栽培されているので、切り詰めて低木に仕立てられていますが、放任すると樹高が7~8㍍に達します。

萌芽力が強く、大気汚染などに強いことから、庭木、公園樹や街路樹の下木などの環境緑化樹としても利用されています。


            (チャノキ) 


◉生育環境
日当たり、水はけがよく腐植質に富んだ肥沃な場所を好みます。

暖地性の植物ですが耐寒性は比較的強く、東北地方でも栽培可能な品種も開発されています。

丈夫でとても育てやすい樹種ですが、多くの花を楽しむためには、十分な日照が必要です。

◉植え付け、移植
チャノキは深根性で根を傷めやすいので、成木の移植は困難です。

苗木は、将来移植しないで済むような場所を選んで植え付けます。

植え付けは3月から4月の春植えと、9月から10月の秋植えが適期です。

◆肥料
花を楽しむためにはカリ、リン分の多い有機肥料を4月と9月~10月頃に根元に与えます。

★病害虫
通風が悪くなると、チャドクガが発生する場合があります。

被害が大きい場合は、4月から5月と8月から9月の2回の発生期に、スミチオン乳剤などを散布します。


◉せん定 4月~5月  11月~12月
放任しても半円形の自然樹形にまとまります。

生長はあまり早くありませんが、生育に合わせて樹芯を止め、3~5㍍の樹高に保ちます。

花の咲いた枝は花後切り戻して、徒長枝や込み枝を整理します。

萌芽力が強く、強い刈り込みせん定にもよく耐えます。

ツバキやサザンカと同様、円筒形や玉仕立てなどの仕立て物にする事もできます。

ただし、花を楽しみたい場合は、4月から5月に刈り込みを行います。

夏以降に刈り込むと、花芽も刈り込んでしまい、花が咲かないので注意します。

◆殖やし方
実生は秋(10月~11月)に種子を取り出して採り蒔きします。

挿し木は、6月から7月に充実した本年枝(新梢)を15㎝程に切ってさし穂とし、赤玉土、鹿沼土などのさし床に挿します。









2020/10/08

イチゴノキ No,301

 イチゴノキ     ツツジ科 

常緑広葉低木

別名=ストロベリー·ツリー  ※マドロナ属

原産地=南ヨーロッパ、アイルランド、南アジア、ヨーロッパ、北アメリカ

約20種の同属種が確認されており、主に岩の多い森林地帯等に自生します。

欧米で「ストロベリー·ツリー」と呼ばれていることから、「イチゴノキ」と言う和名が付きました。

日本に伝えられたのは明治時代ですが、園芸店などに幅広く流通するようになったのは、ごく最近のことです。

尚、日本に同属の植物はありません。

低木に分類されていますが、ツツジ科の植物の中では大きく、欧米では樹高5~10㍍に達するものもあります。

生育環境の違いからか、日本国内では大きく生長しても2~3㍍程度です。

5月~6月にスズランに似た白やピンク、クリーム色の釣り鐘状の集合花を咲かせます。

ハチミツに似た甘い香りがあります。

秋には表面に細かいイボ状の突起がある、サクランボ程の球形果実が成ります。


                           (イチゴノキ)

この果実がイチゴの実に似ていることが、名前の由来と言われています。

果実は甘味があり、砂糖煮にしてジャムにしたり、果実酒、ワインなどに用いられます。

しかし、学名の「アルブツク·ウネド」のウネドは「一度」と言う意味で「一度食べたら二度と食べたくないくらいまずい」ことに由来していると言われており、属名の語源もケルト語の粗い果実、渋い実のなる木によるとの説があるなど、生食には適さないようです。

葉はタンニンを多く含む、そのため収斂(しゅうれん)、利尿、殺菌作用などがあり、薄く剥がれる淡褐色の樹皮とともに、薬用ハーブとしても利用されています。

花と実の双方が楽しめ、地際から多数の枝が出てよく茂ることから、家庭果樹、ガーデンツリー、公園樹などに利用されています。


◆生育環境
日当たり、水はけのよいやや火山灰質の、軽い肥沃な土が適していますが、半日陰でもよく育ちます。

土壌は中性から弱酸性を好みます。

★植え付けは3月から4月
用土にピートモス、腐葉土をよくすき込み高植えにします。

移植には弱いので、植え替えをしないでいいように、植え付け場所を選ぶ必要があります。


◉肥料
3月頃に油粕、骨粉を中心として有機肥料と粒状の化成肥料を、等量混ぜたものを株元に与えます。


また、ピートモスを4月から5月頃に株周りに少し厚めに敷いておくと、排水がよくなり肥料もよく効きます。

★病害虫
まれにテッポウムシ(カミキリ虫の幼虫)が発生することがあります。

食害を受けた幹穴に、スミチオン乳剤の20~30倍液を注入して駆除します。

◉せん定
株元近くからよく枝が出て、株立ち状の樹形になります。

日本では、放任しても円形に近い樹形にまとまるので、改めて整姿、せん定する必要はほとんどありません。

必要に応じて、飛び枝や徒長枝、樹冠内部の細かい込み枝を整理する程度で十分です。

樹冠が大きくなると、風の影響を受けて倒れやすくなるので、大きくなった場合は支柱をして保護するようにします。

◉殖やし方実生は秋(10月~11月)に熟した果実を採り、よく水洗いすると小粒の種子が取れるので、それをまき床に蒔いて管理します。

挿し木は、今年伸びた新梢を5~6㎝に切ってさし穂とします。

切り口を水に浸し水あげした後、鹿沼土のさし床にさし、十分に水やりして乾燥に気を付けながら管理します。

挿し木の適期は6月中旬から7月上旬です。








ヤツデ No,300

 ヤツデ ウコギ科 常緑低木

別名=テングノハウチワ

東北地方南部以南の本州から四国、九州、南西諸島にかけて自生する。

海岸付近の林の中に多く自生する。

ヤツデは日本産のウコギ科で、中国に自生しない植物であり漢方薬名もない。

長い柄に5,7,9,11と言うように、必ず奇数に深く切れ込み、大きな掌状葉を持つのが特徴です。

手のひらのような大きな葉の形からこの名がある。

葉の切れ込みが効率よく日照を受けるためのものである。

カクレミノが生長に合わせて、葉の切れ込みが変化するのに対し、ヤツデの葉は変化しません。

これはヤツデが低木である事、葉が大きい事と関係していると思われます。

ヤツデの生育にとって冬の日照は、特に重要で樹林の中で生育しているヤツデは、晩秋に周辺の高木が落葉すると、次第に葉の向きを変えて、冬の日光に対応することが知られています。

ヤツデは邪悪なものの侵入を防ぐ呪力=(じゅりょく)があると信じられており、古くから魔除けの庭木として植えられていました。

軒先に葉を吊るしたりする風習もあったようです。

ウコギ科の植物には生薬としての効果があり、ヤツデも葉を煎じてせき止めの薬にしたり、湯に入れてリウマチの治療に用いたりしました。

葉に含まれる「ファトシン」と言う成分が、実際に鎮咳効果があることがわかっています。

また、主成分がサポニン類でサポニンには痰を切る作用があります。

乾燥葉を1日10㌘煎じて3回に分けて飲めば、痰切りによいでしょう。

◆ヤツデの葉の利用法、効能
1日300~500㌘を布袋に入れ、鍋で煮出して入浴直前に浴槽に袋ごと入れます。

または、葉を細かく切り、5日程乾燥させて、袋に入れて入浴時に使用すると、神経痛やリウマチに効果があります。

葉は厚く乾燥しにくいので、水洗いした後に細かく刻んで日干し乾燥させます。

生の葉を火で炙って柔らかくして、リウマチ、神経痛、腫れ物に貼る方法もあります。



                                       (  ヤツデ )


日陰に強い陰樹の代表的樹木ですが、大気汚染にもよく耐えます。

日当たりの悪い庭の隅や、勝手口付近などに植えなど、利用価値の高い庭木です。

花が少ない11月から12月に、ゴルフボール状に集まった白い花をつけます。

花は香りがあり、冬にも関わらず昆虫がよく集まり、果実は翌春に黒く熟す。

◆園芸品種
葉に白い斑が入るフクリンヤツデ

黄色い斑が入るキモンヤツデ

葉脈に沿って黄色の斑が入るキアミガタヤツデ

白斑の入るシロフヤツデなどがあります。 

斑入りの品種は、洋風の建物や芝生の庭などにも良く合い、鉢植えの観葉植物としても十分楽しめます。

◉生育管理、環境
日当たりの良い乾燥地では、株の成長が悪く日除けなどの必要があります。

日陰または、半日陰の保湿性のある腐食質に富んだ、肥沃な土地が最も適しています。

◆肥料
肥料を与えすぎると、大きな枝葉が雑然となりやすいので、出来るだけ施肥は控えるようにした方が
無難です。

肥料が必要な場合は、生育の様子を見ながら3月か9月頃に油粕、粒状の化成肥料などを株元にバラ蒔きします。

◆病害虫
乾燥が激しいと、カイガラムシが発生する場合があります。

活動期のカイガラムシには、スミチオンなどを散布して駆除します。

また、冬期のカイガラムシには、石灰硫黄合剤の10倍液を月に2~3回散布します。

カイガラムシの数が少ない場合は、なるべく薬剤散布は避け、剥ぎ落とすなどして駆除しましょう。

◉植え付け、移植
4月中旬から7月までの高温の時期と秋9月ならば可能です。

移植時の注意点として、ヤツデは葉が大きく蒸散作用が盛んなため、ほとんど全部の葉を切り落として幹だけにして行います。

時々、乾燥防止のため水を注いであげる必要があります。

◉せん定、整姿
大きくなりすぎた枝や、混み過ぎている枝は間引くように切り、風通しなどを考えて大きい下の方の葉も時々切り落とします。

特に狭い場所では、枝を3本くらいにして新葉が伸びきった6月頃に、頂部の葉だけを残して、ほかの葉を全部切り取ると、その後出てくる葉が大きくならず、小型の樹形にすることができます。

生長が比較的遅いので、十分な広さがある庭では放任して育てることも可能です。

ただし、茎が伸びて下葉が落ちるので樹形を美しく保つのが難しい上、枝葉が大きく株立ち状に広がるので、一般的には小ぶりに保つように整姿、せん定を行います。

1株に枝が3本くらい残るように、不要な枝は根元から切り取ります。

整姿する時は、頂部の葉を5枚程残して、下の古い葉を切り落とします。

また、大きな葉は、3月から4月に切り取ると、新しく出る葉は小ぶりになります。


                                    (ヤツデの花)   

株元近くから出た細かい枝も、樹形を乱すので根元から切り取るようにします。

高くなり過ぎた株を小ぶりにする場合は、5月から6月に低い部分にある芽の上で枝を切り取ります。

◆殖やし方
実生は4月から5月に熟した果実を採り、水洗いして種子を取り出し、半日陰のまき床に蒔きます。

2年生苗になるまで冬は寒冷紗などで防寒します。

挿し木は6月から7月に若い枝を15~20㎝程に切り、大きい葉を落としてさし穂とします。

水あげした後、赤玉土のさし床にさし、半日陰で管理します。






2020/10/07

カエデ、モミジ No,299

 カエデ、モミジ 落葉、一部常緑あり

カエデ科
約150~200種程確認されている、原生種のほとんどが、北半球の温帯地方に分布しています。

日本でも北海道から九州まで、各地域の環境に適した自生種が分布しています。

カエデの名前は万葉集「かえるで」とあることに由来し、葉の形状が蛙の手(足)に似ているためと言われています。

一般的には「楓」と書きますが、これは類似種の「フウ」と言う中国原産の樹木の事で、正式には(木へんに戚)と書き表記します。

楓=実が球状のカエデに似た落葉樹

★植物学的には、カエデとモミジの区別はありませんが、盆栽では葉の切れ込みが深く、5つ以上有るものを「モミジ」それ以外のものを「カエデ」と呼んでいます。

日本では、古くから観葉植物として愛され、特に江戸時代から明治にかけて、多くの品種改良が行われました。

明治初期の文献には200種を超える園芸品種が紹介されています。

また、種類の多いカエデ属の用途は幅広く、木材は家具材、楽器の素材に使われるほか、樹液はシロップや目薬に使われるものもあります。





◉生育管理、環境
美しい紅葉を楽しむには充分な日照が必要ですが、一日中、日が当たる環境はよくありません。

一般的には午前中によく日が当たり、午後は西日が当たらない排水のよい、環境が最も適しています。

他の樹種との相性は比較的よいので、混植して直射日光が当たりにくいようにするのも一つの方法です。

土壌は特にこだわりませんが、乾燥を嫌いますので特に、根元付近を乾燥から防ぐ配慮が必要です。

◆肥料
土質がよくない場合は、油粕、鶏ふんや粒状の化成肥料を幹の周囲に少量与えます。

乾燥の強い所では、完熟堆肥を株元にすき込むと効果的です。



                                    「養老渓谷」

◉せん定
自然樹形に仕立てるのが一般的です。

若木のうちは、下枝と込み合った枝などを切り取るだけで充分です。

成木になると狭い庭では、大きくなり過ぎるので、枝分かれしている部分で、長い方の枝を根元から切り取る間引きせん定を行い、枝の途中から切ると樹形を乱すので、必ず根元から切るようにします。

◆殖やし方
種類によって大きさ形が異なりますが、一対の羽根を持つ「翼果=よくか」であることがカエデの種子の特徴です。

◆翼果
果皮の一部が平らな翼状に発達した果実で、単乾果であり、果実が成熟しても裂開しない閉果である。

翼の生えたような形状により、風によって離れた所へ運ばれる。


秋に採取した種子を砂の中で貯蔵し、翌春3月に蒔きます。

★カエデの芽つぎ
①充実した枝の先端の葉の柄をすこし残して切り、5㎝程のつぎ穂を作ります。

②葉をつぐ台木の幹を木質部まで切り込んで、台木とさし穂の形成層を合わせ、ビニールテープで巻き、翌春新芽の伸びる部分を開け(出して)ておきます。


                             (カエデの芽つぎ)


ウメ、モモ、ハナミズキも同様の方法で芽つぎ出来ます。

作業は9月上旬までに終えるようにしましょう。

◆主な病害虫
※うどん粉病
ベンレート水和剤1000倍液を発生前に、月に1~2回予防のために散布します。

発生が酷い時には、10日おきに2~3回同じ濃度の散布液を使います。

※テッポウムシ(カミキリ虫の幼虫)
虫穴にマラソン乳剤の500~1000倍液を注入し、土などで穴をふさぐ。

※カミキリ虫
スミチオン乳剤1000倍液を散布するか、少量なら捕殺する。






2020/10/06

ポットマム No,298

 ポットマム キク科 宿根草

原産地=中国

秋を代表する草花のひとつで大きく「和菊」と「洋菊」に分かれ、品種は非常多く観賞用だけでなく、食用になるものもある。

中でも「ポットマム」は鉢花として出回るキクの総称でPot(鉢)とChrysanthemum(キク)のmumを合わせた言葉で、「鉢植えのキク」と言う意味です。

ポットマムは欧米生まれの洋菊から茎の伸びにくい、中輪系のものが選抜されて出来ているので、和菊に比べて手間がかからず、よく分枝してたくさんの花をつける。

盛んに品種改良が行われ、その数は100種以上あると言われています。

花色も花形も豊富で多種多彩です。




◉生育管理、環境
ポットマムの多くは開花株で、苗物はほとんど出回っていません。

花を長く楽しむには、購入した株をすぐに一回り大きな鉢に植え替えることです。

鉢のわりに地上部のボリュームが大きいので、つぼみが次々と咲き始めると、水切れを起こして株が傷むからです。

日頃の管理としては、土の表面が乾いたらたっぷり水を与えます。

9月頃に下葉取りを行います。

草丈を抑えたい時は、8月下旬と9月中旬の2回に「わい化剤」(B-9 200倍液など)を散布するとよいでしょう。

★矮化剤(わいかざい)
植物の成長を抑制して、草姿を改善する薬剤の総称で、「植物成長抑制剤」ともいう。

茎の伸長を主に抑制し、葉や花などの他の器官にはあまり作用しない。

茎の伸長を抑制するだけでなく、分枝の発生を促進する作用を持ったものもある。

使用する際には、植物ごとに適切な薬剤の種類や濃度、使用可能時期、回数などをよく調べて調整する必要があります。

◉植え付け、植え替え
購入した開花株のプラスチックの鉢やポットを外します。
この時、根鉢(土)は崩さないようにします。

一回り大きな鉢の鉢穴を底網ネットでふさぎ、軽石と市販の草花用培養土を、軽石が隠れる程度に入れ、株を鉢の中に置きます。

鉢と株の隙間が出来ないように培養土を入れます。

ウォータースペースを残すように、培養土を入れたら完成です。

植え替え後はたっぷり水を与え、春まで管理します。

2年~3年に1回、3月中に一回り大きな鉢に植え替えを行います。

植え替え時に株分けを行い、ポットに植え付けたものを作っておくと、寄せ植えの素材として使う時に便利です。

◆肥料
肥料を好むので追肥は固形の油粕を、1鉢当たり2個を目安に置き、10月以降は液肥を7日ごとに灌水がわりに与えるとよいでしょう。

◆病害虫
白さび病やアブラムシなどが発生しやすく、特に9月の長雨時に多いので週に1回薬剤散布を行います。

◉せん定
12月頃になると地上部が自然に枯れるので、地表から2~3㎝を残して、枯れた枝を切り詰めます。

その後、極端に乾かさないように時々水やりをします。

2年目以降になると、わい化剤が切れるため草丈が高くなり過ぎることがあります。

この場合は、早春に出た芽を伸ばし、4月末から5月上旬に地表から葉を4~5枚つけた位置で切り戻しをすることで、草丈を低く抑えることも出来ます。

花芽が発達を始める7月中旬のまでに、1~2回適芯を行うとよいでしょう。

◆殖やし方
6月下旬から7月上旬に伸びた芽を指で折り取り、約7㎝の長さで水平に切り、葉を上から4枚程残して、下の葉を付け根から取り除きます。

約一時間水に浸しておき、育苗箱にパーライトかバーミキュライトを入れたっぷり水を含ませた後、さし穂を約2㎝さします。

しばらくは葉面が濡れる程度に水を与え、明るい日陰に置いて管理します。

2~3週間で発根します。







2020/10/05

コトネアスター No,297

 コトネアスター バラ科 常緑小低木

別名=ベニシタン 「紅紫檀」ミルクフラワーコトネアスター

原産地=中国雲南省

日本へは昭和のはじめに渡来し、現在では全国各地に広がっています。

シャリントウ属、属名は「マルメロに似ているもの」と言う意味を持つ。

サンザシ属(ピラカンサ)と類似しているが、葉の部分に鋸歯がない、枝にトゲが生えないなどの差異がある。

コトネアスターの仲間は(旧世界·アフロ·ユーラシア大陸)北半球に約400種が分布する。

★旧世界と旧大陸は同じものを指すが、必ずしも単一の陸塊と言う意味はない。

★アフロ·ユーラシア大陸は、アフリカ大陸とユーラシア大陸を合わせた大陸であり、地球表面上における最大の陸塊(超大陸)である。

※陸塊=りくかい(大陸のこと)

主な原種、園芸品種仲間
ベニシタン、コトネアスター·ワテレリ
コーラル·ジューティ


        (コトネアスター)


中国原産のベニシタンは、赤色の果実と枝が横に広がる樹形で、最も広く栽培されています。

5月から6月に白、或いは淡い紅色の花をたくさん咲かせますがあまり目立ちません。

10月頃に鮮紅色に熟す、ナシ状果が花の少ない季節を彩り、2月頃まで楽しめます。

ちなみに花のつぼみも赤色です。

厚く光沢のある葉は互生し、5~15㍉と小さく裏面と葉柄には毛が生えています。

秋が深まると、赤紫に紅葉して落葉する種類もあります。

枝は低い位置で枝分かれして、ほとんど這うように水平に広がっていきます。

盆栽や垣根などのほか、グランドカバーとしても利用が盛んです。

◉生育管理、環境
1年枝は長く伸びて這っていくだけで分枝しません。

翌年には短枝を作って花芽を形成し、春早々に蕾となって現れ、晩春から初夏にかけて開花します。

秋になると果実が枝に連なるようにして、赤色に熟していきます。

適応性に優れた植物なので、やや日陰でもよく実をつけるなど、どんな環境でも育ちますが出来るだけ、日当たりのよい場所を選ぶ事です。

◆植え付け、植え替え
土質は選びませんが、多湿になる場所は避けましょう。
植え付け場所には、ピートモスを多めに混ぜて水はけをよくしてやります。

植え付けは2~3月頃、又は9月~11月頃に行います。

★肥料
施肥は2~3月頃に化成肥料を与えます。

追肥はほとんど必要ありません。

◉害虫
幹や枝にコブなどの異常組織が現れたり、穴や木屑、虫糞、ヤニなどがあるという状態。

葉が霧吹き状に黄色く変色したり、縮小、葉巻状に変形したり、穴やかじり痕かをある状態。

また、新芽やまだ緑色の枝が萎れたり枯れたりする状態。

果実や種子の表面にかじり痕や傷が見られたり、表面に穴が開き内部に、虫や虫糞が見られる状態。

この様な場合、毛虫、ハマキムシ、イモムシ、シャクトリムシ、ダニなどの害虫がついていると考えられます。

枝ごと取り除き、スミチオン乳剤などで予防しておきます。




◉せん定
基本的には、花つきや実つきをよくするために、せん定はせず枯れ枝などを取るだけにします。

グランドカバーとして利用する場合は、放任してもよいでしょう。

境界線に植栽した場合は刈り込みましょう。

その際、冬の間は花芽と葉芽の区別がつかないので、春に芽が伸び出してから、せん定を行いましょう。

枝があまりにも込み合ってきたら、数年に1回、4月上旬にせん定します。

新梢のせん定は5月から9月頃に、生育が悪い小枝や枯れ枝を、付け根から切り取って間引きます。

品種によりせん定の方法が変わります。

枝の長い品種の場合は、立ち枝を付け根から間引きます。

短い品種の場合は、新梢を全体的に軽く刈り込みます。

大抵は自然樹形ですが、1本の幹を中心に主幹樹形に仕立てる方法もあります。

それにはまず、支柱を立てて根元から伸びるひこばえを早めに取りましょう。

◆殖やし方
挿し木は6月から7月頃に行います。
日当たりのよい場所で育った枝を8~10㎝程の長さに切って、下葉を取り除いておきます。

さし穂の切り口は45度位の角度に切り、切り口の樹液をよく洗って、1~2時間程度水揚げをしてからさします。

種蒔きは2月から4月頃に行います。






2020/10/04

カランコエの花が咲く気配がないのは、なぜ? No,296

 カランコエ ベンケイソウ科 多年草

多肉植物 別名=ベニベンケイ

原産地=アフリカ南部、東部、アラビア半島、東アジア、東南アジア

カランコエは、ポインセチアやシャコバサボテンなどと同様、昼の長さが短くなると花芽が分化せず、いくら待っても開花に至りません。

秋以降は夜間照明がある場所に置くと、花が咲かない事があります。

例えば電灯などの影響で、日照の時間が長くなっている事も十分考えられます。

周囲の環境を一度総点検して見た方がいいでしょう。

この様な場合は、花後日の長い7月~8月に短日処理を行います。

夕方の5時から翌朝8時頃まで、段ボール箱で鉢の上から覆い、光を完全に遮断して日に当てる時間を9時間程度に制限します。

これを20~30日間、毎日繰り返せば花芽が分化していきます。


          (カランコエ)

尚、短日処理をしてよいのは、草丈が10㎝以上に成長している株です。

花芽がしっかり分化しているかどうかを確かめるには、ルーペを用いて成長点を観察する事です。

花芽は丸みを帯びており、反対に細かく尖っているのは葉芽なので見分けやすいでしょう。

開花は花芽が出来てから、1ヶ月半から2ヶ月経過した頃となります。

暑さに弱いので、夏は風通しのよい半日陰で育てます。

花柄は順次摘み取り全部咲き終わったら、3分の1程切り戻して固形肥料を与えますが、開花中は与えません。

霜に当てると枯れやすいので、冬は室内で育てます。

ベル形の花を咲かせるものは、霜の当たらない戸外で11月下旬まで管理すると、花芽がつきやすくなります。

◉肥料
5月から9月に暖効性化成肥料

10月から12月に液体肥料を与えます。

◆植え付け、植え替え
5月から6月と9月が適期で2年に1回位切り戻しと同時に植え替えます。

根鉢を崩し、古い土と根を半分程度落として、深めに植え付けます。

家庭では過湿、過乾燥になりやすいので、入手した株の花が終わり次第、赤玉土や軽石を主体として、水はけのよい用土に植え替えます。


★切り戻し
5月から6月と9月に行います。
春の切り戻しは、花後の花茎の切り取りを兼ねます。









2020/10/03

アカシデ No,295

 アカシデ カバノキ科クマシデ属

別名=シデノキ、コソネ、ソロ 「赤四手」

原産地=日本

北海道空知郡以南の各地の山野に幅広く自生するほか、朝鮮半島から中国にも分布している。

アカシデは新芽が赤く、また秋には紅葉もするのでこの名がある。

シデの仲間は黄褐色に色づくものが多いが、本種は赤く紅葉する。


        (アカシデの紅葉)


山野の川岸など、湿った肥沃な所を好む。

「シデ」と言う名称は、垂れ下がって実る果穂(かすい)の様子が、神前に供える玉串やしや、縄して下げる細長く切った白い紙に似ている事に由来します。

(四手または垂、幣=シデ)

9月から11月に一斉に垂れ下がる果穂を見れば、すぐにシデの仲間だと見分ける事ができます。
(一見ミノムシの様にも見える)

古くから雑木林や庭園、公園の植栽、盆栽などによく利用されている樹種です。

4月から5月にかけて、新葉が展開するのと同時期に、下垂した穂状の花序を付けます。


         (アカシデの花)

雌雄同株ですが、雌花と雄花が別々に咲きます。

葉は表面が鮮緑色、裏面は淡緑色でともに粗毛(伏毛)で覆われ、細かい鋸歯があります。

樹皮は暗灰色でなめらかで、隆起した皮目が多く老木では筋状のくぼみが目立つ。

果実は8月から9月に熟し、果穂は長さ4~10㎝で、クマシデやサワシバに比べて果苞がバラバラした感じで付く。

葉状の果苞がまばらに付き果苞の基部には堅果が一個つく。

★果穂=かすい(中に種子がある)
種子を抱いた果苞が房状になったもの。

★果苞=かほう
つぼみを包む様に葉が変形したもの。
     
シデ類は盆栽樹としては、「ソロ」の名で親しまれ、新緑と黄紅葉の美しい雑木盆栽として知られています。

シデ類は同属の近縁種が多く、日本各地に分布しておりいずれも庭木や盆栽樹として親しまれていますが、中でも特に人気が高いのが「アカシデ」です。

初夏の新芽が赤味を帯びて美しい事に加え、秋の紅葉も他のシデ類が黄褐色に黄葉するのに対し、アカシデは美しく紅葉することから、盆栽界ではアカメソロ(赤芽曽呂)の名で珍重されています。

◆品種
園芸種は特にありません。

近縁種として
北海道から九州までの山間の水辺を中心に分布するサワシバ(サワシデ)

本州から9月の山野に分布するイヌシデ(シロシデ)

クマシデ、イワシデなどがあります。


        (熟した果穂と果苞)


イヌシデは緑白色の新芽に、アカシデと違った味わいがあり、クマシデは大柄で緻密な葉脈を持った、葉と長く垂れ下がった果穂でそれぞれ人気がある。

昔々の話で、おじいさんは柴刈りにと言う語りがあるが、この柴とはサワシバをはじめとするシデ類の樹木の事です。

カシ類と同様に、薪炭材として古くから庶民を中心に幅広く利用されていた。

傘や農具、器具類の柄の材料、ろくろ細工の材料として用いられるなど、多岐に渡り生活に密着している樹種です。

◉生育環境
日当たり、水はけのよい腐植質に富んだ肥沃な場所を好みます。

土質は特に選びませんが、株元が乾燥すると樹勢が弱くなります。

★植え付け、植え替え
植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥を十分ににすき込んで高植えにし、必要に応じて支柱で支えます。

植え付けの適期は2月~3月と10月~11月です。

◆肥料
樹勢が強く、特に土質が悪くない限り必要ありません。

枝の生育が悪い場合は、3月または9月に油粕や粒状化成肥料などを株元に施します。


★病気
カイガラムシ
樹冠内の日照、通風が悪いと発生します。

冬期にマシン油乳剤や石灰硫黄合剤の散布で防除します。

テッポウムシ(カミカリムシの幼虫)
成虫を見つけたら捕殺します。

幹に食入口(虫穴)を見つけたら、穴にスミチオン乳剤などを注入して土などで穴を塞ぎ駆除します。

◉せん定、整姿
強せん定、刈り込みを嫌うのでせん定は最低限に止め、自然樹形で育てますが一般的です。

枝の途中で切らず、必ず付け根から切るようにします。

自然の柔らかい姿を保つためにも、枝抜きによる整姿、せん定が基になります。

単植でも美しい樹木ですが、何本かを寄せ植え風に列植すると味わいが増します。

その場合は、一律に樹形を整えるのではなく、それぞれの木の個性を生かして、多少異なった樹形にした方が趣が出ます。

◆殖やし方
9月下旬から11月上旬の実熟期に果穂を採り、2~3日陰干しします。

これを手でよく揉むと中から種子が出てくるので、すぐに蒔きます。

乾燥に注意して管理すれば、翌年の4月頃に発芽します。






2020/10/02

 ジュウガツザクラ No,294

ジュウガツザクラ バラ科 落葉低木

別名=オエシキザクラ 「十月桜」

原産地=日本
名前の通り、10月頃から可憐な花が咲きます。

地方によっては七五三の頃に咲くことから、「七五三桜」と呼ぶ地域もある。


多くは淡紅色または、白色の八重咲きですが時折、一重咲きのものが見られることもあります。

春に咲くソメイヨシノのように、一斉に開く事はありませんが、開花期間が長く12月頃までポツポツと断続的に咲き続けます。

花数が少ない上に花径(1.5~2㎝)も小さいため、一般の「桜」と言う言葉から連想する、華麗さはありませんが、さっぱりとした魅力がある花です。

また、二度咲きの樹種として知られ、3月下旬から4月上旬にかけても、一般の桜と同じように開花します。


春に咲く花は秋花より大きく、一斉に開花するがソメイヨシノなどと比べると花数は少ない。

樹高が3~4㍍と低く、一般家庭でも育成可能です。

小ぶりに育てることもできるので、小品盆栽や山野草の寄せ植え盆栽の主木として、用いられることも多い花木です。

サクラの野生種は大きく6つのグループに分けられますが、その中のエドヒガン群に分類される、コヒガンザクラの園芸品種と言われています。

★コヒガンザクラとは
房総半島、伊豆半島の山地に自生するエドヒガンとマメザクラの交雑種です。

品種改良の歴史ははっきりしていませんが、明治時代中期頃には、寺院や公園などを中心に全国で栽培されるようになりました。

特に寺院との関わりが深く、日蓮聖人の命日に行われる法要=御会式(おえしき)の頃に、花が咲くことから「オエシキザクラ」の別名があります。

◆エドヒガン(江戸彼岸)
別名=アズマヒガン、ウバヒガン
日本に自生するエドヒガン群の野生種は、エドヒガンだけだが、ソメイヨシノをはじめ栽培品種の数は多い。

この仲間はガク筒が丸く膨れ、上部がくびれてツボ形になるのが特徴、寿命の長いサクラで天然記念物に指定されている名木や巨木が多い。

春の彼岸の頃に咲き、東京に多く植えられていた事からこの名が付いた。

◆マメザクラ(豆桜)
別名=フジザクラ
マメザクラ群のサクラは、葉の展開前または同時に開花する。

マメザクラの仲間とタカネザクラの仲間の2つのグループに分けられる。


        (ジュウガツザクラ)

◆品種
同じコヒガンザクラ系の園芸種で、晩秋から冬にかけて開花するものに一重咲きの「シキザクラ」

花径が3㎝前後とやや大きい、一重の白色花が咲く「フサザクラ」などがあります。

◉生育管理、環境
日当たり、水はけのよい腐植質に富んだ肥沃な場所を好みます。

日陰や半日陰では花芽のつきが悪く、生育もよくありません。

庭の広さに余裕があればできるだけ、群植は避け日陰を作らないようにします。

乾燥を嫌うので、適度な保湿力を持った土壌に植え付けるようにします。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥を十分にすき込んで高植えにします。

植え付け、移植の適期は2月下旬~3月と11月~12月です。

◆肥料
普通の土壌であれば、寒肥として1月から2月に油粕、鶏ふん、腐葉土などを株元にすき込む程度で十分です。

造成地など土壌が痩せている所では、4月から6月に油粕と粒状化成肥料を等量混ぜたものを、必要に応じて9月から10月にも同様のものを、追肥します。

◉病害虫
サクラ類によく見られるテングス病や胴枯れ病、テッポウムシなどが発生する場合があります。

★テングス病 (天狗巣病)
5月~12月に発生
病状は色々ですが、代表的な症状は幹や枝の間からたくさんの小枝が群生して、箒「ほうき)状になる症状です。

病菌は患部の枝の中で越冬し、花が咲いた後に葉の裏側に胞子をつけ飛散し、空気感染します。

この小枝は軟弱なものが多く、葉はつきますが花は咲きません。

この病患部は年々大きくなり、枝は次第に弱まり枯れたり折れたりします。

被害の激しい樹では樹勢が著しく衰えます。

テングス病は病菌に色々な種類があるが、どの種類も薬での治療は困難です。

しかし、この菌は感染力が弱いので病気にかかった枝を取り除き、処分することでほとんど治す事ができます。

切り取った切り口に癒合剤(保護剤)を塗っておくことが予防になります。

また、1月から2月頃にダイセンや銅水和剤、石灰硫黄合剤などを散布し予防します。

★胴枯れ病
6月~10月に発生
幹が枯れる病気の総称で、病斑部はやわらかくなり指で摘まむと簡単に剥がれます。

病気が進むと病斑が褐色になり、小さな突起物が現れますが、これは病菌の繁殖器官です。

病菌は害虫による傷口、せん定などの切り口、寒害や日焼けによる裂け目などから入り込みます。

この病気に対しての、薬剤による直接的な治療法は見つかっていません。

病斑部を出来るだけ深く削り取り、幹に傷をつける樹幹害虫を見つけたらすぐに駆除しましょう。

病斑部を削り取った跡やせん定による切り口、傷口などにトップジンMや石灰硫黄合剤を塗り、乾いたら墨汁や保護剤などを塗って予防しましょう。

せん定による傷口や寒害、日焼けの幹の傷などに注意して、傷口を手入れしてあげましょう。

★テッポウムシ(カミカリムシの幼虫)
穿孔(せんこう)性の甲虫類で重要な害虫の一つ

成虫は見つけ次第捕殺します。

幹に食入口(虫穴)を見つけたら、穴にスミチオン乳剤などを注入し、土などで穴を塞ぎます。

発生時期にサッチューコートやスミバーグなどの薬剤を散布すると有効です。

大部分は健全木には加害しないので、樹の健康を保つことが一番の予防です。

◉せん定
春の花が終わったら、飛び枝や込み枝などを軽く整理すると、秋にまとまった樹形で花を楽しむことができます。

サクラの仲間は、枝などをせん定した後の傷口から水分がしみ出して乾燥しにくく、腐朽菌が侵入しやすいため、太枝の強せん定は出来るだけ避けるようにします。

必ず付け根から切り、残す枝が切る枝より細いと言う事がないように注意します。

また、地際から出るひこばえは早めに切り取ります。

★殖やし方
5月から6月に新芽が固まった新梢の枝先を、10~15㎝程に切ってさし穂とし、赤玉土小粒などのさし床にさします。

乾燥に注意しながら管理するとよく活着します。