緑のお医者の徒然植物記

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日曜日, 9月 20, 2020

ヤブツバキ No,280

ヤブツバキ 「藪椿」ツバキ科

常緑中高木

日本の照葉木を代表する樹木の1つで、主に東北地方以西の海沿いの地域や、山地に幅広く自生します。




単に「ツバキ」と呼ばれることも多く、多くの園芸品種もこのヤブツバキが基本種となっています。

古代人は冬から早春にかけて開花する貴重な花木であり、常緑の葉に神秘性を感じ、仁徳天皇の昔から神聖な木として、宮中を中心に重用されてきました。

古事記では「都婆岐」日本書記では「海石榴」の表記で登場します。

ツバキの名称は「光沢(こうたく)がある」の古語である「つば」が変化したとする説と「艶葉木」=つやばきが転訛したとする説、「厚葉木」=あつばきが転訛したとするものなど諸説があります。

いずれも光沢のある厚手の葉を名前の由来としています。

11月から4月にかけて咲く花は5弁花ですが、基部がくっついていて盃状に咲くのが特徴です。

そのため落花する時は花ごと落ちます。

夏から秋に咲く花木は、主に昆虫が花粉を媒介する「虫媒花」ですが、ヤブツバキをはじめ昆虫がほとんどいない冬場に咲く花は、メジロなどの小鳥が花粉を媒介する鳥媒花」です。




一般に鳥媒花には、ヤブツバキの赤色のように鮮やかな色のものが多く、これは嗅覚(きゅうかく)の発達していない鳥類に対し、視覚で訴えているためと言われています。

また、昆虫を遠ざけるためとする説もある。

✪鳥媒花(ちょうばいか)とは、ツバキやサザンカのように冬に咲く花は、花粉をメジロやヒヨドリなどの鳥に運んでもらって受粉する花です。

体の大きな鳥を呼ぶために、ツバキは多量の密を分泌するようです。


多雪地帯に自生する「ユキツバキ」はヤブツバキから分化したものと言われ、降雪に耐えるように枝が、地を這うように低く広がる特徴がある。

耐寒性、耐暑性、耐潮性が共に極めて強い事から、公園、庭園樹として幅広く利用されている。

木材は堅く建材や器具、彫刻材として用いられる他、油分を多く含む種子からは「ツバキ油」が採れ、灯明、薬、化粧品などに幅広く利用されている。

その他の利用として、長崎県五島列島の名産「五島うどん」には、ツバキ油が使われていて、日本三大うどんとされ、幻のうどんと言われる。

五島うどんの歴史は最も古い、しかし、離島で在る事もあって昔々から伝わりにくい状態であった為、全国にあまり知られなかったと言う歴史がある。




五島うどんの発祥地は、旧上五島の船崎と言う部落で、中国より伝わったとされる。

現在でもこの地には、製麺所(犬塚製麺)がある。

ツバキは交雑種が作りやすく、品種改良が容易な事から、園芸品種は非常に多くその数は、一万種以上あると言われています。

18世紀には、チェコスロバキアの「宣教師で植物学者でもある、ゲオルグ·ジョセフ·カメル」によって、ヨーロッパに紹介され、以来カメルの名に因んで「カメリア」の名で欧米でも大流行しました。

ヤブツバキの学名はカメリア·ジャポニカで、西洋では椿の事を「カメリア」と呼びます。

椿油は世界的には「カメリアオイル」と言われています。

このカメリアオイルは世界三大オイルの1つで、ツバキ科ツバキ属の植物から取れる油で、日本原産のヤブツバキから採取される椿油は、カメリアオイルの一種と言えます。

世界で流通しているカメリアオイルの多くは、中国などアジアに広く分布するツバキ属の、チャノキやユチャ等の実から搾られる植物油と言われています。


◉生育環境
元来は暖地性ですが、耐寒性が強く、青森県まで露地植えが可能です。

日陰にもよく耐えますが、半日陰から日当たりくらいの環境下が最適です。

腐植質に富んだ排水性、保湿性ともによい肥沃な土地を好みます。

◆植え付け、植え替え
4月から6月中旬か9月が適期です。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥をよくすき込んで高植えにします。

◉肥料
通常の庭土であれば特に必要ありません。

花つきが良くない場合は、油粕、粒状化成肥料を等量混ぜたものを、株の大きさに応じて春先と秋口に与えます。

◆病害虫
ツバキ科の植物は、チャドクガが4月と7月頃に発生しやすい傾向にあります。

被害が大きい場合は5月頃から8月の発生期に、ディプテレックス、スミチオン、DDVPなどの薬剤を散布します。

チャドクガは毒毛を持ち、触れるだけでなく近寄っても「かぶれ」るので、捕殺するのは適当ではありません。

駆除はなるべく薬剤で行うようにしましょう。

ツバキ類の葉が黄色く見えたら、チャドクガの毛虫がいるかも知れません。

注意して葉の裏側を見ましょう。

◉せん定
ヤブツバキは幹が一本真っ直ぐ上に伸びる立性『たちしょう)です。

生育が遅く、枝も極端に伸びないので、自然樹形で楽しむ事ができます。

刈り込みに強いので玉散らしや円筒形、円錐形などの仕立てものにする事もできます。

基本的なせん定は、徒長枝や弱い枝、込み枝を切ります。

特に樹冠内の枝が密生し過ぎると日照、通風が悪くなるので、込み枝は必ず透かすようにせん定します。

花芽は6月から7月に、伸びが止まった新梢の先端につきます。

翌年春にその位置で開花します。

花期は品種により多少異なりますが、せん定の時期は花の咲き終わった直後3月から4月にかけて行います。

せん定後に伸びた新梢に花芽をつける事になるので、この時期(3月~4月)ならかなり思いきったせん定も可能です。

新梢の伸びが止まった、6月から7月の間に軽くせん定する場合は、すでに花芽が出来ているので注意して、樹形を乱す伸びすぎた枝を切り詰める程度にします。

花の咲いた枝を切る場合は、枝分かれしている所から葉を、2~3枚残して上部を切り詰めます。

この様なせん定を毎年花後に行えば、常に一定の樹形を保ち、花を犠牲にすることも無いでしょう。

尚、花後に結実するとその後の樹勢に影響を与えるので、実は早めに切り取ります。

★殖やし方
実生は秋に熟した種子を採り蒔きにします。

挿し木は固まりかけた新梢を、10~15㎝程に切り挿し穂とし、鹿沼土や赤玉土小粒のさし床に挿します。
時期は7月から8月

接ぎ木は3月から4月頃に行う。