緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2020/11/03

盆栽の樹形 (5) 根上がり No,320

 根上がり樹形

根が大きく地表に露出している樹形です。

強い風雨や波などで、根元の土が洗われて根が、地上に顔を出している樹木の様子を表現しています。


        (根上がり樹形)






盆栽の樹形 石つき、石抱き (4) No,319

 石つき樹形

石と樹木を組み合わせてつくる盆栽です。

渓谷などの岩上にそそり立つ樹木の様子や、孤島の岩肌に自生する樹木の様子を表現します。

◉石のくぼみに木を植え込む「石つき」

         (石つき樹形)



◉樹木の根が石を抱き込むようにする「石抱き」

         (石抱き樹形)







盆栽の樹形 (3) No318

 懸崖(けんがん) 半懸崖

断崖絶壁や渓流などで、岩肌にしがみつくようにして、下に向かって幹が伸びている樹木の様子を表現したものです。


                                    (懸崖樹形)

立ち上がりからすぐに幹が大きく曲がり、下方に向かって垂れ下がっていくのが特徴てす。


幹の先端が鉢底よりも低く垂れ下がっているものを懸崖、鉢底のラインまでで止まっているものを半懸崖といいます。


         (半懸崖樹形)







サンシュユ No,317

 サンシュユ 落葉中高木 ミズキ科

別名=ハルコガネバナ 春黄金花  (山茱萸)
原産地=中国

朝鮮半島にも自生種が見られ、高さは五メートル程に生長します。

早春の2月中旬頃から、まだ葉がつく前に黄色い小花を枝先に点々と咲かせます。

「山茱萸」=茱萸は「グミ」のことで、秋にグミに似た楕円形で光沢のある果実が、鮮やかに紅熟しアキサンゴ「秋珊瑚」とも呼ばれる。

春と秋に楽しめることから、広く庭木に利用されるほか、切り枝にしても水あげが良いので、生け花にも好んで使われる人気の樹種です。

ひとつの花の様に見えるのは、実は花序でたくさんの花の集合体です。


全体を包む用に4枚の苞葉があり、同じ花のつき方をする類似種に同属のヤマボウシやハナミズキがあります。

サンシュユの苞葉はあまり大きくなく、ヤマボウシやハナミズキのような花弁と、見間違えると言う事はありません。


                           「サンシュユ」

日本に渡来したのは、享保年間(1716~1736年)で朝鮮から薬用樹として輸入されました。

当時駒場にあった幕府の御薬園に植えられていたと言う記録が残っています。

★御薬園
薬草を栽培する畑で江戸幕府、諸藩が直営した薬草園で、寛永15年1638年頃から江戸、静岡、京都、長崎などに幕府直轄のものがあり、藩営では秋田、尾張、福岡、熊本、薩摩藩のものが知られています。


薬用にするのは果実で、完熟した果実から種子を除いて乾燥させたものを「山茱萸」と呼びます。

滋養強壮に効果があり、めまい、耳鳴り、夜尿症、冷え性などにも効くと言われています。

1800年もの歴史ある漢方の重要な処方である「八味地黄丸」にも山茱萸が使われています。

また、山茱萸酒は疲労回復の民間療法として古くから用いられています。


◉生育管理、環境
日当たりのよい、やや粘り気のある保湿力のある肥沃な場所が最適です。

半日陰でも育ちますが、日当たりがよいほど花数も多く、色も鮮やかになります。

寒さにはやや弱く、東北以北の寒冷地での栽培は少し難しくなります。

生長が遅く、苗木から育てて数年しても開花しない場合もある。

しかし、丈夫で必ず開花するので気長に育てることが大事です。


◉肥料
花後と秋口に油粕と粒状化成肥料を等量混ぜたものを、株の大きさに応じて根元に蒔くと効果的です。


◉せん定
横に広がった株立ち状の自然樹形になります。

庭の広さにもよりますが、幹を2~3本立ちに整理し、ひこばえはその都度切り落とすようにします。

花芽は充実した短枝の先端につきます。


        (サンシュユの花)


日当たりを好むので、花を多く楽しむためには伸びすぎた徒長枝や込み合った枝を透かし、樹冠内によく日が当たるようにします。

また、大きくなり過ぎた枝や古くなった枝はだんだん花つきが悪くなります。

そのような場合は花後、新芽が出る直前に付け根から切り戻して新しい枝に更新します。

木は一回り小さくなりますが、よく新芽を出すので翌年の花つきはよくなります。

できるだけ外芽の位置の枝を残すようにすると樹形がよく整います。

枝の更新は4年から5年に1回が目安になります。

◉殖やし方
※実生は熟した果実を採って果肉を取り除き、種子を水洗いして蒔きます=(3月)

発芽までに2年程かかるものが多いので、乾燥に注意して種子を、一年間貯蔵してから蒔いた方が安全です。

※挿し木は本年枝を15㎝程に切ってさし穂とし、赤玉土のさし床にさします。

※接ぎ木は2~3年生の実生苗を台木にします。

穂木は充実した枝を使いますが、先端部は適しません。

サンシュユの移植は比較的容易ですが、挿し木、接ぎ木は熟練を要します。

活着率もあまりよい方ではないので、時間はかかりますが実生が最も確実な方法です。






2020/11/01

バラの好む土質と土の改良の仕方 No,316

 ◉特別な土は必要ない

バラを育てるには、特にこの土でなければと言う事はありません。

日本で生産されたバラの苗は、ノイバラの台木に接ぎ木しています。

ノイバラは有史以前から全国各地に自生していて今尚、繁栄しているのですから色々な土質に適応する能力を備えていると考えられます。

60年程前、バラ栽培が普及し始めた頃荒木田土が良いと言われて客土したり赤土が良いと言われて天地返しをしたりしてバラを植えるのはかなり重労働だったようです。

しかし、実際にはこのような面倒な作業は必要なかったわけです。

★荒木田(あらきだつち)
粘土質が高い水田の土。

★客土(きゃくど)
他所からの土を加えること。

★天地返し
1㍍も掘り、上層の黒土と下層の赤土を入れ替えること。


        (グラハム·トーマス)


◉土壌の性質を知る
土壌の物理性を表す固相、気相、液相と言う言葉があります。

固相(こそう)はその土壌が含む固体(真の土分)気相(きそう)は空気液相(えきそう)は水分の割合のこと、これらのバランスが良いと根はすくすくと伸びることができるのです。

また、水持ちがよく乾きにくいと言う保水性、水はけが良いとされる排水性、土壌粒子間の隙間が良いとされる通気性と言う言葉もあります。

これらの性質のバランスがとれたものが良い土と言うことになるのです。

◉土質

※土質を大別すると、火山灰が堆積してできた火山灰土。

※岩石が風化してできた砂質土

※雨によって河川に流れ込み氾濫して堆積した沖積土があります。

比較的新しい時期に堆積した沖積層で、層位の分化があまり進んでいない土壌のこと。


✪それぞれの特徴として

★火山灰土
代表的には関東ローム層、表土は黒土で深部は赤土

火山灰土は肥沃で通気性、排水性は良いが保水性に欠けます。


★砂質土(さしつど)
栄養分が乏しく、通気性と排水性は良いが保水性に欠けます。

★沖積土(ちゅうせきど)(粘土、荒木田)沖積土は肥沃で保水性は良いけれど、通気性と排水性に欠けます。

家の庭の土は有機物を施し、その欠点を補ってやればどの土質でもバラは元気に育ちます。

有機物はそれが持つ植物繊維によって、重い土の通気性をよくして空気を持たせ、排水性を改善します。

軽い土では逆に団粒化することによって保水性を高めます。

砂質土では、多すぎるすき間を埋めることによって保水性を高めます。

また、土中の微生物が繁殖しやすい環境に改善します。


         (アンネのバラ)


◉土壌酸度(pH)
土壌酸度(pH)は7.0が中性で、これより数値が小さくなると酸性、大きくなるとアルカリ性となります。

日本の土壌は酸性に傾きやすいと言われています。

ホウレン草や豆類など酸性が苦手な作物については農家や家庭菜園では、1作ごとに酸性を中和する石灰を施すように指導されています。

ただしバラはpHでもかなり適応範囲が広いつまり鈍感と言う事で、それほど気を使う事はないようです。

土壌の緩衝能(かんしょうのう)と言う用語がありますが、これは土壌に酸、アルカリが添加されても土壌pH及び、土壌溶液のpH変化は酸、アルカリの添加量から予想されるよりも、はるかに小さい事が多い。

このpH変化に抗する作用を土壌の緩衝能と呼ぶ。

土壌が遊離炭酸塩を含むなら、添加された酸はその溶解によって完全に消費されるので、土壌pHはほとんど不変である。

これは肥料などにより土壌の性質が急激に変化して植物に害となることを防ぐ能力を表し、緩衝能の低い砂地に有機物などを施してやれば、緩衝能を高めることができる。


有機物を適度に施すことによってバラは、どんな土質でも適応できるので、他の草花や野菜、樹木が育つ所なら十分バラも育ちます。

有機物を使えば土質を改良できる。

✿有機物は土壌を改良するもの

有機物とは肥料分をあまり含まず、主として土壌の物理性を改善する資材で、植物繊維の豊富なものを指します。

腐葉土、堆肥、ピートモス、牛ふんなどです。

これに対し肥料は、植物に栄養を与えるためのものです。

家畜の排泄物は肥料として扱われる事が多いですが牛ふんだけは例外的に有機物となります。

有機物は土壌の物理性、微生物性の改善だけでなく発酵分解の過程で、土中のバクテリアを増殖されると共に、腐植酸と言う物質を生成し、根の生育を促進します。

すなわち、有機物はゆっくり分解して土に戻るので毎年補給する必要があります。

ただし、土壌改良材でもパーライト、バーミキュライトなどの鉱物性のものは分解しないので、腐植酸を生成しません。

また、有機物は土の容積に対して与えるものなので容量(L、㍑)で表されます。


         (ブルームーン)

◉有機物の施し方

有機物は冬のバラが休眠している時期に元肥と一緒に与えます。

株の周りに撒いてスコップなどで、上下を反転するように土の中に埋めるように混ぜ込みます。

バラは休眠しているので、深く掘り返して根を切ってしまっても大丈夫です。

施す分量は、普通の庭植えの株の場合は、有機物を約5㍑程与えます。

分解の早い牛ふんとピートモスを組み合わせてそれぞれ等しい量を、2.5㍑位ずつ与えればよいでしょう。

有機物の施肥量は神経質になる必要はありません。

その他の腐葉土や堆肥を使う場合も、使用量はこれに準じます。

新規に植え付ける場合は、分量を増やす必要があり合計で10㍑与えればよいでしょう。

◉牛ふんの使用量制限

草食獣の排泄物なので、肥料要素含量は低く植物繊維に富むため有機として扱います。

含量が低いと言っても肥料要素も含まれているので大量に与えると、肥料を与え過ぎた場合と同じ問題が起きます。

バラは肥料を与え過ぎた土壌では
うまく育ちません。

使用量が多すぎると好ましくない成分も蓄積するのです。

※牛の飼料に含まれる塩分などが蓄積する。







穂木の採種と貯蔵 No,315

 穂木の採種と貯蔵の仕方

春に接ぎ木や挿し木を行う際の穂木を採種する適期は、休眠期の12月から2月ですが、せん定時に同時に行うとよいでしょう。


◉穂木の貯蔵方法

採種した穂木は、利用するまで休眠状態にしておく必要があります。

乾燥しないようにビニール袋に入れたり、ラップで包んだりして密封し、冷蔵庫など低温の場所(2~5℃位)で貯蔵します。

できるだけ長い枝で貯蔵しておくことがポイントです。


★マツ類、カラマツ、ヤマモモなどの挿し木の活着率が低い樹種では、なるべく樹勢が強い若木からさし穂を採取することが大切です。

★ヒバ類
コウヨウザン、ヒマラヤスギ、メタセコイアなどのように枝が横に長く伸長する性質のものは、できるだけ上向きの枝または樹芯に近い上向きの枝からさし穂を採取しないと苗が、まっすぐに伸長しにくい性質があります。

◆落葉樹のうち、生育活動を開始するのが早い樹種を春ざしにする場合は、1月下旬から2月頃に枝を切り取って貯蔵しておいたものを、挿し木の最適期である3月から4月上旬に取り出して挿し木することがあります。

これは挿し木適期に採取すると、すでに生育活動が開始しているため枝の養分が消費されつつあり、そのために発根力弱まると言う理由によります。

1月下旬から2月頃に切り取る枝は30~40㎝の長さに束ね、土中に埋めておくか、ビニールに包んで冷蔵庫(5℃位)で保存します。

落葉樹のさし穂とする枝は、基部と先端部はさし穂として利用しません。

枝の中間部分を用いる様にします。


         (土中貯蔵図)


土中に埋めておく場合は、先端側を斜め上にして貯蔵します。