イヌマキ (犬真木、犬槇)
原産地=日本、台湾、中国南部 マキ科
日本では、関東南部以西の本州、四国、九州、南西諸島にかけて幅広く分布しており、大きいものは樹高20~25㍍に達します。
マキは元々「真木」と書き、ヒノキやスギ、クスノキと共に「優れた木」を意味する、高級建築材一般の総称として用いられました。
イヌマキは湿気やシロアリの食害に強く、材質が均一であることから古くから、高級建築材として知られています。
太平洋側の海辺に多く、防風、防潮の役目を兼ねて海岸付近の畑の縁などに植えられたり、生け垣などに利用します。
イヌマキの名称は、木材として最高級のマキよりはやや劣ることに由来しますが、園芸界で単に「マキ」と呼ぶ場合は、イヌマキを指すことが多いようです。
また、建築界では別種の「コウヤマキ」を指します。
雌雄異株で、雄花、雌花ともに5月から6月にかけて小枝の葉腋に開花します。
庭木としては、常緑の葉と樹形を観賞しますが10月から11月に結実する雌株の果実は、赤紫に熟す花托の部分がたいへん美味で、古くは食用に供されました。
◉園芸品種
イヌマキの変種で、枝葉、樹高ともに小ぶりで小庭での栽培に向いた「ラカンマキ」がある。同じマキの名で呼ばれる日本特産の「コウヤマキ」は樹形や葉姿はよく似ているものの、葉がより細くスギ科の「コウヤマキ科」とする学説あるものに、分類される別種である。
◉生育環境
日当たり、水はけのよい腐植質にとんだ肥沃な場所を好みますが、樹勢がたいへん強く、土質は特に選びません。大気汚染や潮害に強く、日陰でも育つので、都市部や海岸部での栽培も可能です。
耐寒性はあまり強くないため、冬の寒風が当たる場所への植え付け避けます。
冬に氷点下になる内陸部や、関東地方北部以北の庭植えは適しません。
寒地で育てる場合は、鉢植えにして冬期は室内に取り込むようにするとよいでしょう。
植え付け、植え替えの適期は4月から5月と9月から10月で、根の乾燥に気を付ければ、大株の移植も比較的容易です。
植え付ける場所は、排水の良い肥沃な場所を選び植え穴を大きめに掘り、堆肥や腐葉土に鶏ふんを混ぜ、根に肥料が直接触れないように、間土をして植え込みます。
★間土=まつち(肥料と根の間に土を入れること)
主木とし単植えの場合は、後で移植などをしないような場所をよく選んで植え付けます。
◆肥料
寒肥として1月から2月に堆肥に鶏ふん、油粕、牛ふんを混ぜ、株回りに浅くすき込みます。夏の追肥は、7月から8月にチッソ分の少ない化成肥料をばら蒔きする程度で、あまり多く与える必要はありません。
◉害虫
春から秋まで虫類の被害が発生します。ハマキムシ、アブラムシ、カイガラムシ
テッポームシ(カミキリムシ幼虫)
冬期の1月から2月に機械油乳剤30倍液を、2~3回散布します。
※春から発生するアブラムシ、カイガラムシには、市販品の浸透移行性の殺虫剤が効果的で、オルトラン乳剤1000倍液や、アクテリック乳剤1000倍液を月に2~3回散布します。
※テッポームシは、まず幹に入り込んだ虫穴を見つけ、スポイトなどを使い、オルトラン水和剤やスミチオン乳剤を虫穴に注入し、土でフタをし殺虫します。
また、発見が難しい時には、浸透性の殺虫剤であれば
木全体に薬剤散布すれば十分効果があります。
※樹冠内の日照、通風が悪いと葉先が灰白色に変色する白葉枯れ病や煤病の原因となる、カイガラムシが発生することがあります。
見苦しくなるので、こまめに整姿、せん定で適度な日照、通風を保つことが大切です。
◉せん定、整姿
新芽が伸びてきた4月から6月と、秋9月から10月の成長期には、かなりよく枝が伸びるので、様子を見ながら刈り込み、樹形を乱さないようにします。梅雨明けの頃、刈り込んだ後から勢いの良い土用芽(土用の頃に新しく出る枝)が出ることもあります。
これも秋には、枝先をそろえて刈り込みます。
あまり季節が遅くなってからの刈り込みは、木のためによくないので注意しましょう。
いろいろな仕立てができる樹種で、樹形の仕立ては枝抜きと刈り込みを中心に行い、必要に応じて枝を誘引、矯正します。
枝は必ず葉のあるところから切ります。
葉のない所を切ると、枝枯れの原因になるので注意しましょう。
徒長枝は早めに切り取ります。
葉の途中で切ると茶色く変色するので、刈り込みは大まかな整形に止め、仕上げは木ばさみで不要な小枝や葉を一本ずつ付け根から、間引くようにすると見栄えが格段に違います。
また、マツ同様、夏の新芽のもみ上げと秋の古葉引きも必ず行い、枝の付け根や地際から出る不定芽、ひこばえ(やご)も早めに切り取ります。
(種蒔きから3年目の苗)