緑のお医者の徒然植物記

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2018/11/02

樹木の移植について No,20

樹木の移植


移植する際は、根鉢の乾燥を防ぐために、できるだけ風のない曇った日を選びます。

晴天に行う場合は、朝、夕の作業として、日中や風の強い日の移植は避けましょう。

同様の理由から原則として掘り取った樹木は、その日のうちに移植し終わるようにしましょう。


◆長年同じ場所に植えられていた樹木は、根が長く伸びていて、根元近くには、細根が発達していません。

このような樹木をいきなり移植すると、掘り取りに際して細根の大部分は切り取られてしまい、従って植え付け後に水分の吸収ができないために、枯れてしまうことが少なくありません。

★このような事が起きないよう、移植の数ヶ月から一年くらい前にあらかじめ根元近くで側根を切断して、そのまま再び埋め戻し、根元近くに多くの細根を新たに発生させる処置を行います。




◉移植によって樹木が枯死する主な原因は、掘り取る際に樹木の細根が著しく減少して水分や養分の吸収が困難になるにも関わらず、葉面から水分が蒸散し続けるために、植物体内の水分のバランスが保たれないという理由によります。


◉移植が容易な樹種

サツキやツツジ類のように根元近くに細根が多く発生する性質があるものは、移植をしても細根はあまり切られず、マサキなども細根が多く、根を切られてもすぐに再生するという性質をもっている。

〇若い苗木では、側根がまだ遠くまで伸びておらず従って、移植に際して切断される根が少なくてすみ、若木の活力も手伝って移植は一般に容易である。

◆水収支のバランスという点からは、水分の蒸散を抑制すればよいわけですから、例えば、移植時に枝葉を剪定して葉数を減らしたり、あるいは蒸散作用を抑制する。

★蒸散抑制剤を散布すらが、活着率を高める上で効果的です。

移植時に葉をほとんどむしり取ってしまうこともありますが、活着すればそれはすぐに再生します。

◉移植により相当弱った樹木でも、活着する見込みがある場合には、葉柄の根元に離層が形成されて樹木自ら古葉を落としてしまいます。

この状態を「とやする」という。


◆移植後、葉が枯れる場合でも、このように離層が形成されて、自然落葉するときには、活着する前兆と判断することができます。


◉樹種によっては「クスノキ」のようにある程度の太さに生長したものの方が、細い苗木の時よりもかえって移植が容易になることもあります。


これは樹幹内に水分を貯える性質があって幹が太いほど含有水分が多くなったり、あるいは、生長するにつれて移植に対する抵抗力が増大するためと考えられます。










2018/11/01

予防のために冬期に利用したい薬剤 No,19

冬期限定薬剤


マシン油乳剤

商品名=機械油乳剤

常緑樹30~45倍に薄めたもの     
落葉樹20~30倍に薄めたもの
薬害に注意


石炭硫黄合剤

商品名=トップジンM

常緑樹20~30倍に薄めたもの
落葉樹5~8倍に薄めたもの


◉薬害のでにくい12月から1月に散布。

ほかの時期にこれらの濃厚液を使うと薬害の原因になります。


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農薬取締法 No,399











紅葉(黄葉)のメカニズム No,18

紅葉(黄葉)のメカニズム




秋の楽しみのひとつは、落葉樹類の紅葉です。


紅や黄色、あるいはその中間などさまざまな色で、葉の生涯最後の華やかさを見せます。


◉紅葉の仕組み
秋から冬にかけて気温が下がり始めると、葉の活動が衰えてくる。

葉の柄の付け根の部分に「離層」と呼ばれるコルク層が形成されます。

これはエチレンやアブシジン酸の植物ホルモンが働いて、離層と呼ばれる組織ができる。

(アブシジン酸=ワタから取り出された植物ホルモン剤)

離層によって葉と茎(幹)の間で行われていた水や養分の流れが妨げられます。

このため、光合成によって作られた糖分は葉に蓄積され、アントシアニンという赤い色素が形成されます。

一方、葉を緑に見せていたクロロフィル(葉緑素)は分解されて減少していきます。

★酵素の働きにより科学反応を起こす。 

 
この過程で、樹種によって様々な色合いの紅葉になるわけです。

また、黄色系は、カロテノイドと呼ばれる黄色やだいだいなどの色素群に属している、キサントフィル系の色素によります。

この色素は、若い葉の頃から作られていますが、成長期はクロロフィルの緑色に隠れて見えません。

★黄葉する樹種の木の葉にはもともとクロロフィルと一緒に、カロテノイドという黄色の色素が含まれています。
(カロテノイド、カロチノイド)

◉アントシアニンによる紅葉
コミネカエデ、コハウチワカエデ、メグスリノキ

◉カロテノイドによる紅葉
ヒトツバカエデ、イチョウ、ケヤキ、コナラ、イタヤカエデ、チドリノキ、ミネカエデ

◆紅葉がきれいな主な樹種
ヤマモミジ、イロハカエデ、ウルシ、ナナカマド、カナメモチ


〇きれいに紅葉しない
日差しが強すぎると、日焼け(葉焼け)を起こし、葉の先端が灰褐色になりきれいに色づきません。

水不足で水切れを起こしても同様になります。


★梅雨明け後の強い日差しをさけ、鉢植えは西日の当たらない場所に移動する。

★庭植えは、西日の当たらない場所に植えるか、木の西側に常緑樹を植えて日除けにします。




◉暖地では、夜間の冷え込みによる温度差が十分でないと、色づかない場合があります。

関東以西では、ナナカマド、ケヤキ、ドウダンツツジなどが、寒地に比べてきれいに色づかない場合があります。

このような地方では、カエデ、モミジ類やイチョウ、ハナミズキなど、色づきのよいものを選ぶとよいでしょう。

◆養分が豊富な広い場所に植えられたものや、若木の場合は萌芽力が旺盛で秋になっても新芽が伸びて紅葉しにくくなります。

夏に枝先を切っても同様に新芽が伸び続け、紅葉しにくくなります。

成木になり、生長が落ち着くのを待つしかありません。

また、樹勢が強い場合は、肥料、灌水を控えめにします。









シクラメンの病原菌 No,17

シクラメンの病原菌


サクラソウ科シクラメン属   
原産地:地中海沿岸東部

★日光によく当て、暖房の効いた部屋に置かない。

極端な乾燥は避け、花柄をこまめに摘む。


◉軟腐(なんぷ)病の病原体、病徴、伝染経路


土中に生息する細菌が病原菌で、地際茎葉や根が軟化腐敗し、激しい悪臭を放つのが特徴。

主に、エルウィニア属のアロイデアェ種に犯される。

高温多湿で多発し、はじめ地際葉柄や花梗に凍傷を受けたように水浸状斑点を生じ、茶褐色に変色腐敗する。

上下に拡大して葉や球根に及び、発病が激しいと葉柄は次々と犯されて球根もベトベトに腐ります。


★この病原菌は手や刃物でも感染し、土壌中で長く生存して他種植物にも蔓延します。

発病土壌の消毒が必要です。

防除

予防には、鉢土の過湿を防ぐために支えるもので、鉢底と置き場に空間を設けて透水を計り、灌水過多を避けることが大切です。

この病原菌に有効な薬剤は、アグリマイシンやアグレプトなどストレプトマイシンが成分のもの1000倍液を時々灌注するだけで、他の殺菌剤は無効です。


シクラメンの灰色カビ病


軟腐病菌以外に多犯性の菌(カビ)で、胞子は通常その辺に浮遊しているので、植物が弱ったり傷があると、多汁な柔らかい組織に侵入して腐ります。

20℃ぐらいのやや低い温度で多湿の時に発病します。

湿っていると幹部に灰色のフワフワしたカビが生えて分生胞子を煙のように飛散します。

◉花柄を放置すると花弁から侵入して花梗(かこう)を経て球根を腐らせますから、花柄摘みが大切です。屋内の通気をよくします。

トップジンMやマンネブダイセンMなどがよく効く薬剤です、予防的に定期散布をします。


シクラメンの萎凋(いちょう)病


多犯性の土壌生息のカビが病原菌で、根の先端や傷口から侵入、花柄や球根の導管に繁殖して水分上昇を妨げます。

はじめ外側の葉が黄化してしおれ、やがて株全体が黄化萎凋して枯死します。

球根は軟化しませんが導管に沿って変色枯死します。

菌は25℃前後が最適繁殖温度です。

★予防のためにタチガレンやトップジンMを鉢土へ灌注します。

◉肥料

開花中の株には、水やり代わりに液体肥料を10日に一回程度。

規定量の緩効性化成肥料を月一回。

秋に月一回液体肥料(夏越しした株)チッ素は❌


◉水やりをはじめ、こまめに手入れする人は、乾きやすいテラコッタ鉢での栽培が向いています。

開花株を入手した時は、別の鉢に植え替えしないで、鉢カバーで雰囲気を変えて楽しむことをおすすめします。








どうして植物は病気になるの? No,16

病原菌は寄生者


病原菌は自分で栄養分を作り出すことができないので、他から摂取する必要があります。

病気の発生とは、菌が侵入し植物の栄養分をかすめ取っていることです。

ある菌が特定の植物に対してのみ寄生できたのは、長い進化の歴史の中で、菌が植物に侵入できるようなシステムを獲得した結果と言えます。

また、この菌が別の植物には病気を発生させることができないのは、菌の侵入を阻止しようとする植物の抵抗反応を打ち破ることができなかったからです。

菌と植物の間には、侵入とそれを感知するそれぞれの遺伝子レベルの関係があります。

植物は菌に侵入されない(病気にならない)ものが生き残ってきており、野生種が病気になりにくいのはこのためです。


品種改良と耐病性の低下


しかし、人類が美味しい野菜、果物などを作り出すために交配を繰り返すうちに、気付かずに病気に弱い遺伝子を組み込んでしまうこともあり、極めて病気に弱い品種が多くなっているのも事実です。

病害虫防除のために薬剤の散布が多く必要になっています。

当然ながら病害に強い「抵抗遺伝子」を組み込んだ品種も作られています。

菌が植物体へ侵入する仕組み


侵入できる菌は植物に異物であるという認識をされないような遺伝子を持っています。

菌は菌糸の先端に付いた付着器(侵入するための器官)から、植物細胞を貫通するための細胞壁分解酵素を出します。

その後、菌は植物が衰退するような毒素を作り、これを植物体へ注入します。

植物には斑点が出たり萎凋(いちょう)するなどの症状として現れます。

★ここで植物は急激に衰退し、菌が蔓延し、病気の発生という状態になります。

菌はこれらの毒素のほかに植物ホルモンを出して「こぶ」を作ることもあり、こぶ病やがんしゅ病を発生させます。


◉菌に対する植物の抵抗


植物組織の表面のワックスが最初の防御の砦になります。

これが打ち破られ菌が侵入すると、菌を認識した植物の遺伝子システムが動き出しフェノール性化合物、タンニンなどの抵抗性物質を出し、菌を撃退します。

◉植物はこのような防御反応で菌に対抗して病気にならないようにしているのです。



2018/10/31

楓、盆栽   No,15

カエデ


カエデ属は秋に紅葉する落葉中高木の総称。

種類が多く世界中に分布していますが、日本には25種類ほどが自生しているとされます。




◉鉢の中に置いた石に植え付ける「石つき」など、いろいろな樹形に仕立てることができます。

丈夫な性質で枝や幹の切り込みにもよく耐えるので、葉もの盆栽の中でも高い人気を得ています。

★カエデの中で盆栽として多く親しまれているのは、中国原産の唐カエデです。

また変種の宮様カエデ、別名台湾カエデも多用さらています。

◉設置場所

一年を通じて日当たりと風通しのよい場所に置きましょう。

冬の時期は、小枝が密生した成木は寒風の当たらない所に置いて保護します。

★水やり

水切れをさせないことが大切です。

表土が白く乾き始めたら十分に水を与えます。

春から秋にかけては多めに与え、晩秋から冬にかけては少し乾かし気味のほうが好ましいでしょう。

◆肥料

5月から10月頃(梅雨と真夏を除く)月一回ほど置き肥をしてやります。

◉剪定

幹や枝の剪定は、芽が色づく前の2月中旬~3月中旬が敵期です。

伸ばしたくない枝は、新しい芽が4枚くらい伸びたら芯芽を摘み取ります。

枝として活かしたい時は芽摘みをしないでそのまま伸ばし、伸びが止まったら1、2節を残して切り詰めます。

また、葉刈りで小枝を増やすこともできます。  

新芽が固まる6月頃、大きな葉をハサミで一枚ずつ葉柄から切り取ります。

残した葉が大きくなったら再び切り取るようにします。

カエデは芽吹きがよくので、芽摘みや葉刈りを行った後、枝元や枝分かれ部分に多くの芽をつけます。

不要なものは見つけしだい、指先かピンセットで下かき取っておきます。

カエデは成長期を通じて芽が伸びるので、芽摘みは樹形の維持に欠かせない作業となります。

4月下旬頃から芽吹きが終わるまで、随時芽摘みを行います。

芽摘みによって枝の間延びを防ぎ、枝分かれを柔らかくすることができます。

同じ木でも樹芯や枝先の芽は大きくなりがちで、下枝やふところ枝は小さくなります。

◉植え替え、植え付け

2月中旬~3月中旬が植え替えに敵しています。

他の雑木類より時期が早い点に注意しましょう。




★カエデの樹形は石つきが一般的なので、大きくなるにしたがって植え替えが必要になってきます。

特にカエデは根の生育が旺盛なので、鉢の中で根が詰まると水切れを引き起こしてしまいます。

また、根が横にはり板状になった盤根を作ることも多く、その場合は特に植え替えが重要になってきます。

1~3年に一回、芽が赤褐色に膨らんでくる頃に植え替えを行います。

盤根をめざすなら、毎年一回行いましょう。

葉刈りをするものは、葉刈り直後に植え替えしてもかまいません。

鉢中に根がいっぱいに詰まったものは、根の低部を先に切り取ってから、まわりの古い用土を三分の二ほど箸などを使って取り除きます。


その後、根も同じく三分の二くらいでハサミで切り落とします。

ハサミはよく切れるものを使いましょう。

根の切り口が鋭利なほど新しい根の発生が促進される。

特に盤根づくりの場合は直根や下に向かう根を切り詰め、横根の生育を促します。

◆石つき盆栽は石の重量が加わるので他の種類よりも植え替え作業は面倒です。

石にからんだ根を傷つけないよう、慎重に作業します。

植え替え後は、日当たりがよく風を避けられる屋外の棚などで管理します。

◉病害虫

発生しやすい病気はうどん粉病。

病気が発生したら早い時期に薬剤の散布を行い、白く粉を吹いたようになった葉は切り落として処分します。

病気の予防として、冬季に石灰硫黄合剤の20~30倍液を散布するのが有効です。