ブドウ ブドウ科「落葉性果樹」
果樹では数少ないつる性植物です。
原産地という分類方法よりヨーロッパ系とアメリカ系と分類される。
それは世界中で栽培されているためです。
ヨーロッパブドウ、アメリカブドウ、その交配種である間性種などがあり、世界各地で改良された品種が多数あります。
ヨーロッパ系は開花適温が高く、雨の少ない乾燥地帯が生育に適しているので、日本の気候には向かない種類になります。
これに対しアメリカ系は、雨の多い地方の原産で、冬の低温にも耐え定植して3年から4年で実が生ります。
日本では生食を主体にするが、外国ではワインの原料としての栽培が主である。
ブドウの栽培では雨量が気温以上に大きな影響を持っています。
小雨乾燥地帯原産のヨーロッパブドウは、4月から10月の生育期に300㍉以下の雨量を好むので、雨を防ぐガラス室栽培以外では栽培出来ません。
年間平均気温が7℃以上あれば生育できますが、生育適温は11〜15℃と言われています。
また、果実の成熟期に日中と夜間の温度差が大きいほど品質が良くなります。
生育環境
日当たりと水はけのよい肥沃地を好み、乾燥地にも強い。
山梨をはじめ長野や瀬戸内などが有名な産地です。
主として棚栽培をするが、強い風の当たる所は避ける。
原則として成木の移植はできません。
肥料
1月から2月頃に堆肥に鶏糞を混ぜ、リン酸カリ分だけを少量混ぜて溝を掘り埋め込みます。
この時ブドウの場合はチッ素分を与えると木が軟弱に育ち、病気が発生しやすくなるので与えないことです。
追肥も必要ありませが、実をよく生らせるために6月と8月下旬から9月初旬に、リン酸カリ分を主体として少量の化成肥料をばら撒きます。
せん定
せん定には長梢せん定と短梢せん定がありますが、家庭果樹では狭い範囲で育てられる短梢せん定の方が向いています。
主枝の両側に20cmくらいの間隔で側枝を出し、一本の側枝から一本の結果母枝を出し、その結果母枝を1〜2芽に短くせん定して1〜2本の結果枝を出させます。
一般に短くせん定した結果母枝から、数本の新梢が発生しますが、2本だけ残して他は掻き取ります。
2本のうちの1本は予備で、主枝の誘引が終われば予備枝も切り取ります。
✻関連記事No,154ブドウの摘粒(果粒)
果実管理
春になるとせん定した結果母枝から、新梢(結果枝)が伸び出して花穂をつけ開花結実します。
着果習性
2年枝から発生した1年枝に開花結実する。
ブドウの新梢は伸びがよく、開花した花はほとんどが結実するので、そのままにしておくと果房が多くなり過ぎて、栄養不足から不良品になってしまいます。
房作り(摘房)
多くついた果房をそのまま育てると脱落したり甘味がなくなる。
そこで摘房が必要になります。
品種によっては一枝に4房ぐらいつきますが、大きい果粒のついた良い果房を選び、大果房は一房、中果房で2〜3房に摘房します。
また、新梢の先端を摘芯して一時的に枝の伸びを止め、果実の方に栄養が行くようにします。
果粒が生育してくるとお互いに押し合い肥大出来ずに、小粒になったり変形したり、粒がパンクしたりします。
これを防ぐために摘粒が必要です。
摘粒
不良果や小果を取り除いて隙間を作り、残った粒を肥大させる。
袋掛けは病虫害防除や果皮の保護、着色良化などの効果があるので、掛ける方が良い果実になります。
ポリエチレン袋などを利用します。
一般家庭で栽培するアメリカブドウの場合は、冬の低温にも耐えるので庭木としても楽しめます。
庭に植えたブドウは2年から3年で開花結実します。
ブドウの木は5年から6年で成木になるので、中くらいの房の場合は40房から50房くらいの収穫が見込めます。
鉢植えの場合
鉢植えは赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、日当たりがよく風通しの良い場所に置きます。
鉢植えは2年で開花結実し、7〜8号鉢で5〜6房を収穫の目安にします。
鉢植え、あんどん仕立て
①1年目の落葉期に下から2芽を残して上部を切ります。
②2年目の生育期に支柱を立てて誘引
③2年目の落葉期に3月頃の枝が柔らかくなった時に、あんどんに巻きつけて固定します。
④3年目の生育期に新梢を前年枝の上へ誘引して巻きつけ、固定します。
果房の枝は葉を2〜3枚残して摘芯し、果粒を肥大させます。
植え付けの時期は、11月から12月と2月中旬から3月頃ですが、寒い地方では3月に行いましょう。
棚とブドウの扱い方
1年目から4年目まで
日当たりと排水、肥沃な土地であることが生育のポイントですが、かなり乾燥にも耐えることができます。
しかし、寒さと湿潤な土地、そしてチッ素分の多い土壌は嫌いますので注意が必要です。
庭に植える品種としては、デラウェア巨峰やベリーAなどが良いでしょう。
主に開花期は5月頃、結実は8月下旬から10月頃
病害虫
ベト病
葉の表面に周辺部がはっきりしない、黄色がかった病斑ができ、次第に拡がって大きくなります。
葉の裏側には灰白色のカビが発生します。
病状が進むと黒みがかった不正系の病斑になります。
このカビは低温多湿を好むので4月から6月の春と、9月から10月の秋に多く発生します。
主に葉や新梢部、巻きひげ、幼果に発生します。
生育期前半にホセチル水和剤、キャプタン水和剤、マンゼブ水和剤、シモキサニル·ファモキサドン水和剤等の予防薬を約10日間隔で散布します。
発生後にベトファイター顆粒水和剤しますが、果房への使用は小豆大期までとする。
サビ病(主に9月から10月に発生)
寄生された植物の葉にはたくさんの病斑ができます。
その病斑から鉄のサビのような粉状の胞子を大量に生じます。
病気が樹全体に蔓延すると樹は枯死に至る。
サビ病には硫黄剤がよく効きます。
発生時期の前後に月に2回くらいの割合でマンネブダイセン、エムダイファー、水和硫黄剤などを散布します。
このカビは高温多湿を好むので、せん定などをして風通しを良くして予防しましょう。
黒痘病(こくとうびょう)
病原体は糸状菌で、葉や新梢、花穂、果実に発生する。
葉では茶褐色から黒褐色の小斑点が生じ、その後拡大して中心部に穴が空く。
多発すると生育が不均一になり、葉の奇形や葉縁に湾曲などの症状が見られる。
新梢や巻きひげには、わずかなへこんだ茶褐色から黒褐色の斑点が見られ、新梢先端に多発すると先端部は枯死する。
幼果では初め茶褐色の小斑点を生じ、次第に拡大して周辺部が黒褐色、中心部灰褐色の多少へこんだ円形病斑になる。
特にヨーロッパ系品種はこの病気に弱い性質がある。
病原菌は結果枝や巻きひげなどの組織内で菌糸の形で越冬する。
病原菌は柔らかい組織を好み、硬くなった葉や新梢では発病しなくなる。
この病の感染時期は早く、萌芽直後から生育初期にかけて連続降雨があると発病が多くなる。
また、生育初期に発生が見られなくても、梅雨期や秋雨などで降雨が続くと、柔らかい副梢の葉などに突然発病することがある。
一度発生すると翌年以降も発生しやすくなるため、被害が少ないうちに防除を徹底する。
休眠期、萌芽直後、新梢伸長期、開花期、落葉期から小豆大期、袋掛け後に定期的に散布を実施する。
薬剤としてデラン、キノンドー、ジマンダイセン、ペンコゼブ、チオノック、ドーシャス、オーソサイド、フルーツセイバー、ネクスター、パレード、ボルドー液など
晩腐病
(おそぐされびょう、ばんぷびょう)
晩腐病は棚に巻きひげや枝が残っていると、そこから雨を介して感染する。
幼果期から梅雨期が最も多く、胞子は降雨によって飛散し、新梢や果房に感染する。
せん定時に越冬伝染源となる果梗の切り残し、巻きひげの除去を徹底する。
支線などに巻き付いた巻きひげもできる限り取り除きます。
休眠期防除では、デラン、パスポート、べフラン、ベンレートなどを発芽直前に散布する。
生育期防除では、オーソサイド、ジマンダイセン、アミスター10、スクレアなどを散布する。
房枯れ病
果実では初めに黒色の小斑点が形成された後、最終的にはミイラ果となる。
穂軸の基部から褐変して、次第に果房が腐敗する。
収穫した果房に発生することが多い。
病原菌は1年から3年生の枝で越冬する。
ぶどうの生育に連れて病斑が拡大し、伸長した枝を枯らしたりまた、胞子が雨の飛沫で飛散し、新梢の葉柄基部に感染して葉枯れを起こします。
収穫期を遅らせたり、樹勢が弱くなっものに発生が多くなる。
また、早期加湿栽培ほど発生が多い傾向があるので、栽培方法を変える事も必要です。
適期収穫を心がけるとともに樹勢の強化を図る。
袋掛けは早めに行い、せん定では枝や巻きひげを処分します。
予防として、冬期に石灰硫黄合剤の30倍液を2〜3回散布し、新芽が伸び始めたらロブラール水和剤1000倍液や、ジマンダイセン水和剤500倍液を月に2〜3回定期的に散布します。
害虫類は春から定期的にスミチオン1000倍液の散布などで防除しますが、ブドウスカシバやブドウトラカミキリなどの被害にあった枝は、冬のせん定の時に切り取り処分します。
害虫ブドウスカシバ
ブドウの害虫として知られ、細い枝に幼虫が入ると、枝が膨らんで虫コブ状になる。
エビヅルノムシ、ブドウ蔓の虫とも呼ばれるブドウスカシバの幼虫のこと
害虫は駆除を兼ねて秋にせん定し、虫コブのついた小枝は中に潜んでいる幼虫を釣り餌や小鳥の餌にするため、業者に売られる。
秋から早春に蛹化するまでの期間、エビヅルノムシ又はブドウムシとして市販されている。