アセビ ツツジ科 常緑中低木
原産地=日本
アセビ属の植物は東アジア、北アメリカに10種類程ありますが、日本では本州(山形県以西)四国、九州のやや乾燥した山野に自生しています。
大きなものは5㍍にも達するが、普通2㍍程の樹木が多い。
乾燥が強いと低く、弱いとより高く生長する。
群生して林を形成することも多く、そんな場所では枝が混み合って容易に人を近づけない。
古くから親しまれてきた樹種で、万葉集時代から多くの和歌に詠まれています。
アセビと呼ぶようになったのは、平安時代後期からで、それ以前はアセボ、アシミと呼ばれていました。
アセボトキシン、アセボチンなどの有毒成分があるため、馬に食べさせると酒に酔ったように、足を引きずることから、アシヒキ足が痺れるのでアシシビレ等と呼んでいたものがアシビ、アセビに転訛したと言われています。
「馬酔木」と言う漢字もこれに由来します。
★アセボトキシン、アセボチンなどは苦味物質である有毒成分で、
昔から葉を煮出して水で希釈したものを農作物の殺虫剤や、家畜の寄生虫駆除ウジ虫の駆除などに利用されていた。
近年でも特に羊や山羊の中毒が多数報告されている。
トルコでツツジ属の花からとった蜂蜜を食べた人から、中毒事故が起きているとの報告もあります。
2月下旬から4月にかけて、スズランやブランデーグラスを逆さにした様な釣鐘状の白、または紅色のたくさんの小花が房状に下垂して咲きます。
花は下を向いて咲くが、果実は上を向いて熟す。
5月頃の新芽も淡紅色で美しく、
樹形も整えやすいことから庭木として、古くから幅広く利用されている。
その他、盆栽や鉢植えでも楽しまれてきました。
枝葉、花、果実とも有毒物質を含みますが、接触しても食べない限り心配はありません。
江戸時代から園芸品種の改良が行われるようになり、江戸後期には欧米でも観賞用に栽培されるようになりました。
園芸品種には、葉の縁に白い斑がある矮性のフクリンアセビ、淡紅色の花が可憐なアケボノアセビ、小ぶりの花を細長く鈴なりに付けるオナガアセビ、純白で大ぶりの花をつけるリュウキュウアセビ、
桃色の花をつけるクリスマス·チアなど多くの品種が栽培されています。
植え付け、植え替え
排水性、保水性ともによく半日陰の腐植質に富んだ場所を最も好みますが日陰、日向、乾燥地などでよく育ちます。
ただし、西日の強い場所や極端に乾燥する場所への植え付けは避けた方が無難です。
また、他のツツジ科の植物と同様
酸性土壌を好むので、アルカリ土壌での生育には適しません。
移植は比較的容易です。
植え付け、植え替えの適期は3月から4月と7月から10月です。
細い根が横に浅く広がる浅根性なので高植えにし、土はあまり踏み固めないようにします。
高植えにすることで、水はけをよくすることもできるでしょう。
◉肥料
植え付け時に堆肥や腐葉土、ピートモスなどをすき込むだけで、肥料は特に必要ありませんが、花つきをよくするためにはリン酸、カリウムを含む肥料を春先に根元にばら蒔きます。
★病害虫
葉裏にハダニ、グンバイムシなどが発生する事があります。
多数発生すると葉が変形して、美観を損なうので発生初期に、スミチオン乳剤1000倍液を2~3週間おきに数回散布します。
◉剪定、整姿
刈り込みにも強く、仕立て物にする事も出来ますが、自然樹形で楽しむのが一般的です。
生長が比較的遅く、樹冠もしまってよく整うので、あまり強い剪定は必要ありません。
基本的には4月頃に太い枝や長い枝をある程度切り詰め、小枝を出して仕立てます。
胴吹き芽や不定芽は早めに切り取りますまた、花後はすぐに花房を摘み取ります。
花芽分化は7月で夏にはすでに、
花房を形成し始め、冬には今にも花を咲かせることが出来る程の状態になっています。
長い期間をかけて花を準備する植物なので、秋に剪定を行うと花つきが悪くなります。
◉殖やし方
実生、挿し木、とり木で殖やせますが生長が遅いため実生はあまり適さない。
挿し木は前年枝のつぼみを除去して穂木にします。
春さしと、花後に伸びた本年枝を使う夏ざしがあります。
さし床には鹿沼土、ピートモス、腐葉土の混合土を用いて、半日陰で乾燥に注意して管理します。