緑のお医者の徒然植物記

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2021/02/16

間違えやすい猛毒草と山菜 ⑷ No,377

猛毒草と山菜⑴~⑷まとめ

 セリを食べたらお腹をこわしたという話を、毎年聞く事がありますが、これはセリの群生に混じっている、「キツネノボタン」類を誤食したと考えられます。


             (毒草、キツネノボタン)
✻セリと混生している事が多い。
茎に柔らかな白髪をたくさん生やし、無臭。花は黄色。


                  (山菜、セリの葉と花)
✺セリの新芽は茎の毛がなくツルっとしていて、独特の芳香がある。
花は白色。

キツネノボタン類は、プロトアネモニンなどの刺激物質を持ち、粘膜に激しい炎症を起こします。

被害の実態がつかめない隠れた有名毒草です。

身近な雑草にも有毒種が多数ありますが、ガーデニングで利用される園芸種や野菜類でも、中毒事故が多発しています。

植物を知っているから安全とも言えない事実が多く、それとコレを間違えるのかと、驚くような内容です。 

自然のものは身体に良いと言う様な、風潮も中毒事故を助長していると言えるでしょう。

植栽計画を進める時は、混同をきたす毒草は勧めるべきではないと思います。

もし利用する時は、配置や名札などの目印をするなどの管理が必要です。

トリカブトの根や地上部に含まれる猛毒成分は、植物界最強と言われ微量でもヒトを死に至らせます。


                            (トリカブト)


しかし、猛毒とされる植物には別の用途があります。

あらゆる薬効として知られ、極めて重要な製薬原料として利用されています。

そう言っても、特殊な減毒加工が必要であり、家庭では使えないのも当然です。


                 (トリカブトの塊根)
✻トリカブトの塊根(かいこん)を干した物を附子(ぶし)といい、猛毒があるが漢方薬として使われる。


ハシリドコロは人が大量に摂取すると、中枢を麻痺させ、瞳孔の散大や激しい腹痛を経て、✭狂騒、麻痺、痙攣(けいれん)心臓麻痺に至ります。
✭狂騒(きょうそう)
理性を失ったさわぎ


                   (ハシリドコロの根茎)

一方で、イモのように太った根は重要な生薬で、胃腸に生じる多様な異常を調整したり、痛みを取り除く作用があるため、胃腸薬や鎮痛薬で活躍しています。

                             (ハシリドコロ)


例えば、生き物として猛毒草を見た場合、興味深い事が分かります。

ハシリドコロの猛毒なのは根だと言われていますが、春先の場合、多くのアルカロイドが蓄積されているのは、根より地上部の方です。

トリカブトの猛毒アコニチン含有量は、晩春がピークで秋がその半分と言うように、季節によってまるで違うのです。

しかし変わらない成分もあります。

研究の結果から見えてくるのは、同じ環境で育っても成分の含有量に著しい個体差があるという事と、栽培するとこの差は一層すごくなると言う事です。

また、見た目は大きく育っても、有効成分は減少しがちなのである。

漢方薬の原料の多くは輸入に頼り、その大半が中国産です。


日本国内での栽培法の確立は急務であるが、思い通りにならないのが植物です。

やんちゃな植物たちにてんてこ舞いなり。

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2021/02/15

間違えやすい猛毒草と山菜 ⑶ No,376

 スイセン ヒガンバナ科

観賞用に栽培される多年草で、園芸種も多数ありますが、野生化したものもあり、日当たりの良い所に自生します。


                      (猛毒草、スイセン)

「ノビル」の✫鱗茎と間違えたり、「ニラ」の葉と間違えて誤食する事がある。

✫鱗茎=りんけい
地下茎の一種で、ユリ根、タマネギのように、養分を蓄えて厚くなった葉が茎の周りに多数重なって球状になったもので、球根とも言う。


                           (食用ニラの葉)
✻葉はスイセンとそっくりだが、強烈なニラの臭いがあるので判別が付く。



    左がニラの鱗茎、右がスイセンの鱗茎


                      (食用ノビルの葉)
✺葉が丸っこく、断面が三日月形。
ちぎるとネギのような芳香がする。


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誤食した場合、おう吐、胃腸炎、下痢、頭痛などの中毒症状が出る。

食べてお腹をこわすぐらいならいいのですが、救急搬送される程苦しむので要注意である。


全草が有毒で、特に球根に毒成分が多く、リコリン、タゼチンなどのアルカロイド類の毒成分が含まれ、致死量は10gとされる。







2021/02/14

間違えやすい猛毒草と山菜 ⑵ No,375

 ハシリドコロ ナス科

別名=キチガイイモ、キチガイナスビ、オニヒルグサヤ

北海道を除く各地の山間の湿地、谷間、薄暗い林内などに自生する。

草丈30〜60cm程度の日本固有種の多年草で、草は長円形で先が尖っています。


       (猛毒草、ハシリドコロの花)


春、紅紫色の鐘の形をした花が下向きに咲きます。

ハシリドコロの若芽が、フキノトウやオオバギボウシなどの山菜と間違えられたり、葉が展開した姿が美味しそうな山菜に思われ、お浸しで食べられてしまう猛毒草です。


              (猛毒草、ハシリドコロ)
✻暗い赤紫色で強い光沢を帯びる。若芽の奥に花穂はない。


中毒を起こすと、ひどい苦痛に襲われ、幻覚を生じて走り回ることから、その名がついたと言われる。

致死量を摂取することは少ないようですが、発症するともんどり打って苦しむので用心しなければいけません。

ハシリドコロに触った手で目をこすると、瞳孔が開き眩しく感じられる。

全草が有毒で根茎と根が特に毒性が強い。

ヒョスチアミン、アトロピン、スコポラミンなどのアルカロイド類の毒成分がある。

中毒症状は、おう吐、下痢、血便、瞳孔散大、めまい、幻覚、異常興奮などを起こし、最悪の場合には死に至る。

これは、同じナス科の「ベラドンナ」などと同様の症状である。

また、薬品として利用され、目薬や胃腸薬の成分として用いられている。


(    (猛毒草、フクジュソウの若芽)
✭暗い赤紫色で強い光沢を帯びる。
若芽の奥には幼い葉が詰まっている。


フクジュソウもフキノトウによく似ていますが、フクジュソウは全草に強心配糖体を含んでおり、心臓の働きや神経系に強い悪影響を与えます。

特に、お年寄りや子どもが居る家庭では、フキと一緒に植えない方がよいでしょう。



                       (山菜、フキノトウ)
✻美味しい山菜
植物名はフキ。

つぼみが春の味覚として有名で、皮をめくるとつぼみが顔を出すので、識別に悩んだ時は皮をめくる。

フキノトウの苦味主成分「ペタシン」がガン転移、増殖を強く抑制する効果があることが、岐阜大学の研究によって発見された。

「ペタシン」はフキ属に見られる天然の化合物で、化学的にはアンゲリカ酸のペタソールエステルで、セスキテルペンに分類される。


「ペタシン」は、★ETCCI阻害と言う方法での抗がん剤への実用化自体は元から存在していたが、通常細胞の代謝も阻害し、副作用が強く出るため実用的とされていなかった。

だが、「ペタシン」は選択的にガン細胞を阻害するため、通常細胞への影響は少なく、ガン細胞には強い阻害作用を発揮する。


★ETCCI阻害
ミトコンドリア(細胞小器官)の呼吸鎖複合体i(電子伝達系)への阻害のこと。


抗がん剤は、悪性腫瘍の増殖を抑えることを目的とした薬剤で、効果が有りそうなものをごちゃ混ぜにしてると言うのが、抗がん剤であるだろう。


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2021/02/13

間違えやすい猛毒草と山菜 ⑴ No,374

 バイケイソウ ユリ科多年草

シュロソウ属

草丈60〜150cmにもなる多年草で、初夏に緑白色の臭気のある花を咲かせます。


              (猛毒草、バイケイソウ)
✻ギボウシに葉姿がよく似ている。
葉脈が隆起し、全ての脈が葉の付け根から並行して走る。


やや小型の仲間に「コバイケイソウ」がありますが、同じく有毒植物です。


           (猛毒草、コバイケイソウ)

❆バイケイソウと見分け方は同じ。
草丈50〜100cmでバイケイソウより小ぶり。

深山、高山の湿地に自生し、若葉が山菜として食用にされる、オオバギボウシ(ウルイ)やギョウジャニンニクなどの若芽と類似するため、誤食する事がある。

誤食すると、おう吐、下痢、血圧降下、けいれんなどの症状がでる。

全草が有毒でプロトベラトリン、ジェルビン、ベラトラミなどのアルカロイド類の毒成分がある。


               (山菜、オオバギボウシ)
✻美味しい山菜
葉の中心に太い主脈が通っていて、他の脈はそこから派生して伸びている。


          (山菜、ギョウジャニンニク)

❆美味しい山菜
強烈なニンニクの風味が特徴。
スズラン(有毒)とも間違えられる。

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モミジガサ 山菜 No,373

 モミジガサ キク科

コウモリソウ属 (紅葉笠)
別名=シドケ、キノシタ、シトギ
モミジソウ

春、茎が20〜30cmに伸び、茎先の葉が展開しないものは、山菜として食用される。

日本の山野には数多くの山菜が生育しているが、その中で「山菜の女王」と言われる「モミジガサ」がある。


                                (モミジガサ)


春先の若芽の味わいは、フキノトウ、セリ、ヨモギなど、いくつもの山菜の旨味をいっぺんに楽しめると言う、不思議で優れた山菜。

有名なわりに、食べる習慣がない地域も多く、身近に群生地が隠れていたりする。

葉の形がモミジを思わせ、傘のように開くのでその名があります。

キノシタと言う別名も木立の下、渓流沿いの斜面など、湿った場所を好む性質に由来します。


山菜として楽しむなら、歯ごたえを残すように軽く塩ゆでし、ワサビしょう油、酢味噌などでシンプルに食べたり、磯巻きで風情を味わったりと言うのがおすすめの様です。






2021/02/12

ヤマトリカブト No,372

 ヤマトリカブト 猛毒草

世界的にも類を見ない猛毒草、ヒト経口致死量の推定値は1~2mg
(LD=50値、50%が死亡すると推定される値)

mgは1gの千分の1で摂食すると、猛毒の成分は速やかに血へと浸透し、体内を駆け巡るため、解毒は困難である。

花の姿は有名であるが、若芽を実際に見たことがある人は、なかなかいない。

長年山地の集落に住んでいる人でも、間違えるほど形態の違いは微妙である。


               (ヤマトリカブトの花)

花期は9月から11月

1992年、岩手県でトリカブトを訪花したと思われる、ハチの蜜で中毒事故が起きた事例がある。

トリカブトは深山に育つとは限らず、地域によっては低山や丘陵周辺に生育します。

園芸店で販売されている改良品種も、依然高い毒性があるので注意が必要である。

識別法のひとつに「毛」があります。

主なトリカブト類は、茎に毛がなく、ツルっとして触るとヌメリのような感触があり、葉にも微細な毛以外は殆ど見られません。

他の類似した山菜は、柔らかなうぶ毛や長毛が目立ちますが、どれくらいに毛が生えているのかなど、実際に見てみないと分からないものです。

日本産のトリカブトは約30種と22変種が知られていて、地域や生育環境で微妙な違いが出るため、肉眼での判定はほぼ無理です。


                    (トリカブトの若芽)

研究者の中には、一般図鑑やハンドブックに書かれた識別法について、警鐘を鳴らしています。

特に「ニリンソウ」や「モミジガサ」などはよく似ているので、見分けが難しいため、誤って食べてしまう事故が絶えません。


                     (ニリンソウの花)

✭花の似た有毒植物のイチリンシウ、サンリンソウもあるので要注。


花が見分けるポイントでもあるので、花のない時期に絶対採ってはいけないと、識別法に書くべきです。

写真で見るとまるで違うが、同じ場所に混生すると厄介です。

その様な場所での山菜採りは避けることです。


✺毒性が強いとされるエゾトリカブト

関東にもヤマトリカブトなどが咲きますが、北海道に自生する「エゾトリカブト」の毒性が最も際立ちます。


                 (エゾトリカブトの花)


全草が猛毒であるが、特に根に毒が多く含まれ、この地に住んでいたアイヌ民族は、これを矢の毒に利用してヒグマを捕らえ、生態系の頂点に君臨して来たのだと言う。

戦乱の時代には盛んに用いられ、矢毒や毒殺にも使用された猛毒である。

日本三大毒草であるドクウツギ、ドクゼリ、そしてトリカブトは食用になる野山の山菜によく似ているのです。