移植とは
樹木の根は、しっかりと地上部を支えるように直根=主根が発達し、表土など地中のなるべく広い範囲から養水分を吸収できるように、側根が伸びているのが理想です。
樹木を移植する場合は、側根が伸びていることよりも幹の周りのなるべく主幹に近い範囲に、細い根が多く生じているが好ましい。
このような根を持った状態の樹は、植え替えても枯れたり、樹勢が衰えたりすることがありません。
造園樹木では、細い根が多くある樹木が好まれます。
長年同じ場所に植えられていた樹木は、根が長く伸びていて、株の根元近くに細根が発達していません。
このような状態の樹木をいきなり移植すると、移植のために掘り取りする際、細根の大部分は切り取られてしまいます。
従って、植え付け後に水分の吸収ができないために、枯れてしまうことが少なくありません。
このような事が起こさないために、移植の数ヶ月から1年くらい前にあらかじめ根元近くで太い側根を切断、もしくは環状剥離をして再び埋め戻し、株元近くに多くの細根を新たに発生させる処置を行います。
この作業を「根回し」といいます。
✼移植後に樹木が枯れる
移植によって樹木が枯死する主な原因は、堀り取る際に樹木の細根が著しく減少して、水分や養分の吸収が困難になりますが、それにも関わらず葉面から水分が蒸散し続けるために、植物体内の水分のバランスが保たれないと言う理由からです。
移植した樹木を活着させるためには、バランスを崩さないように処置をすることです。
一方で、もともと移植が容易な樹種もあります。
サツキやツツジ類のように、根元近くに細根が多く発生する性質があるものは、根を切られてもすぐに再生するという性質を持っています。
また若い苗木は、側根がまだ遠くまで伸びていないので、移植に際して切断される根が少なくすみ、若木の活力も手伝って移植は一般に容易と言えます。
葉面からの水分の蒸散を抑えれば良いので、移植時に枝葉をせん定して葉数を減らしたり、蒸散抑制剤を散布することで活着率を高めると言う効果もあります。
場合によっては、移植時にほとんどの葉を取り除いても、活着すれば再生することができます。
移植によって相当弱った樹木でも、活着する見込みがある場合には、葉柄の根元に「離層」が形成されて、樹木が自ら古葉を落としてしまいます。
✫離層(りそう)とは、葉が落ちる前に葉柄に生じる特殊な細胞層のこと
この状態を「とやする」といいますが、移植後葉が枯れる場合でも、離層が形成されて自然落葉するときには、活着する前兆と判断する目安になります。
樹種によってはクスノキのように、ある程度(目通り30㌢)の太さに生長したものの方が、細い苗木の時よりも移植が容易なこともあります。
これは、樹幹内に水分を蓄える性質があって、幹が太いほど含有水分が多くなったり、生長するにつれて移植に対する抵抗力が増すためと考えられています。