南極の山上で発見された生命体がいない土壌
研究者たちは、これまで最も標高が高く過酷な場所でも、土壌には数種類の微生物がひっそりと生息していると想定していました。
だが、生命体が全くいないと見られる土壌が、南極大陸で見つかった。
南極点から約480㌔の山上、そこは火星に似た環境だった。
地球の表面では初めてとなる報告である。
土壌採取場所は吹きさらしの険しい2つの山の尾根である。
シュローダ·ヒルとロバーツ·マシクと呼ばれる山である。
単細胞生物は、93℃を超える熱水噴出孔でも、南極の厚さ800㍍もの氷の下にある湖でも、更に高度3万7000㍍の地球の成層圏でも生きているのが見つかっています。
だが、南極の険しい山から採取した土壌の中には、米コロラド大学ボルダー校の微生物生態学者「ノア·フィアラー」氏と氏が指導する博士課程の学生「ニコラス·ドラゴネ」氏が1年を費やし、氷河のあちこちの山から集めた204点のサンプルを対象に、試験を行ったが生命がいる証拠が見つからないものがあったと言う。
比較的標高が低く寒さが厳しくない山の土壌サンプルからは、多くのDNAが検出された。
最も標高が高く、寒さが厳しい2つの山の土壌から採取したサンプルの2割からは、全く生命がいる証拠を見つけることができなかった。
検査結果の一部を見たフィアラー氏は、何かの間違いじゃないかと感じたと言う。
そこで生命の証拠を探すためにドラゴネ氏は、複数の追加実験を行いました。
土にグルコース(ブドウ糖)を含ませ、生きた生物によって二酸化炭素に変換されないかを調べました。
地球上の生命がエネルギー源として使う、アデノシン三リン酸(ATP.検査)の検出も試してみました。
アデノシン三リン酸とは、すべての植物、動物及び微生物の細胞内に存在するエネルギー分子のこと(微粒子、微生物測定器)
何ヶ月にも渡って様々な栄養素を与え、微生物にコロニー(生物集団)を形成させようとしました。
それでも一部の土壌からは何も検出されませんでした。
無菌状態とは言い切れないが、生きた細胞がごく僅かな数しかなければ、検出できない可能性はある。
しかし、この土壌には微生物が全く生息していなかった。
本当に生命体はいないのか
カナダ、ゲルフ大学の環境微生物学者「ジャクリーン·ゴーディアル」氏は、この調査結果に興味をそそられると評し、中でも生命が見つからない条件を究明しようとする、ドラゴネ氏の取り組みに注目している。
高い標高と高濃度の塩素酸塩で、生命体が検出されない可能性が高くなる2大因子で有る事を突き止めたことに対し、こうした土壌に生命体が全くいないという説に、完全に納得しているわけではない。
ゴーディアル氏は数年前、南極横断山脈の同様の環境で土壌調査を行った事がある。
それはシャクルトン氷河の北西約800㌔の地点にあるコニバーシティ·バレーで、おそらく12万年間湿度が低いまま保たれ、氷点以上の気温になったことがない場所である。
✫シャクルトン氷河は南極大陸の氷河で、イギリスの南極探検家、アーネスト・シャクルトンに因んで名付けられた。
この場所の土壌サンプルをマイナス5℃で20ヶ月間保温しても生命の兆候は見られなかったが、サンプルを氷点から数度高い温度まで温めてみると、一部のサンプルで細菌の成長を確認できたのである。
こうした土壌に生命体がいないと判断するかどうかは、その定義によって異なるが、例えば氷河の氷に数千年間閉じ込められたまま、生き延びた細菌が発見されたことがある。
氷に閉じ込められている間、これらの細胞はその代謝の速さを百万分の1にまで下げている可能性があるとされる。
コニバーシティ·バレーで見つかったのはこのような「スローな生存者」だったと、ゴーディアル氏は推測している。
ドラゴネ氏とフィアラー氏が10倍量の土壌を分析すれば、海抜2100㍍を超える2つの山、ロバーツ·マシフやシュローダ·ヒルでも見つかるかも知れないと考えている。