ヤツデ ウコギ科 常緑低木
別名=テングノハウチワ
東北地方南部以南の本州から四国、九州、南西諸島にかけて自生する。
海岸付近の林の中に多く自生する。
ヤツデは日本産のウコギ科で、中国に自生しない植物であり漢方薬名もない。
長い柄に5,7,9,11と言うように、必ず奇数に深く切れ込み、大きな掌状葉を持つのが特徴です。
手のひらのような大きな葉の形からこの名がある。
葉の切れ込みが効率よく日照を受けるためのものである。
カクレミノが生長に合わせて、葉の切れ込みが変化するのに対し、ヤツデの葉は変化しません。
これはヤツデが低木である事、葉が大きい事と関係していると思われます。
ヤツデの生育にとって冬の日照は、特に重要で樹林の中で生育しているヤツデは、晩秋に周辺の高木が落葉すると、次第に葉の向きを変えて、冬の日光に対応することが知られています。
ヤツデは邪悪なものの侵入を防ぐ呪力=(じゅりょく)があると信じられており、古くから魔除けの庭木として植えられていました。
軒先に葉を吊るしたりする風習もあったようです。
ウコギ科の植物には生薬としての効果があり、ヤツデも葉を煎じてせき止めの薬にしたり、湯に入れてリウマチの治療に用いたりしました。
葉に含まれる「ファトシン」と言う成分が、実際に鎮咳効果があることがわかっています。
また、主成分がサポニン類でサポニンには痰を切る作用があります。
乾燥葉を1日10㌘煎じて3回に分けて飲めば、痰切りによいでしょう。
◆ヤツデの葉の利用法、効能
1日300~500㌘を布袋に入れ、鍋で煮出して入浴直前に浴槽に袋ごと入れます。
または、葉を細かく切り、5日程乾燥させて、袋に入れて入浴時に使用すると、神経痛やリウマチに効果があります。
葉は厚く乾燥しにくいので、水洗いした後に細かく刻んで日干し乾燥させます。
生の葉を火で炙って柔らかくして、リウマチ、神経痛、腫れ物に貼る方法もあります。
日当たりの悪い庭の隅や、勝手口付近などに植えなど、利用価値の高い庭木です。
花が少ない11月から12月に、ゴルフボール状に集まった白い花をつけます。
花は香りがあり、冬にも関わらず昆虫がよく集まり、果実は翌春に黒く熟す。
◆園芸品種
葉に白い斑が入るフクリンヤツデ
黄色い斑が入るキモンヤツデ
葉脈に沿って黄色の斑が入るキアミガタヤツデ
白斑の入るシロフヤツデなどがあります。
斑入りの品種は、洋風の建物や芝生の庭などにも良く合い、鉢植えの観葉植物としても十分楽しめます。
◉生育管理、環境
日当たりの良い乾燥地では、株の成長が悪く日除けなどの必要があります。
日陰または、半日陰の保湿性のある腐食質に富んだ、肥沃な土地が最も適しています。
◆肥料
肥料を与えすぎると、大きな枝葉が雑然となりやすいので、出来るだけ施肥は控えるようにした方が
無難です。
肥料が必要な場合は、生育の様子を見ながら3月か9月頃に油粕、粒状の化成肥料などを株元にバラ蒔きします。
◆病害虫
乾燥が激しいと、カイガラムシが発生する場合があります。
活動期のカイガラムシには、スミチオンなどを散布して駆除します。
また、冬期のカイガラムシには、石灰硫黄合剤の10倍液を月に2~3回散布します。
カイガラムシの数が少ない場合は、なるべく薬剤散布は避け、剥ぎ落とすなどして駆除しましょう。
◉植え付け、移植
4月中旬から7月までの高温の時期と秋9月ならば可能です。
移植時の注意点として、ヤツデは葉が大きく蒸散作用が盛んなため、ほとんど全部の葉を切り落として幹だけにして行います。
時々、乾燥防止のため水を注いであげる必要があります。
◉せん定、整姿
大きくなりすぎた枝や、混み過ぎている枝は間引くように切り、風通しなどを考えて大きい下の方の葉も時々切り落とします。
特に狭い場所では、枝を3本くらいにして新葉が伸びきった6月頃に、頂部の葉だけを残して、ほかの葉を全部切り取ると、その後出てくる葉が大きくならず、小型の樹形にすることができます。
生長が比較的遅いので、十分な広さがある庭では放任して育てることも可能です。
ただし、茎が伸びて下葉が落ちるので樹形を美しく保つのが難しい上、枝葉が大きく株立ち状に広がるので、一般的には小ぶりに保つように整姿、せん定を行います。
1株に枝が3本くらい残るように、不要な枝は根元から切り取ります。
整姿する時は、頂部の葉を5枚程残して、下の古い葉を切り落とします。
また、大きな葉は、3月から4月に切り取ると、新しく出る葉は小ぶりになります。
株元近くから出た細かい枝も、樹形を乱すので根元から切り取るようにします。
高くなり過ぎた株を小ぶりにする場合は、5月から6月に低い部分にある芽の上で枝を切り取ります。
◆殖やし方
実生は4月から5月に熟した果実を採り、水洗いして種子を取り出し、半日陰のまき床に蒔きます。
2年生苗になるまで冬は寒冷紗などで防寒します。
挿し木は6月から7月に若い枝を15~20㎝程に切り、大きい葉を落としてさし穂とします。
水あげした後、赤玉土のさし床にさし、半日陰で管理します。