緑のお医者の徒然植物記

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2020/08/01

盆栽 No.241

盆栽

日本人は昔から心のゆとりを求めて、盆栽を楽しんでいました。

盆栽の歴史は古く、鎌倉時代の文献(春日権現験記絵巻=かすがごんげんきえまき)に盆栽が描かれています。




※鎌倉時代=1185年~1333年
本格的な武家政権による統治が開始した時代です。

鎌倉時代から室町時代にかけて、日本の伝統文化である、茶の湯や能が生まれ、これらとともに盆栽も、公家社会や武家社会へと急速に広まりました。

以来、今日に至るまで日本を代表する文化として、親しまれてきたのです。

盆栽は、マツ類やシンパクなどの針葉樹を用いた、松柏(しょうはく)盆栽と、その他の常緑広葉樹や落葉樹を用いた、雑木(ぞうき)盆栽に分けられます。

雑木盆栽はさらに、樹木のどこを観賞するかによって花物、実物、葉物に分類されています。

◉盆栽の観賞のポイント

★幹(幹ぶり)
幹は盆栽の顔とも言える、樹形の基本を作る上で重要な部分です。

通常、幹は傷のないものが最も良いとされており「丸幹」と呼ばれます。

一方、幹の傷を利用して、観賞の価値を高める物もあります。

幹の一部の樹皮が剥けて、木質部が白骨化しているものを「シャリ幹」または「サバ幹」と呼びます。

また、樹芯(幹の先端)が自然に枯れて白骨化したものは「ジン」と呼びます。

いずれも、風雪や落雷などの自然災害に耐えて育ってきた、老木の趣を表現したものとして珍重されます。

樹木の場合も、樹齢を重ねるほど樹木の持つ趣が深くなります。



★立ち上がり

株元から最初の枝までの部分を「立ち上がり」といい、根張りと並んで、盆栽の大切な観賞ポイントになっています。

株元から力強く立ち上がっていることが、良い盆栽の条件になります。

★コケ順

立ち上がりから先端までの、幹の太さや枝の出ている位置の様子を「コケ順」と言います。

★模様

幹の曲がり具合のことを「模様」と言います。

樹形全体のバランスや美しさは、主に模様のよし悪しできまります

◉根(根張り)

昔から盆栽名木の第一の条件としてあげられるのが根張りです。

根張りとは、地表近くに伸びた側根が、木の生育とともに地表に露出してきたものを言います。

一般に、太い側根が四方に平均して力強く張り出し、大地を抱え込むように根付いているものが、良い根張りとされています。

★枝(枝ぶり)

枝は幹とともに樹形全体の印象を決定づけます。

枝ので出によって盆栽の表情が変わるからです。

枝の大小や向きに関係なく、幹の下(根元に近い部分)の枝から上に向かって順に一の枝、二の枝、三の枝と呼びます。

また、樹形を整える上で必要な枝を「役枝」樹形を整えるのを妨げる枝を「忌み枝」といい、仕立てる過程で忌み枝は切り落としていきます。



★さし枝
ひときわ長く大きく出た、樹形に変化、表情を与えるメインの枝です。

やや下向きに張り出すのが一般的です。

さし枝をどの位置にもってくるかは、樹形全体のバランスで決まります。

★受け枝
返し枝ともいわれ、さし枝の反対側から出ていて、これを受けている感じで、バランスをとっている枝です。

★落ち枝
幹の中程か、それより上辺りから下方に向かって、落ち込むように垂れている枝です。


強風などの厳しい自然環境に、耐えながら生育してきた様子を表現します。

★食いつき枝
他の枝より特に短く、樹冠にくっつくように出ている枝です。

枝配りに変化をつけ、樹形に深みを与える効果があります。

★後ろ枝
二の枝、三の枝辺りの裏側から出ている枝で、樹形に奥行きを与えます。






2020/05/06

クロマツ(黒松) 盆栽 No.206

クロマツ (マツ科常緑針葉樹)

日本の風景を代表する樹木の一つで、アカマツを「女マツ」と呼ぶのに対し、クロマツは「男マツ」と呼ばれます。

マツ類の盆栽と言えば、生長が遅く作り込む楽しみの多い、ゴヨウマツが第1にあげられますが、優美なアカマツと並んで人気の樹種です。

長く固い葉が2葉ひと固まりにつきます。

樹皮は灰黒色で亀甲状に割れます。

マツ類の中でも最も樹勢が強く、樹脂が多いのも特徴です。

◉管理場所

年間を通じて日当たり、風通しのよい所で管理します。

真夏に葉焼けを起こす恐れがある場合は、よしずなどで棚を覆って半日陰の状態にしてやります。

極寒地を除いて、冬期も戸外で管理できます。

冬に鉢土が凍結する地方では、鉢土の上に小石を置いたり、鉢ごと土の中に埋めると、凍結や霜による寒害を防止することができます。

◆水やり

夏の暑い時期は、1日3回の水やりが理想です。

時間は特に限定しませんが、①早朝と②午前中、③夕方を目安にするとよいでしょう。

冬は1日1回を基準にして、土が乾いたらその都度水を与えるようにします。

いずれの場合も、鉢底から水が抜けるまでたっぷり与えます。

また、夏の夕方は、葉に水(霧吹きなど)をかけて、葉の温度を下げます。

設置場所にもより、春、秋は朝夕2回水をあたえなければならない場合がありますが、原則として、春、秋は朝夕水やりをしません。


         (模様木)

★肥料

肥料は原則として油粕などの有機肥料を春(3月~5月)と秋(9月~10月)の各1回の年2回固形肥料を与えます。

鉢の直径10㎝に対して一個を目安にし、鉢の縁に置き、毎回置き場所を変えて置きます。

樹勢が弱まっているものや古木などには、肥料と一緒に樹木の生長に活力を与える活力剤を使うとよいでしょう。

春肥は、若木や芽切りを行う株には早めに十分与えるようにします。

成木は、春の肥料をやや控えめにし、秋の肥料をたっぷり与えるとより引き締まった木になるでしょう。

剪定、整姿

節間の詰まったよい樹形にするには、みどり摘みが欠かせません。

庭木のみどり摘みは通常年1回ですが、小ぶりに仕立てなくてはならない盆栽の場合は、芽が出る順に年2~3回行います。

生育状況によって多少異なりますが、基本的に最初の新芽(一番芽)はすべて元から取るようにします。

半年ほどすると新しい芽が出てくるので、その時弱い芽はかき取ります。

やがて同じ位置から2番芽が伸び、短葉でバランスのよい形になります。

また、その年に伸びた新梢は、秋に主要なものだけを残して切り取ると、そこから翌年伸びる小さな芽が出ます。

春のみどり摘みと秋の新梢の整理を繰り返すことで、樹高を小さく保ちながら芽数を増やし、節間の詰まった盆栽に作り上げることができます。



一般に、古葉引きは12月頃に行います。

方法は庭木と同じように今年の葉だけ残して古い葉を落とします。

生長力の強いクロマツは、葉が長く伸びるため、盆栽では長い葉と幹、枝とのバランスが悪くなる場合があります。

そんな時は、適当な長さに葉先を切り詰めます。

切ったそのままでは、葉先の切り口が茶褐色に変色する場合があります。

切り口を真水にごく少量の酢を溶いた溶液(濃度3%程度)を切った葉先をすぐに洗っておくと、葉の変色を防ぐことができます。

★植え替え

若木は2年~3年に1回を目安に植え替えます。

成木は4年~5年に1回を目安に植え替えます。

適期は3月中旬~5月、9月中旬~下旬です。

用土は排水性の高い土を用います。

赤玉土7~8、桐生砂3~2の割合で混ぜた混合土などが一般的です。

◆病害虫

カイガラムシ、アブラムシ、シンクイムシ、アカダニなどが発生する場合があります。

発生期にはスミチオン乳剤などの殺虫剤の定期散布で対処します。

冬期に石灰硫黄合剤の20~30倍液を消毒しておくと病害虫全般の予防になります。

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