緑のお医者の徒然植物記

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2025/07/29

人参(根菜類) No.767

 ニンジン 5寸系

根菜類

根菜類は地中で育つ野菜で、主に根や地下茎を食用とする。

人参以外には、大根、ゴボウ、サトイモ、じゃがいも、さつまいも、カブ、レンコン、ヤーコン、ショウガ、タマネギ、ヤマイモ等がある。

人参の種まきには春まき(3月下旬〜5月上旬)と夏まき(6月下旬〜7月中旬)があり、夏まきは「とう立ち」しにくいという良さがあります。

とう立ちとは野菜の花茎(とう)が伸びて花を咲かせる状態を指します。

人参のとう立ちは花を咲かせるために、茎が高く伸びてくる現象です。

人参はある程度の大きさに成長した後、10℃以下の低温に一定期間さらされると花芽を分化します。

花芽が分化した後、高温で日当たりの良い状態が続くと、花茎が伸びてとう立ちする。


 「高く伸びた人参の茎」


品種によって低温敏感性は異なるが、東洋系の人参は比較的幼苗でも低温に敏感で、とう立ちしやすい傾向があるとされています。

また、水没や種まき時期の遅れなども原因になることもある。

肥料の与え過ぎや、肥料不足も原因となることがあります。


とう立ちした人参の中心部は硬くなり(木質化)、甘みが減少、内部に空洞ができたりして味も落ちることもある。



花芽が形成されると根からひげ根や芽が出ることもあります。

植物は、栄養成長と生殖成長と言う2つの生育過程を経て成長します。

とう立ちは、栄養成長から生殖成長への移行期に起こる現象です。

とう立ちした人参はできるだけ早く収穫することが大切です。

硬くなった人参は味が落ちていますが、スープや煮物料理など、加熱調理して使うと良いでしょう。

とう立ち対策として


とう立ちしにくい品種を選ぶことが重要です。

晩抽性やとう立ちしにくいと言った記載が種袋にある品種を選ぶ。

種まきの時期を守り、適期に種をまくことが大切です。

特に春まきの野菜は、気温の変化に注意する必要があります。


マルチングやトンネル栽培など、温度管理や日照時間の調整を行うことで、とう立ちしにくい環境を整えることにつながります。

肥料は適量を守り、追肥のタイミングと量にも注意が必要です。

   「種まき後20日」

発芽までは、乾燥に注意しながら水やりをこまめに行います。

堆肥や腐葉土を混ぜて、ふかふかの土壌にするのが基本的な良い土壌ですが、生育環境を知るため砂質中心の土壌で栽培しています。

本葉が2枚〜3枚の状態になった頃、最初の間引きを行います。


  「間引きした幼苗」

本来なら間引きした幼苗は破棄しますが、勿体ないと思う方もいるかと思い、植え付けたらどうなるのかをみるためにテスト的に植え付けてみます。

その後、間引きは数回に分けて行い最終的に10〜15㌢の株間にします。


  「種まき後25日」


種まきをまいて25日頃には、ニンジンの葉と分かる幼苗となる。

   「種まき後55日」

土壌の地力が弱い砂地では、日数からすると育ち方が弱いように思う。


この頃から害虫も発生し始める。

最初に発生するのはネキリムシで、根元の茎をかじってニンジンの茎葉が倒れてしまう。



新葉がちぎれ落ちていた場合、根元を掘るとネキリムシが潜んでいることが多い。

ネキリムシは茎をかじり倒すだけでなく、根元付近のニンジンもかじってしまう。


   「ネキリムシ」

成虫(カブラヤガやタマナヤガ)が飛来して、地際の古い葉や枯れ葉に卵を産み付ける事によって発生する。

特に、ギシギシなどの雑草が生い茂っている場所や猛暑の年には、発生数が増加する傾向があります。

雑草が多い場所では、ネキリムシの発生源となりやすいので、除草を徹底することが重要です。

幼虫は最初葉を食べるが、成長すると茎や根を食害し、枯死されるなどの被害をもたらします。

ネキリムシは土の中で越冬し、春になると活動を始めるので、土壌環境がネキリムシの発生に影響を与えるため、畑の管理を適切に行うことが大切です。

ニンジン以外にネキリムシの被害を受けやすい傾向がある野菜には、キャベツ、ジャガイモ、ダイコン、タマネギ、ブロッコリー、ホウレンソウ等が挙げられます。


  「ヨトウムシの発生」

ヨトウガによって葉先部分に産卵が行われます。

クモの巣で絡めたように包まれた葉の中に、ヨトウガの幼虫(ヨトウムシ)が潜り込んで食害し始めます。

ニンジンに発生するヨトウムシは葉を食害し、被害が大きい場合は収穫量に影響を及ぼすこともあります。

昼間は土の中に潜んでいることが多く、早期発見、早期駆除が重要になります。

ヨトウガの成虫一匹で数百から数千個の卵を産むため、大量発生することがあります。

葉が食い荒らされたり、株全体が枯れてしまうこともある。


「綴られた葉の中にヨトウムシ」

幼虫のうちに農薬を散布するのが効果的です。

成長すると農薬が効きにくくなるので、早期の駆除が重要です。

昼間は土の中から見つけて捕殺したり、防虫ネットや寒冷紗で侵入を防ぐ事も重要です。

米ぬかを撒いたり、酢などを散布することもヨトウムシを遠ざける効果が期待できます。

間引き苗の植え付け株



間引きした幼苗を植え付けたらどうなる?

結果は、根がまっすぐ伸びないので二股、三股と根が分かれてしまいます。


育ちも悪いので食べられるか分からないと言う結果でした。

ニンジンが肥大しない主な原因は、種まき時期、株間、土壌条件(土が硬い)、水やりや肥料、害虫など

種まき時期の適温は15〜25℃で、10℃以下の低温や30℃以上の高温は根の肥大を抑制するため、種まき時期を適切に選ぶ事が重要です。


春蒔は初夏に収穫、夏蒔きは秋冬に収穫が一般的で、ニンジンの発芽には8℃以上の気温が必要です。

株間が狭いとニンジン同士が栄養を奪い合い、肥大が悪くなるので十分な株間を確保することが大切です。


水はけの土壌を好みます。

有機質肥料を施し、深く耕すことで根の伸びやすい状態になります。

石や土の塊など、根の成長を妨げる土壌は改良する必要があります。


ニンジンの初期生育時には適度な水分が必要ですが、過湿を繰り返さないように注意します。

収穫前には水やりを控えて品質を保つことが大切です。

肥料のやり過ぎは根の肥大を妨げたり、裂根の原因になることがあります。

特に生育後半の急激な肥効を避けるようにします。














2025/07/14

バニヤンの木 No.766

 ベンガルボダイジュ

クワ科イチジク属

別名=バニヤン、バニヤンツリー、バニヤンジュ
原産地=インド




ガジュマルなどの他のイチジク属の樹木も含まれる名称であるため、学名からベンガレンシスとも呼ばれる。

日本にあるアコウの木はバニヤンツリーの英語名がありが、そのバニヤンはインド原産で、インドではベンガルボダイジュと呼ばれるように、宗教上の聖木たして、東南アジアに広く植えられています。

ガジュマルやアコウと同様に「絞め殺しの木」と言うもう一つの恐ろしい俗名がある。

他の木に絡みつき、その木を締め付けて枯死させてしまうことこら絞め殺しの木と呼ばれる。

そんな恐ろしい名がある木だが、キジムナーと言う木の精が棲み、願い事を叶えてくれるという言い伝えから「たくさんの幸せ」の花言葉がある。

キジムナーは、一般的にガジュマルの枯木に宿ることが多いとされる、沖縄ではとても身近な妖怪のような精霊とされる場合もある。

地域によっては、セーマグ、ブナンガヤー、アカガンダーなどと呼ばれる。


ハワイを象徴する木

ハワイでは、1873年にマウイ島のラハイナに植えられたバニヤンツリーが有名で、町のシンボルツリーとなっていましたが、2023年8月の山火事によって大きな被害を受けました。

ハワイでは、街路樹や公園などで見られますが、これは人によって待ち込まれた外来種です。

ハワイ島ヒロのワイアケア半島に、バニヤンドライブと呼ばれる通りがあり、巨大なバニヤンツリーの並木道として知られています。

ベイフロントに位置し、沿道にバニヤンツリーが立ち並ぶ美しい並木道となっています。

観光名所の一つで人気スポットとなっています。

バニヤンツリーの名前の由来になっている所で、バニヤンツリーはベーブ・ルースやマリリンモンローなど、全米の著名人が植樹したものだと言われています。


絞め殺しの木と言われるアコウやカジュアルの関連ブログ

奈良尾のアコウの樹
No.360

ガジュマルの木、歩く木
No.361







2025/07/09

スベリヒユ No.765

 食べられる野草

スベリヒユ


別名

オオスベリヒユ、スベラヒョウ、ズンベラヒョウ、タチスベリヒユ


日本の各地方によってはアカジャ、アカヂシャ、イワイズル、ウマビユ、オヒョウ、ゴシキソウ、スベラヒョウ、トンボグサ、チギリグサ、ヌメリグサ、ネガタ、ヒデリグサ、ヒョウ、ヒョウナの方言でも呼ばれている。


また、葉が青、茎が赤、花が黄色、根が白、種が黒と言う5色が揃っていることから「五行草=ごぎょうそう」とも呼ばれる。


原産地は南アメリカで、世界中の熱帯から温帯にかけて広く分布しています。


スベリヒユの歴史は古く、有史以前に海外から日本に渡来したと考えられています。


万葉集にもスベリヒユと思われる記述があり、古くから日本人に親しまれてきた事が伺えます。


有史以前に人が意図的に持ち込む前から、自然に分布していた史前帰化植物である。



この名が付いたのは、アマランサス(ヒユ)の仲間に似ていることから「ヌメリヒメ」と呼ばれ、それが転じて「スベリヒユ」になったと言う説や葉っぱにツルツル滑るような光沢があることに由来すると言う説もある。


乾燥に強く砂地や畑、道端や空き地など日当たりの良い場所に自生する。


乾燥に強いことから、飢饉の際に救荒植物として利用されたこともある。


また、サツマイモは飢饉を救った救荒作物として知られている。


スベリヒユは栄養価も高く、一部地域では食用とされるほか薬用としても利用されてきました。


民間薬として利尿や解毒として利用されてきた。


中国の中医学では長寿薬や馬歯莧(ばしけん)と呼ばれ、解毒、消炎、抗菌、止血などに用いています。


山形県では「ヒョウ」と呼ばれ、茹でて食べたりおひたしやあえ物、サラダなどに利用されています。


スベリヒユには「シュウ酸」が含まれているため、茹でてから水にさらし、アク抜きをしてから食べるのが一般的です。


沖縄では念仏鉦「ニンブトゥカー」と呼ばれ、夏場の貴重な野菜として重宝されています。


ヨーロッパでは普通にスーパーで売られています。


近縁種のタチスベリヒユが「パースレイン」と呼ばれ、野菜として栽培されています。


高茎となり、葉が大きく西洋ではサラダや煮物に用いられています。


茹でたものは干して保存食にもできます。


犬には有毒となるので注意が必要です。



近縁種

近縁種には、花が大きい園芸種のハナスベリヒユ(ポーチュラカ)がある。

ポーチュラカの名はスベリヒユの学名に由来し、スベリヒユはポーチュラカの原種になっている植物でもある。

同属にはマツバボタンがあり、茎葉の形や様子はスベリヒユに似ています。

タチスベリヒユは野菜として栽培されています。


アク抜きの例

硝酸を多く含むので、必ずアク抜きをする必要があります。

スベリヒユは根元を切り落とし、よく洗います。





沸騰したお湯に塩を少し入れ、3分〜5分程度茹でます。




茹でたら冷水に浸して数分(10分程度)さらしてアクを抜きます。

アク抜きが終わったら、水気をしっかり絞ってから調理に使用します。

「アク抜きが終わった状態」


茹で時間は柔らかさや好みに合わせて調整する。

根元の太く硬い部分は、天日干しでゼンマイ等のように保存し、お湯等でもどして使う。

  「保存用、天日干し」


天ぷらにする場合、水にさらす時間は30分〜1時間程度を目安に、さらす時間を長くするなど調整する。

花、葉、茎、根が食用

調理法にはサラダ、煮る、焼く、炒める、揚げる、茹でるなどして食べます。


    「冷凍保存」

スベリヒユはΩ(オメガ)3脂肪酸を豊富に含み、健康食品としても注目されています。

Ω3脂肪酸は、体内で生成できず、食事から摂取する必要がある必須脂肪酸の1種ですが、過剰摂取は血液をサラサラにしすぎ、胃の不快感や吐き気、下痢などの副作用を引き起こす可能性があるので摂取量には注意が必要です。