ウンシュウミカン ミカン科
温州蜜柑
柑橘類は亜熱帯、熱帯に広く分布する植物で、世界中の栽培果実の中で、ブドウに次いで多く生産されています。
ウンシュウミカンは日本が原産の柑橘類で、ミカンの代表種になっている。
日本でウンシュウミカンの原種が発見されたのは約300年前。
温州には同種がなく、鹿児島県下の一地方が原産地で、偶然にできたものが最初と言われています。
ミカン類の中でも、庭植えで年内に収穫できる最も早熟な種類です。
★単為結果するため種子がなく、皮が剥きやすく食べやすいことから、人気があり国内生産のミカンの80%を占めています。
★単為結果(たんいけっか)=単為結実ともいう。
植物において、受精なしで果実が生じること。
種子を形成しないまま子房だけが発達し、無種子の果実を形成する事。このようにしてできた果実は通常無核果である。
自然界でもバナナ、パイナップルなどは単為結果し種子のない実をつけることがある。
また、原種に近いものほど種子がみられ、その種子が大きいものが多いと言う特徴がある。
柑橘類の中では寒さに強い方だが、美味しい実を採るには南関東より西の太平洋側の海沿いで、冬期に季節風の避けられる場所、日当たりと排水の良い場合が適しています。
耐寒性のある方ですが、冬場に寒風が当たるような場所では、やはり寒害が出ます。
冬の防寒と霜除けが必要です。
-5℃以下になると枯れる心配があります。
※逆に冬の温度が高すぎると果実の色が悪くなります。
◉代表品種
10月に熟す、早生(わせ)ウンシュウミカンは木が小柄で結実期が早く、風害や寒害を受けにくいので庭植え向きです。
収穫後の長期保存には不向きです。
宮川早生、興津早生
11月に熟す(普通温州)甘味や酸味が強く、風味の良いミカンで保存もできます。
春先まで出回っているのはほとんどが普通ウンシュウミカンです。
大津四号、土橋紅温州
◆肥料
ミカン類は常緑樹で一年中肥料を吸収しているので、肥料切れにならないように注意する事が必要です。
庭植えは、3月に根回りに溝を掘り、堆肥に油粕、鶏ふん、骨粉を混ぜ、化成肥料を加えたものを埋め込みます。(配合肥料)
6月と10月末~11月上旬に3月の半量ぐらいを目安に油粕、鶏ふん、骨粉と少量の化成肥料を加えたものを施します。
※ミカン類は主として、有機質肥料を多めに与えると味の良い実が採れます。
収穫の1ヶ月前に油粕、化成肥料を与えます。
成木の場合で油粕2~3㎏ 鶏ふん1~2㎏ 化成肥料500㌘以内とします。
◉鉢植えは、植え付けから1ヶ月後に玉肥を4個置き肥し、2年目の3月には5~6個に玉肥を増やします。
鉢植えの場合は、水やりも大切になります。
生育期の7月~8月には1日3回必要になることもあります。
日中には葉水を与えます。
◉剪定
花芽は結果母枝の先端につきます。
★結果母枝(けっかぼし)又は種枝と言う。
花芽があってもその枝には、花をつけずにその花芽から次の枝を伸ばして花を咲かせ、結実する枝のことです。
ウンシュウミカンの果実のつき方は、前年枝の先端から今年の春に伸びた新梢に花が咲き果実をつけます。
5月頃に花が咲きますが、受粉しなくても結果する(単為結果)ので人工受粉の必要はありません。
その為の、結果部位の切り方は結果部位が外側に多くなっている場合は、切り返しを行って、側枝を更新し立枝が多い場合は、強い立枝を間引いて下枝に日(光)が当たるようにします。
★側枝の更新の方法として
①樹勢が弱く、結果部位が外側に多くなっている場合は、切り返しを行って樹勢を強くして側枝の更新を行います。
②樹勢が強く立枝が多い場合は、強い立枝を間引いて樹勢を落ち着かせ、下枝に日光が当たるようにします。
短枝に花芽がつくので、徒長枝(とちょうし)や内部の細い枝を切り、基本的には果実に日光が当たるようにします。
夏や秋に伸びた芽はすぐに切り取ります。
果実を着けた枝を中心に切り返すと、内部まで光が良く入り結果母枝となる新梢の発生が良くなります。
この切り返した部分の枝を予備枝と言います。
剪定の対象は予備枝で、果実を着けた枝を中心に切除しますが、枝が混んでいる部分は、結果母枝も切除します。
樹形がある程度出来たら、切り詰め剪定よりも間引き剪定を主に行います。
混み入ってきた時は、主枝を根元から切り、新しい主枝に更新します。
ミカン類は常緑樹なので、剪定すれば時期に関係なく必ず葉を切り落とすことになります。
葉を切ればそれだけ栄養分を消失し、樹木を弱らせることになるので生長も遅くなります。
内部への日当たりを良くし、樹高を止めて管理しやすくするための剪定は必要ですが、できるだけ軽くなるなるようにする事が大切です。
鉢植えでは、幼木は夏枝で樹形を作り、結実するようになると夏枝は切除して、春枝中心の鉢に仕上げ間引き剪定で樹形を保ちます。
鉢植えの樹高は、鉢の高さの約3倍を目安にすると良いでしょう。
◉果実管理
ミカン栽培では、表年、裏年と呼ばれている、隔年結果があります。(1年おきに結実すること)
これを防止して、大きくて良い果実にするためには、摘果が必要になります。
7月中旬に1回目の摘果を行い、8月中旬に2回目の仕上げ摘果を行って1枝に1果実残すようにします。
ただし、早生ウンシュウミカンで表年当たり、着果が極端に多い時は、1回目の摘果時期を6月下旬~7月上旬に早めないと、栄養不足から樹勢が弱まり、良い結実が望めなくなります。
又、ウンシュウミカンには直花(じきばな)が咲きます。
結実母枝から発生した結果枝は、極端に短く花芽だけがつく葉芽のない枝で、花だけが咲きます。
このように葉を持たない花が直花です。結果したものを直花果と言います。
良い果実を得るためには、葉からの養分も必要なので、これらの葉の無い直花果は全て摘果します。
残す果実数の目安は、早生ウンシュウで葉40~50枚に対し1果。
普通ウンシュウでは葉20~25枚に対し1果が適当とされています。
樹形作りをしている期間は、伸ばす枝に着果したときは摘果し、枝がよく伸びるようにします。
強く日が当たる位置に着果しているものは、果皮が日焼けを起こします。
枝先などに着果し、日焼けを起こしそうなものだけでも、摘果後に袋をかけておくとよいでしょう。
庭植え、鉢植えのどちらも3年目から開花結実させることができますが、ある程度樹形が出来上がるまでは、あまり結実させない方がよいでしょう。
収穫は、早いものでは10月頃からできますが、年内には収穫を終えるようにします。
1~2ヶ月貯蔵すると酸味が減り、美味しくなります。
◆代表的な病気
①ソウカ病
病原体はカビです。
新葉や新梢(しんしょう)新芽などの柔らかいところに5月から9月頃に発生します。
このカビは生命力が強いので、一度このかびが寄生すると毎年発生を繰り返すことがあります。
感染経路は、ほとんどが雨のしぶきなどによって感染する水媒感染か、病菌が虫に付着して感染する虫媒感染です。
葉に発生した時の症状の進み方としては、はじめに円形の小斑点が生じ、やがて病斑は灰褐色になり、盛り上がってきます。
病気が進行すると病斑が破れて、葉に穴があいたり変形します。
しかし葉が枯れてしまうことはありません。
病気になった葉はその枝ごと取り除き処分します。
それでも発生を繰り返すのであれば、4月頃に銅水和剤(ボルドー)等を散布しましょう。
水媒感染をするので、病葉に直接水をかけないように注意しましょう。7月~8月頃にダイセン、ダイファー、ベンレート等を散布し予防する。
②カイヨウ病
病原体はバクテリアです。カイヨウ(潰瘍)とは表皮の一部が剥がれることです。
バクテリアは、枝などに潜伏して冬を越し、翌年春に発病します。
感染経路は、空気感染や水媒感染で、病菌は新梢部や花芽、または傷口などから感染し植物体内で潜伏します。
葉、茎、花弁などに発生し、はじめに病斑ができます。
病斑の色は発生する植物によって様々です。
被害部に裂け目を生じて、カイヨウ症状を示し、被害部は枯死する。発生期間は4月~7月
病気の株はすぐに抜き取り処分しましょう。
病気が発生したら、付近の土を入れ替えましょう。
高温多湿を好むので、剪定などして風通しをよくする。
※バクテリアによる病気は治療が困難です、予防に努め発生を防ぐことです。
③灰そ病
病原体はカビで、寄生する植物によっても多くの種類がある。
葉、枝、果実に発生し、特に葉に斑点を作る代表的な病気とされています。
この病気の特徴は、樹勢が強いと発病しないで菌は体内に潜伏し、樹勢が弱まったり、日焼けを受けたりすると発病し、病斑を作ることです。
感染経路は、降雨後などに鮭肉色(けいにくしょく)の粘液(胞子粘塊=ほうしねんかい)が虫、風、雨滴などに運ばれて感染します。
葉の症状は、はじめに暗黒色の円形の病斑が現れ、病状が進むと灰白色となり病斑に小さな黒い粒を生じます。
この黒い粒から粘液を出します。梅雨の6月~7月、秋の長雨が続く9月~10月に多発します。
病気にかかった葉や枝は見つけしだい処分しましょう。
発生の多い6月~7月、9月~10月には月に1回~2回の割合でダイセン、マンネブダイセン、ベンレートなどを散布しましょう。
樹勢を弱めると発病するので、寒害、日焼けなどに気をつけて、樹勢を強く保つようにしましょう。
また、風通しが悪いと病気になりやすいので、剪定をして風通しをよくすることも重要です。
◆代表的な害虫
①アゲハチョウ
幼虫が葉を食害します。
ミカン類や山椒を好み、幼虫も大型で食欲旺盛
初夏から数回発生する。
見つけしだい、補殺する。スミチオン1000倍液、除虫菊乳剤を月に2回ぐらい散布
②ミカンハモグリガ(エカキムシ)
若い葉肉内部に潜って棲むウジムシ状の小さな虫で、食害した葉に絵を描いたような跡が残る。
スミチオンやオルトラン水和剤1000倍液を散布する。
③カイガラムシ
貝のような殻をかぶっている。
樹木の枝などに群棲付着し、樹液を吸汁する。
種類も多く様々な形態をしている。
吸汁することで樹勢を弱らせ、排泄物によりスス病を併発し、枝葉をススを被せたように真っ黒にする。
幼虫の時期であれば、殻がまだ出来上がっていないので、スミチオンなどの散布が効果的ですが、成虫になると薬剤は浸透しにくいため、効果があまりないので補殺します。
また、冬場ならマシン油乳剤が使えますから、成虫でも駆除できます。なお、冬期限定使用の薬剤の為、それ以外の使用では薬害が発生するので注意。
カイガラムシは、風通しが悪く、日当たりの悪いところを好むので、普段から適度に枝の手入れをして風通しをよくしてやると発生が減ります。
◉コナジラミ
白い小さな虫で葉の裏一面に集り、卵がどんどん羽化してスス病を併発する。
成虫は体長1ミリほどで、色は白く羽が白い粉で覆われています。
幼虫が最初に発生する5月下旬から6月上旬頃に、薬剤を散布します。
スプラサイド1000倍液や、アクテリック乳剤1000倍液などの、定期的な散布で虫類の退治をすると同時に、スス病も発生しなくなります。
白い虫が飛び立つのが目印になります。
6、8、10月はコナジラミの発生時期なので注意しましょう。
◆ミカンハダニ
乾燥した天候が続くとよく発生します。
ハダニ類は植物寄生性のダニの1種です。
大きさは0.3ミリ前後で肉眼では、よく見えません。
葉や花などに群棲します。
葉に寄生すると白い小さな斑点ができ、葉が巻いたり成育が悪くなります。
花の場合も色が悪くなり、花の成育が悪くなって早く萎れてしまいます。
ハダニの被害が確認できたら、専用の殺ダニ剤を葉の裏中心に散布します。
ハダニは、強い雨などに弱いので、時々ホースで葉に水をかけてやると、発生を抑えることができます。
ケルセン2000倍液で月に2回ぐらい散布すると効果的です。
※症状だけでは病気と区別できません。
ルーペで葉の裏などを見て、ハダニの被害を判別することが必要です。
★柑橘類は本来、暖地性なので寒害には、十分注意する必要があります。
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