緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2020/10/15

ジャノメエリカ No.304

 ジャノメエリカ ツツジ科

常緑低木

別名=ヒース 原産地=南アフリカ
ヨーロッパ

「エリカの花散るとき」昭和38年に西田佐知子のヒット曲で、日本人にも広く知られるようになった、エリカは冬から春にかけて小さな花を小枝いっぱいにつける。

日本ではエリカ属で一番普及している。

品種によって明るく、桃、紫、白、黄、橙、緑など様々な花色があります。

また花の形も筒状や盃状、鐘状、壺状と多彩です。

品種では、スズランエリカやクリスマスパレード、カナリーヒースなどがよく知られ、いずれも鉢植えに適しています。

高さは2㍍にもなり、よく分枝して小枝の先端に3個ずつ花をつけるのが特徴です。

株全体では、かなりの花数となり冬期に寂しくなりがちな、庭を鮮やかに彩ってくれます。

花は小さな鐘形で明るいピンク色をしており、中心部には黒い★葯が見られます。

★葯とは
雄しべの先の花粉が入った袋、花粉を作る袋状の器官のこと

「ジャノメエリカ」と言う和名は、この花から黒い葯が蛇の目の様に覗くところから、名付けられたものです。





◉生育管理、環境
ヨーロッパや南アメリカの日当たりの良い、荒れ地に自生する植物で、英国では湖水地方より北方の大地でよく見かけます。


それぞれの原産地では、夏は乾季で雨が少なく、冬は寒さもそれほど厳しくない湿潤な気候です。


夏は高温多湿で冬は乾燥が続く日本で、生育させるのは簡単な事ではありません。

比較的耐寒性のある品種ですが、日陰や湿地、極端に寒い所を嫌います。

冬の寒風にさらされない、日当たりの良い場所を選んで植える必要がある事から、植え付け場所も限られます。

また、乾燥にも弱く根は細根で浅根性なので、水を切らさないように管理しなければなりません。

一端水が切れてしまうと、枝先が曲がったり葉が一斉に落ちてしまいます。

この様になると回復が望めない事になるので、要注意です。

夏の暑さには強いものの、多湿を嫌うので特別にデリケートな植物と言えるでしょう。

◉せん定
基本的には自然な樹形で育てますが、数本の主幹を作って枝数を決め他の枝は整理します。

花後の3月がせん定の適期です。

葉の付いている部分であればどこを切ってもよく、枝の分岐点のすぐ上で切るようにします。

葉がない状態の所で切ると枯れることがあります。

枯れ枝や込み合った枝は、根元から切り取り除きます。

花柄は自然に落ちる事がないので、この時に一緒に取り除いて置きましょう。

また、植えてしばらく経つと花つきが悪くなったり、下の葉がなくなったりします。

この様な枝は地際から5~10㎝ほど残した位置で、すべて切り取り株を更新する事です。


◆殖やし方
株分けは3月から4月中旬と10月から11月中旬に行います。

挿し木は4月中旬から6月
さし床は浅鉢などを利用し、パーミキュライトの用土に水あげしたさし穂を挿します。

受け皿に水を張った中に鉢を入れ、底面給水しながら明るい半日陰で、管理すると1ヶ月程で発根します。

発根後は、ビニールポットに仮植えし、1~2ヶ月後に定植します。

日当たりの良い場所が植え付けに適していますが、真夏は直射日光を避けて、風通しの良い半日陰で育てます。

◉肥料
3月に緩効性の化学肥料を施します。

◆病害虫
春から秋にかけて、ツツジグンバイムシが発生することがあります。

この虫は、湿気を嫌うので水をかけて吹き飛ばすか、マラソン乳剤、スミチオン乳剤を虫に直接散布して駆除します。









2020/10/14

シェフレラ 「盆栽」 No.303 

 シェフレラ盆栽

シェフレラは、葉の形がパンヤ科のカポックに似ていることから、カポック、ホンコンカポック(ホンコン)などとして親しまれています。

実は別種でウゴキ科フカノキ属の園芸品種で、昔から観葉植物として親しまれてきました。

原産地は中国南部で「ヤドリフカノキ」とも呼ばれています。

枝変わりや実生の違いで多くの品種があり、小葉が丸みを帯びる濃緑色の「ホンコン」や、これに黄色の斑が入る「レナタ·ヴァリエガタ」などが代表的です。

高さは3~7㍍になり、よく分枝して気根を出します。

挿し木で殖やすことが出来るので、ミニ盆栽に仕立てやすいのも特徴です。

◉仕立て方
プラスチック製の鉢などで挿し木して殖やします。

鉢に植え替える場合は、枝を整理して双幹に仕立てます。

切り戻して、側枝を出させるか、あるいは何株かまとめて、植えると全体的にボリュームが出て、見栄え良く仕上がります。


◆置場所
観葉植物としてはかなり丈夫な部類なので、日陰にも置けますがもともと強い光線を好むので、通常は戸外の日当たりのよい場所に置くのが無難です。

室内の場合は、直射日光を十分に当たる窓越しがよいでしょう。

冬は霜が降りる前に暖かな室内に置くようにしましょう。

◉水やり
春から秋にかけて鉢土の表面が乾いた時点で水やりをします。

水分が蒸発しやすい夏は、こまめに鉢を観察するようにし、毎日欠かさず水やりします。

冬は土の表面が乾いているくらいが調度良いでしょう。

水やりをしっかり行っているのに、葉に元気がない場合は、根詰まりを起こしている可能性があります

鉢土の上に根が這っているか調べ、必要なら植え替えを行います。

★肥料
春から秋にかけて緩効性化成肥料を2ヶ月に1度の割合で与えます。

◉せん定
基本的に伸び過ぎた枝は、どこで切り詰めてもそこから芽が伸びてきます。

シェフレラは光線不足になると、枝が曲がってくるので切り戻しを行って整姿します。

切り戻しは芽の出ている部分の上で切るようにします。


せん定後に出てくる枝もまっすぐ伸びず、斜め上に伸びる性質があるので、ある程度伸びた所で取り除く必要があります。

胴吹き芽がよく伸びる性質があるので、不要なものは早めに切り、樹形に必要になるような胴吹き芽は生かして、枝にするとよいでしょう。

シェフレラは常緑なので、せん定は春から生長期が適期です。


◉植え替え
鉢土の表面に根が見え始めたら植え替えます。

2~3年に1度のペースで、気温が安定して暖かくなってから行います。

適期は5月から9月頃までです。 

葉が枯れ気味になり、落葉するようになった場合は、根詰まりを起こしているので、このような場合も植え替えます。

植え替え後は、日当たりの良い所に置き、夏は半日陰、秋は十分に日か当たる場所に置きます。

★病害虫
新しい葉が伸びる頃、アブラムシが発生することがあります。

よく観察して、見つけ次第スミチオン乳剤を散布して駆除しましょう。

乾燥した室内では、カイガラムシが発生する事があるので、スプラサイド乳剤などで早い時期から防除するようにしましょう。






2020/10/12

チャノキ「 茶之木」No,302

 チャノキ    ツバキ科    常緑広葉中低木

原産地=中国南西部

平安時代末期、宋、(そう、宗)の国「現、河南省」に渡っていた、日本臨済宗の開祖で千光国師とも言われる、栄西禅師が帰国の際にチャノキの種を持ち帰り、蒔いたのが日本伝来の最初と言われている。

栄西(えいさい)は「茶は養生の仙薬なり」の一説で始まる「喫茶養生記」を承元5年(1211)に著した。

この書物は上下二巻からなり、茶の薬効、栽培敵地、製法まで細かく記されています。

お茶の効能について記した最古の記述は、鎌倉時代の記録書として有名な「吾妻鏡」である。

栄西禅師は緑茶の効用を説くなど広く茶の普及に尽力しました。

その後、栽培されたチャノキが野生化し、関東以南の日本各地に分布するようになりました。

一部にチャノキは日本の九州地方が、原産であると言う説がありますが、「茶」と言う呼び方は中国の「チャー」に由来しており、日本独自の名前と思われるものが存在しないことから、中国原産説が有力です。

ツバキ属の仲間で、ツバキの花に似た5弁の白色花を葉腋に沿って10月から11月に咲かせます。

ツバキの花には花柄がなく、チャノキの花には花柄が有るので見分けがつきます。

茶の材料となる若葉同様、花も芳香を持っています。

扁円形をした直径2㎝程の果実は、翌年の秋に熟し表皮が裂けて、中から三角形の3つの種子(そう果)が顔を覗かせます。

葉は肉厚で光沢があり、先端が尖って細かな鋸葉があります。

カテキンなどの成分を含む緑茶は、健康食品として注目されていますが、元来疲労回復や利尿、健胃薬として用いられていました。

尚、緑茶、紅茶、烏龍茶はいずれも同じチャノキの葉を原料としています。

摘んだ葉をそのまま蒸し、緑を残したものが緑茶、半発酵させたものが烏龍茶、健全に発酵させたものが紅茶です。

緑茶、烏龍茶は中国産の小型種、紅茶はインド産の大型が主に使われています。

茶畑などで見かけるチャノキは、緑茶を取るために栽培されているので、切り詰めて低木に仕立てられていますが、放任すると樹高が7~8㍍に達します。

萌芽力が強く、大気汚染などに強いことから、庭木、公園樹や街路樹の下木などの環境緑化樹としても利用されています。


            (チャノキ) 


◉生育環境
日当たり、水はけがよく腐植質に富んだ肥沃な場所を好みます。

暖地性の植物ですが耐寒性は比較的強く、東北地方でも栽培可能な品種も開発されています。

丈夫でとても育てやすい樹種ですが、多くの花を楽しむためには、十分な日照が必要です。

◉植え付け、移植
チャノキは深根性で根を傷めやすいので、成木の移植は困難です。

苗木は、将来移植しないで済むような場所を選んで植え付けます。

植え付けは3月から4月の春植えと、9月から10月の秋植えが適期です。

◆肥料
花を楽しむためにはカリ、リン分の多い有機肥料を4月と9月~10月頃に根元に与えます。

★病害虫
通風が悪くなると、チャドクガが発生する場合があります。

被害が大きい場合は、4月から5月と8月から9月の2回の発生期に、スミチオン乳剤などを散布します。


◉せん定 4月~5月  11月~12月
放任しても半円形の自然樹形にまとまります。

生長はあまり早くありませんが、生育に合わせて樹芯を止め、3~5㍍の樹高に保ちます。

花の咲いた枝は花後切り戻して、徒長枝や込み枝を整理します。

萌芽力が強く、強い刈り込みせん定にもよく耐えます。

ツバキやサザンカと同様、円筒形や玉仕立てなどの仕立て物にする事もできます。

ただし、花を楽しみたい場合は、4月から5月に刈り込みを行います。

夏以降に刈り込むと、花芽も刈り込んでしまい、花が咲かないので注意します。

◆殖やし方
実生は秋(10月~11月)に種子を取り出して採り蒔きします。

挿し木は、6月から7月に充実した本年枝(新梢)を15㎝程に切ってさし穂とし、赤玉土、鹿沼土などのさし床に挿します。









2020/10/08

イチゴノキ No,301

 イチゴノキ     ツツジ科 

常緑広葉低木

別名=ストロベリー·ツリー  ※マドロナ属

原産地=南ヨーロッパ、アイルランド、南アジア、ヨーロッパ、北アメリカ

約20種の同属種が確認されており、主に岩の多い森林地帯等に自生します。

欧米で「ストロベリー·ツリー」と呼ばれていることから、「イチゴノキ」と言う和名が付きました。

日本に伝えられたのは明治時代ですが、園芸店などに幅広く流通するようになったのは、ごく最近のことです。

尚、日本に同属の植物はありません。

低木に分類されていますが、ツツジ科の植物の中では大きく、欧米では樹高5~10㍍に達するものもあります。

生育環境の違いからか、日本国内では大きく生長しても2~3㍍程度です。

5月~6月にスズランに似た白やピンク、クリーム色の釣り鐘状の集合花を咲かせます。

ハチミツに似た甘い香りがあります。

秋には表面に細かいイボ状の突起がある、サクランボ程の球形果実が成ります。


                           (イチゴノキ)

この果実がイチゴの実に似ていることが、名前の由来と言われています。

果実は甘味があり、砂糖煮にしてジャムにしたり、果実酒、ワインなどに用いられます。

しかし、学名の「アルブツク·ウネド」のウネドは「一度」と言う意味で「一度食べたら二度と食べたくないくらいまずい」ことに由来していると言われており、属名の語源もケルト語の粗い果実、渋い実のなる木によるとの説があるなど、生食には適さないようです。

葉はタンニンを多く含む、そのため収斂(しゅうれん)、利尿、殺菌作用などがあり、薄く剥がれる淡褐色の樹皮とともに、薬用ハーブとしても利用されています。

花と実の双方が楽しめ、地際から多数の枝が出てよく茂ることから、家庭果樹、ガーデンツリー、公園樹などに利用されています。


◆生育環境
日当たり、水はけのよいやや火山灰質の、軽い肥沃な土が適していますが、半日陰でもよく育ちます。

土壌は中性から弱酸性を好みます。

★植え付けは3月から4月
用土にピートモス、腐葉土をよくすき込み高植えにします。

移植には弱いので、植え替えをしないでいいように、植え付け場所を選ぶ必要があります。


◉肥料
3月頃に油粕、骨粉を中心として有機肥料と粒状の化成肥料を、等量混ぜたものを株元に与えます。


また、ピートモスを4月から5月頃に株周りに少し厚めに敷いておくと、排水がよくなり肥料もよく効きます。

★病害虫
まれにテッポウムシ(カミキリ虫の幼虫)が発生することがあります。

食害を受けた幹穴に、スミチオン乳剤の20~30倍液を注入して駆除します。

◉せん定
株元近くからよく枝が出て、株立ち状の樹形になります。

日本では、放任しても円形に近い樹形にまとまるので、改めて整姿、せん定する必要はほとんどありません。

必要に応じて、飛び枝や徒長枝、樹冠内部の細かい込み枝を整理する程度で十分です。

樹冠が大きくなると、風の影響を受けて倒れやすくなるので、大きくなった場合は支柱をして保護するようにします。

◉殖やし方実生は秋(10月~11月)に熟した果実を採り、よく水洗いすると小粒の種子が取れるので、それをまき床に蒔いて管理します。

挿し木は、今年伸びた新梢を5~6㎝に切ってさし穂とします。

切り口を水に浸し水あげした後、鹿沼土のさし床にさし、十分に水やりして乾燥に気を付けながら管理します。

挿し木の適期は6月中旬から7月上旬です。








ヤツデ No,300

 ヤツデ ウコギ科 常緑低木

別名=テングノハウチワ

東北地方南部以南の本州から四国、九州、南西諸島にかけて自生する。

海岸付近の林の中に多く自生する。

ヤツデは日本産のウコギ科で、中国に自生しない植物であり漢方薬名もない。

長い柄に5,7,9,11と言うように、必ず奇数に深く切れ込み、大きな掌状葉を持つのが特徴です。

手のひらのような大きな葉の形からこの名がある。

葉の切れ込みが効率よく日照を受けるためのものである。

カクレミノが生長に合わせて、葉の切れ込みが変化するのに対し、ヤツデの葉は変化しません。

これはヤツデが低木である事、葉が大きい事と関係していると思われます。

ヤツデの生育にとって冬の日照は、特に重要で樹林の中で生育しているヤツデは、晩秋に周辺の高木が落葉すると、次第に葉の向きを変えて、冬の日光に対応することが知られています。

ヤツデは邪悪なものの侵入を防ぐ呪力=(じゅりょく)があると信じられており、古くから魔除けの庭木として植えられていました。

軒先に葉を吊るしたりする風習もあったようです。

ウコギ科の植物には生薬としての効果があり、ヤツデも葉を煎じてせき止めの薬にしたり、湯に入れてリウマチの治療に用いたりしました。

葉に含まれる「ファトシン」と言う成分が、実際に鎮咳効果があることがわかっています。

また、主成分がサポニン類でサポニンには痰を切る作用があります。

乾燥葉を1日10㌘煎じて3回に分けて飲めば、痰切りによいでしょう。

◆ヤツデの葉の利用法、効能
1日300~500㌘を布袋に入れ、鍋で煮出して入浴直前に浴槽に袋ごと入れます。

または、葉を細かく切り、5日程乾燥させて、袋に入れて入浴時に使用すると、神経痛やリウマチに効果があります。

葉は厚く乾燥しにくいので、水洗いした後に細かく刻んで日干し乾燥させます。

生の葉を火で炙って柔らかくして、リウマチ、神経痛、腫れ物に貼る方法もあります。



                                       (  ヤツデ )


日陰に強い陰樹の代表的樹木ですが、大気汚染にもよく耐えます。

日当たりの悪い庭の隅や、勝手口付近などに植えなど、利用価値の高い庭木です。

花が少ない11月から12月に、ゴルフボール状に集まった白い花をつけます。

花は香りがあり、冬にも関わらず昆虫がよく集まり、果実は翌春に黒く熟す。

◆園芸品種
葉に白い斑が入るフクリンヤツデ

黄色い斑が入るキモンヤツデ

葉脈に沿って黄色の斑が入るキアミガタヤツデ

白斑の入るシロフヤツデなどがあります。 

斑入りの品種は、洋風の建物や芝生の庭などにも良く合い、鉢植えの観葉植物としても十分楽しめます。

◉生育管理、環境
日当たりの良い乾燥地では、株の成長が悪く日除けなどの必要があります。

日陰または、半日陰の保湿性のある腐食質に富んだ、肥沃な土地が最も適しています。

◆肥料
肥料を与えすぎると、大きな枝葉が雑然となりやすいので、出来るだけ施肥は控えるようにした方が
無難です。

肥料が必要な場合は、生育の様子を見ながら3月か9月頃に油粕、粒状の化成肥料などを株元にバラ蒔きします。

◆病害虫
乾燥が激しいと、カイガラムシが発生する場合があります。

活動期のカイガラムシには、スミチオンなどを散布して駆除します。

また、冬期のカイガラムシには、石灰硫黄合剤の10倍液を月に2~3回散布します。

カイガラムシの数が少ない場合は、なるべく薬剤散布は避け、剥ぎ落とすなどして駆除しましょう。

◉植え付け、移植
4月中旬から7月までの高温の時期と秋9月ならば可能です。

移植時の注意点として、ヤツデは葉が大きく蒸散作用が盛んなため、ほとんど全部の葉を切り落として幹だけにして行います。

時々、乾燥防止のため水を注いであげる必要があります。

◉せん定、整姿
大きくなりすぎた枝や、混み過ぎている枝は間引くように切り、風通しなどを考えて大きい下の方の葉も時々切り落とします。

特に狭い場所では、枝を3本くらいにして新葉が伸びきった6月頃に、頂部の葉だけを残して、ほかの葉を全部切り取ると、その後出てくる葉が大きくならず、小型の樹形にすることができます。

生長が比較的遅いので、十分な広さがある庭では放任して育てることも可能です。

ただし、茎が伸びて下葉が落ちるので樹形を美しく保つのが難しい上、枝葉が大きく株立ち状に広がるので、一般的には小ぶりに保つように整姿、せん定を行います。

1株に枝が3本くらい残るように、不要な枝は根元から切り取ります。

整姿する時は、頂部の葉を5枚程残して、下の古い葉を切り落とします。

また、大きな葉は、3月から4月に切り取ると、新しく出る葉は小ぶりになります。


                                    (ヤツデの花)   

株元近くから出た細かい枝も、樹形を乱すので根元から切り取るようにします。

高くなり過ぎた株を小ぶりにする場合は、5月から6月に低い部分にある芽の上で枝を切り取ります。

◆殖やし方
実生は4月から5月に熟した果実を採り、水洗いして種子を取り出し、半日陰のまき床に蒔きます。

2年生苗になるまで冬は寒冷紗などで防寒します。

挿し木は6月から7月に若い枝を15~20㎝程に切り、大きい葉を落としてさし穂とします。

水あげした後、赤玉土のさし床にさし、半日陰で管理します。






2020/10/07

カエデ、モミジ No,299

 カエデ、モミジ 落葉、一部常緑あり

カエデ科
約150~200種程確認されている、原生種のほとんどが、北半球の温帯地方に分布しています。

日本でも北海道から九州まで、各地域の環境に適した自生種が分布しています。

カエデの名前は万葉集「かえるで」とあることに由来し、葉の形状が蛙の手(足)に似ているためと言われています。

一般的には「楓」と書きますが、これは類似種の「フウ」と言う中国原産の樹木の事で、正式には(木へんに戚)と書き表記します。

楓=実が球状のカエデに似た落葉樹

★植物学的には、カエデとモミジの区別はありませんが、盆栽では葉の切れ込みが深く、5つ以上有るものを「モミジ」それ以外のものを「カエデ」と呼んでいます。

日本では、古くから観葉植物として愛され、特に江戸時代から明治にかけて、多くの品種改良が行われました。

明治初期の文献には200種を超える園芸品種が紹介されています。

また、種類の多いカエデ属の用途は幅広く、木材は家具材、楽器の素材に使われるほか、樹液はシロップや目薬に使われるものもあります。





◉生育管理、環境
美しい紅葉を楽しむには充分な日照が必要ですが、一日中、日が当たる環境はよくありません。

一般的には午前中によく日が当たり、午後は西日が当たらない排水のよい、環境が最も適しています。

他の樹種との相性は比較的よいので、混植して直射日光が当たりにくいようにするのも一つの方法です。

土壌は特にこだわりませんが、乾燥を嫌いますので特に、根元付近を乾燥から防ぐ配慮が必要です。

◆肥料
土質がよくない場合は、油粕、鶏ふんや粒状の化成肥料を幹の周囲に少量与えます。

乾燥の強い所では、完熟堆肥を株元にすき込むと効果的です。



                                    「養老渓谷」

◉せん定
自然樹形に仕立てるのが一般的です。

若木のうちは、下枝と込み合った枝などを切り取るだけで充分です。

成木になると狭い庭では、大きくなり過ぎるので、枝分かれしている部分で、長い方の枝を根元から切り取る間引きせん定を行い、枝の途中から切ると樹形を乱すので、必ず根元から切るようにします。

◆殖やし方
種類によって大きさ形が異なりますが、一対の羽根を持つ「翼果=よくか」であることがカエデの種子の特徴です。

◆翼果
果皮の一部が平らな翼状に発達した果実で、単乾果であり、果実が成熟しても裂開しない閉果である。

翼の生えたような形状により、風によって離れた所へ運ばれる。


秋に採取した種子を砂の中で貯蔵し、翌春3月に蒔きます。

★カエデの芽つぎ
①充実した枝の先端の葉の柄をすこし残して切り、5㎝程のつぎ穂を作ります。

②葉をつぐ台木の幹を木質部まで切り込んで、台木とさし穂の形成層を合わせ、ビニールテープで巻き、翌春新芽の伸びる部分を開け(出して)ておきます。


                             (カエデの芽つぎ)


ウメ、モモ、ハナミズキも同様の方法で芽つぎ出来ます。

作業は9月上旬までに終えるようにしましょう。

◆主な病害虫
※うどん粉病
ベンレート水和剤1000倍液を発生前に、月に1~2回予防のために散布します。

発生が酷い時には、10日おきに2~3回同じ濃度の散布液を使います。

※テッポウムシ(カミキリ虫の幼虫)
虫穴にマラソン乳剤の500~1000倍液を注入し、土などで穴をふさぐ。

※カミキリ虫
スミチオン乳剤1000倍液を散布するか、少量なら捕殺する。