緑のお医者の徒然植物記

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ラベル #挿し木、#さし床、#さし穂、#さし木のいろいろ、#春さし#挿し木の時期、#さし木の施肥、 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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日曜日, 4月 12, 2020

挿し木 (春さし)  NO.188

挿し木

親木となる樹木の枝、葉、茎などの一部を切り取って発根されたものを植え付けて殖やすこと。

実生と比べて生長が早く、花木などでも短期間で開花、結実させることが出来るのが特徴です。

※実生よりも2年くらい早く開花する。

他の繁殖方法よりも実施期間に幅があり、一般に春に行う場合を「春さし」といいますが、梅雨時や秋口も適期です。

挿し木は気温が暖かく(15℃~20℃)温度が十分に保たれている時期が適しています。

発根の元となる養分を多く蓄えているのは冬ですが、この時期は気温が低いので、暖かくなり根の活動を始めた頃の「春さし」が最もよい時期と言えるでしょう。

春伸びた柔らかい枝が固まり、2回目の伸長を始める6月頃に行う「梅雨さし」も養分、水分の状態がよいので挿し木の時期に適しています。

◉挿し木のいろいろ
①さし穂に樹木の枝を用いる場合は(枝挿し)
②根を用いる場合は(根挿し、根伏せ)
③ベゴニア、イワタバコなど草木の葉を用いる場合は(葉挿し)
④カーネーション、キクなど草木の茎を用いる場合は(芽挿し)

★挿し木の時期による分け方
2月~4月に萌芽前に行う場合は「春ざし、彼岸ざし」

6月~7月の梅雨期に行う場合は「つゆざし、夏ざし」

8月に行う場合を「土用ざし、夏ざし」

9月~10月に行う場合を「秋ざし」(針葉樹と常緑広葉樹)


◆さし穂の熟度による分け方。
(枝ざしの場合)

2月~4月の萌芽前に行う春ざしでは、休眠中の枝をさし穂にするので「休眠枝ざし、熟枝ざし」という。

6月~8月の生長期間中に行う夏ざしでは、その年に伸びた新梢をさし穂にするため「緑枝ざし」という。

◉さし穂が枝のどの部分かによる分け方。

✻枝をさし穂とする場合を「天ざし」

枝の先と基部を除いた部分からさし穂を取る場合を「くだざし」

枝の先と基部に1芽だけつけてさし穂とする場合を「葉芽ざし」

★さし穂の切り口による分け方。
(切り口の種類)



★穂木を取る時は、養分を摂取する根の元となる切り口の細胞を傷めないように、よく切れる鋭利な刃物を使うことが大切。

切断した穂木は、挿し木するまで水に浸けておきます。

数時間から一昼夜
(休眠枝ざしは水上げしない)

長時間置いた場合は、切り口を切断しなおしてから使う。

切り直した穂木は、メネデールやルートンなどの発根促進剤を溶かした水に1~2時間程度浸けておく。


✿穂木の長さの目安は
✣常緑樹で10~15㎝(緑枝ざし)
          
✣落葉樹は10~20㎝(休眠枝挿し)

日当たりのよい部分に成熟している枝を選びます。

古い枝よりも生長力が強く養分も豊富な若い枝がよく根づく。

挿し木の時期によって異なるが、栄養が多く与えられている本年枝、または前年枝を選ぶ。

穂木を取る時間帯は、植物の活動が盛んな日中は避け、朝(午前7時~9時)または夕方(午後5時~6時)に取る。

◆さし穂に用いる枝の採取
※マツ類
カラマツ、ヤマモモなどの挿し木の活着率が低い樹種では、なるべく樹勢が強い若木からさし穂を採取することが大切です。

※ヒバ類
コウヨウザン、ヒマラヤスギ、メタセコイアなどのように枝が横に長く伸長する性質のものは、出来るだけ上向きの枝または樹芯に近い上向きの枝からさし穂を採取しないと、苗がまっすぐに伸長しにくい性質がある。


落葉樹のうち、生育活動を開始するのが早い樹種を春ざしにする場合、1月下旬から2月頃に枝を切り取って貯蔵しておいたものを、挿し木の最適期である3月から4月上旬に取り出して挿し木することがある。

これは、挿し木適期に採取するとすでに生育活動が開始しているため、枝の養分が消費されつつあり、その為に発根力が弱まるという理由によります。

1月下旬から2月頃に切り取る枝は、30~40㎝の長さにして束ね、土中に埋めておくか、ビニールに包んで冷蔵庫15℃で保存。


◉土中に埋めて保存貯蔵の仕方。



◉さし穂の葉数
さし穂に蓄えらている養分によって発根することを考えると、葉は多いほど活着率が高まると考えられます。

しかし、葉数(あるいは葉の面積)が多いとそれだけ蒸散作用が活発になり、さし穂が乾燥しやすくなりますので、御互いにバランスを保てるように調整する必要があります。


※アジサイ類のように、特に大きな葉をつけるものでは、2枚残してさらに葉を半分に切ります。

※サンゴジュ、ツバキ、カクレミノ程度の葉のものは2枚から3枚が目安です。

※サツキ、ツツジ類のように小さい葉をつけるものでは8枚から10枚が目安です。

※マツ類、スギ、イチイ、キャラボクなどの針葉樹では、さし穂の基部3分の1くらいの葉を取り除く。

針葉樹以外の広葉樹においても基部3分の1くらいの葉を取り除く。

◉挿し木の時期②

2月から4月の萌芽前に休眠枝を用いて挿し木する方法
常緑広葉樹、落葉樹広葉樹、針葉樹のいずれも適用。

6月から7月の梅雨ざし、8月の土用ざしは原則として常緑広葉樹に適用されますが、落葉樹、針葉樹でも行われることがあります。

9月から10月の秋ざしは原則として針葉樹と常緑広葉樹に適用されます。

最も安全なのは2月から4月に行う春ざしです。

ツバキ、サザンカ類、サンゴジュ、モッコク、ゲッケイジュなどの常緑広葉樹は一般に6月から7月の梅雨ざしを行うのが最も安全です。

★注意⚠️
冬期に霜柱が生じてさし穂が動くとか、耐寒性の弱い樹種では、ビニールで防寒しなければならないことなどを考えると、特に露地で大量に挿し木する場合などは、この時期には行わない方がよいでしょう。

◉発根促進剤
植物ホルモンと同様の働きをします。

※さし穂の切り口にまぶして使用するもの(タルク剤)
ルートン、オキシベロン、ルチエース

※希釈液に浸して使用するもの
メネデール、ハイフレッシュ

※砂糖水の1000倍液を代用
★挿し木が比較的難しい樹種では、これらの薬品で処理してから挿し木するようにする。

◆さし床を作る
さし床を作るときは、保水性、排水性、通気性をよくすること。

切り口が腐らないように清潔な土であることが大切です。

樹種によって若干異なりますが、一般には赤玉土を使い、サツキなどの酸性土壌を好む樹種には、鹿沼土を用います。

小粒と中粒を用い、箱の底に中粒を敷いて上部に小粒を入れます。

赤玉土に砂土など混ぜた混合土にすると、通気性は更に向上します。

赤玉土に砂やピートモスを2割くらい混入したもの、あるいはバーミキュライトを単用する。

挿し木する本数が比較的少ない場合は、木箱表焼き鉢などに用土を入れて床を作る。

挿し木する本数が多いときは、畑や庭に直接床を作りますが、この場合は砂壌土の土地とし、排水性が悪い場所では、砂などを混入してから床を作る。

★穂木には、肥料を吸収する根がありませんから、施肥の必要はありません。

発根後は水で薄めた液肥を少量ずつ与えるようにする。




◉さし方
さし床は、さし木を行う前に十分灌水して土を落ち着かせておく。

直接土に挿すと穂木の切り口が傷むことがあるので、あらかじめ割りばしなどでさし床に2~3㎝程の深さの穴を等間隔にあけておきます。

全体の3分の1くらいを目安にし、挿した後は手で押さえるなどして土をよく密着される。


さし穂の用土に挿す部分3㎝にある葉や芽を除去します。

葉の大きなものは、蒸散作用を抑えるため、さらに上部の2~3枚の葉の先端を切ります。

◆さし穂を痛めないようにピンセットを使用してさし床に挿します。表面に対して垂直に挿します。



◉さし穂が倒れないように穴の細かいジョウロなどで静かに水を与えます。


◆参考ブログ
挿し木後の管理について No.189
樹種別挿し木の適期、植え替え時期 No.190






さし木後の管理について No.189

さし木の管理

◉水やり
さし床はやや多めに灌水し、さし穂の切り口と床土の密着を促します。

ただし、水やりが多すぎるとさし穂を腐らせたり、土中の酸素不足の原因となるので注意が必要です。

基本的には、さし穂とさし床が乾かないように水やりを続けます。

風雨よけ
ビニールハウスの場合
通気が悪いと湿度が上がりやすいので一部を開けて通気を保つなどの工夫が必要です。

夏期はビニール内の温度が40℃以上に高まるため腐るなどの危険がある。




常緑樹の春ざしと秋ざしに主として適用し、8月の土用ざしは行わない方が安全です。

6月~7月の梅雨ざしでは、ビニールの上からヨシズやカンレイシャを2枚くらい重ねて遮光することで、高温になるのを防ぐことが大切です。




◉直射日光を避けるに日除けをする。
活着率を高めるためには、さし床が乾燥しないように灌水することはもちろん、噴霧器や霧吹きを用いて、1日に数回葉水をかけてやるのが効果的です。

グリンナーなどの蒸散抑制剤をさし穂に散布しておくのも効果的です。


◉さし木の施肥
さし木後は入念に、生長の様子を観察し、適宜肥料を与えます。適宜(てきぎ=その時々の状況に応じて行う)

さし木して新芽が出たら(およそ1ヶ月程度)ハイポネクス2000倍などの薄い液体肥料を施します。

芽がしっかりしてきたらエキヒの希釈を1000倍に高めて、根づくまでの間月に2回~3回与えるようにする。

樹種により生長度合いに差がありますが、枝同士がぶつかり合うようになったら、別の容器か、通常の鉢に植え替えます。

用土はさし床と同様で構いませんが、これを機に施肥は化成肥料や油粕などに切り替えます。

その後は冬期を除いて1ヶ月おきに1000倍に希釈した液体肥料、油粕6:骨粉2:魚粉2の混合肥料などを、さし木をしたがって年の秋から翌年の春の植え替え時期まで与え続けます。

◉ポイント
小さなさし穂はとても敏感です。
湿気が多すぎると、さし穂が炭疽(たんそ)病に冒され黒くなることがあります。

そんな場合はさし床を乾燥させるとともに、病変ができたさし穂を取り除き、さし床の用土をベンレートなどの殺菌剤で消毒します。

逆に乾燥し過ぎたり、温度が高すぎるとさし穂の葉が落ち、新しい芽が垂れ下がるという情状酌量が現れます。

さし穂に根が生えている場合は、根元にたっぷり水を与え、温度を20℃~25℃に調節するとうまく育てられます。

根がよく生えていない場合は、さし木をやり直した方がよいでしょう。

◉発根の状態
さし木をして発根するまでの日数は、樹種や同じ種類でもさし木をする時期、さし木後の管理のしかたなどによっても違いがあります。

レンギョウ、タニウツギ、サンゴジュなど早いもので15~20日

カイズカイブキ、スギ、イチイ、キンモクセイ、ツバキなど遅いもので40~60日くらい、条件が悪いと翌春まで発根しないこともある。

針葉樹では葉が緑色を呈して精気があっても、発根しているとは限らず、ひどい場合には新芽が伸びてきても発根していないことがある。

常緑広葉樹や落葉広葉樹では、新芽が伸びてきたものはすでに発根していると判断してほぼ間違いないでしょう。

古葉が葉柄(ようへい)からポロリと落ちてしまうものは、発根の見込みがあると判断されます。

葉がさし穂についた状態で枯れ、葉柄と茎がしっかりと付着して、手で触れても落ちないものは、発根の見込みがないと判断されます。

◆日覆い等の除去
常緑樹のさし木においてはもちろん、落葉樹でも緑枝ざしをする場合には、さし床に直射日光が当たらないように日覆いを行います。

この日覆いは、さし穂の蒸散作用を抑制するために設けられるものですから、発根してからは日光が当たるよう取り除いて光合成を促進させ、苗の生長を促してやらなければいけません。

多くの針葉樹など、発根するまでの日数が長いものや陰樹では、取り除く時期が遅れてもあまり影響はありません。

陽樹では、活着を確認したら早めに取り除く。

日覆いを取り除く際は、昼間はそのままにし午前中と午後だけとり除くなど、あるいは葉水をたびたび散布するなどしながら徐々に外気に慣らすことが大切です。

◉ビニール等の除去 取り除く時期

春ざしでは、3~4ヶ月後
梅雨ざしでは、さし木して3ヶ月後
秋ざしでは、翌春とするのを標準にします。

※ビニールを取り除く際は、ビニールに穴をあけるなどして徐々に外気に慣らすようにします。

◆移植
さし木をして発根するまでの日数が短く、活着後の生長が特によいものはその年の秋9月~10月頃に苗と苗の間隔をあけて移植法します。

普通は、翌春3月に移植しますが、秋ざしを行った場合、あるいは針葉樹など発根するまでの日数が長いものでは翌秋9月~10月、または翌々年の春3月頃に移植を行う方が安全です。

苗木を養成する場合には、以後1年おきに移植を繰り返し、苗と苗の間隔をあけると同時に細根の発生を促すようにします。



◉参考ブログ
※挿し木 (春さし) No.188
※樹種別さし木の適期、植え替え時期 No.190