都市緑化
気候変動による影響が益々深刻になっていますが、世界では都市の樹木を増やす「アーバンフォレスト」が広がっています。
アーバンフォレストとは、都市部とその周辺の街路樹、公園や私有地の樹木も含め、都市全体に散在する樹林の総体を指します。
気候変動やヒートアイランドへの対応
都市部の気温が周囲の郊外と比べて高温となるヒートアイランド現象への対応、高温地域が地図上で島のように見えることから名付けられた現象です。
ヒートアイランドの原因は、都市部に多く存在するアスファルトやコンクリートの人工的な地表面が熱を蓄積しやすいこと、建物や自動車から人工的な排熱や都市部の緑地に減少などが原因とされます。
更にこの現象は、熱中症などの健康被害の原因や集中豪雨の増加、生態系への影響など様々な問題を引き起こします。
緑地の減少は、蒸散作用による熱の消費が少なくなり、気温が上昇しますが、生命維持装置と言う地球大気も破壊してしまう事を忘れてはいけません。
アーバンフォレストは、欧米を中心に都市計画の一部として積極的に採用され、樹冠被覆率(枝葉の茂る部分が地面を覆う割合)を高めることも意識されています。
洪水リスクの低減や地域社会の回復力(レジリエンス)強化と言った「グリーンインフラ」に位置づけられています。
2007年から10年で100万本の樹木を植えたニューヨーク市は、一本一本の樹木の情報を地図に登録した「NYC Tree Map」をインターネットで公開しています。
市民も木の幹の太さなどを測定してデータ化に協力しています。
また、この樹木の少エネルギー効果は何ドル?と言った具体的な価値を知ることもできます。
市民やNPO団体との連携も重視し、植栽や保全活動に住民の参加を促す制度が確立されています。
市民にも関心を呼び起こす活動が行われています。
一方日本では、枝葉を小さく切り詰められた街路樹も多く見かけます。
そのことからも日本は、樹冠被覆率を高めるアーバンフォレストとは逆行した管理がなされていると言えます。
これには街路樹を管轄する国土交通省と、環境問題に関与する環境省に問題があることは間違いないでしょう。
2省の連帯が重要です。
自治体が樹冠被覆率の計測に取り組めるよう、国が予算をつけることも必要と言えるだろう。
しかし、日本は緑地のための予算も行政職員も少ないのが実情です。
都市の樹木を増やし、身近な生活空間を豊かなものにすると言う政治的な判断が必要と言えます。
日本も樹木の情報を公開し、市民と行政が一緒に樹木に関わることができれば、都市の緑は大切であることの価値観も、もっと社会に広がるに違いありません。
無関心は弊害でしかありません。
フィンランドは国土の広大な割合を森林が占める森林大国ですが、このような背景を持つ国々では、自然と共存した都市づくりが重視され、アーバンフォレストの概念とも親和性が高いと言えます。
また、アーバンフォレストは、マドリード市の主要な政策の1つになっており、国レベル、EUレベルの政策や研究とも連動しています。
