緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

検索結果

2021/06/30

ハナモモ、せん定、縮葉病 No,512

 ハナモモのせん定

ハナモモは樹勢が強く、放任すると枝が張り出して暴れてしまうので、毎年花後すぐにせん定して、大きさを抑えることが大切です。

花芽は今年伸びた新梢の葉腋に7月頃作られます。

せん定は落葉期の2月から3月、花後の6月から7月、晩秋の11月から12月が適期です。

木の内部まで日が当たるように、ふところ枝を間引き、長枝は短く切り戻します。

夏にひこばえや、幹から直接出る胴吹きが出ていたら、付け根から切り取ります。

太枝を切って樹高を切り詰めたい場合は、雨水の染み込みを防ぎ、腐朽菌の侵入から守るために必ず45度程度の斜め切りを行います。

こうする事で傷口を塞ごうとするカルスの形成を早めます。

切り口には殺菌保護剤の「トップジンMペースト」や「カルスメイト」などを塗布します。

古枝には、やがて花も咲かなくなるので、数年に一度、つぼみの出る時期の2月から3月頃に枝元の花芽を残して切り詰め、新しい枝を出されるようにします。





縮葉病の対策

縮葉病(しゅくようびょう)は、杏、梅、桃につきものの病気で、年一回新葉の展開する3月から4月に雨が多く、低温が続くと発生しやすくなります。

被害葉の表面を覆う白いカビが飛散して枝につくと、その表面で更に増殖して越冬します。

越冬中は、枝の組織内に侵入しているわけではないので、「石灰硫黄合剤」や「ビズダイセン水和剤」などを念入りに散布することで予防できます。

薬剤は休眠期の間はいつでも行なえますが、新芽が発生する直前に散布すると感染防止効果が高くなります。

また、散布時期が遅れ、花芽が見え始める頃に散布を行った場合や、開花後の散布は手遅れになり薬害が発生するの注意が必要です。


                            「ハナモモの縮葉病」


病葉は異常に膨れたり縮んだりして奇形を呈する。

病原菌は子のう菌類に属する糸状菌の一種である。


連年発生する樹では、果実や葉が白カビで覆われる前に、それぞれを摘除処分し、いつまでも放置しないことが発生源を減らすために重要です。









2021/06/29

コナラ No,511

 コナラ ブナ科 「小楢」

別名=ハハソ、ホウソ、ナラ

北海道から九州、朝鮮半島などの山地や丘陵地に分布する常緑及び落葉高木で稀に低木。


雑木林の代表的な樹の1つで、かつての日本の山里ではごく普通の木だったが、最近では雑木林そのものが少なくなってしまった。

春の新緑は一日ごとに微妙に色を変え芽吹く。

日当たりの良い山野に生え、樹高は15㍍程になるが、大きいものは25㍍以上に達する。

コナラの(コ)は小さいという意味ですが、類似種のミズナラをオオナラと呼ぶのに対したもので、山地では径が1㍍近いものも見られる。

類似種のミズナラは葉が大きく、葉柄が短く無いように見えるので区別できる。

秋の最後を締めくくるかのように、渋く紅葉しハラハラと散る。

若木のうちは紅葉しますが、成木では紅葉せずに褐色になった葉が、春まで残ることがある。

かつては薪炭材として利用し、里山には豊かな自然が維持されていた。

椎茸栽培のほだ木として使われている。
材質は堅いがミズナラより評価は低い。

かつては葉を集めて堆肥にし、水田の肥料にした。

葉、果実、樹皮を煮出して染色に使う。

東アジアの常緑広葉樹林や北半球の落葉広葉樹林では、コナラ属の樹林が優占種となる。




開花期

雌雄同株で開花は4月から5月、枝先に尾状の雄花が数本、基部に目立たない雌花が数個つきます。


果実

ドングリと呼ばれる長楕円形の堅果で、緑色から秋に褐色に熟して落下する。

堅果がその年の秋に熟すものと、翌年の秋に熟すものがある。

帽子の様に見える部分は殻斗(かくと)と呼び、水平のしま模様を見せることが特徴です。

葉が紅葉する少し前頃に、殻斗から離れてドングリだけが落下する。


生育環境

適度に保水性があり、また水はけが良ければ土質は選びません。

日当たりは半日陰ぐらいまでであれば良好に育ちます。

自然樹形が基本で、雑木林風の植え込みや、和風の石組み、灯籠などと組み合わせた単木での利用に適します。

コナラの効能

樹皮、葉ともに下痢止めや解毒作用、止血、打ち身などに効果があり、漢方処方では樹皮が配合利用されている。


主なコナラの天然記念物


長野県松本市波田4751
県指定天然記念物
波多神社のコナラ


山梨市三富川浦1818-252
市指定天然記念物
広瀬のコナラ


大分県竹田市久住町久住
市指定天然記念物
平木のコナラ

広島県東城町小奴可
県指定天然記念物
板井谷のコナラ

山梨県笛吹市境川町小山1027
市指定天然記念物
小山若宮神社のコナラ





2021/06/28

巨人、人魚、ゴリラ岩、五島の不思議発見 No,510

 No,510に因んで五島の話


考古学で研究が禁じられている分野がある。


それはかつて、北アメリカ大陸で繁栄した巨人の研究である。

コロンブスによるアメリカ大陸発見以降、ヨーロッパ人によってアメリカ大陸が探索、開拓されてきたが、その過程でいくつかのピラミッド型の墓が発見されている。


その墓の中には巨人の骸骨が安置されていた。

巨人の骸骨の大きさは2.5〜4㍍のものまであったと言う。

発見者の中には、細部まで分析を行いレポートを発表する者もいたが、どう言う訳か黙殺されたという。

旧約聖書に登場する巨人族「ネフィリム」をはじめ、世界各地で「巨人伝説」が言い伝えられているが、この巨人の研究に取り組む者は少ない。


巨人研究の重要人物であるマイケル·デリンガー氏は、旧約聖書の「ネフィリム」の記述から、巨人に比べて我々人間は「バッタ」のような存在であることを指摘し、少なくとも4万年前までアフリカに巨人族が栄える超古代文明が、存在していたことを主張している。

なぜ巨人族が消えたのか、明らかにしようとしないのはおそらく、現人類の仕業に違いないかも知れない。





シマキットンの足跡

五島列島、今里の海岸には巨大な足跡が岩場に刻まれている。

島吉ドンと言う人もいるが、「シマキットン」と僕等は呼んでいた。





足跡は今里から小浜(おばま)へと向かう途中の海岸の岩場(赤丸印)にあり、潮が満ちると海水で見えにくくなる。

子どもの頃は、今里から小浜へ向かう為の道は無かった。

幼稚園の頃、夜中に今里から小浜まで山越えをした記憶が残っている。

その頃、左親指の爪を剥いでいた僕は包帯をしていた。

それ以来親指の爪が割れ爪になってしまった。

冬の寒い夜だった事をかすかに覚えている。

小浜の親戚の家に行く為に山越えしたが、理由など分かるはずもなかった。


足跡のある場所には子どもの頃、魚釣りでよく訪れていた。

波打ち際にその足跡はあり、長い年月を経て、少しずつ小さくなっている。

1970年頃には、まだ大きかったと思うが、その昔は畳2枚分の大きさがあったと言う。

足指の数が9本もあった事を覚えている。


シマキットンは今里から近い三王山(さんのうざん)で生まれたとされ、今里の海岸以外にも足跡が遺されていて、祝言島でも見たと兄たちは言っていた。

小漁師もやっていた親父と島に行った時に見たと言う。



     「シマキットンの足跡、対岸は跡次」


三王山の頂上から数百メートル下の所に大きな岩穴がある。

不気味で近づけない、そんな場所を横目に通り過ぎたものだった。

子どもの頃、三王山の周辺をはげ山にしたのは親父である。

山の木々を切り倒し、薪を売ったり、炭焼きをしていた。

小学2年の頃には、山仕事に駆り出されて、しょいこで物を運んだりしていた。

それが原因で背が伸びなかったと思う。貧しさのあまり栄養不足だった事もあるだろう。

もう一つは、小学校に入学したばかりの頃、一つ上の兄に尾てい骨を折られたからだろう。

それ以来、尾てい骨は折れたまま癒着して突起している。

その事で、器官に不具合が生じたまま生きてきた事は言うまでもない!




三王山周辺や佐野原の山々をハゲ山にした親父は、山々の至る所に炭焼き窯も造っている。

もしもその跡が発見されたなら、それは親父が作った炭焼き窯の跡です。

木々を切り倒し続けた親父の償いを僕は今、樹木に携わる形で行っているのかもしれない。

10歳頃までは、ランプ生活でガスなし、水道なし、テレビもないほぼ自給自足の生活だった。

おやつは自然の恵みによるもので、口の周りが真っ黒になるくらい山葡萄を食べたものです。

キウイフルーツに似た、無毛のコッポもよく食べた。

食べ過ぎると便秘になるが、美味だった。

コッポの正式名は「サルナシ」と言う。


                                   「サルナシ」


山仕事を手伝う事が多い中で、ゴリラの顔をした大きな岩があった。

「ゴリラ岩」と呼んでいたが、このゴリラ岩にロープでぶら下がった青年がいた。

その人は、家族ぐるみのお付き合いをしていた、山田さんちのお兄さん。

ゴリラの顔をした岩には、目も鼻も口もちゃんとあったと言う。

顔の長さは20㍍はあると言っていた事を覚えている。

ゴリラ岩の谷底の手前まで、木を切って行った時、ゴリラ岩を真正面から見てびっくりしたものです。

しかし、このゴリラ岩を知るものは少ない。

1990年、帰省の折に8ミリで撮ったテープには、ゴリラ岩が記録されている。





記憶によれば、赤丸印の辺りにゴリラ岩が見えていたと思う。

佐野原川上流へ向かった所、拓けた所に山田さんちがあった。

ゴリラ岩の山の方向には、大瀬良部落がある。

子どもの頃、夜中に道なき道を山越えして大瀬良に行った事があったが、怖かったという記憶は全く無い。





佐野原川に架かる橋、この橋は子どもの頃からの橋で、壊されないで残っているようだ。

橋を渡った左側には、大きな養鶏場があった。





4歳の頃、佐野原川に流されて助けてくれた白岩久四郎さんちがあった場所。

10歳の頃、白岩さんちは大型台風により破壊され、柱4本だけが残っている様子を、子どもたちだけで遠くから眺めていた。


その後、白岩さんちは車道側にお家を建てた。



                    「現在の白岩さんち」

滝壺の直前で救いあげられ、気を失っていた僕が、目を覚ましたのは数時間後だったと言う。

布団に寝かされていた僕を心配して家族がみていた。

過疎地で運命的に救われたのだった。

その時の記憶は今でも少し残っている。


              

  昔は橋はなかった。
この橋の真下に石渡りがあって、川の真ん中で、白岩さんちのお姉さんが足を滑らせ、おんぶしていた僕を落としてしまった。

その後数百メートル流された。

前日の雨で増水していたのです。




錆びついた廃屋は子どもの頃、農協のカイコの糸を紡ぐ工場だった。

周辺道路沿いにはカイコ畑が一面にあった。

当時、母ちゃんと白岩のお母さんが働いていて、よく子どもらで遊び回っていた懐かしい場所である。





この標識の真裏あたりに実は、半畳程の石積みで出来たお墓がある。

埋もれて見えないが、現在もあるはずです。

この墓は、明治時代の頃、行き倒れの娘さんがこの場所で息絶えてしまった、その若い娘さんのお墓である。

当時桂山に住んでいた、牛引きのベーベー爺さんが(当時は青年だった)見知らぬ娘さんを埋葬したと言う。

その経緯を知る者はもういないだろう。

小学生の頃には、お爺さんをよく見かけたが、口を聞けないような状態になっていた。

その頃もまだ、牛を引いていた事を覚えている。

祝言島(しゅうげんじま)

検索によればしゅうげんじまとなっているが、「しゅうげじま」と呼んでいた。

祝言島には人魚伝説がある。
この事を知る者も余りいない。




◆世界には人魚と思われる骸骨が保管されている場所が存在する。


人魚の背中にはトコブシがくっついていたと、写真を撮った人が言っていた。

中学生の頃に、人魚が泳ぐ姿の写真を見せてもらった事があった。

ほとんど信じられないと思う気持ちの方が大きかった事を覚えている。

戦時中、この島は射撃場にされていという。

岩肌には銃弾の跡が無数にあると聞かされた。

島の湾内には飛行物体が墜落して、沈んでいると聞いたこともあった。

五島列島福江島
沖には、沈められた軍艦が海底に眠っている。

第二次大戦後、1946年4月、米軍により海没処分された旧日本海軍の潜水艦が何キロにも渡り、沈められている。

長い年月の中で魚礁となっている。










2021/06/27

キハダの木 No,509

 キハダ ミカン科「黄檗」

別名=オウバク 「黄檗、黄柏」

北海道から九州、朝鮮半島などの山地に自生する落葉高木で、樹高は20㍍を超えるものもある。

幹の内皮が鮮やかな黄色なのでこの名がある。

古くからこの色を利用して、青味のある黄色用の染料に利用したと言う記録がある。

また、別名のオウバクはこの内皮の部分をいい、苦味健胃剤として実用的な利用があるが、顔をしかめるほど苦い。




花と果実

雌雄異株で、5〜6月頃新しく伸びた枝先に長さ30cm前後の円錐花序を出し、あまり目立たない黄緑色の小さな花が多数開きます。

果実は径1cm程の球形で秋に黒く熟します。

落葉した後も果実は萎びたまま枝に残る。

葉の特徴

葉は対生し、先端が尖る楕円形で、長さ6cm前後。

縁は全縁で裏面に白味を帯びる。

生育環境、植栽利用

庭木としての利用はほとんどありませんが、植物園などでは稀に植えられています。

山野では日当たりが良い斜面地などで見ることがある。

排水が良く、やや湿り気のある土壌が適します。

自然な樹形が基本で、からみ枝や長過ぎる枝を切り戻す程度に仕立てる。


キハダの効能(薬用樹)

奈良では、吉野地方発祥の胃腸薬陀羅尼助丸(だらにすけがん)に配合されていることで、長年親しまれてきた。

樹皮を煎じ洗眼すると目の充血、ただれ目、結膜炎、その他の眼病に効果がある。

キハダの樹皮から取れる黄檗(おうばく)は、貴重な薬用資源であり、江戸時代には無断で伐採することを禁じていた。

現代でも貴重な樹であることに変わりはない。

植えてから薬用にするためには20年程度の年月が必要で、若木はよく鹿に狙われて食べられてしまうため、注意を要する。

キハダは東洋医学の最古の生薬学書「神農本草経」(しんのうほんぞうきょう)に収載されているが、日本ではすでに縄文時代から使用されてきた。

縄文時代の遺跡からも、樹皮が薬用に保存されていたと思われる状態で発掘されている。




2021/06/26

ハマボウ No,508

 ハマボウ アオイ科フヨウ属

常緑小高木 「✫浜朴✫黃槿」

神奈川県の三浦半島以西から沖縄などの、潮の干満がある海辺の河口などに生える、塩生植物、半マングローブ植物とも呼ばれる。

名前はよく似たオオハマボウのハワイの呼び方である「ホウ、how」から出たもので、浜辺に自生することによるとする説がある。

一方、牧野富太郎博士によれば和名は浜辺に生えるホオノキの意に取られ「浜朴」と書くが「ホウ」の意味は不明とし「フヨウ」の転化ではないかとしている。

もう一つの漢字名「黄槿=黄色の槿·ムクゲ」も誤用であろうとしている。

✿牧野富太郎関連記事No,396
「植物を愛し続けた博士」参照


大きなものは高さ6㍍程になるが、通常は2㍍ほどの木が多い。

砂泥の堆積した場所に群落を作ることもある。

黄色の花は「一日花」で朝咲いた花は夕方には萎んでしまう。

これはアオイ科によく見られる咲き方の特徴です。


開花期は7〜8月頃で、枝先部分の葉腋から次々に花が開きます。


花は同属のハイビスカス、ムクゲ、フヨウ等に似た形で、5個の花弁がある花は黄色で、中心部は暗赤色です。

果実はさく果で先端が尖り、5つに裂けて種子が出ます。

木材は、キクラゲ原木栽培のホダ木に使われ、樹皮の繊維をロープに利用した。

かつては園芸用に栽培されることもあった。



                                       「ハマボウ」


類似種

オオハマボウはハワイや台湾などに自生し、樹高、花ともハマボウより大型で、花は同じ黄色だが、夕方には赤く変色する。

葉の基部を見ると、深いハート型になるので区別できる。

日本では、小笠原や屋久島以南の海岸に生えている。


                             「オオハマボウ」


生育環境

潮風や強風に強く、海辺では暴風や砂防林として利用されることがある。

よく葉を茂らすので生け垣に利用することもできる。

日当たりが良く排水の良いことが場所に適します。

岩場のような場所に自生があるように、乾燥に強くまた、土質も選びません。

日陰地でも育ちますが、木漏れ日ぐらいの日当たりは必要です。

次々に花を咲かせるには、枝先部分を切り過ぎないことが大切です。

殖やし方は挿し木と実生によります。


絶滅危惧植物

護岸工事や河川改修などの影響により、ハマボウの生育地は減少の一途を辿っており、絶滅危惧種、或いは準絶滅危惧種に指定されている府県も多く、地域によっては消滅した群落もある。



市町村のシンボルとしての指定樹

徳島県鳴門市の花(1983年)

和歌山県御坊市の花木(1994年)

福岡県糸島市の花(2011年)

長崎県西海市の花木(2009年)

熊本県天草市の花(2009年)

植物保護と両立した人類の生き方を正し、考えなければならない時代に来ている。

主な天然記念物のハマボウ

自生地では天然記念物に指定され保護されている。

鹿児島県南さつま市
万之瀬川河口域  (国定天然記念物)

福岡県糸島市(市指定天然記念物)
泉川のハマボウ

神奈川県横須賀市(県指定天然記念物)
天神島のハマボウ

伊豆下田市(市指定天然記念物)
大賀茂川河口のハマボウ







2021/06/25

剪定の基本 (花木、実物類) No,507

 庭全体のバランスを考える

たくさんの花が咲いても、実が着いても、庭の景色に合わない樹形になってしまっては、庭というものは駄目になってしまいます。

そうは言っても、花木や果樹を植えてるのに、花も実も着かなくて良いという事はありません。

庭の楽しみの一つとして、花木、実物類のせん定は一本の花木、果樹ではなく庭を構成している景色の一部であるので、第一に考えるところは樹形です。


せん定の時期(花物)

造園業者や植木屋は“花物は花後にすぐせん定すれば来年も咲くよ”などと言いますが、樹種によりせん定時期が違うものがあります。

樹種によっては休眠期間中であれば、どの位置で切っても開花します。

モクセイ、キョウチクトウ、サルスベリ、ムクゲ、フヨウなどがその樹種です。

その他の樹種は開花後のせん定で構いませんが、安全に行うなら休眠期間中に花芽がはっきりと確認できるものは、その期間中にせん定を行えば花芽を残すことができます。

樹木を大きくしないためのせん定

花木のせん定は、休眠期間中に行うのが一番良い方法のように思われますが、毎年この方法でせん定していると、花芽をなるべく多く残したいためにせん定する枝量が少なくなり、年々木が大きくなり、庭に対しての樹木の大きさがバランスの悪いものになってしまいます。

そこで必要となるのが、樹を大きくしないで花も見る方法として、開花後のせん定となります。


早春の花木は休眠期せん定

早春に開花するウメやコブシ、ハクモクレンなどは、樹形を乱す徒長枝には花芽がつきにくいので、休眠期間中に樹形を整えるせん定をする場合が多くあります。


花後せん定
花木は透かしせん定

サツキ、ツツジ類では刈り込みせん定と、透かしせん定の二通りの方法がありますが、花木には透かしせん定が有効ですが、庭でも公園や街路でも刈り込みが多いと思います。

公園や街路のサツキやツツジはよく花が咲くのに、庭のものは咲かないと思う事も多い。

サツキやツツジは陽樹であるにも関わらず家の北側や、狭い庭の中で中高木の側に植えられ、日照不足で花が咲かない場合が多いと思われます。

こんな時は毎年刈り込んている輪郭線から伸び出た枝を輪郭線よりも低く奥で切り、透かしせん定します。

頂芽に花芽をつけるサツキやツツジ類は、こうすると輪郭線に残る枝は先端部を切らないので、花芽をつけやすくなります。

その他の花木せん定

樹冠輪郭の内側奥に突き出した枝を切り、輪郭線付近の枝は濃淡を均一にするだけに止め、切り過ぎないようにします。

そうすると頂芽や側芽、短枝など、花芽のつきやすい部分が切られずに多く残るので樹形も整う。

開花直後のせん定でも、枝の先端部を全部切られてしまう刈り込みせん定よりは、透かしせん定の方が先端を切られない枝が多く残るので、花芽もつきやすくなります。


せん定(実物)

花物と同じく、花を多くつけ実をつけされる。

実物類のせん定も花物と同様のせん定を行います。

花が咲かなければ実もつきません。

樹種によっては花が咲いても実がつきにくい樹種もあります。

「雌雄異株」の樹種で、雌木と雄木が別株の場合は、一般的に市販されているのは雌木が多く、少しは活着しますが着かないことが多いので、近くに雄木を植えると良いでしょう。

「ヤマモモ」も雌雄異株ですが、この木の場合は植木屋が扱うのは殆どが雄木であるため実がつかない。

「雌雄同株」は雌と雄を一つの株で持っているので、開花すれば結実するのが当然と思われますが、結実しにくい品種もあります。

このような場合は、近くに同じ品種のものを植えても結実しません。

樹種は同じでも品種の違うもの、花粉が多い受粉樹として向いている品種、更に開花時期が同じ品種でなければ意味がありません。








2021/06/24

ポーポー(ポポー) No,506

 ポーポー バンレイシ科

英語名=pawpaw

アケビに似た果実の落葉小高木

北アメリカ東部原産
日本へは明治時代に渡来し、戦後は害虫がつきにくい事から広く普及し、一時はブームとなった事もあったが、果実が日持ちしない事や輸入植物の時代背景もあり、次第に流通果実としては姿を消していきました。

果樹としての利用があり、本州から九州にかけて植栽できます。

樹高は大きなもので10㍍ぐらいに達しますが、通常は5㍍前後に育つものが多い。

今では栽培農家も少なく「幻の果実」と呼ばれる。




主な特徴

大型の葉は互生し、先端が少し尖る卵状、楕円形で長さ15〜30cmと大きい。

葉質が薄く、葉柄の付け根には黒褐色の毛がある。

秋になると鮮やかに黄葉する。

開花期

4月から5月、葉が開くより早く枝先に近い部分から、径3〜5cmの黒褐色の両性花が咲きます。

雌しべの方が早く成熟する性質があります。

果実

アケビに似た形と大きさで秋に黄色く熟しますが、アケビのように割れることはありません。

バナナに似た甘みがあり、栄養価も高く生食できる。

この果実でワインを作るという例もある。

自花不和合性が強く、果実を楽しむには複数の植栽か、人工授粉が必要になります。

花が開いて3〜5日経過した頃、花が紫色に変わった頃が受粉の目安です。

実生苗の場合、結実するまでに5年から6年が必要である。


樹形

整形的な樹形になるので、洋風の雰囲気に適しています。

広い場所があれば複数で利用したい果樹です。

隣接する庭木とは2〜3㍍以上の間隔を取り植栽します。

自然樹形に見られる直立する幹と、横に広がる枝の樹形が基本です。


生育環境

日当たりが良い場所で、通気性に優れたやや湿り気のある土壌が適しています。

降雪地では枝が折れないようにする工夫が必要です。


病害虫

少ない方ですが、カイガラムシが発生することがあります。

風通しを良くすることが大切です。


肥料(施肥)

土壌が痩せている場合、果実を楽しむには堆肥に、有機質肥料を混ぜるなどの土壌改良が必要です。

殖やし方は実生と挿し木で殖やします。


せん定

落葉期の12月から1月頃にせん定を行います。

前年に伸びた枝の基部に花芽をつけるので、伸びすぎた枝を切り詰めます。

混み合った枝も切り取り、樹冠内に光が当たるようにします。


ポーポーの効能

ビタミンCを多く含む果実で、老化や癌の原因とされる活性酸素を、自ら酸化される事で身体を酸化から守る。

オーストラリアには一家に一本あると言われるポーポーの木。

擦り傷、やけど、アザ、ひび割れ、アトピー、肌荒れなど多くの効能があり、高い保湿力からリップバームや保湿クリームとしても有能であり、赤ちゃんのおむつのムレによる肌荒れにまで使え、天然成分でできた軟膏のため万人に愛されてきた。





2021/06/23

シナヒイラギ No,505

 シナヒイラギ モチノキ科

英名=チャイニーズ·ホーリー
別名=クリスマス·ホーリー、ヒイラギモチ、ヒイラギモドキ

常緑小高木「 支那柊」

原産は中国で、日本では本州、四国、九州で植栽できます。

株立ちになり、樹高は5㍍ぐらいまで生長する。

庭木としては2㍍前後までが適します。

葉には鋭く尖るトゲ状の鋸歯があり、ヒイラギ同様、老木になるに連れてトゲが少なくなる傾向がある。

雌雄異株で、春に前年枝の葉腋に黄緑色の小さい花を咲かせます。

果実は球形で1cm程の大きさで、秋になると赤く熟します。





主な類似種

名前が似ているヒイラギは、モクセイ科で葉が対生だがシナヒイラギの葉は互生である。

斑入りの品種として「オースプリング」などがあります。

また、クリスマスの飾りとして利用されるホーリー類は同じ科に属し、紅い果実が実ります。


葉のトゲに触れると痛いので、観賞用に用いる場合は、手足などが触れにくい場所を選びます。

生け垣に利用することもありますが、通路との間に他の低木を植えると直接触れない効果があります。


           「 斑入り品種のオースプリング」


生育環境

半日陰程度の日当たりの場所が適します。

土壌は肥沃なことに越した事はありませが、余り土質を選びません。

自然樹形は半球形状になります。

生け垣は刈り込みやすい1.5前後までが適してます。


病害虫

病害では、葉に褐色の斑点状の病斑が出斑点病が発生します。

ベンレートなどを散布して予防します。

虫害ではハダニ類、カイガラムシ類の被害に気をつけます。

ハダニ類には専用の殺ダニ剤を葉の裏を中心に散布します。

カイガラムシ類は幼虫の時期はスミチオンを散布しますが、成虫になると薬剤が浸透しにくくなるため、効果が余り出ないので捕殺します。

冬期にマシン油乳剤を使って成虫を駆除できます。

殖やし方は実生、園芸品種は挿し木で殖やします。







2021/06/22

植物の生理、生態 No,504

 春植物

春、まだ他の樹木が葉を展開する前に生育活動を開始して開花し、他の樹木が葉を広げて本格的に活動を始める時には、すでに結実して年間の生活の殆どを終え休眠する植物があります。


この様な植物は「春植物」と呼ばれ、その可憐な美しさから「春の妖精」とも呼ばれます。

その仲間にはキンポウゲ科のキクザキイチゲ、ニリンソウ、イチリンソウ、ケシ科のエンゴサク類、ユリ科のカタクリ、アマナ、ヒメニラなどが知られています。


これらの種は、冷温帯落葉広葉樹林の明るい林床を中心に生育しますが、上方を覆う樹木に先駆けて早期に活動を始めることで、生育に必要な光を十分に得て、効率よく光合成を行うことができます。


他種との競合を避けて光を得ていることは、特殊な生育形態と言える。

河野昭一氏(1988年)によれば、6500年前から始まる第三紀の温暖期にはブナ科、カバノキ科、カエデ科、ニレ科などの落葉樹の植物群(フロラ)が高緯度地方(南極や北極に近い)に侵入していた。

✫河野昭一(かわのしょういち)
植物学者(京都大名誉教授)2016年没

✪第三紀とは、地質時代区分の一つで、6500年前から第四紀に入る164〜170年前までの期間。

国際地質科学連合は「非公式用語」に位置づけている。

「三記層」と呼んでいたこともある。

この時期にはすでに落葉樹と春植物との結びつきは形成されていたと言われている。

これらの種は、生活形区分では地中植物、半地中植物と呼ばれ、地上部に比べて地下部に、遥かに大きな貯蔵器官を持っている。

これにより早春に急激に光合成器官を発達させることができるのである。

春先に可憐な花を咲かせる「カタクリ」は、種子発芽後毎年一年間の増加分を地下部の貯蔵器官に蓄積し、8年目にやっと開花、結実する。 





春植物は低木が殆ど無い海外の落葉広葉樹林では、林床面に花のじゅうたんを形成するが、常緑性の笹が林床を覆うことの多い日本の落葉広葉樹林では、林縁部に生育場所を移して生育することが多い。


日本では古くから様々な形で、森林に人手が入り、伐採、薪採取を繰り返しきました。

更に、里山では肥料とするための落ち葉の掻き取りが行われたことで、笹の生育を阻止してきました。

長い年月をかけて行われてきた作業は、林内を明るく保ち、春植物に対しては良好な生活環境を与えていました。


しかし、燃料や肥料供給源としての森林利用が停止し、人手不足による管理放棄が重なった低地の里山では、ササ類とシラカシ、シロダモ、アオキなどの常緑樹が成長して暗い林床を作る事になった。

その結果、年間を通して暗い林床環境となって、春植物は生活の場所を失うことになったのです。


絶滅危惧植物を載せた「レッドデータブック」によれば、日本に生育する顕花植物(花を咲かせ、実を結び、種子ができる高等植物、種子植物)が絶滅したか、絶滅危惧あるいは危急植物に指定されているが、春植物のほとんどがそれに指定されている。

植物保護のあり方について、真剣に検討する必要がある時に来ている。

それは必要とされる薬効植物を保護する事でもあるのです。

日本列島には、樹木や草花など約7000種もの種子植物、シダ植物が自然の中で生育していると言われています。

この内の約4割、2900種は日本にしかない植物であるとされている事から、どんなに自然豊かなのかがよく分かります。

しかし、環境破壊が進み、自然環境は悪化の一途を辿っているのです。


植物Ⅰ

野生絶滅 レッドリスト
ヒュウガシケシダ=メシダ(イワデンダ)科
コブシモドキ=モクレン科
エッチュウミセバヤ=ベンケイソウ科
リュウキュウベンケイ=ベンケイソウ科
オオカナメモチ=バラ科
ナルトオウギ=マメ科
オリヅルスミレ=スミレ科
リュウキュウアセビ=ツツジ科
タモトユリ=ユリ科
サツマオモト=ユリ科
タイワンアオイラン=ラン科
キバナコクラン=ラン科









2021/06/21

ハナイカダ No,503

 ハナイカダ 「花筏」ミズキ科

別名=ママッコ、ヨメノナミダ

花の咲く様子を花が乗った筏に例えた名前である。

北海道から九州にかけて山地の主に谷間に自生している。

落葉低木で樹高は大きいものでは3㍍前後に生長する。

数ある植物の中でもこのような形に花を咲かせるものはない。

沖縄には葉に光沢がある「リュウキュウハナイカダ」が分布する。

株立ち性になることが多く枝が横に広がります。

若芽は「ママッコ」と呼ばれ、お浸しや天ぷらにして食べることができます。




花と果実

5月から6月頃、葉の主脈の上に径5㍉程の小さな淡緑色の花が咲きます。

花は葉っぱの真ん中あたりに咲きます。

雄花は数個ずつ、雌花は1〜3個開きます。

果実は液果で、径1cm足らずの平べったい球形になり、緑色から成熟すると黒っぽくなります。

類似種

変種として、葉を始め全体が小型の「コバノハナイカダ」が近畿地方以西に分布します。

ハナイカダとの中間型もありますが、園芸品種は知られていません。

生育環境

自生地では、湿り気がある沢沿いで日陰になるような所に生えています。

木漏れ日が少しあるような明るさの場所に適しています。

土壌は湿り気があり排水の良いことが大切です。

植栽

庭木としての利用はあまりありませんが、葉の上に花や実が生えるものは限られますので、自然な植栽に利用すると効果的です。

病害虫

少ない方ですが、アブラムシ類やスス病に気をつけます。

混み合った枝を取り除くなどし、風通しを良くすることが予防になります。

リュウキュウハナイカダは亜熱帯の産地林縁に生える。

奄美大島から沖縄にかけて分布し、琉球固有の亜種とされ、準絶滅危惧種に指定されている。

                   「リュウキュウハナイカダ」






2021/06/20

生命体がいないと見られる土壌が見つかる No,502-1

 南極の山上で発見された生命体がいない土壌


研究者たちは、これまで最も標高が高く過酷な場所でも、土壌には数種類の微生物がひっそりと生息していると想定していました。

だが、生命体が全くいないと見られる土壌が、南極大陸で見つかった。

南極点から約480㌔の山上、そこは火星に似た環境だった。

地球の表面では初めてとなる報告である。

土壌採取場所は吹きさらしの険しい2つの山の尾根である。

シュローダ·ヒルとロバーツ·マシクと呼ばれる山である。




単細胞生物は、93℃を超える熱水噴出孔でも、南極の厚さ800㍍もの氷の下にある湖でも、更に高度3万7000㍍の地球の成層圏でも生きているのが見つかっています。

だが、南極の険しい山から採取した土壌の中には、米コロラド大学ボルダー校の微生物生態学者「ノア·フィアラー」氏と氏が指導する博士課程の学生「ニコラス·ドラゴネ」氏が1年を費やし、氷河のあちこちの山から集めた204点のサンプルを対象に、試験を行ったが生命がいる証拠が見つからないものがあったと言う。

比較的標高が低く寒さが厳しくない山の土壌サンプルからは、多くのDNAが検出された。


最も標高が高く、寒さが厳しい2つの山の土壌から採取したサンプルの2割からは、全く生命がいる証拠を見つけることができなかった。

検査結果の一部を見たフィアラー氏は、何かの間違いじゃないかと感じたと言う。

そこで生命の証拠を探すためにドラゴネ氏は、複数の追加実験を行いました。

土にグルコース(ブドウ糖)を含ませ、生きた生物によって二酸化炭素に変換されないかを調べました。

地球上の生命がエネルギー源として使う、アデノシン三リン酸(ATP.検査)の検出も試してみました。

アデノシン三リン酸とは、すべての植物、動物及び微生物の細胞内に存在するエネルギー分子のこと(微粒子、微生物測定器)

何ヶ月にも渡って様々な栄養素を与え、微生物にコロニー(生物集団)を形成させようとしました。

それでも一部の土壌からは何も検出されませんでした。

無菌状態とは言い切れないが、生きた細胞がごく僅かな数しかなければ、検出できない可能性はある。

しかし、この土壌には微生物が全く生息していなかった。

本当に生命体はいないのか

カナダ、ゲルフ大学の環境微生物学者「ジャクリーン·ゴーディアル」氏は、この調査結果に興味をそそられると評し、中でも生命が見つからない条件を究明しようとする、ドラゴネ氏の取り組みに注目している。


高い標高と高濃度の塩素酸塩で、生命体が検出されない可能性が高くなる2大因子で有る事を突き止めたことに対し、こうした土壌に生命体が全くいないという説に、完全に納得しているわけではない。

ゴーディアル氏は数年前、南極横断山脈の同様の環境で土壌調査を行った事がある。

それはシャクルトン氷河の北西約800㌔の地点にあるコニバーシティ·バレーで、おそらく12万年間湿度が低いまま保たれ、氷点以上の気温になったことがない場所である。

✫シャクルトン氷河は南極大陸の氷河で、イギリスの南極探検家、アーネスト・シャクルトンに因んで名付けられた。

この場所の土壌サンプルをマイナス5℃で20ヶ月間保温しても生命の兆候は見られなかったが、サンプルを氷点から数度高い温度まで温めてみると、一部のサンプルで細菌の成長を確認できたのである。

こうした土壌に生命体がいないと判断するかどうかは、その定義によって異なるが、例えば氷河の氷に数千年間閉じ込められたまま、生き延びた細菌が発見されたことがある。

氷に閉じ込められている間、これらの細胞はその代謝の速さを百万分の1にまで下げている可能性があるとされる。

コニバーシティ·バレーで見つかったのはこのような「スローな生存者」だったと、ゴーディアル氏は推測している。


ドラゴネ氏とフィアラー氏が10倍量の土壌を分析すれば、海抜2100㍍を超える2つの山、ロバーツ·マシフやシュローダ·ヒルでも見つかるかも知れないと考えている。






夏に負けないバラ栽培 ③ No,502

 花びらが茶色く傷む

花びらの縁などが部分的に茶色くなって傷んでいるのは、スリップスでアザミウマとも呼ばれる害虫による食害された痕です。


                                「スリップス」


ヒラズハナアザミウマとミカンキイロアザミウマなど6種が知られており、体長はいずれも1〜2㍉で色は暗褐色。

野菜、草花類、果樹などに広く寄生して吸汁する。

寄生する部位は花、新芽、葉ですが、バラでは特に花弁に寄生して、シミを作るので花が汚くなります。

気温が高くなる5月の開花頃から発生して、気温が高くなるに従い多発し、秋まで被害は続きます。

花では生育が悪くなったり、蕾は吸汁されたことにより開花しないなどの被害が出ます。

蕾のままで枯れ、開花しません。

スリップスは繁殖力が強く、産卵後20日程で成虫になると言われています。

多い時では一花に数百匹に及ぶこともあります。

また、食害された痕から灰色かび病の原因になることもあります。

被害が出たら、ベストガード、モスピラン、カスケードなどを定期的に散布します。

スリップスは葉裏にいることが多いので、葉裏まで薬剤がかかるように散布しましょう。


花が終わった後に花柄をすべて切り取るようにして、地面に落ちた花びらもすべて拾い集め、ビニールに入れて密閉処理をする事で、数を減らすことができるでしょう。

         「スリップスの被害で傷んだ花」

屋根のない場所で育てる

スリップスは雨を嫌うので、雨の当たらない乾燥しやすい場所で増殖しやすい傾向があります。

特に白花、黄花、薄ピンク色のバラに引き寄せられる傾向があるので、なるべく屋根のない場所で育てるようにします。

また、スリップスが嫌いな「ミント」を近くに植えるなど、寄せ鉢にして置くのも予防になります。

夏場に傷んで弱ってしまった場合でも、よほど弱体化していない限り、秋までに回復させることができます。

株元に落ちた葉は、病気の原因になりやすいので全て取り除く事を心掛けましょう。

乾燥なで黄変し落葉したものでも、地面に落ちると被害にあった花と同様に、灰色かび病の引き金になりやすくなります。


環境を改善する

バラが傷んでしまう原因は色々ありますが、夏頃に傷んでしまった場合には、植えた場所の環境改善が重要です。

鉢植えは風通しを良くして、日差しが半日ほど当たる場所に移動します。

地植えの場合は、株元にマルチングや草花を植えるなどして暑さを和らげるようにします。


病害虫に対応する

病気や害虫を放置したままでは、回復にも時間がかかります。

病気の発生初期に予防散布をするとその後の発生が減ります。

また、害虫は発生初期に薬剤散布することで、蔓延を抑えることができます。

あまり薬剤に頼りたくない場合は、最初の散布をきちんと行いましょう。

散布の際には「葉焼け」を起こさないように、事前にたっぷり水を与えるようにします。

花や蕾を摘み取っておく

株が弱っているのに花を咲かせると、栄養が奪われてしまい、株の回復が遅れるので花や蕾を摘み取っておきます。

最低でも1か月程は、花や蕾を摘み取って株の充実を図りましょう。


活力剤(液)の利用

若葉が茂るまで一週間に一回、規定量に薄めた活力液を与えます。

生育が弱っている原因が根の傷みによるもので、まず根をよく張らせて元気にします。

株が弱っているから肥料という考えはよくありません。

活力液はバイオゴールドバイタル、リキダス、メネデールなどを与えます。

肥料は株を大きくするために大切

液体肥料と暖効性肥料を定期的に与える。

枝葉がしっかり茂ってきたら、一週間に1回、ハイポネックス、ハイブレードなどを株周りに与えます。

また、生育が順調で茂り出したら、今度は暖効性の固形肥料を与えます。






2021/06/19

植物のアレロパシーとは No,501

 アレロパシー


アレロパシーは、自然界の生物総合関係における化学生態学、生態化学のうちの、植物間の関係であり、ある植物が生成し環境中に放出した物質が、異類もしくは同種の他の植物の生長や発達に影響を与える作用である。

自己の生育地域へ他の植物種の侵入を妨げて、自種群落を拡大させる生態的仕組みになっている。

これらの場合、根から初芽阻害物質や生育阻害物質を分泌しています。

また落ち葉や果皮の浸出液に阻害物質が含まれる事もあります。

アレロパシー現象は古くから知られ、✫テオフラスタスはすでに紀元前3世紀に「ヒヨコマメ」の雑草制圧力について、また✫熊沢蕃山は「アカマツ」から滴り落ちる雨滴が作物の生育に有害である事を記しています。

✫テオフラスタスとは、古代ギリシアの哲学及び科学者でレスボス島エレソスの生まれ。

植物学の「祖」とされるなど、観察や調査に基づく実証的研究に本領を発揮した人で、ギリシアの学問の成立と発展に果たした功績は絶大である。

200に余る著作が有ったとされるが、現存する物は植物誌=9巻、植物発生学=6巻、自然学的小論=数編など他

特に有名なのは「性格論」であったが、後世の文学者はこれをしばしば真似ていた。

✫熊沢蕃山(くまざわばんざん)
(1619〜1691)
江戸時代初期の陽明学者(儒者)


最初にこの種の現象に対して「アレロパシー」と言う語を与え、その概念を明確にしたのはハンス·モーリッシュ、オーストリアの植物学者(1856 ~1937)であるが、彼の定義によれば、アレロパシーの対象は高等植物から微生物まで、また阻害的なものから促進的なものまで含まれる。

しかし実際には、狭義に高等植物間の阻害的な作用だけを指している場合が多い。

アレロパシーとはギリシア語の「相互に」と「被る」と言う語を組み合わせたものだが、アレロパシーの和訳としては、千葉大学の沼田真名誉教授(植物生態学者)により、1977年に「他感作用」と言う語があてられている。

アレロパシーの原因となる物質はアレロケミカル、アレロケミック、他感作用物質などと呼ばれ、植物の種々の「二次代謝産物」がこれに相当する。

✫二次代謝産物とは、生物の細胞成長、発生、生殖には直接的には関与していない有機化合物のこと。

また酸素などの働きによる化合物の一連の変換反応を「代謝」と言う。

これらの化合物は、生物共通の生命維持に不可欠な「一次代謝産物」とは異なり、特定の分類群に固有の代謝系で生産される物質である。

✫一次代謝産物とは、生体を維持するのに必須の物質群であり、各分類群と属する生物にとっては共通に存在するものである。


高等植物に対してだけではなく、動物や病原菌などの周囲の生物に対する防護手段になっている事も多い。

この物質は、生きた植物体の茎葉、果実や種子から雨水や霧粒中に溶脱したり、根から滲み出して土壌に蓄積し、他の植物に吸収される。

植物に含まれる化学成分には、一次代謝産物と二次代謝産物がある。

植物には様々な化学成分が含まれるが、大別すると無機化合物と有機化合物に分けられる。


燃やした場合に灰となって残るものが無機物であり、ケイ酸塩、リン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩などからなる。

植物成分としての無機物が注目される事はほとんどありませんが、人類は太古以来「灰汁」を食品のアク抜きや生薬の加工調製などに利用してきた事から、全く役に立たないわけではありません。

しかし、植物成分として圧倒的に利用されるのは有機化合物であるだろう。

植物に限らず、生物の創り出す有機化合物を「代謝産物」と言う。


ただし、モノテルペン、セスキテルペン類は揮発によって環境中に放出され、更に植物の遺体や落葉から溶脱する場合もある。

✪モノテルペンとは炭化水素類で、炭素と水素で出来た化合物のこと。
特に柑橘系や針葉樹の「精油」に多く含まれる成分である。

✪セスキテルペンとは生理活性物質のこと。

アレロケミカルの中には、体内では毒性の低い配糖体として存在しているが、土壌に入った後、微生物分解によって糖が離脱して、阻害活性が現れ出すものもある。

✭アレロケミカルとは、異なる生物種の個体に作用し、特定の行動を引き起こしたり、生理に何らかの影響を及ぼしたりする化学物質の総称である。

✭配糖体とはグリコシドとも言われ、糖と糖以外の有機化合物とが結合した物質のこと。
また、根粒菌などの微生物に作用し、作物などへの間接的な影響が示される場合もある。


植物保護から見たアレロパシーの重要な側面は①雑草害、防除すべき点②制圧作物、防除において利用すべき点③雑草群落遷移、防除において考慮すべき点の3つである。


アレロパシー活性が、何らかの方法で確認されている雑草は、数十種に及び、ムカシヨモギ属植物やセイタカアワダチソウ、シバムギ、セイバンモロコシ、ハマスゲなど、攻撃的な多年草で多く知られている。


キク科植物が放出するポリアセチレン化合物は、二次遷移(移り変わり)の初期段階において、種の交代に関わっていると考えられている。

尚、作物に対する雑草による干渉(雑草害)には、競合とアレロパシーが含まれるはずであるが、両者を識別してアレロパシーの関与を証明するのは難しい場合が多い。


アレロパシーに関して注意すべき点は、植物によるアレロケミカルの生成、放出された物質の変化してゆく状態、影響を受ける植物の生理状態いずれも環境要因によって、大きく影響されうるため、ある植物にアレロパシーの潜在する可能性があっても、それが生態系で現れ出したりしなかったりする点である。


主なアレロパシー活性植物

他の植物の成長を抑える働き(物質)

ホオノキ、オニグルミ、カルミア、イタドリ、コデマリ、サクラ、スズラン、ソバ、ニワウルシ、マツ、ムクゲアカシア、ムニンフトモモ、ユキヤナギ、ヨモギ、その他




2021/06/18

ブドウ 全般「葡萄」No,500

 ブドウ ブドウ科「落葉性果樹」

果樹では数少ないつる性植物です。

原産地という分類方法よりヨーロッパ系とアメリカ系と分類される。

それは世界中で栽培されているためです。

ヨーロッパブドウ、アメリカブドウ、その交配種である間性種などがあり、世界各地で改良された品種が多数あります。

ヨーロッパ系は開花適温が高く、雨の少ない乾燥地帯が生育に適しているので、日本の気候には向かない種類になります。

これに対しアメリカ系は、雨の多い地方の原産で、冬の低温にも耐え定植して3年から4年で実が生ります。

日本では生食を主体にするが、外国ではワインの原料としての栽培が主である。

ブドウの栽培では雨量が気温以上に大きな影響を持っています。

小雨乾燥地帯原産のヨーロッパブドウは、4月から10月の生育期に300㍉以下の雨量を好むので、雨を防ぐガラス室栽培以外では栽培出来ません。

年間平均気温が7℃以上あれば生育できますが、生育適温は11〜15℃と言われています。

また、果実の成熟期に日中と夜間の温度差が大きいほど品質が良くなります。




生育環境

日当たりと水はけのよい肥沃地を好み、乾燥地にも強い。

山梨をはじめ長野や瀬戸内などが有名な産地です。

主として棚栽培をするが、強い風の当たる所は避ける。

原則として成木の移植はできません。


肥料

1月から2月頃に堆肥に鶏糞を混ぜ、リン酸カリ分だけを少量混ぜて溝を掘り埋め込みます。

この時ブドウの場合はチッ素分を与えると木が軟弱に育ち、病気が発生しやすくなるので与えないことです。

追肥も必要ありませが、実をよく生らせるために6月と8月下旬から9月初旬に、リン酸カリ分を主体として少量の化成肥料をばら撒きます。


せん定

せん定には長梢せん定と短梢せん定がありますが、家庭果樹では狭い範囲で育てられる短梢せん定の方が向いています。

主枝の両側に20cmくらいの間隔で側枝を出し、一本の側枝から一本の結果母枝を出し、その結果母枝を1〜2芽に短くせん定して1〜2本の結果枝を出させます。

一般に短くせん定した結果母枝から、数本の新梢が発生しますが、2本だけ残して他は掻き取ります。

2本のうちの1本は予備で、主枝の誘引が終われば予備枝も切り取ります。

✻関連記事No,154ブドウの摘粒(果粒)


果実管理

春になるとせん定した結果母枝から、新梢(結果枝)が伸び出して花穂をつけ開花結実します。


着果習性

2年枝から発生した1年枝に開花結実する。



ブドウの新梢は伸びがよく、開花した花はほとんどが結実するので、そのままにしておくと果房が多くなり過ぎて、栄養不足から不良品になってしまいます。


房作り(摘房)

多くついた果房をそのまま育てると脱落したり甘味がなくなる。




そこで摘房が必要になります。

品種によっては一枝に4房ぐらいつきますが、大きい果粒のついた良い果房を選び、大果房は一房、中果房で2〜3房に摘房します。

また、新梢の先端を摘芯して一時的に枝の伸びを止め、果実の方に栄養が行くようにします。

果粒が生育してくるとお互いに押し合い肥大出来ずに、小粒になったり変形したり、粒がパンクしたりします。

これを防ぐために摘粒が必要です。


摘粒

不良果や小果を取り除いて隙間を作り、残った粒を肥大させる。



袋掛けは病虫害防除や果皮の保護、着色良化などの効果があるので、掛ける方が良い果実になります。

ポリエチレン袋などを利用します。

一般家庭で栽培するアメリカブドウの場合は、冬の低温にも耐えるので庭木としても楽しめます。

庭に植えたブドウは2年から3年で開花結実します。

ブドウの木は5年から6年で成木になるので、中くらいの房の場合は40房から50房くらいの収穫が見込めます。


鉢植えの場合

鉢植えは赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、日当たりがよく風通しの良い場所に置きます。

鉢植えは2年で開花結実し、7〜8号鉢で5〜6房を収穫の目安にします。


鉢植え、あんどん仕立て

①1年目の落葉期に下から2芽を残して上部を切ります。



②2年目の生育期に支柱を立てて誘引

③2年目の落葉期に3月頃の枝が柔らかくなった時に、あんどんに巻きつけて固定します。



④3年目の生育期に新梢を前年枝の上へ誘引して巻きつけ、固定します。



⑤摘芯と摘房
果房の枝は葉を2〜3枚残して摘芯し、果粒を肥大させます。



植え付けの時期は、11月から12月と2月中旬から3月頃ですが、寒い地方では3月に行いましょう。


棚とブドウの扱い方

1年目から4年目まで


日当たりと排水、肥沃な土地であることが生育のポイントですが、かなり乾燥にも耐えることができます。

しかし、寒さと湿潤な土地、そしてチッ素分の多い土壌は嫌いますので注意が必要です。

庭に植える品種としては、デラウェア巨峰やベリーAなどが良いでしょう。

主に開花期は5月頃、結実は8月下旬から10月頃

病害虫

ベト病
葉の表面に周辺部がはっきりしない、黄色がかった病斑ができ、次第に拡がって大きくなります。

葉の裏側には灰白色のカビが発生します。

病状が進むと黒みがかった不正系の病斑になります。

このカビは低温多湿を好むので4月から6月の春と、9月から10月の秋に多く発生します。

主に葉や新梢部、巻きひげ、幼果に発生します。

生育期前半にホセチル水和剤、キャプタン水和剤、マンゼブ水和剤、シモキサニル·ファモキサドン水和剤等の予防薬を約10日間隔で散布します。


発生後にベトファイター顆粒水和剤しますが、果房への使用は小豆大期までとする。


サビ病(主に9月から10月に発生)
寄生された植物の葉にはたくさんの病斑ができます。

その病斑から鉄のサビのような粉状の胞子を大量に生じます。

病気が樹全体に蔓延すると樹は枯死に至る。

サビ病には硫黄剤がよく効きます。

発生時期の前後に月に2回くらいの割合でマンネブダイセン、エムダイファー、水和硫黄剤などを散布します。

このカビは高温多湿を好むので、せん定などをして風通しを良くして予防しましょう。


黒痘病(こくとうびょう)
病原体は糸状菌で、葉や新梢、花穂、果実に発生する。

葉では茶褐色から黒褐色の小斑点が生じ、その後拡大して中心部に穴が空く。

多発すると生育が不均一になり、葉の奇形や葉縁に湾曲などの症状が見られる。

新梢や巻きひげには、わずかなへこんだ茶褐色から黒褐色の斑点が見られ、新梢先端に多発すると先端部は枯死する。

幼果では初め茶褐色の小斑点を生じ、次第に拡大して周辺部が黒褐色、中心部灰褐色の多少へこんだ円形病斑になる。

特にヨーロッパ系品種はこの病気に弱い性質がある。

病原菌は結果枝や巻きひげなどの組織内で菌糸の形で越冬する。

病原菌は柔らかい組織を好み、硬くなった葉や新梢では発病しなくなる。

この病の感染時期は早く、萌芽直後から生育初期にかけて連続降雨があると発病が多くなる。

また、生育初期に発生が見られなくても、梅雨期や秋雨などで降雨が続くと、柔らかい副梢の葉などに突然発病することがある。

一度発生すると翌年以降も発生しやすくなるため、被害が少ないうちに防除を徹底する。

休眠期、萌芽直後、新梢伸長期、開花期、落葉期から小豆大期、袋掛け後に定期的に散布を実施する。

薬剤としてデラン、キノンドー、ジマンダイセン、ペンコゼブ、チオノック、ドーシャス、オーソサイド、フルーツセイバー、ネクスター、パレード、ボルドー液など


晩腐病
(おそぐされびょう、ばんぷびょう)
晩腐病は棚に巻きひげや枝が残っていると、そこから雨を介して感染する。

幼果期から梅雨期が最も多く、胞子は降雨によって飛散し、新梢や果房に感染する。

せん定時に越冬伝染源となる果梗の切り残し、巻きひげの除去を徹底する。

支線などに巻き付いた巻きひげもできる限り取り除きます。

休眠期防除では、デラン、パスポート、べフラン、ベンレートなどを発芽直前に散布する。

生育期防除では、オーソサイド、ジマンダイセン、アミスター10、スクレアなどを散布する。

房枯れ病
果実では初めに黒色の小斑点が形成された後、最終的にはミイラ果となる。

穂軸の基部から褐変して、次第に果房が腐敗する。

収穫した果房に発生することが多い。

病原菌は1年から3年生の枝で越冬する。

ぶどうの生育に連れて病斑が拡大し、伸長した枝を枯らしたりまた、胞子が雨の飛沫で飛散し、新梢の葉柄基部に感染して葉枯れを起こします。

収穫期を遅らせたり、樹勢が弱くなっものに発生が多くなる。

また、早期加湿栽培ほど発生が多い傾向があるので、栽培方法を変える事も必要です。

適期収穫を心がけるとともに樹勢の強化を図る。

袋掛けは早めに行い、せん定では枝や巻きひげを処分します。

予防として、冬期に石灰硫黄合剤の30倍液を2〜3回散布し、新芽が伸び始めたらロブラール水和剤1000倍液や、ジマンダイセン水和剤500倍液を月に2〜3回定期的に散布します。

害虫類は春から定期的にスミチオン1000倍液の散布などで防除しますが、ブドウスカシバやブドウトラカミキリなどの被害にあった枝は、冬のせん定の時に切り取り処分します。


害虫ブドウスカシバ

ブドウの害虫として知られ、細い枝に幼虫が入ると、枝が膨らんで虫コブ状になる。


          「コブとムシ」


エビヅルノムシ、ブドウ蔓の虫とも呼ばれるブドウスカシバの幼虫のこと

害虫は駆除を兼ねて秋にせん定し、虫コブのついた小枝は中に潜んでいる幼虫を釣り餌や小鳥の餌にするため、業者に売られる。

秋から早春に蛹化するまでの期間、エビヅルノムシ又はブドウムシとして市販されている。









2021/06/17

ホオノキ( 朴の木) No,499

 ホオノキ モクレン科 落葉高木

別名=ホ(オ)ガシワ、フーノキ、ホウバ

北海道から九州の山地や丘陵に自生がある。
南千島、朝鮮、中国にも分布する。

湿り気がある沢沿いや斜面地に生え、高さは30㍍に達する。

木材は狂いが少なく木目もきれいなことから、家具や版木など様々なものに利用されている。

日本の樹木の中で花や葉が最も大きく、葉は長さ40cm、幅20cm程あり、古くから食物を盛るのに使われたほか、「ホオバ」と呼ばれ、若葉はカシワのように食べ物を包むのに使われたことから、包(ホウ)と名付けられたとする説が有力である。

また、樹皮が健胃剤、利尿剤になるなど、薬用に利用される。

現在でも朴葉味噌(飛騨高山)朴葉寿司(恵那)朴葉餅、朴葉巻、朴葉にぎりなど、各地の名物としてその名が残る。




開花期

開花期は5月から6月頃で枝先に咲き、直径15〜20cm程の花は9〜12枚の花弁があり、中心部に大型の雌しべ、周りに基部の赤い雄しべがたくさん並びます。

開花時は強く甘い香りが漂います。

花の寿命は数日程度で、すぐに赤い雄しべがバラバラと散り始め、花弁が黄色から茶色に変色します。

果実 (9月から11月に熟す)

秋に長さ10〜15cm程の集合花が赤く熟して下垂し、中に長さ1cm程の黒い種子が2個入っている。

やがて種子は白い糸で垂れるようになります。

食糧にはならないがキツツキの仲間は種子を好んで食べる。

生育環境

日当たりが良く保水性があり、水はけが良い土質が最も適します。

自然樹形を基本に、樹高を3〜5㍍程度に抑えます。

樹高より枝幅を小さくするような樹形に整えます。


ホオノキにはアレロパシー活性が認められる。

植物のアレロパシーについては、No,501を参照。






2021/06/16

セイヨウミザクラ No,498

 セイヨウミザクラ「 西洋実桜」

別名=オウトウ「黄桃」サクランボ

ヨーロッパ、北西アフリカ、西アジアに自生する。

サクラ属の植物でサンランボの名で知られている。

果樹のサンランボの品種の多くがこの種に由来する。


日本へは明治時代の初め頃に渡来し、主に東北から中部地方にかけて栽培されています。

ドイツやスイスなどヨーロッパ中部の乾燥した地方では、果樹を兼ねた庭木として建物や芝生の脇によく植えられています。

枝が広がるのでゆとりのある場所を選んで植える植栽します。




主な特徴

樹高は20㍍ぐらいまで生育し、幹は直立か、やや屈曲して枝を広く伸ばします。

4月から5月頃、短枝の葉腋から散形花序を出し、白色の五弁花を2〜3個ずつ開花します。

葉は互生し長さ10〜15cm、縁には細かく鋸歯があります。

直径2cm前後の果実が実り、果実の色は品種により様々です。

基本樹形

自然樹形を基本に高さは管理しやすい3〜5㍍前後に抑えます。

生長は早い方ですがサクランボの特徴として、太い幹を切ると腐れることがあるので注意します。

植え付け時期は12月から3月頃です。


生育環境

日当たりが良い場所で、水はけの良い土壌が最も適しています。


収穫期に雨が少ない事が大切で、山形などが産地となっているのはこうした気候上の理由もあります。


結実

自花不和合性の性質があるので、結実には他の品種の花粉を人工授粉(4月上旬頃)する必要があります。


代表品種

ヨーロッパ系オウトウは大木になり甘果種。

この他に実つきがよく黄紅色の日本で栽培されている、主な品種のナポレオン、黄玉(きだま)その掛け合せのサトウニシキ、高砂、ビングなどがある。

酸果種には酸味が少なく実の小さなメテオール、ノースターがある。

中国オウトウは木が小柄で開花時期が早く、九州地方では観賞用や庭木として植えられる。

木の性質上、東京近郊では栽培が難しいとされる。


肥料(施肥)

有機質に鶏糞を混ぜ、チッ素分の少ない化成肥料かまたは、過リン酸石灰、硫酸カリを少量混ぜて元肥として株周りに埋め込みます。

収穫後は追肥として、化成肥料を株周りにばら撒きます。


病気

灰星病(果実を腐らせる)
ロブラール水和剤かベンレート水和剤2000倍液を散布します。

害虫

アメリカシロヒトリ、ケムシ
葉を食害するので、春から秋まで注意する必要かある。

アメリカシロヒトリやケムシの防除には、害虫がふ化して集まっている幼齢期に、ディプテレックス1000倍液やスミチオンを散布します。

ハダニ
葉に寄生して吸汁する。
高温と乾燥を好みます。

ハダニ類にはケルセン2000倍液を春から夏にかけて、月に1〜2回散布します。

晴天続きで雨の少ない時に葉水をかけてあげることも大切です。

カイガラムシ
幹や枝に群生して酷い時には幹が白っぽく見えます。

カイガラムシやアブラムシの予防には、冬期に機械油乳剤30倍液を散布します。

カイガラムシやアブラムシは木の幹や枝に寄生して、木の養分を吸い取る吸汁性の害虫ですので、早期に発見して駆除する必要があり、樹勢が衰えるばかりか実に養分も回りにくくなる悪影響があります。

被害を受けた枝や葉、落葉など集め処分します。

病原菌や害虫の卵などの越冬を防止ができる事と、来年の再発の原因を根本的に除去することができます。


サクランボの主な効能

高血圧予防、動脈硬化予防、心筋梗塞予防、脳梗塞予防、貧血予防、眼精疲労、視力回復などに良いとされる。






2021/06/15

キングサリ No,497

 キングサリ マメ科 「金鎖」

別名=キバナフジ「黄花藤」
落葉性小高木

ヨーロッパの中央部でスイスやフランス、オーストリアなどの山地に自生しています。

寒さに強く日本では沖縄などの暖地を除いて植栽できます。

特に自生地と同じ石灰岩地に向いています。

花の姿から「キバナフジ」と言う別名があるが、豆の仲間で有毒(アルカロイド)の植物です。

日本には明治時代に渡来したとされ、古くから紫色は高貴な花とされていた事から、キングサリよりもフジの花が注目されていたようである。





開花期

葉が展開した後の5月から6月頃、枝先に近い葉腋から長さ数十cmの総状花序が下垂して、黄色の花を咲かせます。

品種によっては花序の長さが50cmぐらいになるものがありますが、日本では20cm前後が中心です。

葉は互生で奇数羽状複葉で小葉は全縁です。
秋には鮮やかな黄葉が楽しめます。

果実

フジやエンドウなどマメ科の植物に共通した形態の果実で、長さ数十cmの豆果が実り中に種子があります。

主な類似種

レダン
地中海沿岸に自生する高さ2〜3㍍の低木で、7〜8月に枝先から総状花序が垂れて黄色の花が咲きます。

植栽環境

日当たりは木漏れ日が当たるくらいでも大丈夫です。

乾燥には強い方ですが、夏の西日が当たるような場所は避けます。

初夏の黄色い花は洋風や明るい雰囲気作りに適しています。

花壇の脇や庭園の入り口、縁取りなどに利用できます。

幹や枝にしなやかさがあるので、トレリスやエスパリエ、アーチ仕立てなどに適します。

エスパリエ仕立てとは

樹木の枝を柵や格子などに誘引し、薄い壁のような平面的な樹姿に仕立てたもので、果樹や緑化樹、つる植物などに多く用いられます。


トレリス仕立てとは

格子垣の事で、つる性の植物を絡ませたり、鉢を吊るしたりする。

通常は木、竹、または金属の織り交ぜられた物や交差した部分の開いた、フレームワークまたは格子から作られた建築構造の物。

「ラティス」というものがありますが実は同じものです。







2021/06/14

フジキ No,496

 フジキ マメ科 落葉高木

別名=ヤマエンジュ 絶滅危惧種Ⅱ類

中部地方以西の山地に稀に自生する。

日本海側の分布は若狭湾までとされる。

樹高は10㍍以上になることがあり、フジに似た花をつけることからフジキの名がある。

幹は直立または、やや屈曲して枝を広げます。
よく似たものにユクノキがある。




開花期

5月から6月頃、枝先から複総状花序をだして、フジに似た白い花をたくさんのつける。

葉は互生し、長さ20 〜30cmの奇数羽状複葉で小葉は9〜13枚、小葉は長さ4cm程で全縁です。

冬芽が葉柄に包まれて見えない事が特徴の一つです。

果実

秋に長さ5〜9cm程の豆果が褐色に熟し、中に数個の種子があります。

生育環境

半日以上の日当たりがあり、水はけの良い場所に適しています。

風当たりが強い場所や潮風が当たるような場所は避けます。

庭木としての利用が少なく、また入手しにくい樹種です。

せん定

自然樹形を生かし、枝が混み合うときは枝抜きを行ない、伸び過ぎる枝は切り戻します。

繁殖は実生により殖やします。






2021/06/13

アカメガシワ No,495

 アカメガシワ トウダイグサ科

別名=ゴサイバ 「赤芽柏、赤芽槲」
落葉高木

本州、四国、九州、沖縄、中国などに分布している。

北海道南部以南まで植栽できる。

名前に由来は、春先に出る新芽(アカメ)が紅色なことからこの名があり、別名のゴサイバは「五菜葉」の意味で、昔は飯盛り用に利用されていたことに因んでいる。

山地の荒れ地、崖地や崩壊地など、やせ地などに早く侵入し生殖する。

この性質から明治時代には、東京の街路樹に選ばれた事がある樹種であったが、樹形がまとまりにくい事もあって、現在では利用されていない。




やや湿り気があり日当たりの良い場所を好むので、川岸や原野、林縁などに多く自生する。

雌雄異株で、大きなものは樹高15㍍に達するものもある。

遅くまで葉は緑色を保っているが、晩秋には鮮やかに黄葉する。

生育環境

葉が大きくまた、枝が比較的粗くて樹形をまとめにくい事から、単植での利用はほとんどありませんが、広い場所であれば落葉樹類を中心とした植栽に利用できます。

また、砂質土などの痩せた場所や斜面地、水流沿いなどにも適しています。


せん定

自然樹形を基本に樹高を3〜5㍍程度に保ち、樹形が広がり過ぎないように長く伸びた枝を切り戻します。

繁殖は実生や挿し木で殖やします。


アカメガシワの効能

様々な効能がある。

消炎鎮痛薬として、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃酸過多、胆石症、腫れ物などに用いられます。

民間では、樹皮よりも赤い新葉と新芽、赤い葉柄の干したものを煎じて服用した方が、胃がんや胃潰瘍に効き目があるとされている。


動物実験でも胆汁分泌促進、潰瘍の予防に効果があると認められている。

アカメガシワは樹皮の部分に有効成分が含まれており、サプリメントや生薬など食用としても利用されています。





2021/06/12

東法田の大アカマツ伐採される No,494

 東法田の大アカマツ

日本国内最大とされた最上町の東法田地区にある大アカマツが10日に伐採されました。

古くから集落の人々より山神の御神木として、大切にされてきた大アカマツは、2018年5月頃から急激に樹勢が衰え始めたことが確認され、その原因はわからないとされた。

その後2019年8月に専門家による診断によって枯死相当との判断がなされ、2019年6月に枯死状態と認定され、天然記念物とされてきた指定を解除された。

樹勢の復活を願った人々の思いが届くことはありませんでした。

樹齢600年の大アカマツは最期を迎えたのであった。

10日に伐採された大アカマツは、ある程度幹周りが分かるように切り株が残されました。

町は今後切った幹を保管して、楽器などの他に活用法を探るとしている。



               「在りし日の大アカマツ」









2021/06/11

サワフタギ No,493

 サワフタギ ハイノキ科

別名=ルリミノウシコロシ、ニシゴリ
「沢蓋木」落葉小高木

北海道から九州、そして朝鮮半島や中国にも分布する。

沢などの水辺に生え、茂った枝が沢を覆い隠すように見えることからこの名がある。

山地の水辺や湿地に生え、高さが3㍍程になる。

庭木としての利用はあまり多くない。

花は葉が展開したあとで、5月から6月頃枝先に白色の小さな5弁花が多数咲きます。

「タンナサワフタギ」に似ているが、葉の鋸歯は細かくてあまり目立たない。

別名のルリミノウシコロシの名の、ルリとは球形の果実が熟すと藍色、実際は青味の強い瑠璃色になることに因んでいる。

ウシコロシはバラ科のカマツカの別名で、花や樹形が似ていることによると思われるが諸説ある。

また、木灰を紫根染めの媒染料とした事から、ニシゴリ(錦織木)の別名がある。




主な類似種

タンナサワフタギは関東地方以西に自生する。

葉の鋸歯がやや粗いことや、果実が黒く熟す点などが異なります。

樹形

自然樹形が基本で、枝が重なり合うような樹形に仕立てます。

花は短枝の先につき、樹高は2〜3㍍ぐらいが適当です。


植栽環境

日当たりは木漏れ日が当たるくらいでも大丈夫です。

湿り気がある場所に適しますが、水はけの良いことが大切です。

繁殖は実生で殖やします。


                               「サワフタギの盆栽」

盆栽としても利用される事が多くなった樹種である。






2021/06/10

プルーン No,492

 プルーン バラ科 落葉小高木

別名=西洋スモモ、プラム

プルーンは西アジアからカスピ海沿岸部にかけた地方(コーカサス)に分布している野生種が基本種で、栽培種として作り出された品種群を総称した呼び名である。

この地から乾燥プルーンが✫隊商の携帯食として西に渡り、南ヨーロッパ、西ヨーロッパ及びバルカン半島地域に伝わったのが今から2000年前のことである。

✫隊商(たいしょう)とは
(キャラバン)
隊を組んで主に内陸アジア、北アフリカの砂漠や草原地帯を行く商人の1団のことである。

日本にプルーンが伝わったのは明治初期で、日本での果物栽培は中部地方など比較的冷涼な気候の地方が中心です。

1856年、フランス人の植木職ルイ·ペリエがカルフォルニアにプルーンを移植、その後品種改良が繰り返され、アメリカでの栽培が盛んになっていった。

カルフォルニアプルーンはアメリカ国内全生産量の99%を占めており、全世界ではプルーン生産量の40%を占めている。
(2019年5月時点)






花咲き

花は葉が伸びるより早く、5月頃に短枝から数個ずつ白い五弁花が開きます。

花の数が多い時は花が枝を包むように咲きます。

果実

8月頃に紫がかった黒色で卵形の果実が実ります。

果物は商品にする時は、表面の白さが商品価値を左右するようです。

果実は甘みがあり、ミネラルが多く含まれ、生食のほかジャムや乾燥果実などに加工されます。


結実

プルーンは一本だけでは受粉できない品種なので、結実させるには複数の品種を植えるか、他の品種の花粉を開花期に人工授粉する必要があります。


主な品種

古くから栽培されているためか品種数は千を超えると言われいる。

育てやすい品種としてソルダム、サンタローザなどがあります。


植栽環境

果実の採取を楽しむには、日当たりの良い場所を選びます。

乾燥には強いので水はけの悪い土壌は不向きです。

風通しの良いことが大切ですが、強風が当たるところは適さない。

混植の時は枝が触れ合わない程度の間隔を保ちます。


害虫

コスカシバによる食害
幼虫が樹の中に穿孔(せんこう)し、樹勢が衰えます。

虫穴の入り口には虫糞がつき樹脂が出ています。

虫穴から胴枯病菌などが入り、樹が枯れることもあります。

成虫は5月から10月に発生して、樹の割れ目などに卵を産みます。

「ガ」の一種ですが羽が透明で一見すると蜂のように見えます。

虫穴を見つけたら樹皮を少し削り、中の幼虫を捕殺します。

樹皮を削ったあとは塗布剤で傷口を保護しておきます。


また、ハンマーなどで入口付近を叩き圧殺するか、針金で刺して駆除する方法もあります。

防除として、成虫が卵を産み付ける前に割れ目や傷口を中心に塗布剤を塗っておきます。

塗布剤にはサッチューコート、スミバークなどがあります。


モンクロシャチホコ(フナガタケムシ)
この毛虫は9月頃に発生し、若齢期は赤褐色で葉の裏に群れて葉を食べます。

老熟幼虫は5cm程になり、紫黒色に変わって、黄白色の長毛が生えます。

敵が近づくと頭と尾を上げて静止する性質がある。

発生量が多くない場合は、一匹づつ捕殺するか群れを小枝ごと処分します。

発生が多い場合は、薬剤散布を行います。

スミチオン、ディプテレックス、エルサン、MEPなどを散布します。

年に一回、7月頃に成虫が発生し、その次の世代が被害を起こします。

7月に発生する成虫の量が多い時は予防剤を散布します。

せん定 12月から2月

開花結実するのは2年枝なので、発育枝や側枝は切り詰めて短果枝を出させるようにします。

短い枝の方がたくさんの実を付けます。

殖やし方

アンズやモモを台木にして接ぎ木し、殖やします。

肥料

1月から2月頃に株周り溝を掘り、配合肥料を撒きます。

鉢植えは3月に玉肥を3〜4個置き肥します。


主なプルーンの効能

プルーンには血圧を正常に保つ様々な成分が含まれています。

カリウム
高血圧の原因の一つ、ナトリウム(食塩)を身体の外へ排出する。

ポリフェノール(クロロゲン酸)
血管を健康に保つ。

ペクチン
血管を詰まらせるコレステロールの吸収を抑える。

プルーンは骨の健康に役立つのではないかと言う研究が進められ、その研究によればプルーンの摂取が、骨形成に良い影響を与えると言う臨床データが得られています。

また、プルーンはお腹の調子を整える働きがある事が知られています。

プルーンに含まれるペクチンは、腸内にいる細菌の種類や数を良好に保ったり、便通を改善したりする作用が明らかにされています。

また、天然の甘味成分であるソルビトールも含まれ、便の水分量を増やし柔らかくする事により、便通を良くする働きがあります。