緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2020/08/31

ホトトギス (杜鵑草) No,262

ホトトギス ユリ科 宿根草

別名=ユテンソウ(油点草)

東アジアからインドにかけて、20種ほどが分布し、そのうち日本には10種余りが自生しています。

古くから茶花や切り花として利用されてきた、日本原種の園芸植物です。

花弁につく斑点の模様が、鳥の「時鳥=ホトトギス」の胸元の模様に似ている事から、この名前が付けられました。

近づいて見ると、花に入る斑紋は種類や個体によって異なり、面白いことに多くの種類が雌しべやその下の花柱まで、花被片(花弁)と同じ色や形をしています。

斑点のない白い花もあります。

植物分類学上は、花は上向きに咲くものがあり、大まかには花の向きで種類が分けられます。

また、園芸的には栽培方法の違いによって、茎が直立する種類と、茎が下垂する種類に区別できます。

※茎が直立する種類
ホトトギス、タイワンホトトギス

※茎が下垂する種類
キイジョウロホトトギス、コハクホトトギス

「杜鵑草」「時鳥草」「油点草」など、様々な漢字で表される事からも、秋の訪れを告げる花として
親しまれてきたことが伺えます。

もともと日陰の植物なので、涼しい環境を好みますが春はなるべく明るい場所で育てます。

日当たりを避け、地温が低く保たれる風通しのよい場所で管理します。




◉植え付け
3月に行います。
※茎が直立する種類は、鉢で育てるか、秋や冬に日当たりがよく、夏には半日陰になる落葉樹の下などに植え付けます。

※茎が下垂する種類は、鉢で栽培するか、庭植えにする場合は石垣や岩組みなどに植え付けし、地植えにはしません。

ホトトギスは乾燥が大敵です。

生長の盛んな春から夏にかけては、土の表面がいつも湿っている状態になるように十分に水を与えます。

水はけがよければ特に用土は選びません。

※鉢植えには硬質赤玉土4、軽石3、硬質鹿沼土3の配合土か、市販の山草培養土に腐葉土を2割程度加えて使用します。

◉肥料
生育が旺盛な4月~6月に月に一回固形の有機質肥料または、化成肥料を置き肥として施し、さらに月に2~3回液肥を与えます。

夏は施肥を止め、花が終わった株は9月下旬~10月に1回だけ固形の有機質肥料または、化成肥料を置き肥として施すか、2回液肥を与えます。

◆害虫
ナメクジ
昼間は隠れていて、夜間に活動し花や新芽、若葉を食害します。

ナメクジ殺虫剤などを使用し駆除します。

土に石灰が不足すると、被害が大きくなると言われているので、石灰を施しておくと予防になります。
お酢を少し薄めて、直接ナメクジにかけて駆除することもできます。

ビールが大好きで、誘って溺れさせる駆除法もあります。

◉せん定
茎が下垂する種類で、枝数が少ない場合は草丈を抑えて草姿のバランスをよくし、枝数、花数を多くする目的で切り戻しを行います。

5月下旬から6月中旬に、3~4節残して枝を切り戻すとその後、側枝が伸びてきます。

大株で枝数が多い場合、そのままでもたくさんの花が咲くので、切り戻さずそのまま育てて、自然な姿を楽しみます。

切り落とした枝を使って挿し木もできます。


◉殖やし方
挿し木は5月から6月が適期
先端部分は発根率が悪いので、挿し穂には枝の中間部分を使い、2節ずつにそろえ、挿し床に1節だけ挿し込みます。

1ヶ月ほどで発根するので、9月頃に移植します。

株分けは2月から3月に行います
芽を持って手でほぐすようにすると、自然に株が分かれるので、1芽ずつ植え付けます。

耐寒性があり、屋外で冬越しさせる事ができます。


2020/08/30

小高のカヤの木 NO.258

カヤ (榧)イチイ科

原産地=日本、朝鮮

雌雄異株=雄花は葉の付け根に、雌花は小枝の先に群がって咲く。

淡黄色4月~5月頃開花する。

山地に生える常緑高木で高さ20㍍以上になる。

大きなものは高さ35㍍、直径2.5㍍ほどになる。



茨城県(旧麻生町小高=現行方市小高925) 

「小高(おだか)のカヤ」

茨城県指定天然記念物(昭和33年3月12日)


葉の先端は針のようにとがるので触ると痛い。

果実は一年半をかけて熟し、秋になると緑色の果皮の先端が割れる。


                        「カヤの実」
                
カヤの実は、種子油成分が多く、かつては食用油や整髪油をこの実から搾っていた。

食用、薬用になり、種子は割って生食できる。

材は碁盤、将棋盤として使われる。

樹皮は赤褐色で縦に浅く裂け、薄く剥がれる。


       (📷2020年8月撮影)


◉小高のカヤ

樹齢約650年 幹回り6.1㍍ 樹高約21㍍

1978年(昭和53年)まで小高小学校の敷地であった。


その昔は天台宗のお寺(神宮寺)がこの地にあった。

その当時に植樹されたと伝えられている。


◆生育環境

適度に湿気を含んだ肥沃な土壌が適しているが、比較的土壌は選ばない。

ただし、過度の乾湿は避ける必要があります。

◉肥料

堆肥、油粕、化成肥料などの寒肥を施す。

★害虫は風通しが悪いとアブラムシ、カイガラムシが発生し、すす病を併発する。

スミチオン、カルホス、デナポンなどの薬剤を散布

▲せん定時期は2月~3月
植え付け移植時期は3月~4月

★殖やし方

実生、または梅雨時に挿し木する

※品種に小枝が一年おきに反転するツナキガヤ
変種にヒダリマキガヤ、ハダカガヤ、チヤボカヤなどがある。


♣日本三大カヤの木

①1954年3月20日(昭和29年)に国の天然記念物に指定された「北浜の大カヤノキ」

所在地=静岡県浜松市浜北区本沢合

②1920年7月17日(大正9年)に国の天然記念物に指定された「横室の大カヤ」

所在地=群馬県前橋市富士見町横室1023-1

③1932年7月25日(昭和7年)に国の天然記念物に指定された「与野の大カヤ」

所在地=埼玉県さいたま市中央区鈴谷4丁目13-31








ヤマモモ (山桃、楊梅) No.261

ヤマモモ ヤマモモ科

「山桃、楊梅 」
原産地=日本(関東南部以西)四国
九州、朝鮮半島南部
中国、台湾、フィリピン

ヤマモモは、熱帯を中心に分布し、3属およそ50種程が知られている。


熱帯から暖帯に約35種が分布し、日本に自生するのはヤマモモ1種だけである。


香川県琴平山にはヤマモモが優占する森がある。

江戸時代阿波藩ではマツ、スギ、ヒノキ、クヌギにヤマモモを加えた五木を保護育成し、やせた山野に肥料木として植えました。

江戸中期以降に頻発した飢饉(ききん)には代用食にもされていました。

嘉永年間には、ヤマモモの改良繁殖が研究され「御前」「肥山」など多数の品種が存在していました。

現在の主要品種の「瑞光」は大正2年頃、中国福建省から「森口」は昭和20年頃発見されました。

春早く萌芽前に開花し、夏に果実がなります。

果樹として栽培されますが、比較的強い樹木なので公園、街路樹など緑化木としてよく植栽されている。

暖地の庭の主木、並木、防風、防潮林にもなります。

熟した果実は落果しやすく、日持ちもしないため、あまり市販されることはありませんが、生食だけでなく塩漬け、ジャム、砂糖漬け、果実酒などにされることが多い。

徳島県が有名な産地。




また、乾燥樹皮は「楊梅皮=ようばいひ」と呼ばれ、漁網などの染料に用いられるほか、タンニン及びフラボノイドを多く含み、下痢や打撲傷の薬にも用いられます。

夏に果実の紅熟したものを楊梅(ようばい)

7月~8月頃樹皮を剥いで天日乾燥したものを楊梅皮

樹皮にはタンニンが含まれ、楊梅染め(やまももぞめ)=天然染料
楊梅皮は諸媒染剤により茶、黄色、黄金、褐色、緑黒色など、魚網を染める染料や薬用に利用される。

塩水に耐えると言うのも染料の特徴である
合成繊維が出現してからはあまり利用されなくなった。





◆植え付け
ヤマモモは根に「根粒菌=こんりゅうきん」が共生して栄養分を供給しているため、やせた土壌でもよく育つ。

★根粒菌とは
マメ科植物の根に根粒を形成する根粒菌は、共生有機栄養窒素固定微生物群のグループに属し、いずれの窒素固定菌も他の植物と共生しており、菌体合成に必要な炭素源とエネルギー源を共生植物に依存しています。

根粒内には宿主から、光合成産物が供給されることにより、共生関係が成立している。

根粒菌は増殖能力を失った、バクテロイドと呼ばれる形態で、窒素固定を行い増殖に要するエネルギーを必要としないだけ窒素固定能力に優れている。

ヤマモモは暖地に適していて、乾燥にも強く庭木としては多少の日陰にも耐えます。

植え穴は大きく深めに掘り、腐葉土を多めにすき込んで埋め戻します。

苗木の根がとても傷みやすいので、根鉢はできるだけ崩さないようにして、植え付ける必要があります。

植え付け後、しっかり根つき、生育を始めるまでは十分に水を与えます。

植え付けは3月下旬~4月上旬が適期です。

◉肥料
寒肥として、堆肥や鶏ふんを根まわりに軽くすき込んで
土中湿度を保ちやすくします。

果実収穫後の夏場には、配合肥料と油粕を同量混ぜ
2~3握り根まわりにばら蒔きます(お礼肥)

◉病気
※こぶ病
こぶ病は様々な形のこぶが幹や枝に発生し、その部分から弱っていき、やがて枯れてしまいます。

こぶ病には銅マイシン水和剤500倍液を散布します。

◆害虫
※ヤマモモハマキ
春から夏にかけて葉を巻いて食害します。
被害が多い時は、スミチオン乳剤1000倍液で駆除します




◉せん定
ヤマモモは放っておくと大きくなるので、庭の広さに合わせた樹形で育てます。

萌芽力が強く、刈り込むこともできるので
枝葉が密生して樹形を維持しやすくなります。

樹冠から伸びすぎた枝は切り戻し
徒長枝や立ち枝は付け根から切ります。

樹冠内部の枝が多くなるため、込み枝の間引き切りや
不要枝の切り取りが必要になります。

幹から出る胴吹き枝は見つけ次第切り取ります。

管理できる樹高にするために、3月頃葉の量が全体の半分以下になるくらいに、各枝を切り返し樹形を整えます

同時に樹木内に光が当たるように、長い枝や樹の上部にある枝を枝を間引き、風通しをよくするために
込み枝、弱い細枝など不要な枝を間引きます。

2年枝の先端に実が生るので、枝の先端は切らないようにします。

春枝がよく伸びるように、枝の込み合ってる
部分を間引きます。

◉殖やし方
接ぎ木は3月~5月上旬に行います
充実した前年枝を接ぎ穂に使い、実生2年生の苗木を台木にします。

実生は夏に種を採取し、翌年3月に蒔きます。

ヤマモモの天然記念物

蓮着寺(れんちゃくじ)のヤマモモ
国指定天然記念物
所在地=静岡県伊東市

伊豆半島にはヤマモモの巨樹が多いが、その中でも最大のヤマモモが蓮着寺の境内にある。


                        「蓮着寺のヤマモモ」

ヤマモモは根元から3本に分かれて生長し、合体したものと想像できるが、株立性で株は多数枝分かれする性質がある。


市ノ瀬のヤマモモ
福岡県指定天然記念物
1963年のクリスマス・イブの日に指定され、一本の樹形が崩れて今の姿になったのではなく、雄株と雌株との案内板に説明されている事から、2本まとめて株周り(6㍍)を測定したものである。

指定された当時は一本の木の様に見えていたのかも知れません。


                     「市ノ瀬のヤマモモ」

所在地=福岡県那珂川市市ノ瀬







2020/08/29

フヨウ (芙蓉) No.260

フヨウ アオキ科フヨウ属 落葉低木

別名=モクフヨウ、キハチス、スイフヨウ
原産地=日本、中国、東アジア

一般家庭の庭や公園、社寺の境内などによく植えられています。

株元から枝分かれして、株立ち状になるが、幹の数は多くありません。

枝はあまり木質化せず、冬には上部が枯れ込んで翌年は株の側芽から萌芽します。

そのため扱いは寧ろ、大型の宿根草と云えるでしょう。

葉は互生し、長さ幅ともに10~20㎝ほどで浅く3~5裂します。

枝葉には白い毛が密生しています。

美人の事を「芙蓉のよう」と形容したり富士山を「芙蓉峰」と呼んだり、美しさを例える際にフヨウが使われることがありますが、この場合の芙蓉は「ハスの花」を指します。

古代中国では、ハスの花を芙蓉と呼んでいて、後代になってハスの花に匹敵する美しさを持つとして、この植物に「フヨウ」の名が与えられました。

別称のモクフヨウ(木芙蓉)、キハチス(木蓮)はそうした経緯をよく表しています。

フヨウは一年枝の上部の葉脈に、直径10~20㎝の花が単生します。

花期は7月~10月頃で、ひとつの花はアサガオなどのように朝咲いて夜に閉じます。

このような花を1日花(いちにちばな)と呼びます。

原種の花は白か淡紅色の一重ですが、園芸品種が多く栽培されています。

※代表的な「スイフヨウ=酔芙蓉」はその名の通り、朝には白かった八重咲きの花が夕方には、お酒に酔った顔色のように濃い紅色へと変化します。

※他にも同じアオキ科の🌺ハイビスカスのつぼみに似た花をつける「ヒメフヨウ」

30㎝ほどにもなる大輪の花が人気の「アメリカフヨウ」

中国の「ロザンフヨウ」との交雑種の「ハイカグラ」などがある。




◉植え付け
4月上旬~中旬が適しています。
日当たりののよい、しかもやや湿り気のある場所に植えます。

風通しと将来の枝の広がりを考えて、1メートル四方程度の広さを設けましょう。

土は砂質で、腐葉土など有機質の多いものが適しています。

植え穴は深めに掘り、下に堆肥と鶏ふんを埋めます。

◉肥料
1月~2月に寒肥として、鶏ふんや堆肥など有機質の肥料を根元に埋め込みます。

その他の時期には施肥は必要ありませんが、花を美しくするなら、追肥を7月頃、10月頃の花後に与えます。

どちらも化成肥料を株周りに与えます。

◆害虫
アブラムシやハマキムシなどが発生します。

4月~9月の虫がつきやすい時期には月1~2回、スミチオンなどの薬剤を散布します。

◉せん定
落葉期に徒長枝や枯れ枝などを整理します。

春以降に伸びた新梢に芽をつけるので冬期(11月~2月)にはどこで切ってもよく萌芽します。

株数が増えてきたら、古い株は地際で切り取ります。

樹高を低くしたい場合は、落葉期に高く伸びた枝の分岐点のすぐ上で切り戻します。

栽培できる北限の関東より北では、秋には地上部が枯れてしまうにで冬越し対策(防寒)として、枯れた株を地際から切り、敷きわらや落ち葉、土などでマルチングしておきます。

この状態づ春になれば再び萌芽してきます。

◉殖やし方
園芸品種は通常、3月下旬~4月に挿し木で殖やします

実生で殖やす場合は、11月頃に種を採取し翌年5月頃に蒔きます。



2020/08/28

ハギ (萩) No.259

ハギ マメ科 落葉半低木

原産地=日本(北海道、本州)対馬、朝鮮半島

秋の七草に数えられ、昔から日本の秋を代表してきた植物である。

外見は草のように見える。

「ハギ」の名は総称として使われているが、学問的には「ヤマハギ」のことを指す。

日当たりのよい山地にに生え、高さは2㍍ほどになる。

萩の名所として知られる、社寺に植えられているものは、枝が垂れる「ミヤギノハギ」が多い。

ハギは種類が多く、白い花もあるが一般的なのは紅紫色。

日本に自生するものだけで20種類はある。

✣代表的な品種として

ヤマハギ、ミヤギノハギ、ツクシハギ、シロバナハギ
小形のヤクシマハギなどがある。

※萩の名所として知られる社寺園
京都市
①梨木神社
②上賀茂神社(賀茂別雷神社=かもわけいかづちじんじゃ)
京都で最も古い神社
③迎称寺
④平安神宮
⑤真正極楽寺(真如堂)
⑥伏見勝念寺

東京都
龍眼寺

茨城県水戸市
偕楽園
その他、全国に多くの名所がある。

花の見頃は全国的に差はあるが、早くて7月から10月下旬頃まで




小さな蝶形のハギ花に派手さはありませんが、かえって上品な趣が人々に親しまれている。

古典文学にも度々登場し、有名な芭蕉の句では「一つ家に遊女も寝たり萩の月」がある。

万葉集には130首を超す歌が詠まれている。

◆植え付け、移植

秋から冬又は、2月下旬から3月上旬頃に行う。

根は浅く横に広がる性質があるので、植え付け場所を広く掘り起こし、堆肥を多めにすき込んで少し高植えにする。

◉せん定
冬期の12月から2月にかけて行う。

大株に仕立てる場合は別として、狭い庭などでは地際の5㎝~10㎝ほどを残して切り取り、これを毎年行えば小形の樹形で花を楽しめます。

また、萌芽力があるので低い丈にしたい時は、新芽が20㎝ぐらいに伸びたところで先端を摘み、横枝が出るようにします。

◆肥料
あまりたくさんは必要ありません
1月から2月に鶏ふんや油粕を、成木の場合で200㌘~300㌘株のまわりを軽く掘って埋め込みます。

◉病気
※さび病
発生時期9月~10月
ダイセンの400倍液を散布

※うどん粉病
発生時期4月~10月
病気を見つけしだい、10日ごとにモレスタン、トップジンM、ベンレート、水和硫黄剤などを散布

※褐斑病
発生時期5月~10月
ダイセン、ダニコール、ベンレートなどを散布

◆害虫
※ヒゲナガアブラムシ
風通しが悪いときにアブラムシが発生する。

マラソン乳剤を散布し防除する。
ほとんどの殺虫剤が効く。


★殖やし方
株分け
2月~3月、10月に1~2本ずつ行う。

挿し木は3月に前年枝を挿す。
梅雨期には新芽を挿す。

実生もまれに行われる。







2020/08/26

タラノキ No.257

タラノキ ウコギ科 山菜

原産地=日本、朝鮮、中国北東部、アムール·ウスリー地方 別名=ウドモドキ

日当たりのよい山野や雑木林に生えるが、裸地の先駆植物なので、崖や道路の法面(のりめん)など、まだ他の植物があまり入り込んでいない場所に多い。

山菜の珍味、たらの芽としてお馴染みです。

特有の香織とややしつこい味が好まれ、若芽を天ぷらや味噌漬けなどにし賞味される。

枝には鋭い大きなトゲがあるので採取には要注意。

トゲの少ないものは(メダラ)という。

日陰では育たないが、樹勢は強く生長は早い。

栽培にはトゲの少ないメダラもよい、移植は可能(11月下旬~3月頃)でせん定は不要。



◉肥料
油粕、腐葉土、化成肥料を冬に与える。

◆観賞用品種
葉に黄色の斑紋があるキモンタラノキ

葉の縁が白いフクリンタラノキ

※メダラは葉の裏が白く、脈上に褐色や汚黄色の短い毛がある。

◉タラノ芽料理
一般的なのは天ぷら外側のかたい葉を落とし、根元に十文字の切り込みを入れて熱を通りやすくする。

衣は薄めにし、天つゆに大根おろしを添えて食べてもよい。

また、茹でたものをごま和えや酢味噌あえにしてもよい。

保存しない時は味噌漬け、塩漬けなどにする。







2020/08/25

プラタナス (スズカケノキ) No.256


プラタナス すずかけの木

落葉高木


原産地=北アメリカ、メキシコ、アジア西部
別名=スズカケノキ(鈴掛木)

プラタナスと言えば並木や公園樹として有名ですが、もともとは明治時代に渡来した植物です。

「日比谷公会堂、スズカケノキ」

明治43年に当時の芝区桜田本郷町に、十数本が植えられたのが街路樹としての最初である。

樹皮が剥げ落ちまだらになるのが特徴です。

このまだら模様が迷彩服のデザインのもとになっている。

高さが30㍍にもなる高木で、葉が大きくよく日陰を作り、秋になると丸いトゲのある実を枝からぶら下げ、その姿が鈴のように見えることから、スズカケノキの名がある。




若葉の頃に密生する綿毛が、アレルギー体質の人々を悩ますと言われて問題になっている。

雌雄同株で4月頃に雌花は淡緑色、雄花は黄色または暗紅色の花を咲かせる。

寒さに強く、乾燥地や湿地以外では土質を選ばずよく生育し、公害にも強い。

肥料はほとんど必要ない。

◉害虫
※アメリカシロヒトリ 
主に落葉広葉樹に発生する。

枝先に白い糸が袋状に張られています。

この袋状の巣の中に、幼虫が群棲していて集団で葉を食べる。

老熟幼虫は3㎝ほどになり、単独で行動し葉肉だけでなく、葉脈以外の葉のすべてに部分を食べるようになり、被害も拡がる。

巣を見つけしだい枝ごと除去するか、ディプテレックス、DDVPなどの薬剤を散布します。

年に2回、6月と8月に発生します。

幼虫は樹皮のすき間などで、サナギの状態で越冬するので、秋に樹の幹にムシロを巻いておき、冬場にこれを処分します。

★せん定時期
10月下旬から2月下旬


          (果実)

★殖やし方
実生は3月頃に蒔きます。
挿し木は新枝を6月~7月頃挿し木する。






サカキ No.255

サカキ (榊)ツバキ科

雌雄異株 原産地=関東以南、四国、九州

花弁の先がやや尖った白の5弁花をつける(5月~7月)

葉の付け根に1~3個の黒い実をつける。

庭の主木、植え込み、生け垣のほか、神前に供える玉串などに用いる。

温暖地の林に見るサカキは、10㍍にも伸長するが、庭では3~5㍍に仕立てる。

性質は強健で日陰にもよく耐えるが、日当たりのよい場所に植え付けると、しだいに弱ってくる。

湿潤な所が適し、日陰を好む。
株元を乾燥させない。

生長は遅く、樹姿は自然に整うので特に混み合う部分を間引く程度でよい。

切り戻しは必ず枝分かれしている部分で行う。




◉肥料

12月から1月に有機質肥料を株の周囲に施す。

◆害虫

チャドクガ

葉の裏にケムシが群れて、葉肉だけを食べるので表からは葉の色が黄色に見えます。

このケムシは、淡黄色に黒い紋のはいった姿で、老熟幼虫は2.5㎝ほどになります。

年に2回、4月と7月頃に発生する。

この虫は毒毛を持ち、触るだけではなく近寄ってもかぶれるので、他のケムシのように捕殺するのは適切ではありません。

薬剤は、産卵初期にカルホス乳剤、スミチオン、ディプテレックス、DDVPなどで防除する。

葉の色が黄色く変わるので、これを目印に孵化(ふか)後早いうちに駆除します。

成虫も毒毛をまき散らかしますので、早期に駆除することが大切です。

◉殖やし方

実が黒く熟したら、種をよく洗って蒔く。

挿し木は2年生枝を切り、葉を2枚~3枚つけて挿し穂にして、小粒の鹿沼土に挿します。

★サカキとヒサカキの違い

サカキの葉を縁に鋸歯がなく、ヒサカキの葉の縁には鋸歯がある。

葉がサカキの方が大きい。

花期はヒサカキが少し早い。










2020/08/24

ナツツバキ No.254

ナツツバキ (夏椿)ツバキ科落葉樹

別名=シャラ、シャラノキ、サラソウジュ、サルナメリ
原産地=日本
(本州中南部、四国、九州)

宮城県以南の本州と四国、九州の比較的温度の高い山地に自生する、落葉高木です。

6月から7月にツバキに似た白色5弁の花が咲きます。

古くから観賞木として親しまれ、日本庭園、茶園には欠かせない花木の1つです。

別名「シャラ」は、釈迦が亡くなる時に近くに生えていたという、沙羅双樹ひ由来します。

実際の沙羅双樹は、樹高が30㍍にもなるインド原産のフタバカキ科の、熱帯性常緑高木で全く別種です。

一説によると、ある高僧が日本にも沙羅双樹があると信じて、山野を探した結果、ナツツバキを沙羅双樹と誤認して広めてしまった為に、「シャラ」の名がついたということです。

類似種に樹高、花径とも小ぶりの「ヒメシャラ」「ヒコサンヒメシャラ」があります。

ナツツバキは耐寒性がありますが、ヒメシャラは関東地方南部以南でないと、寒害を受けやすいようです。




◉生育管理
株元が乾燥しない腐植質に富んだ、湿潤な場所を好みます。

また、十分に根を張れる環境でもあることも重要です。

土の鎮圧が強く下層が固い盤状になっている庭は、乾燥しやすく根張りも悪いため、枯れ込む恐れがあります。

このような場所でも植え付けは、事前に土を深く耕して有機肥料を施して土壌改良する必要があります。

日光は好むが夏の強い日差しに長時間当たると、葉先から枯れ込みやすくなり、樹形を乱したり樹勢を弱くする原因になります。

午後の西日が強く当たらない場所や、半日陰などに植えるとよいでしょう。

◉肥料
冬期に完熟堆肥や腐葉土などを、寒肥として与えるとよいでしょう。

花つきが悪い場合は、秋口にリン酸分の多い化成肥料を少量与えます。

★病害虫の心配はまずありませんが、風通しが悪いとまれにカイガラムシが発生する場合があります。

混み合った枝葉を間引きせん定し、風通しを良くする。

◉せん定
若木のうちは特にせん定は必要ありません。

成木で横枝が伸び過ぎ、樹形が乱れたもの、混み枝が増えた場合は間引きをします。

枝の中間で切ると枯れやすいにで、必ず付け根から切る。

※ヒメシャラはナツツバキよりも小枝が多く出るようです。

花は前年の短枝につくので、枝先を切らないように注意しましょう。

◆殖やし方
実生は10月頃に種子を採り蒔きます。又は、乾燥しない日陰で保存し翌春に蒔きます。

挿し木は新梢を10㎝ほどきり、赤玉土(小粒)の挿し床に挿し、乾燥しないように管理します。

※ヒメシャラの挿し木は活着率が低く、困難なので実生で殖やします。






2020/08/22

世界一の樹齢木ブリッスルコーンパイン巨樹 No,253-1

ブリッスルコーンパイン 

世界一の樹齢とされるブリッスルコーンパイン(メスーゼラ叉はメトセラ)と呼ばれる巨木が、ホワイトマウンテンに存在する。


            「ブリッスルコーンパイン」

槇の木の特徴や松の木などの特徴を持っている。

皮が剥き出しになり、見た目は枯れた巨木に見える。

それもそのはず、樹木の9割りが枯れていて、残りの1割で生き続けているのである。

300年前にすでに枯れてしまった巨木が、その姿をそのまま残している不思議な樹木である。


(300年前に枯れたとされる巨木)


樹齢は4000年~5000年

巨木保護のため、詳しい場所は明らかにされていない。

枝先に松ぼっくりをつける。





2020/08/21

マサキ No.253

マサキ ニシキギ科 

(正木、柾)

原産地=日本、中国、朝鮮半島 別名=シタワレ
日本では北海道南部から、ほぼ全国に自生しています。

海岸線に多く自生することからわかるように、塩害に強いのが特徴です。

マサオキ(真青木)が語源で、それがつまったものと考えられている。


海岸付近に自生するものはツルオオバマサキという品種。

強光線、日陰にも耐え、大気汚染
乾燥、暑さ寒さにも強いことから、公園樹や庭木として幅広く利用されています。


                            (マサキ)


6月~7月にあまり目立たない小さな花を咲かせます。

果実は秋から冬にかけて鮮やかに赤く熟します。

また、同じニシキギ属のマユミ等と同様、熟した果実が裂けるとオレンジ色のきれいな種子が顔を覗かせます。

雌雄異株なので、単植株では果実を楽しむことができません。

白や黄色の斑の入った多くの園芸品種があります。

①葉の周囲に黄色い斑の入ったキフクリンマサキ

②中央に黄色の斑が入ったキンマサキ

③淡黄色の斑のギンマサキ
また、同属に茎がツル性で地を這うように伸びるツルマサキがあります。

マサキとよく似た性質を持ち、丈夫なことから壁に這わせたり、グランドカバーなどによく使われています。


この種も白や黄色の斑が入った園芸品種が大きく流通している。

※その他種類として

オオツルマサキ、ナガバマサキ、ウチダシマサキ
ボウシュウマサキなどの変種がある。


                   (ツルマサキ=蔓柾)


◉生育管理

水はけがよく、腐植質に富んだ肥沃な土地を好みます。

日光を好みますが、耐陰性も強くかなりの日陰でも元気に生育します。

◆植え付け、植え替え

(適期は3月~5月)

新葉が伸びる季節や大株の場合は、地上部を切り詰めてから移植します。

◉肥料

生け垣の刈り込みなど、強せん定を行う場合は、油粕や骨粉などの有機肥料を1株につき、2握りほど与えるようにします。

生育の状態に応じて、同様の肥料を寒肥として与えてもよいでしょう。

◆病気

※うどん粉病

マンネブ水和剤(400~600倍液)、カラセン、ベンレートなどを新葉の展開する春から夏の発生期にかけて、月に1~2回散布します。

病変の葉は切り取って処分します。

◉害虫

※ユウマダラエダシャク(マサキの大敵害虫)

黒い体に淡黄色の縦線があるシャクトリムシで、体長2.5㎝くらいで昼間は葉の裏に隠れ、夜になると葉を食害します。

4月~11月に発生し、特に6月~8月に被害が多く出ます。

発生期にスミチオン、ディプテレックス、カルホスなどを月に1~2回散布します。

1度発生した株は再び発生しやすい傾向にあるので、病葉、落葉は丁寧に集めて処分し、再発を防ぐようにしましょう。

◉せん定

生長が早いため裾が空かないように、幼木のうちは上向きの枝を強めに切り戻して、下枝の生育を促します。

夏以降に強く切り戻すと、枝枯れを起こす場合があるので、このせん定は3月~4月までに行います。

萌芽力が強いので年2回の整姿が目安となりますが、結実を楽しみたい場合は、花後のせん定は避けます。

生け垣は刈り込みを行うと、下枝が枯れて裾が空いてしまいます。


一度に強く刈り込まず、数回に分けて軽く何回も刈るのがコツです。

年3回を目安に行います。

◉殖やし方

実生は熟した果実から採種し、そのまま採り蒔きにするか、湿った砂など冷暗所で貯蔵し、翌春3月~4月頃に蒔きます。

✫挿し木

今年伸びた充実した枝を10~15㎝に切って挿し穂とし、赤玉土(小粒)などの一般的な挿し床に挿します。
(春挿し、梅雨挿し)









2020/08/20

クロガネモチ No.252

 クロガネモチ モチノキ科(黒鉄黐)

原産地=日本、中国、インドシナ半島、台湾、東南アジア

日本では主に関東、東海地方以南の暖地の山野に自生しています。

晩秋から冬にかけての結実が美しく、古くから庭木として幅広く親しまれています。

同属のモチノキによく似ています。

特に若枝(葉柄)が濃紫色または、暗褐色で黒みがかって見えることが名前の由来と言われています。

また、モチノキの開花時期は4月ですが、クロガネモチは5月~6月で、果実の大きさもクロガネモチが、一回り小さいなどの違いがある。

花柄が長く、先が放射状に枝分かれし、その一つひとつに花をつける、集散花序であることが特徴です。

雌雄異株で、雌株は結実し11月~2月にかけて紅く熟す。

また、材は器具材や床柱として利用されます。

同属の類似種として、ソヨゴ、ナナメイキ、タラヨウなどがある。

いずれも紅く熟す雌株の果実が美しく、人気の高い樹種です。





◆生育管理
腐植質に富んだ肥沃な湿潤地が適しています。

日光を好む陽樹ですが、比較的耐陰性が強く半日陰でよく育ちます。

暖地性の植物ですが、耐寒性があり、東北地方南部までは庭植えが可能です。

乾燥を嫌うので植え付け、植え替えの時には根鉢を大きく取り、完熟堆肥や腐葉土をすき込み土中湿度を保つようにします。

夏期は敷きワラなどで乾燥を防止します植え付け、植え替えの適期は3月~4月

◉肥料
通常、肥料は特に必要ありません
雌株の実つきをよくしたい場合は、花が咲き始めたりリン酸、カリ成分の多い肥料を与えます。

★害虫
通風、日照が悪くなるとカイガラムシが発生する場合があります。

発生期にスミチオン乳剤、冬期に石灰硫黄合剤、マシン油乳剤などの散布で防除しますが、日頃の枝透かしなどで通風、日照を良好に保つことが一番の防除策になります。

◉せん定
実なりを楽しむ雌株では強いせん定は避けましょう。

通常は弱い枝、樹形を乱す徒長枝や込み枝などを付け根から切り取る程度にします。

側枝の先は、車枝状になって込みやすいので、太い枝を切り取るなどして、整理します。

生長して樹冠が大きくなり過ぎた場合は、枝先を切って樹形を整えます。

クロガネモチは萌芽力が強く、刈り込みもよく耐えるので、散らし玉などに仕立てることもできます。

◆殖やし方
実生は熟した果実を採って果肉を取り除きます。

取り出した種子は湿った砂や土中で貯蔵し、翌春3月~4月に蒔きます。

接ぎ木は充実した1年~2年の枝をつぎ穂として、実生3~4年生の台木に接ぎます。

適期は3月~4月
雌株を雄株に接ぐと実がなります。







2020/08/19

ツバキ NO.251

ツバキ (椿、山茶、海石榴)

日本に自生する野生のツバキには、ヤブツバキ(高木)とユキツバキ(低木)の2種があり、ヤブツバキは北海道と小笠原諸島を除く日本全土、ユキツバキは秋田から琵琶湖北岸の日本海側の山地多雪地帯に分布する。


この2種から生じた園芸品種は日本産が1300余種、海外で発表のものはその数倍もある。

しかもこれら2種のツバキは、世界のツバキ属200余種のうち、最北地帯に分布するため寒さに強く、また葉は照り葉で美しいことから、世界的にも高い評価を受けている。

日本で好まれて栽培されているもの、育てやすく入手可能なものは、4系列に分かれる。

①ヤブツバキ系 ②ユキツバキ系
③ワビスケ系  ④海外の品種

ツバキ園芸は、室町時代に作庭や造園が発達したことや、茶道、華道の※勃興※興隆によって、ツバキの花木としての認識と価値が急に高まった。

※勃興=ぼっこう=急に勢いよく始まって、盛んになること。

※興隆=こうりゅう=勢いが盛んになること。

大阪夏の陣(元和元年、1615年)を境に徳川幕府の基礎が安定して、平和時代が来ると天皇、将軍、武家、僧侶、更に一般庶民の間に、趣味の園芸としてのツバキブームが巻き起こり、江戸の後期、天保(1831年~1845年)までその流行が続いた。


中期にはすでに600品種を収めた極彩色の図譜(宮内庁所蔵)がある事によっても、その熱狂的な様子が窺える。

明治に入ると、西洋花卉に押されて急速にブームは衰退したが、第二次世界大戦後、欧米のツバキ熱に刺激されて、昭和のツバキブームが再来した。




◉代表的な病気
※モチ病=病原体はカビ
文字通り葉が餅を焼いたように、厚くなったり内側にねじれる病気です。

発生初期には、葉が淡黄色に変色します。

やがて葉の表面が白く粉をふいたように、カビの胞子でいっぱいになります。

最後は褐色になり枯れて萎んでしまう。

発生時期はほとんどが4月から5月ですが、まれに9月から10月の秋に発生することもある。

このカビは生きた植物にしか寄生できません。

感染すると新芽の中で菌糸として潜伏し、翌年の発病を待ちます。

感染経路は、葉の表面に白く密生した胞子が、風に運ばれて感染拡大します。

この病気の病原体(カビ)は、葉の細胞の内部で活動するので、薬をいくらまいても効果がありません。

毎年発生するようなら、病葉を取り除いた後で新芽に、銅水和剤(ボルドーなど)を散布しましょう。

最も効果的な予防法は、病葉の徹底的な摘除です。

他には、芽が冬を越している病菌を殺すために、発芽直前に石灰硫黄合剤や、銅水和剤を散布しても効果的です。

◉花腐れ病
10月から3月頃に発生
開花前に殺菌剤のダニコール1000の500倍から600倍液を散布するのが効果的です。

この殺菌剤は残存性に優れ、薬害もほとんどありません。

また、4月頃の萌芽直前にダイセン水和剤1000倍液を10日おきに2回散布する方法もあります。

◉代表的な害虫
※チャドクガ
葉の裏にケムシが群れて、葉肉だけを食べるので表からは葉の色が黄色に見えます。

年に2回、4月と7月頃に発生します。

この虫は毒毛を持ち、触れるだけでなく近寄ってもかぶれるので、他のケムシのように捕殺するのは適切ではありません。

薬剤には、スミチオン、ディプテレックス、DDVPなどが適しています。

成虫も毒毛をまき散らかすので、早期に駆除することが大切です。

◉アブラムシ
5月から9月頃まで月に1回程度、スミチオン、オルトランを散布

◉カイガラムシ
冬期に機械油乳剤30倍液を散布すると効果的です。

◆肥料
1月から2月に根元に溝を掘り、堆肥に少量の鶏ふんを混ぜ、リン酸カリ分の多い化成肥料を与えます。

追肥として、5月と9月に少量の油粕と化成肥料を株元に与えます。

◉植え付け、土壌、土質

ツバキの根はたえず新鮮な空気(酸素)を必要とし、降雨で数日間も根の部分が水浸しになると、幼根は窒息して根腐れを起こしやすくなる。

排水と通気のよい土地、土壌はツバキがよく育つための決定的な要因です。

低地で降雨ごとに冠水するような場所では、排水溝を作り、また盛り土をして植えます。

土質は、重い粘土質よりもやや軽い黒土や赤土などが適しています。

これに腐葉土や完熟堆肥をすき込めば、排水や保水、通気性が高まり、地力もついた理想的な土壌になります。

寒風の通らないことが大切です、なるべく日当たりのよい所を選びますが半日陰でも育ちます。

植え付け時期は3月下旬から4月、8月下旬から10月中旬頃までです。

2㍍以上の成木は、高温期がよいので7月から9月上旬までに植え付けし、乾燥しやすい土質なら敷きわらなどで乾燥防止をします。

※ツバキは幼苗時期に強い日差しを嫌い、高木の下で日陰の生活する陰樹です。

◉せん定
せん定は花の終わった後の4月が適期です。

生け垣のほか、樹形によっては異なりますが萌芽力が強いので、自然樹形の他にも円筒形、散らし玉、スタンド仕立てなど好みに合わせて行えます。

花芽のつく時期が6月中旬から7月中旬ですので、その前にせん定は済ませます。

徒長枝やふところ枝は、日当たりや風通しのために、また見苦しさを解消するためにも切り取りましょう。

※花芽のつく前に徒長枝や伸び枝をきりとる(4月)








2020/08/17

ヒサカキ No.250

ヒサカキ ツバキ科 (姫榊、非榊)

別名=イチサカキ、ヒサキ

原産地=日本(本州、四国、九州)台湾、朝鮮半島 インド、東南アジア

サカキに似て、全体が小形なので姫榊、それが訛(なま)ってヒサカキになったとする説と、榊に似ているが榊ではないと言う意味の「非ず」とする説がある。

主に山地に自生しますが、どのような生育環境にも適応する。

暖地性のサカキは関東地方以北では、ほとんど自生していないためサカキの代用として、関東地方などでは榊として売られ神棚に供えたりする。


※サカキとの違いは、サカキは葉の縁に鋸歯がないがヒサカキの葉の縁には鋸歯がある。


葉もヒサカキの方が小さい。



雌雄異株で雌しべが退化した単性花と、結実する両性花が咲く点がサカキと異なる。

花は3月~4月に咲き、花にはやや嫌な臭いがある。

果実は液果で紫色から黒く熟す。

日陰に強く、春先に刈り込み分枝させるとよい(2月~4月)刈り込みとして点在されると落葉樹を引き立てる。

刈り込みによって小枝を殖やす。

木材は木目が細かく、器具、薪炭などに利用されます。



◉肥料

12月から1月に寒肥として、有機質肥料を与える程度で十分だが、刈り込みを行う場合は4月に化成肥料を追肥として株周りに与える。

◆害虫

小枝が密生し、樹冠内の通風、日照が悪くなるとアブラムシ、カイガラムシなどが発生し、すす病を併発する場合があります。

害虫の発生時に、スミチオン乳剤1000倍液を2~3回散布し防除します。

せん定より通風、日照をよくし病変した葉はすべて取り除いて処分します。

◉せん定

自然樹形で楽しむ場合は、伸び過ぎた枝を切る程度で十分です。

小枝が密生し、雑然となりやすいので思い通りに切り詰めて整姿します。

萌芽力が強く、散らし玉などの仕立て物にできます。

生け垣の場合は初夏と秋の年2回を目安に刈り込みます。

◆生育管理

水はけ、保水ともによい腐植質に富んだやや湿潤地が最適ですが、乾燥にも強く、日光を好みますが、かなりの日陰地にもよく耐えます。

暑さに大変強い樹種です。

◉植え付け、植え替え

4月~5月 8月~10月

植え穴は大きめにとり、完熟堆肥、腐葉土をたっぷりすき込みます。

必要に応じて、冬期に油粕などを一株に対し2握りほど与えるとよいでしょう。

★殖やし方

実が黒く熟したら、種子を取り出してよく洗ってからすぐに蒔くか、湿砂中で低温貯蔵して翌春3月~4月頃に蒔きます。


✫挿し木

(4月~7月)に、2年生枝に葉を2枚から3枚つけて挿し穂にし、小粒の鹿沼土や赤玉土に斜め挿しにする。

※前年枝を3㎝ほど付けた状態で挿し穂を取ると、発根率が高くなると言う報告があります。


定植は翌年の5月に行う。

※類似種にハマヒサカキ(浜非榊)がある。

海岸地帯に生えるのでこの名がある。

ヒサカキによく似ているが葉の先端が丸みを帯びるので区別できる。


また、花が咲く時期が10月~12月で、木を埋め尽くすようにびっしりと下向きに咲くのが特徴です。






2020/08/16

シュロ/トウジュロ No.249

シュロ/トウジュロ ヤシ科

原産地=日本、 中国 「棕櫚」常緑高木
別名=スロ、スロノキ

漢名の棕櫚を音読みした名前である。

円柱形で直立した幹の頂上に、大きな(うちわ)のような葉をつけるシュロは、南国の趣(おもむき)のある常緑樹であるが、非常に耐寒性が強くマイナス10℃ぐらいになる所でも開化結実する。

ヤシ科の中では最も北に分布を広げた種です。

雪の多い東北地方でも野外で越冬できる。

自然分布は九州の南部とされるが、種子を野鳥が食べるため本州の山にも野生化している。
実には鳥がよく集まってくる。





乾燥地や塩分にも強い、枝がないので整枝せん定は必要ないが、枯れ下がった葉は秋に元から切る。


幹の周りのシュロ毛は紐をかけて保護する。

シュロ皮は庭木の手入れ用のシュロ縄作りに利用される。

トウジュロは、やや葉も小形で下垂せず、横に伸ばした形で庭木としても人気がある。

やや耐寒性が弱いので、関東地方より南で植栽できる。

日当たりと排水のよい場所なら土質は選ばない。

単植せず、数本ずつ寄せて植えると本来のよい姿が引き立ちます。

花は5月から6月頃、黄色い大きな房状の穂を下垂し咲きます。

雌雄異株だが雌株には両性花が雑居する。

冬に枯れた葉は見苦しいので春に切り取ります。


          (シュロ)

高木性なので、植え替えはしない方がよいですが、もし植え替える場合は前年のうちに根回しをしておき、高温期の5月から8月はじめに行います。


◉肥料

特別与えなくても育ちますが、3月から4月に株元に鶏ふんと油粕を成木には、スコップ2~3杯程度穴を掘って埋め込みます。

また夏に成木には、庭木用の化成肥料を500㌘ぐらいばら蒔きしますが、多すぎるのはよくありません。

◆殖やし方

3月~4月 9月~10月(実生)
挿し木、取り木、接ぎ木は出来ないが、果皮を腐らせた種を蒔けば容易に殖える。


日本では主に、葉の切り込みが深く古い葉先が折れて下がる(ワジュロ)と葉がやや小さく堅めで、折れ下がらない(トウジュロ)が栽培されるが、両種間の雑種も多く個体差が大きい。






2020/08/15

カイズカイブキ (貝塚伊吹) No.248

カイズカイブキ ヒノキ科

原産地=日本(北海道を除く) 朝鮮

濃緑色の枝葉が密生し、細長い円錐形の樹姿を形作る。

大きいものは高さ25㍍ 直径2㍍ほどになる。

沿岸地に自生するが、植栽も広く行われ園芸品種が多いカイズカイブキはイブキの園芸品種である。

※種類
変種にハイビャクシン、ミヤマビャクシン

園芸品種にタチビャクシン、タマイブキ、シダレイブキ、カイズカイブキなどがある。

水はけがよくやや乾燥した肥沃な土壌が適している。

日当たりを好み、潮風や公害にも強い成育も割合早く、生け垣や一般の庭木としても広く利用されている。

寒風に弱い。


◆病気
サビ病
3月から4月にかけて発生する
葉の裏に赤い突起ができて、やがて皮が破れて中からサビに似た粉状の胞子が飛ぶようになります。

病気が樹全体に蔓延すると、樹木は枯死に至ります。

サビ病は硫黄剤がよく効きます。

発生時期の前後に月2回くらいの割合で、マンネブダイセン、エムダイファー水和硫黄剤などを散布

高温多湿を好むので、せん定などをして風通しをよくすることが予防になります。

◉赤星病
春から初夏にかけて発生する葉の裏に毛羽たった病斑(茶色い胞子の塊)ができ、しだいに大きく広がって枝葉が枯れます。

お互いの枝や葉が混み合い、日当たりや風通しが悪いと発生しやすい病気です。

このカビの特徴は、カイズカイブキやビャクシン類の上で冬を越すことです。

梨やボケに発生時したカビの胞子が、空気感染によりカイズカイブキやビャクシン類に移り、その上で越冬します。

★果樹などの赤星病は、カイズカイブキ、ビャクシン類が周りにあると発生します。

冬にこの2つの樹木に石灰硫黄合剤を散布し、発生源を絶ちましょう。


◉害虫
ハダニ
夏の高温期、特に雨の少ない時に多く発生する。

葉色の緑色が失せて黄ばんだような薄茶色になります。

新葉の成長も鈍くなって元気がなくなり、酷いときには葉が枯れます。

ケルセン1000倍液、スミナイス1000倍液を月に2~3回散布

ハダニ類は薬剤に対する抵抗力がつきやすいので、2~3種類の市販のダニ退治薬を使って駆除しましょう。


◉植え付け
3月から5月頃が適期で根の状態がよければ、8月から9月と真冬を除いた時期にも可能です。

土質は排水のよい所を選べばよいでしょう。

若木を植え付けた時には、主幹が曲がりやすいので支柱をあてがいます。

成木の移植も前年に根回しをして、小枝の発生をさせておいてから春に行います。

同時に、枝葉の刈り込みを済ませておくことも忘れないようにしましょう。


★肥料
2月から3月に堆肥に鶏ふんや油粕を混ぜ、根を囲むように輪状に溝を掘り埋め込みます。

成木でスコップ2~3杯程度、夏から秋にかけて庭木用の化成肥料を500㌘程度ばら蒔きます。

◉せん定
樹形を美しく保つには、春から秋にかけてせん定をこまめに行う必要があります。

徒長枝を伸ばし過ぎないようにし、中心部の枝葉のムレを防ぐようにします。

また、手の届く程度の高さなら、指先で新芽を摘む方法でも構いませんが、たくさんの場合や大きな木は、せん定バサミ✂️を使って刈り込みます。

この場合、新芽が茶色くなることがありますが、2ヶ月程度で自然に、回復してくるので心配は要りません。

※お酢を薄めた酢水を切った部分に散布することで、変色を防げる。

せん定は基本的には、枝の伸びが止まった6月頃が適期です。

刈り込んだ後や、強せん定した枝、日陰の枝には杉葉が出ることがあり、これは先祖返りした葉で放置すると徐々に広がって行きます。

先祖返りしている枝葉は成長が早いので、見つけしだい付け根から切り取りましょう。






2020/08/12

モクレン No.247

モクレン(木蓮)オオヤマレンゲ

別名=シモクレン、モクレンゲ

原産地は中国で「木蓮」の漢字がそのまま和名になりました。

地球上で『最古の花木』とされており、一億年以上前からすでに今のような姿だったと言われている。

早春にややクリームがかった白い、清楚な花を咲かせるハクモクレン少し遅れて咲く、花弁の外側が紫桃色で内側が白いシモクレン、モクレンと言えば本来シモクレンを指します。




✣ハクモクレンは大木になるので狭い庭には向かない。


しかし、モクレン科は同じ形状の花をつける仲間が多く、一般にはそれらを含めモクレンと呼ばれています。

北米原産で常緑樹のタイサンボクもモクレンの仲間です。

日本では類似種のコブシ、シデコブシ、オオヤマレンゲなどが山野に自生しています。




花期は長く、新葉も楽しめる。
実は長楕円形で褐色、赤い種が白い糸で垂れ下がる。

欧米品種も多いが、日本でも様々な品種が作り出されている。

北海道南部まで栽培できる。

日当たりのよい適湿な肥沃地が最適で、ハクモクレンほど大きくならないので、狭い庭にも植えられる。

日当たり、水はけのよい肥沃な場所を好みますが、土質は特に選びません。

乾燥を嫌うので、夏期の水切れには注意しましょう。


植え付け時に株元に腐葉土などを敷いて、マルチングすると乾燥防止になるだけでなく、雑草の発生が少なくなり土壌改良効果もあります。

樹勢が強く育てやすい樹種ですが、栄養がよいと大木になりやすいので、苗木を植え付ける時は、生長を見越して広い場所を選ぶことが大切です。

一般にモクレンの仲間は根が粗く、一度植え付けたら移植しないようにします。

成木の移植は難。

※植え付け10月から12月 2月から4月

◆せん定
自然の樹形で育てるのがよく、ほとんどせん定しませんが、あまり大きくなりすぎた場合は冬の落葉期に行います。

伸びすぎた枝や混み合った枝を整理します。

花芽は枝の先端につくので、徒長枝以外は残すように注意しないと翌年の花が少なくなります。

◉強いせん定、切り詰めは花後すぐに行うようにしましょう。


早春は樹液が流れ出るので、強いせん定は控えます。
せん定11月から2月、4月から5月頃

花芽分化後のせん定は避ける。


◉肥料
1月から2月 9月から10月

ハクモクレン、コブシなどの大型種は、やせ地でない限り特に肥料を与える必要はありません。


生育を促したい場合や、シモクレン、シデコブシ、小型の園芸品種は花後と、9月から10月に油粕と粒状の化成肥料をばら蒔きする程度にして、多く与え過ぎないようにしましょう。

直接地面にばら蒔くときには、その木の枝の伸び具合を観察し、必要に応じて冬期に有機肥料を一株につき200から300㌘ほど与えるとよいでしょう。

◆害虫
※グンバイムシ 4月から5月に発生
マラソン乳剤、スミチオン乳剤などの殺虫剤を10日おきぐらいに、3回から4回散布すれば駆除できます。


                                  「3月1日撮影」


                            「3月11日撮影」

✿種類

やや小形のものではトウモクレン、ガール·マグノリアがある。
珍しい緑黄白花種としてはマグノリア·アクミナタがある。


                  「3月26日花後せん定」


  「8月1日、白モクレンの実」







2020/08/06

ソテツ No.246

ソテツ (蘇鉄)ソテツ科

枯れそうな時、鉄を打ち込むと元気が蘇る、と言う故事からこの名がある。

雌雄異株の常緑樹で、高さは4㍍~10㍍ほどになる。

日本では宮崎県以南の冬でも暖かい海辺に自生する。
幹は直立し、枯死した葉柄の基部に覆われる。

葉は長さが1㍍ほどあり小葉の先は鋭い刺となる。

雄花は円柱形で直立し、雌花は半円形。
ともに茎の先端につく。

果実は赤く熟し光沢がある(花期6月~8月)精子によって受精することを日本人によって発見されました。

原産地=日本南部九州から沖縄、台湾、中国





九州の南の島から沖縄地方の、暖地性の植物なので強い霜や寒さには弱い。

冬の防寒対策をしっかりやれば、北関東ぐらいまで植栽可能。

湿った土は嫌うので、排水のよい日光のよく当たる所で、やや乾燥気味の土を選んで植える。

一度植え付ければ、植え替えなどしないと思われますが、やむを得ず植え替えをする場合は、夏の高温の時期の7月から8月に行います。

また、鉢植えのソテツを購入し、庭に植え替える場合は5月から8月までに行います。


◉ソテツの防寒処理

関東以北では、防寒処理をして越冬させる必要があります。

最も一般的な方法は、ワラなどで幹を巻いて寒さから守る方法です。




①垂れ下がった古い下葉を付け根から切り取ります。

②さらに、全体の3分の1程度を付け根から切り取り、残った葉を上方に引き上げて束ね、シュロ縄などで縛ります。

③束ねた葉をワラなどで巻いて、寒風に直接触れないようにして再び縛ります。

冬期に霜の多い地方では、11月頃から防寒対策をします。

暖かくなる3頃、霜の心配がなくなる頃までその状態を保ちます。

比較的暖かい西日本地域では、ワラは巻かずに葉を上方に引き上げて束ねるだけでも、冬を越すことができます。

◉肥料
原産地では、やせた岩場などにも成育するので、たくさんの肥料を与える必要はありませんが、大株などでは春の葉の出る前の3月から4月に、油粕7と骨粉3ぐらいの割合で混ぜたものを株回りに溝を掘って与えます。

また、成育期に少量の化成肥料を与えてみるのもよいでしょう。


◉せん定幹から直接葉が出るので、特にせん定の必要はありませんが、越冬し温暖な陽気を迎える4月に、新葉の出るのを促すためには、付け根から前年の葉を全部切り落とします。

葉を切り取る場合は、幹の付け根から切除します。

時期は3月、5月から6月

株分けを行う場合は5月から6月までの間に行います。

◆殖やし方
4月から5月に種子を蒔く、発芽は遅い。

★種類
園芸品種に茎や枝が扁平なシシソテツ、白い条入りの葉を持つフイリソテツ、類似種に中国原産のカナンソテツ、台湾原産のタイワンソテツなとがある。






2020/08/04

樹形を乱す枝 No.245

樹形を乱す枝

せん定が必要な枝の名称

庭木の種類は数多くありますが、共通してせん定しなければならない枝に「忌み枝」と言われる、樹形を乱す枝があります。

★忌み枝=(いみえだ)
盆栽用語で樹形の美しさを損なう不要な枝のこと

◆徒長枝(とちょうし)

飛び枝とも呼ばれ、他の枝よりも勢いよく飛び出している長い枝です。

樹形を乱すのでせん定しますが、メインになる枝(主枝)が弱った時などは、代わりの主枝に育てるために、せん定しないでそのまま伸ばすこともあります。

よい位置のものは残して、先を軽く切り止める。

◆立ち枝

垂直に上に向かって伸びている枝で樹形を乱します。

枝元から切り取る。




◆平行枝

ほぼ同じ場所から長さ、太さ、方向が同じように平行に伸びている上下2つの枝です。

一本は不要な枝ですから、全体のバランスを見て悪い枝の方をせん定します。
重なり枝ともいいます。



◆からみ枝(交差枝)

他の枝と接触して、からんでいる枝で枝の混み合う原因になります。

枝元から切り取る。

◆切り枝(交差枝)

主要な幹や枝と交差している枝です。
樹形が不自然になります。

枝元から切り取る。

◆下がり枝

下に向かって飛び出している枝で、樹形を乱します。

枝元から切り取る。

◆胴吹き枝

幹吹きともいい、幹の途中から新たに直接伸び出してくる枝で、勢いが強い場合が多く、樹形を乱したり、その枝の位置より上部の枝の生長を妨げる場合が多い。

枝元から切り取る。



◆ひこばえ(ヤゴ)

ヤゴともいい、樹木の根元や地中から飛び出した小枝でこれを放置していると、主幹の樹勢を衰えされる原因にもなります。

できるだけ枝の付け根から切り取る。


◆車枝

1か所から数本枝分かれして出る枝で樹形を乱します。

一本残して他の枝をもとから切り取る又は、全部切り取る。

◆かんぬき枝

幹のほとんど同じ位置から、左右(前後)に出ている枝。
幹を突き抜けているように見えるので、忌み枝とされます。


◆ふところ枝

樹冠の内部にある弱小な枝で、斜光や通風の妨げとなる。

骨格となる枝を残して枝元から切り取る。

◆逆さ枝

他の枝とまったく逆の方向に伸びている枝。

樹形を乱すので枝元から切り取る。

マツやウメなどでは残すことがある。


✫その他にも枯死した枝、病害虫に冒されている枝はせん定します。






2020/08/03

樹木生育のサイクル No.244

樹木の1年間の生育サイクル

樹木の1年の生育サイクルは、大きく地表3つの時期に分けられます。

①冬の11月~3月頃にかけて養分が最も多く蓄えられる時期です。

ただし、養分は主に樹木の幹に集まり、枝や葉にはあまりありません。

そのため、落葉樹は紅葉したり、やがて葉を落として枝だけの姿になります。

常緑樹も葉の色が多少柔らかくなり、生長がとまったり鈍くなったりします。

この状態で春を待つので、一般に「休眠期」といわれています。


②4月~7月頃にかけては、冬に蓄えられていた養分が幹から枝、葉に行き渡り新しい芽や、葉、枝の生育のために消費され、次第に少なくなっていきます。

この時期は一般に「生長期」といいます。

ただし、6月~7月頃になるとこれらの生育が止まります。

園芸用語で「新芽がかたまる」というのはこの時期の状態を指します。

③8月~10月頃にかけては、成熟した葉によってたくさんの養分が作られ、翌年の生育のために蓄えられていきます。

外からははっきりとはわかりませんが、この時期の樹木は最も充実している状態で、一般に「充実期」といわれています。


晩秋から冬になると、翌年の生長に備えて養分が幹に集中して、再び休眠期を迎えるというわけです。




樹木は毎年、この様なサイクルスポーツセンターを繰り返しながら生長しているのです。






2020/08/02

盆栽の樹形 (2) No.243

主な盆栽の樹形

◉文人木(文人模様)
模様木の変化形で、細い幹、少ない枝数による軽妙で洒落た雰囲気が大きな特徴です。


明治時代の文人墨客=ぶんじんぼつかく(文芸や、書画を生業とする人、又は愛好者)から好まれたことから、文人木の名称があります。

役枝が少なく、幹ぶりも細いことから単調になりやすく、この樹形の風趣を十分に発揮する樹形に仕立てるには、相当の経験が必要とされています。

◉株立ち
根本から多数の幹が立ち上がっている樹形です。



幹の長さや太さに変化があり、それぞれが直立に近い形になっているのが理想とされています。

◉筏吹き(いかだぶき)
自然災害で幹が横倒しになり、枝が新たに幹として生長した様子を表した樹形です。


◉根上がり
樹が大きく地表に露出している樹形です。



強い風雨や波などで、根元の土が洗われて根が地上に顔を出している、樹木の様子を表現しています。

◉寄せ植え
盆栽用語では単に「寄せ」ともいいます。


ひとつの鉢に何本もの木を植えて、群生している様子を表したものです。
同一種を寄せ植えする場合や、複数の樹種や下草まで植えて雑木林の雰囲気を出すものなどもあります。

◉石つき、石抱き
石と樹木を組み合わせて作る盆栽です。

                       ▲石つき

渓谷などの岩上にそそり立つ樹木の様子や、孤島の岩肌に自生する樹木の様子を表現します。

                       ▲石抱き

石のくぼみに木を植え込む方法と、樹木の根を抱え込むようにする方法があり、特に後者を「石抱き」といいます。






盆栽の樹形 (1) No.242

主な盆栽の樹形

基本的には盆栽は、自然の中で生きる樹木の様子を自由な発想で表現するもので、樹形に特別の決まりはありません。

しかし、長い盆栽の歴史の中で、先人たちによって作られた伝統的な樹形があります。


◉直幹
幹が直立している樹形で「立ち木」とも呼ばれます。

         ▶直幹

条件のトトノッタ自然環境の中で、生長した大木をイメージしています。

どっしりとした根張りがポイントになります。

◉斜幹
幹が斜めに傾いてる樹形です。


          ▶斜幹               

海岸の傾斜地などで、強い横風に耐えながら生長した樹木の様子を表現しています。

◉模様木
幹が前後左右に曲がりながら、上に向かって伸びている樹形です。

         ▶模様木             

四季があり、樹木を取り巻く環境が変わる日本では、もっとも馴染みのある樹形といえます。

◉懸崖(けいがん)
断崖絶壁や渓流などで、岩肌にしがみつくようにして、下に向かって幹が伸びている樹木の様子を表現したものです。

                    ▶懸崖、半懸崖

立ち上がりからすぐに幹が大きく曲がり、下方に向かって垂れ下がっていくのが特徴です。

幹の先端が鉢底より垂れ下がっているものを懸崖、鉢底のラインまでで止まっているものを半懸崖といいます。