潰瘍病(かいようびょう)
潰瘍とは表皮の一部が剥がれることで、葉、枝、果実などに発生します。
病状ははじめに病斑ができ、病斑の色は発生する植物によって様々です。
やがて被害部に裂け目を生じて潰瘍症状を現し、被害部は枯死する。
発生時期は4月から7月
病原体はバクテリアで、枝などに潜伏して冬を越し、翌年の春に発病します。
感染経路は、空気感染や水媒感染で病菌は新梢部や花芽、または傷口などから感染し、植物体内で潜伏します。
葉でははじめに、淡黄色水浸状の円形小斑点を生じるが、のちに表面がやや盛り上がり拡大すると、中央部が褐色または赤褐色にコルク化して粗くなる。
夏、秋の葉では、ミカンハモグリガの食害痕や風でこすられた傷口から感染し、傷口に沿った形の病斑を生じる。
枝でも葉とほとんど同様の病斑を作るが、病斑の周囲が黄色になることはなく、濃緑色の★水浸状となり、病斑は古くなると灰褐色ないし褐色に変化する。
★水浸(すいしん)状とは、初期病斑の頃、病斑の周りが黒っぽい緑色になっている状態の事を言う。
発病の激しい時は、葉柄やトゲにも病斑を生じ、落葉が甚だしくなる。
発病が甚だしい時は、病斑が果実面の大半を覆い、著しく外観を損ねるほか腐敗しやすくなる。
世界のミカン産地のうち、夏に湿度が高く多雨の地域に発生が多く、日本では全国で発生があるが特に九州地方に被害が多い。
品種によって、病気に対しての耐病性に違いがあり、グレープフルーツ、レモン、オレンジ、ナツミカン、イヨカン、カラタチなどが病性で、温州ミカン、ポンカン、ハッサクは耐病性であり、キンカンやユズにはほとんど発生しない。
病原菌は葉、枝、果実の病斑内で越冬するが、発病葉は落葉するので枝の病斑が伝染源として重要で、特に夏、秋の枝の病斑で生存率が高い。
また、秋期の低温時に感染するとそのまま潜伏して、外観的には健全な状態で病原菌は越冬する。
越冬菌は翌年3月中下旬頃から発病する。
病原菌の増殖は3月げから多くなり、雨滴で分散するが風雨によって遠くまで飛散する。
冬から春先が温暖な場合は、新葉展開前に前年葉の気孔から感染し、4月頃から発病して多発の原因となる。
また、若葉でも気孔より感染し、5月上旬以降発病するが、特に中下旬が最盛期となる。
その後、感染組織が硬化すると裂け目や傷口から感染する。
葉や枝に生じた新しい病斑からは盛んに病原菌を出して、その後の果実への伝染源となる。
果実では、落花後の5月から9月頃まで感染するが、7月頃から病斑が認められるようになり、8月から9月の台風シーズン以後に発病が多くなる。
防除法
この病気に対して薬剤防除だけでは困難で、防風対策が不可欠です。
更にミカンハモグリガの防除や、チッ素質肥料の多用を避け、適切な肥培管理を行う事も重要となります。
また、せん定時には特に病患部の枝の除去を行う。
薬剤での防除は、発芽前の3月頃から開始し、銅製剤では3週間おきに、ストレプトマイシン剤では10日もしくは2週間おきに散布を繰り返し行う。
最も重要な散布時期は、成木の場合で発芽前と5月下旬及び6月下旬頃であるが、台風の影響がある場合には更にその前に散布しておく事が大切です。
潰瘍病はいわゆる細菌病である。
柑橘潰瘍病、核果類穿孔細菌病、キウイフルーツ花腐細菌病などの病害に加えて、多くの果樹類を宿主とする根頭(こんとう)癌腫病がある。
これらはいずれも難防除病害とされている。