緑のお医者の徒然植物記

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日曜日, 10月 18, 2020

ネーブルオレンジ No.305

 ネーブルオレンジ ミカン科

原産地=インド東部、ヨーロッパ、アメリカ

英語で「ヘソ」と言う意味を持つネーブルは、その名の通り果実の頂部に、ヘソ状の窪みがあるのが特徴です。

いわゆる「バレンシアオレンジ」と同じ「スイートオレンジ」類で、一般的には「ダイダイ」など酸味の強い「サワーオレンジ」類とは区別されます。


                     「ネーブルオレンジ」


オレンジの原産地は中国雲南から、インドアッサムにかけての照葉樹林地帯であるとされており、中国では紀元前にすでに大規模な、オレンジ栽培が行われていたと考えられています。

国産ネーブルのほとんどは、アメリカ産の「ワシントンネーブル」を母品種としており、高い糖度とバランスの良い酸味があり、柑橘類の中でも特に完成度の高い食味を誇ります。

温州みかんより耐寒性で劣るので、冬暖かく夏涼しく、雨の少ない地域が栽培の適地です。

温度管理が比較的容易な鉢植えなら、全国で育てる事が出来ますが、庭植えする場合は、紀州半島以西の暖地で雨の少ない地域に限られます。

年間平均気温が16℃以上、最低気温がマイナス4℃以下にならないことが条件です。

◉植え付け 3月中旬~4月中旬
一般に出回っている苗木は接ぎ木した、1年から2年経過した苗木です。

日当たり、水はけの良い場所を選び、接ぎ木部分が地表に出るように植え付けます。

植え付けの約一ヶ月前に深さ50㎝、直径50㎝の植え穴を掘り、掘り上げた土の半分に堆肥または腐葉土10~15㍑、鶏ふん1㍑、溶リン2握りと苦土石灰150㌘を混ぜて埋め戻します。

さらに埋め穴中央を山型に盛り、植え付けた苗木は約60㎝の高さで切り戻します。

植え付け後は、乾燥しないように落ち葉やワラを株元に敷いておきます。

◉肥料
元肥として3月に堆肥を約6~12㍑、油粕200㌘、化成肥料50㌘を施します。

樹木を中心とした半径50㎝に、円を描くように浅く溝を掘って、落ち葉などと一緒に埋め戻します。

10月には追肥として化成肥料50㌘を、樹木の周囲に蒔き土にすき込みます。

鉢植えは3月に、玉肥を5~6個
8月と10月に各2~3個置き肥します。

◆生育管理、環境
大きく質の良い実を成らせるためには、ネーブルでも摘果を行いますが、木自体が多すぎる実を落とす「生理落果」が7月上旬までにあるので、これ以降に摘果を行います。

小さな実や傷ついた実、1ヶ所に集まってついた実を間引き、基本的には葉40枚に対して1果の割合で残すようにします。

鉢植えは全体でバランスよく、3~5果残します。

冬期での鉢植えは、室内に入れて保護出来るので、寒冷地でも育てる事が出来るでしょう。

マイナス3℃以上を保てば越冬させる事が出来ます。

夏は出来るだけ戸外に置いて、寒冷紗で遮光して育てる方が強い株に育ちます。

鉢植えは赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、日当たりの良い場所へ置きます。

早生のネーブルは12月中旬から1月に収穫して、2月から4月まで貯蔵してから生食します。

晩生種は冬の寒さによる落果を防ぐために、袋かけを行い2月から3月に収穫します。

最も収穫の遅いバレンシア·オレンジ🍊は、5月から6月に収穫したらすぐに生食します。


また、袋かけは年間平均気温が17℃を下回る地方では、防寒や★回青防止のために行うと効果があります。

★回青=(かいせい)とは果実が熟し、濃黄色に着色してきた時、春の新梢が伸び始めると再び果実の色が緑色に戻ってしまう現象の事です。

◉病害虫
カイヨウ病や黒点病などの病気に注意します。

若い葉や果実の表面に、病斑やかさぶた状のものが出来たらカイヨウ病です。

その部分を取り除き5月から9月頃にアグレプト水和剤1000倍液か、タレフノン200倍液を加えたコサイド水和剤2000倍液を散布します。

花や果実に黒い点が現れたら黒点病です。

5月から8月頃にラピライト水和剤500倍液を散布します。

◉せん定
前年の秋に伸びた枝は、その夏に伸びた枝との境で切り落とします。

適期は2月下旬~3月中旬です。
樹木の内側に光が十分届くように側枝を開きます。

全体に枝を開くように仕立てると実つきが早くなります。

ミカン類はネーブルも含め、生長がやや緩やかなため、樹木が高くなり過ぎることはありません。

せん定は枝が低く垂れてきた時点で切る程度にしましょう。

2年目は全体の枝数を2~3本にし、支柱を用いて開くように誘引します。

花芽は新しい枝の先端部に付くので、不用意な切り詰めせん定をすると、花芽を切ることになり結実しません。

このため間引きせん定を主にします。

込みすぎた枝弱った枝は根元から切り取り、通風日当たりをよくします。

また、側枝を更新して新梢を毎年発生させ、必要数の結実枝を維持するようにします。

◉ミカンの昔話
ミカンの原種は数千年前から知られていた様です。

それがヨーロッパに渡り、更に南北アメリカへと広がって行ったと言われています。

長い年月の間に各地へ移植されて行ったミカンは、その土地に適した品種が、次々と栽培されるようになり、現在の様に多くの品種となりました。

日本原産のミカンは「右近の橘=うこんのたちばな」
として有名な「タチバナ」です。

「温州みかん」は日本原産ですが、その原種は中国から来た物の内の一つが、偶然に実生したものではないかと言われています。

日本で最初に栽培品種となったのは「紀州ミカン」で、熊本から和歌山へ苗木を移植し育てられたものです。

江戸時代には、紀州の地がミカンの本場とされ、紀伊国屋文左衛門が20代の頃、紀州ミカンを江戸へ船で運んで財を成したとされる。

ミカンが不足していた江戸で、ミカンが高く売れ、嵐を乗り越えて江戸の人たちのために頑張ったと言う事で、江戸っ子の人気者になった。

文左衛門は人物伝によると、不明な点が多く半ば伝説上の人物である。

架空の人物とする説もあるが、実在したとする説が主流である。

※東京都江東区三好に紀伊国屋文左衛門之碑がある。

❆紀伊国屋文左衛門の碑

                「浄土宗寺院、成等院」