花の色素
白色の花にも色素がある。
多くの植物の花はアントシアニンとカロテノイドと言う、2つの色素で決められています。
✭アントシアニンは植物界において広く存在する色素。
青紫色をした天然色素の一種で、糖や糖鎖と結びついた配糖体成分のこと。
フラボノイドの一種で、抗酸化物質としても知られる。
アサガオ、ペチュニア、シクラメンなどの赤色の花や、キキョウ、リンドウ、パンジーなどの青色の花を色づけています。
✻カロテノイドは動植物に広く存在する黄色、橙、赤色などを示す天然色素の一群。
タンポポやマリーゴールドなどの花の色です。
因みに、カロテノイド、カロテンは英語読みで、ドイツ語読みではカロチノイド、カロチンです。
最近は英語読みが多く使われています。
✿黄色いキク、白いキクの場合
菊の花の色は多くの場合、黄色です。
これはカロチノイドによるものです。
菊の花にも赤みがかった色もありますが、それはカロテノイドにアントシアニンの赤色が混ざったものです。
カロテノイドやアントシアニンが、花びらの中に作られるためには、それらの色素を作る遺伝子が働かなければなりません。
よって、菊の黄色の花びらの中ではカロテノイドを作る遺伝子が働いているのです。
菊の黄色はカロテノイドによるものです。
それでは、白色の花を咲かせる菊の場合はどうなるのかと言うと、カロテノイドを作る遺伝子を持っていないか、あるいはカロテノイドを作る遺伝子が働いていない、と言う事になるのでしょうか?
ところが不思議な事に、黄色い花と同じ様に白い花にも、カロテノイドを作る遺伝子が存在しているのです。
しかも、白い花の中でも遺伝子が働いている事が解っています。
それならなぜ黄色くならないのかと言う疑問が出ます。
そこで更に調べられると、黄色い色素であるカロテノイドを作る遺伝子が働くと同時に、この黄色い色素を分解する遺伝子が働いている事が解明されました。
結果、作られるはずのカロテノイドが次々と分解されて、黄色くならないのです。
✿花が白色になるわけ
花が白色になる理由は別にあります。
白色の花にはフラボノイドやフラボンと言う色素が含まれています。
でもそれらは、色の色素ではなく無色透明か薄いクリーム色です。
つまり、これらの色素しか含まない花なら、花びらは無色透明か薄いクリーム色に見えるはずなのです。
ところが花はきれいな白色に見えます。
その理由は、花びらの中にたくさんの空気の泡があるからです。
小さな泡が多くあると、光が当たった時に反射して白く見えるのです。
滝などで、水しぶきは白く見えますが、滝に流れる水は普通の水です。
多くの空気の泡ができることにより、白く見えているのです。
つまり、白い花の色というのは、花びらの中に多くの小さな泡を含んでいて、それが白く見せているのです。
白い菊も花びらから空気の泡を追い出したら、白色ではなくなります。
花びらを指でつまんで強く押し付けると、その部分が透明の花びらになります。
アントシアニンを含んでいる赤色や、青色の花、カロテノイドを含んでいる黄色の花にも、空気の泡は多く含まれています。
しかし、これらの場合には、2つの色素の色が強いので、泡が反射する白色は見えないのです。