ツバキ (椿、山茶、海石榴)
日本に自生する野生のツバキには、ヤブツバキ(高木)とユキツバキ(低木)の2種があり、ヤブツバキは北海道と小笠原諸島を除く日本全土、ユキツバキは秋田から琵琶湖北岸の日本海側の山地多雪地帯に分布する。
この2種から生じた園芸品種は日本産が1300余種、海外で発表のものはその数倍もある。
しかもこれら2種のツバキは、世界のツバキ属200余種のうち、最北地帯に分布するため寒さに強く、また葉は照り葉で美しいことから、世界的にも高い評価を受けている。
日本で好まれて栽培されているもの、育てやすく入手可能なものは、4系列に分かれる。
①ヤブツバキ系 ②ユキツバキ系
③ワビスケ系 ④海外の品種
ツバキ園芸は、室町時代に作庭や造園が発達したことや、茶道、華道の※勃興※興隆によって、ツバキの花木としての認識と価値が急に高まった。
※勃興=ぼっこう=急に勢いよく始まって、盛んになること。
※興隆=こうりゅう=勢いが盛んになること。
大阪夏の陣(元和元年、1615年)を境に徳川幕府の基礎が安定して、平和時代が来ると天皇、将軍、武家、僧侶、更に一般庶民の間に、趣味の園芸としてのツバキブームが巻き起こり、江戸の後期、天保(1831年~1845年)までその流行が続いた。
中期にはすでに600品種を収めた極彩色の図譜(宮内庁所蔵)がある事によっても、その熱狂的な様子が窺える。
明治に入ると、西洋花卉に押されて急速にブームは衰退したが、第二次世界大戦後、欧米のツバキ熱に刺激されて、昭和のツバキブームが再来した。
◉代表的な病気
※モチ病=病原体はカビ
文字通り葉が餅を焼いたように、厚くなったり内側にねじれる病気です。
発生初期には、葉が淡黄色に変色します。
やがて葉の表面が白く粉をふいたように、カビの胞子でいっぱいになります。
最後は褐色になり枯れて萎んでしまう。
発生時期はほとんどが4月から5月ですが、まれに9月から10月の秋に発生することもある。
このカビは生きた植物にしか寄生できません。
感染すると新芽の中で菌糸として潜伏し、翌年の発病を待ちます。
感染経路は、葉の表面に白く密生した胞子が、風に運ばれて感染拡大します。
この病気の病原体(カビ)は、葉の細胞の内部で活動するので、薬をいくらまいても効果がありません。
毎年発生するようなら、病葉を取り除いた後で新芽に、銅水和剤(ボルドーなど)を散布しましょう。
最も効果的な予防法は、病葉の徹底的な摘除です。
他には、芽が冬を越している病菌を殺すために、発芽直前に石灰硫黄合剤や、銅水和剤を散布しても効果的です。
◉花腐れ病
10月から3月頃に発生
開花前に殺菌剤のダニコール1000の500倍から600倍液を散布するのが効果的です。
この殺菌剤は残存性に優れ、薬害もほとんどありません。
また、4月頃の萌芽直前にダイセン水和剤1000倍液を10日おきに2回散布する方法もあります。
◉代表的な害虫
※チャドクガ
葉の裏にケムシが群れて、葉肉だけを食べるので表からは葉の色が黄色に見えます。
年に2回、4月と7月頃に発生します。
この虫は毒毛を持ち、触れるだけでなく近寄ってもかぶれるので、他のケムシのように捕殺するのは適切ではありません。
薬剤には、スミチオン、ディプテレックス、DDVPなどが適しています。
成虫も毒毛をまき散らかすので、早期に駆除することが大切です。
◉アブラムシ
5月から9月頃まで月に1回程度、スミチオン、オルトランを散布
◉カイガラムシ
冬期に機械油乳剤30倍液を散布すると効果的です。
◆肥料
1月から2月に根元に溝を掘り、堆肥に少量の鶏ふんを混ぜ、リン酸カリ分の多い化成肥料を与えます。
追肥として、5月と9月に少量の油粕と化成肥料を株元に与えます。
◉植え付け、土壌、土質
ツバキの根はたえず新鮮な空気(酸素)を必要とし、降雨で数日間も根の部分が水浸しになると、幼根は窒息して根腐れを起こしやすくなる。
排水と通気のよい土地、土壌はツバキがよく育つための決定的な要因です。
低地で降雨ごとに冠水するような場所では、排水溝を作り、また盛り土をして植えます。
土質は、重い粘土質よりもやや軽い黒土や赤土などが適しています。
これに腐葉土や完熟堆肥をすき込めば、排水や保水、通気性が高まり、地力もついた理想的な土壌になります。
寒風の通らないことが大切です、なるべく日当たりのよい所を選びますが半日陰でも育ちます。
植え付け時期は3月下旬から4月、8月下旬から10月中旬頃までです。
2㍍以上の成木は、高温期がよいので7月から9月上旬までに植え付けし、乾燥しやすい土質なら敷きわらなどで乾燥防止をします。
※ツバキは幼苗時期に強い日差しを嫌い、高木の下で日陰の生活する陰樹です。
◉せん定
せん定は花の終わった後の4月が適期です。
生け垣のほか、樹形によっては異なりますが萌芽力が強いので、自然樹形の他にも円筒形、散らし玉、スタンド仕立てなど好みに合わせて行えます。
花芽のつく時期が6月中旬から7月中旬ですので、その前にせん定は済ませます。
徒長枝やふところ枝は、日当たりや風通しのために、また見苦しさを解消するためにも切り取りましょう。
※花芽のつく前に徒長枝や伸び枝をきりとる(4月)