緑のお医者の徒然植物記

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2020/12/30

ダチュラ (エンジェルス·トランペット)の冬越しNo,342

 ダチュラ

エンジェルス·トランペット

✿コンパクにして冬越し
熱帯原産のため、耐寒性は余り強くありません。

霜が当たると枝先から枯れてきます。

特に寒い地域では、地際まで枯れ込んでしまい、翌年に枝葉が出てきても花の咲くのが遅くなったり、開花しなかったり、最悪の場合は枯れてしまいます。

その為、寒さが厳しくなる前に、
コンパクトにせん定する必要があります。

✪暖地では枝葉を切っただけで冬越し


霜があまり降りることがない暖かい地域では、枝葉を切っただけで冬越しできます。

太い幹を地面から50〜100cmの高さで切り残して、細い枝葉は根元で切り落とします。

春になって気温が高くなってくる頃には、幹からたくさんの新芽が伸びてきます。

寒冷地ではせん定して残した枝を保護(防寒)しないと枝から新芽が出ない、最悪残した幹が枯れてしまう。




✿せん定時には必ず手袋を着用し、切り口から出る樹液には触らない。




◉保温材を使って冬越し

軽い霜が時々降りる程度の、0℃以下になる日が余りない地域では、寒冷紗で霜よけをするだけで冬越しできます。

0℃以下になって霜が度々降りる寒さが厳しい地域では、太い幹を50〜100cm程残して切り戻し、発泡スチロール等の保温材を利用して防寒します。

霜の心配がない5月中旬頃に保温材の囲いを外します。


❆掘り上げて冬越し

北海道のように寒さがとても厳しい地域では、外に植えたままでは株全体が枯れてしまいます。


株を掘り上げて鉢に植え付け冬越しをします。


枝葉の混み合った部分を切り戻し鉢のサイズ(直径)程度に掘り上げます。

鉢上げした後は、十分に水を与え暖かくなり過ぎない玄関等に置いて管理します。

霜の心配がない5月中旬頃になったら、再び庭に植え付けます。

✪鉢植えの冬越し

寒さの厳しくない地域では混み合った枝を切り戻し、寒冷紗を巻いて軒下等に置いて管理します。

寒さの厳しい地域では、室内に取り込みます。

❆挿し木の準備
冬越しのため、せん定した親株の
冬越しに失敗した場合のために、
切り戻した枝を20〜30cmに切り
水を入れた容器に水差しして室内に置いて管理します。

水が減ったらその都度足します。


                         (12月30日水に浸ける)

水差しをしていた枝から春には、たくさんの根が出ている状態になります。



3ヶ月後白い根が出てきた状態ですが、2月頃に取り出して挿し床に挿した方が根の発育が早い。


✻4月頃に、5〜6号の鉢に根を傷めないように注意しながら植え付けます。


                                 (4月3日)
 

せん定後から、水に浸けておいたものを2月に挿し床に挿したものは葉も大きく、根の生育も早い。

春になると、ポット苗や開花株など様々なサイズのものが出回ります。

大きく育てたい人は庭植えにし、
大きくしたくない場合は、鉢植えにして楽しみます。

日光に当てないと徒長したり、花がつかないことがあるので、真夏以外は日差しをたっぷり当てて育てます。

真夏は暑さをやわらげるため遮光を行う必要もあります。

✪北国での主な管理、作業

❆北海道地方
10月中旬が切り戻す適期です。

太い枝を3〜4本残して切り戻し、水やりを控えて休眠状態で冬越しさせます。

生育期に入る前の4月頃になるべく、大きな鉢(直径30cm以上)に植え替えます。

春から秋の生育期には戸外に出して管理します。


❆東北地方
開花期は7月から9月です。
開花中は水切れに注意し、追肥を施します。

花が終わってしばらくした10月に地際から30cm程を残して切り戻します。

その後、室内に取り込み5℃以上で管理します。

冬の間は鉢土が乾かない程度に水やりをします。


❆南国での主な管理、作業

❆九州地方
11月中旬頃までは戸外で、満開を迎える時期です。

その花が終わった11月下旬が、切り戻す適期です。

切り戻したあと、鉢植えの株は日当りの良い軒下や室内へ移動します。

庭植えの場合は、11月下旬に切り戻して、冬越しの準備を行います。

✻関連ブログ
ダチュラ(エンゼルストランペット)
No,264


★昨年年末にせん定した樹がたくさんの花を咲かせていました。


       「2021年9月8日撮影」









2020/12/20

気象条件と植栽 No,341

 気象条件と植栽

植物が健全に生育するためには気温、雨量その年間分布、土壌が
その植物にとって好ましい状態にあることが必要であり、植栽地の
環境がどのような状態にあるのかによって、そこに使用できる職種
が限定されてきます。

植栽を行う上では事前によく把握し、その地に合った植物を選定する必要があります。


✿気温と植栽

植物は種類ごとに生育できる気温の範囲がほぼ決まっています。

一般的にいえば、熱帯性の植物は例外もありますが概ね気温が低い場所では生育生存できず、一方寒帯性の植物は高温には耐えられないものが少なくない。

寒帯性の植物では、種類によりこれ以上南では夏期の高温に耐えられないと言う南限があり、熱帯性の植物ではこれ以上北ではその寒さに耐えられないと言う北限があると言うことです。

南限や北限は人工的に植栽した場所と、自然に生育しているものとではかなり異なります。

南限や北限があるものを植栽分布自然に生育しているものを天然分布といい、植栽分布は天然分布より広いのが普通である。

日本は、アジアのモンスーン地帯に位置し、夏期には高温多湿になりますが南北に細長い島国であるので、冬期は太平洋側は低温で乾燥した気候になり、日本海側は降雪量が多く湿気のある寒冷気候になります。

冬期の気温は、北日本と西日本でかなりの違いがあるので樹木の植栽限界は日本の場合、気温特に最低気温によって左右される度合いが最も強いと言えます。

気温は地方、都市という大まかな地域だけでなく山の南側とか、暖かい海の風がよく吹く範囲とか大木の陰になっている場所とか、建物と建物との間のような所とか、塀の南側と言ったような細かい条件によっても変化し、樹種が育つか育たないかが決まる事もあります。

また、実際に安全であると思われる所に植栽されて育っている場合でも熱帯性の植物は、10数年に1回と言うような寒さにあった場合
枯れてしまうこともあります。

そのことから、その地域に自生している野生化している樹種以外の植物を植栽する場合は、事前に植栽地を調査するなど十分に注意する必要があります。





2020/12/09

エニシダ No,340

 エニシダ マメ科  

「金雀枝、金雀児」
     常緑~半落葉~落葉種あり

原産地=ヨーロッパ地中海沿岸一帯

日本には江戸時代初期(17世紀後半)にオランダから渡来しました。

名前はオランダ語、ヘニスタ(ゲニスタ)の発音がエニシダと聞こえた事に由来します。

原産地の土壌は石灰質の中性土壌ですが、マメ科の植物は空気中の
チッ素を固定する能力があり弱酸性の強い種も多く、今日では九州から北海道に至る各地で庭園樹や公園樹、環境緑化樹として栽培されるほか、切り花としても利用されています。

葉は小さく目立たず、花のない時期は細い枝が多数集まって生えて
いる様子がほうきを思わせる。

実際、英語名はほうきを意味する。
ブルームでかつては、エニシダの枝を束ねてほうきを作っていた地方もあったと言われています。

また、ヨーロッパの魔法使いが空を飛ぶ時に使うほうきも、エニシダ製だと言われています。

枝は葉緑素を含み冬でも緑色をしています。




❆品種

園芸種、近縁種は非常に多く、中でも特に名高いのが19世紀末に、
フランスのノルマンディー地方で発見された花弁の一部に、赤いボカシの入ったホオベニエニシダ(ニシキエニシダ)です。

❆白花が咲くシロバナエニシダ

❆黄白色または白色の花が数輪ずつ
群生して咲くシロエニシダ

❆花が小さく株自体も矮性で鉢植えに向くヒメエニシダ

❆シロエニシダの改良種で硬化して、帯状に幅広くなった枝に白色花をつけ、生け花、切り花によく利用されるセッカエニシダが人気の品種として知られています。


◉生育管理、環境

日当たり、水はけがよいと言う条件さえ揃えば、他の植物の生育に
適さないやせ地でもよく育ちます。

根が粗いので、植え付けは地上部の枝を少し切り詰め、水分の蒸散を防ぐようにします。

植え付け後は支柱を立て、株が動かないように固定します。

大株の移植はかなり困難になります。

マメ科の植物は移植を嫌います。

移植する場合は(3月~4月)半年程前から根回しを行い、地上部を思いきって切り詰めれば可能ですが
高度な技術を要します。

❆肥料(2月)

よほどのやせ地でない限り肥料は必要ありませんが、与えると場合は寒肥として、鶏ふん、油粕など有機肥料を株元にすき込みます。

ごく小さい苗を植えた時には、少量の油粕を混ぜ、根元に埋め込ん
でやりますが、多過ぎには注意!

✪病害虫

ごくまれにコガネムシの幼虫や、
テッポウムシがつくことがあります。

捕殺や殺虫剤を虫穴に注入して駆除します。

✿せん定

萌芽力が強いので生け垣仕立てにすることもできますが、自然樹形で楽しむのが一般的です。

株元から新枝が次々に伸びほうき状の株立ちになります。

放任しても樹形は整いますが、樹冠が大きくなりすぎると倒れる危険があるので、樹芯を適当な高さで止め、必要に応じて支柱を添えます。



                                                                        「エニシダのせん定」


通常のせん定は、混み枝や不定芽などの不要枝を間引くようにします。

4年から5年になった古枝は株元から切り、新枝に更新します。

また、夏場から秋にかけて暗褐色のさやがなり、次第に実が黒く熟しますが、見栄えが悪いだけでなく、樹勢が衰える原因にもなる。

実生で繁殖する予定がない限り、花後早めに切り取るようにします。

✭殖やし方

挿し木は春に充実した前年枝を、10〜15cmに切って挿し穂とし赤玉土や鹿沼土に挿します。


実生は、10〜11月に塾した種子を採り、冷暗所で貯蔵し、翌春に蒔きます。

70~80℃のお湯に入れ、そのまま一昼夜放置してから蒔くと発芽、率が高くなります。




2020/12/06

1月、バラ🌹の手入れ No,339

 バラの手入れ(1月)

1"大苗の定植
12月に続いて大苗を植え付ける適期です。

植え付ける場所にあらかじめ植え穴を作っておくといいでしょう。

この時期なら苗木もまだ購入できると思います。

通販の苗は裸根「はだかね」(ベアルート)が主体ですので、到着しだい苗を2〜3時間から半日ほど水に浸したのち、定植するか仮植えにしておきます。

✪ベアルートとは?

山採りの株でむき出しのままの根。

または、その状態の株や栽培株を
鉢から抜いて根が裸になった状態の株。

輸入などの植物は土つきの状態では輸入できません。

つまり、根が裸になった状態です。

乾燥地の植物の場合、細根が生きている状態であることはほとんどありません。

そんな状態でも腐敗したり枯死していなければたくましく蘇るのも植物です。




2"移植
これまで植えてあったものを他の場所へ移植するにはこの時期が最適です。

新しく植え付ける場所にあらかじめ、植え穴を用意したあとに移動する株を掘り上げます。

その際、強せん定を行い身軽にしておけば掘り上げ作業が楽に行えます。

今まで植えていた跡地に別の苗を植え付ける場合は、根の周りにこれまでバラが植わっていなかった所の土を10㍑程度(バケツ1杯)入れるようにしましょう。

3"鉢植えの土、鉢替え
土替えと鉢替えの適期です。

寒い時期なので、鉢が凍っていたら作業がやりにくいので、お昼過ぎから始めるとよいでしょう。


4"施肥(寒肥)
冬の元肥入れはこの時期の1月中下旬〜2月上旬に行います。

休眠期のため、根を切っても弱らないので、深く耕すことができます。




5"せん定、誘引
作業は3月上旬頃までの間であれば、いつ行ってもよいので早めに済ませたい方は行うとよいでしょう。

また、枯れ幹や古い幹をとりあえず除去しておき、後で高さを詰めてもよいでしょう。


6"病害虫の防除
この時期はマシン油乳剤を散布して、カイガラムシを駆除するのに最適期です。

これより時期が遅れるとあとで散布する石灰硫黄合剤が付着しにくくなります。


7"水やり
株は活動を休止しているため葉はついていても水分は蒸散しません。

鉢植えでも晴天がよほど続かない
限り、水やりは不要です。

8"繁殖
接ぎ木の適期です。

台木を購入出来ない時には自生しているノイバラを掘り上げ、その根に接げば殖やす事ができます。

9"除草と清掃
冬場でも雑草が生長しています。

早めの除草と落ち葉の清掃を行ってから、元肥を入れるとよいでしょう。






2020/12/05

12月バラ🌹の手入れ No,338

 


12月バラの手入れ

1’せん定と誘引
つるバラ、シュラブにせん定と誘引を早く済ませておくとお正月の庭がスッキリします。


❆ブッシュ系
ハイブリッドティー(HT)、フロリバンダ(F)、ミニチュア(Min)は急ぐ事はありませんが、古い幹を取り除いておくだけでかなりさっぱ
りして、仕上げが楽になります。

ブッシュローズは真っ直ぐ伸びる
性質が強いため自然樹形となりますが、観賞する場合に不都合とならないように、樹高をできるだけ
低く抑えます。




2’病害虫の防除
薬剤の定期散布は行いません。

この時期はやるとすればマシン油乳剤によるカイガラムシの退治です。

被害が少ない場合や被害がない時には散布する必要はありません。




3’大苗の定植、移植
鉢植えにしてあったものを庭に植えたりします。

4’鉢植えの土替え、鉢替え
まだ、土が凍っていないので早めに行う事に越したことはありません。


5’水やり
庭植えは基本的に不要です。

鉢植えもこの時期は葉からの蒸散量が落ちているので、雨が2週間も降らないようなことがない限り必要ありません。









キリ No,337

 キリ    「 桐」   落葉中高木

原産地=中国

朝鮮を経由して日本に伝わったのはかなり古い時代と推定され、東北から九州に至る日本各地で古くから栽培されています。

植物学的分類は、ゴマノハグサ科キリ属とする説と、ノウゼンカズラ科キリ属とする説があります。

この2つの科は極めて近い関係にあり、どちらも草本類(草花)が多く大木に生長するのは「キリ」だけで樹高は、10〜15㍍で幹の直径は30〜50cmにも達します。

草本類の仲間に分類されているだけあって、他種の大樹に比べて生長が非常に早く、東北の農村地方では女の子が生まれるとキリの苗木を植えて、嫁入りの時にその木を切り箪笥(タンス)などの家財道具を作る風習が各地で見られます。

当時の女性は十代で結婚する事が普通でした。

キリの樹木がいかに生長が早いかよくわかります。

枝を切るとすぐに芽を出し大きく生長するので「切る」が転訛してキリになったと言われています。

岩手県では県の木として指定されています。

幹は灰白色で滑らかですが、老木になると表皮がひび割れ灰褐色になります。

関東では5月、ゴールデンウィークに入る頃、東北では5月下旬頃に紫色の筒状鐘形の5弁花を枝先に多数つけます。




花には強い芳香があり、公園樹、庭園樹、環境緑化樹として幅広く親しまれています。

中国では皇帝の象徴である鳳凰はキリの木だけに巣を作り、竹の実だけを食べると言う伝説があり、霊鳥の宿り木として珍重された。

また、平安期の日本の皇族や貴族も競って、紋章や装飾にキリを用いたと言われています。


木材としてのキリは、材質が均一の変型や歪みが生じにくいこと、比重が軽く丈夫で水を通しにくいことなどが特徴で、精密な加工に適しています。

そのため、箪笥や下駄、箱などの他、琴などの楽器の胴材、人形の型金庫の内張り、家屋の床柱などに幅広く利用されています。

中でも、会津地方で栽培されているアイズキリ(チョウセンキリ)は第一級の木材として知られています。


葉はビロードのような質感で掌状に浅く3裂し、15〜20cm大きいものでは30cm程に達し時に五角形になる。

若枝や葉の両面には、粘り気のある軟毛が密生します。

つぼみは前年の秋に形成され筒状の花は大きく、ひとつの花の長さは6cm近くある。

春の花があらかた終わった頃5月〜6月に咲く。

卵形で先の尖った果実には翼のついた多数の種子が詰まっている。

❆生育管理、環境

日当たり、水はけのよい腐植質に
富んだ場所を好みます。

樹勢が強くかなり深い所まで吸肥力があるので、植え穴は大きく深めにし、完熟堆肥、腐葉土を十分にすき込んで植えつけます。

大木の移植は困難なので植え付けは小苗で行います。

葉が大きく、枝もよく張るので単植に向き、植え付けには十分な広さが必要です。

✪病害虫

強い樹種ですが、まれにてんぐ巣病にかかる場合があります。

枝が軟弱、小型化し、ほうき状に細かい枝が密生し、葉や花がつかなくなるサクラ類などに多く見られる病気です。

この病気の病因、治療法は見つかっていません。

放置すると樹勢そのものが弱ってしまうので、病気の枝は早めに付け根から切り取って処分します。


✿せん定、整姿

放任しても直立して伸び、樹形はよく整いますがあまり大きくなり過ぎると、庭木としての手入れが困難になります。

広い場所でない場合、通常は樹芯を適当な位置で止めてある程度の高さを保つようにします。

通常の手入れは、秋に軟弱化した枝や枯れ枝、逆さ枝、ひこばえ、徒長枝、込み枝などを整理する程度で十分です。


✭殖やし方
小苗を購入して植えるのが一番確実な方法です。

根伏せで殖やすこともできます。

根伏せは秋に元気のよいひこばえを土中に誘引して、発根させてから親株より切り離して別の場所に植え付けます。









2020/12/04

シャリンバイ No,336

 シャリンバイ バラ科常緑広葉樹

別名=ハマモッコク (車輪梅)

シャリンバイの樹高は2〜4㍍程度幹の下部から枝が分かれ、株立ち状に大きく生長します。

本州宮城県以西、四国、九州、沖縄の海沿いの岩場や山地に自生します。

シャリンバイの名は5月初旬から
6月にかけて、梅に似た5弁の白い小花を車輪状にぐるりと枝先につける所から命名されました。


また、モッコクに似た肉厚の葉をつけることから(ハマモッコク、浜辺のモッコク)と言う別名もあります。

またタチシャリンバイとも呼ばれる。

❆葉の縁はまばらな鋸歯があるもの
と全縁のものとがあります。


生長は遅く萌芽力もあまり強くありませんが、その分管理がしやすい。

耐潮性、耐煙性が非常に強く大気汚染にも強い事から、都市部の庭園樹、公園樹などとして観賞用に
広く用いられています。


10月から12月にかけてブルーベリーの実に似た紫黒色の果実が熟します。

また、黒褐色で滑らかな樹皮は有名な、鹿児島県奄美大島の大島紬の染料として使われる事も知られています。


                          (シャリンバイ)

✪品種

変種が多い。
✭葉先が丸く矮性のマルバシャリンバイ

✭葉が狭いホソバシャリンバイ

✭紅色の花をつけるベニバナシャリンバイ、ヒメシャリンバイなどがあります。

❆スプリングタイムなど外国で改良
された品種も出回っています。

密に枝葉が茂るシャリンバイは、庭の目隠しに利用したり、寄植えにします。

マルバシャリンバイは小ぶりで球状に樹形がまとまりやすいため、単植にして玉仕立てに作ったりします。

洋風の庭にもよく合います。

また、盆栽にも仕立てやすくよく
利用されている樹種です。


                 ( マルバシャリンバイ)

★生育管理、環境

やや砂質の肥沃な土質が理想ですが、日当たりのよい場所であれば
普通の土質なら毎年よく開花します。

日本海側の自生限界は山形県西部と言われており、寒さにやや弱い
傾向があります。

寒地では冬の寒風に当たらないようにし、株元にマルチングするなど管理に気をつけましょう。

◉肥料

2月と9月くらいに、株元に化成肥料を蒔く程度で十分です。

樹勢が衰えた場合は、根元の周囲を掘り、完熟堆肥を十分にすき込みます。

チッ素系の肥料が多いと花つきが
悪くなるので、控えめにします。


❆病害虫
カイガラムシによるスス病が発生する場合があります。

4月から7月にかけて、スミチオン乳剤などを2〜3週間おきに散布しておくと防除に繋がります。

✿せん定、整姿

生長が遅く萌芽力があまり強くないので、極端に手を加えないのが
原則です。

放任していても樹形はあまり乱れずよくまとまりますが、若木の間は伸び過ぎた新梢を切る程度で十分です。

しかし、長時間放置状態になると
ふところ枝などの不要枝が増えて
くるので、2〜3年に一度くらいは間引きせん定を行い、樹形を整える必要があります。

枝が車状に出るので、上手に間引く事が大切です。

大きくなり過ぎた株を小さくしたい場合は、6月から8月に枝の途中で切り戻しますが、基本的に葉のある部分で切り、短い枝と切り替えます。

古枝の部分で強く切り戻すと、樹勢を弱らせる原因になる場合があるので避けましょう。

玉仕立ての場合もあまり強く刈り込まず、若枝の部分を軽く刈り込む程度で樹形を整えます。

✪殖やし方
塾した果実を採り、果肉を除いて

採り蒔きにするか、冷暗所で保存して翌春に蒔きます。

挿し木は活着率が悪く困難です。









2020/12/01

シャクナゲ No,335

 シャクナゲ ツツジ科 常緑低木

別名=卯月花   (石楠花)

中国西南部からヒマラヤにかけての山深い地方が原産と言われています。

園芸品種は日本の高山に自生する、日本シャクナゲ(和シャク)と欧米で改良されて日本に渡った西洋シャクナゲ(洋シャク)に大別されます。

日本シャクナゲの代表的なものには
✪南畿以西、九州、四国の山地に分布するツクシシャクナゲ

✪愛知、長野、富山以西、四国に分布するホンシャクナゲ

✪山形、宮城以南、関東、甲信地方に分布するアズマシャクナゲやアマギシャクナゲ、ヤクシマシャクナゲ、ホソバシャクナゲ、キバナシャクナゲなどがあります。

いずれも高地に自生するため、平野での栽培には高度な技術を要します。

そのため「高嶺の花」として古くから園芸愛好家の憧れの花となっています。




欧米では「アルペン·ローズ」と呼ばれる西洋シャクナゲは、品種改良が繰り返され千種類以上の園芸品種があると言われています。


総じて花が華麗で大きく、色も豊富で一般家庭でも栽培が容易なため、より広く親しまれているのはこの西洋シャクナゲです。

◉生育管理、環境

栽培が難しいと言われるシャクナゲですが環境がきちんと整っていればよく育ちます

開花時期は5月〜6月

基本的には午前中に日がよく当たり午後は日陰になるような所が最も適しています。

シャクナゲは西日を嫌う性質を持っている

ため、強い日差しが一日中当たるような所は生育に適しません。

また、乾燥を嫌うので冬場の北風が避けられるような所で栽培することも大切です。

他の樹木や植物の間に植えるのも
他の樹木や植物が蒸散した水分によって湿度が上がるので良い方法です。

根が浅いので乾燥する季節には敷き藁などで乾燥を防ぐ事も必要です。

✿植え付け、植え替え

2月中旬〜3月、9月中旬〜10月
土質は水はけがよく腐植質を豊富に含んだ酸性土を好みます。

赤土や火山灰質の黒土で腐植質を多く含む軽い土や、鹿沼土、軽石、ピートモスを混ぜ合わせたものなどが適しています。

植え付け、植え替えは根が細かいので根鉢を大きく取り、根についている土はある程度落として新しい土とよく馴染むようにすることが大切です。


❆肥料

寒肥として2月、花後のお礼肥として7月にそれぞれ油粕と骨粉を、等量混ぜたものを株元に蒔く程度でよいでしょう。


✪病害虫

葉枯れ病、褐斑病、カイガラムシなどが発生する場合があります。

葉枯れ病、褐斑病にはマンネブ剤などを散布します。

カイガラムシには発生期にデナポン乳剤を散布します。

越冬期にはマシン油乳剤や石灰硫黄合剤などで防除します。






✿せん定、整姿

5月、10月
放任しても樹形がよく整います。

ただし、花つきの多い種類はすべての花を咲かせると、樹勢が衰え隔年開花の原因になる場合があるので摘蕾します。

シャクナゲは花が付いている内から、新梢が伸びてその先端に花芽が分化します。


そのため、冬の間もつぼみをつけた開花枝ができる事になります。

そこで10月頃にその枝の真ん中のつぼみを取り除いておきます。

残したつぼみは翌春開花し、摘み取った後から伸びた新梢には翌年の花芽がつくので、隔年開花を確実に防ぐ事ができます。


また、花後の花柄摘みも花つきをよくするために欠かせない作業となります。


❆殖やし方

実生は採取したしゅしを冷暗所で保存し翌春に平鉢に入れた水苔に蒔きます。

ガラス板や新聞紙などをかぶせて保温し、日中はガラス板をずらして外気に慣らします。

翌年秋に水苔を切り取り、赤玉土3、腐葉土4、ピートモス3の割合の用土に植え、3年程管理した後定植します。

挿し木は5月頃に鹿沼土とピートモスの用土に挿し、冬場は日当たりの良い窓辺で管理します。