緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/03/01

ウメとサクラが同じ頃に咲く No,391

 ウメとサクラが同時期に咲くのはなぜ(?_?)

九州や四国の暖かい地域では、ウメの花は1月下旬に咲き始め、サクラの花は3月下旬に咲き始めます。




そのため、ウメとサクラの開花の時期は約2ヶ月離れています。

それに対し、関西地方ではウメは2月中旬から咲き始め、サクラは4月上旬に咲きます。

なので、ウメとサクラの開花の時期は約1ヶ月半離れています。

関東地方でもウメとサクラの開花期はほぼ1ヶ月少し離れています。


ところが、青森県や秋田県、北海道など寒い地方では、ウメの花は4月下旬に咲き、ほとんど間隔を置かずに桜が咲き始めます。


北海道では5月の初旬に、ウメとサクラが一緒に咲く事からあります。

日本列島を北に行くほど、ウメとサクラの開花時期は同じ頃になってくるのです。


なぜ?そのような現象が起こるのか。

ウメもサクラも春に暖かくなると花を咲かせると言われています。

しかし、ウメとサクラが暖かさに反応して花を咲かせるという性質には実は大きな違いがあるのです。


暖かい地域と寒い地域の中間として京都を選び、ウメとサクラが咲く頃の平均気温をおおまかに比較してみると、その性質の違いが見えてきます。



図、平年のウメとサクラの開花前線


ウメの花が咲き始める1月下旬の平均気温は6~9℃ですが、鹿児島、京都、北海道でほぼ同じ気温になると咲き始めます。


つまり、ウメの花は全国的にほぼ同じ気温で咲き始めるのです。


それに対し、桜の花が咲き始める3月下旬の平均気温は、鹿児島で13℃前後、京都で11~12℃、北海道では桜の花が咲き始める4月下旬の平均気温9~10℃です。


つまり、北に行くほどサクラが開花する時期の平均気温は低くなっているのです。


この現象には「冬の寒さ」が大きく関係しています。


サクラには「冬に厳しい寒さを感じるほど、春の暖かさに敏感に反応して開花する」と言う性質があるからです。


この事から、九州のサクラより北海道のサクラが先に咲くという現象が起きるがことがあるのです。


2月中旬までに北海道のサクラのほうが、厳しい寒さを受けているので、厳しい寒さを受けていない九州のサクラより、同じ温度に反応して早く咲くのです。


 
(日本三大桜、福島県三春の滝桜)


この現象は日本一早い「ソメイヨシノの開花宣言」に現れています。


普通なら九州や四国の暖かい地域から日本一早い開花宣言が発表されるはずです。


        (日本三大桜、山梨県 神代桜)


ところが東京のソメイヨシノが日本一早く開花することがあります。


それは九州や四国の暖かい地域で、冬の気温が高い事が原因です。


九州や四国では、冬の気温が高いために、ソメイヨシノは春の暖かさに敏感に反応せずに開花が遅れてしまうのです。


       (日本三大桜、岐阜県 淡墨桜)



                                      (吉野桜)


サクラは冬の寒さが厳しい程、花芽の目覚めが良いと言う事と、冬の寒さが厳しい程、開花期の気温が低くても花を咲かせるのです。


この事から、青森や北海道ではウメとサクラがほとんど間隔を置かずに咲くことになるのです。







2021/02/28

薬の開発に役に立つ植物たち No,390

 毒は変じて薬となる


ブログNo,358で「クソニンジン」と言う植物のことを紹介しましたが、身近に役立つ植物は昔から存在し、今までに多くの薬が作られてきました。

「薬の王様」と言われるのは、鎮痛や解熱剤として、世界的に利用されている「アスピリン」と言う薬です。

この薬はヤナギの成分から作られました。


                             (柳の木)

ヤナギには、抗菌、鎮痛、解熱の作用を持つ「サリシン」と言う物質が含まれています。

しかしこの「サリシン」は副作用が強いので、「サリシン」から「サルチル酸」が作られました。

これは一時、防腐剤として使用されましたが、更に副作用のない「アスピリン」が作られたのです。


樟脳(しょうのう)と言う防虫剤はクスノキから生まれたものです。


                        (クスノキ)

この木の葉は、木に付いている時には殆ど香りを出しませんが、摘み取った葉を手で揉んで葉に傷をつける事で、強い香りが出ます。

それはなぜかと言うと、虫に食べられて傷がついた時に虫を、退治する為に放出される香りだからです。

タミフル」は新型インフルエンザに効く薬ですが、シキミ科のトウシキミの実である八角(はっかく)の成分で作られています。

                      (トウシキミの実)

真夏の暑さにもめげず、毎日のように花が咲く事から、名前の由来となっているニチニチソウ(日々草)と言う植物は、「ビンブラスチン」や「ビンクリスチン」と言う有毒物質が含まれています。

これらの物質から、抗がん剤が作られています。


                         (ニチニチソウ)

肝臓の機能を高めると言われる「八味地黄丸」と言う漢方薬が古くからありますが、「八味」とは八つの味と言う意味で、その一つは「トリカブト」に含まれる有毒物質のアコニチンです。

                        (トリカブト)

東北地方の代表的な春の山菜であるギョウジャニンニクはイヌサフランと間違って食べられて、中毒事件を起こします。


                         (イヌサフラン) 

「イヌ」と言う語の付く名前は、役立たないが姿、形がよく似ている植物の事を表しています。

「イヌ」とつく事で食べれない植物と思われます。

サフランは高価な生薬や香辛料に使われますが、イヌサフランは生薬に使えないので「イヌ」が付けられたのでしょう。

ところがイヌサフランは「コロヒチン」と言う痛風の治療薬の原料として役立っています。


「毒は変じて薬となる」

有毒物質を持つ植物というと、特別な植物と思われやすいですが、しかし、毒性が強いか弱いかは別として、多くの植物は有毒物質を持っています。

虫に食べられることから身を守り、また病原菌を感染させない為でもあります。

これらの有毒物質は、毒は変じて薬となると言われるように、有毒物質を持つ多くの植物の成分が薬として利用されているのです。

時代とともに役に立つ植物も変わってきます。

それは古くから使われてきた薬が効かなくなって、新しく薬の開発が求められる事と、役立つ植物もその時代の生活と技術を背景に、変化し続けているからです。

この時代(21世紀)に生きる人々は、植物の多様性を守り、植物たちと共存、共生しなければなりません。

その為に、植物たちをこの時代に絶滅させてはいけないのです。

地球環境、温暖化など人類化学が発展する一方で、地球規模で全ての環境を壊している事を自覚しなければならない。

思っている以上に地球環境破壊は進んでいると思います。


これからも多種多様な植物たちが、人々に恵みや豊かさをもたらしてくれるはずです。








2021/02/27

呼接ぎ 高呼接ぎ No,389

 呼接ぎ

穂木、台木共に根がついている状態で接ぎ木する方法で、カエデ類、ツバキなど他の方法では活着率が低下しやすいものに適応される方法です。


                          (A図、呼接ぎ)

植木鉢等に植えられたものを穂木として利用します。


                              (B図)


B図のように斜めに密着させて接いでもよい。

✿高呼接ぎ

樹木の高い位置に接ぎ木する場合を特に「高呼接ぎ」と言って区別しています。

穂木、台木ともに接ぎ木する部分の枝、或いは幹の側面をA図のように削り、両方を密着させて接ぎ木用のビニールテープで結束します。






活着後、穂木は接ぎ木部の下で、台木は接ぎ木部の上で切り取ります。

穂木を枝として利用する場合は、台木の接ぎ木部の上で切り取らない。

台木の接ぎ木部の上の部分を、残すか切り取るかの選択がある。

✭関連ブログ
接ぎ木果樹の殖やし方①~②
No,122、No,123

割り接ぎ繁殖方法 No,387

腹接ぎ(元接ぎ)No,388










2021/02/26

腹接ぎ 繁殖方法 No,388

 腹接ぎ(元接ぎ)

この方法は、繁殖を目的とする場合と枯れ枝などを補充したい場合などに適用されます。

                         例=クロマツ

繁殖を目的に行う場合は、台木の根元に斜めに切り込みを入れますが、台木は上部を切り取る方法と、上部を残したまま接ぎ木する方法があります。

                           クロマツ


                                クロマツ

✻枝を作る場合などに使う腹接ぎ

枯れ枝などを補充する目的で行う場合は、幹や枝の途中に斜めに切り込みを入れて接ぎ木を行います。

                       (A図、腹接ぎ)

(A,B図)基部を切って台木に挿し込み、切り接ぎの場合と同じ様に、接木用のテープで結束します。

(B図)接木後は、穂木が乾燥しないように、ビニール袋などですっぽりと覆って管理します。


                          (B図)


ビニールを取り除く時期は接木後約1ヶ月を目安にしますが、急に取り除かずに、ビニールに開ける穴の数を徐々に増やすなどして、40〜50日後に全て取り除くようにします。


✻関る連ブログ
接ぎ木果樹の殖やし方①~②
No,122   No,123

割り接ぎ繁殖方法No,387










2021/02/25

割り接ぎ 繁殖方法 No,387

 割り接ぎの方法

「割り接ぎは台木が太い場合に適した方法」で、柿の木、マツ類、ボタン、ツバキ、コウヤマキ等ではよく行われる方法です。

                     (台木の切り方)


太い台木ではV字形に切り込みを入れます。




穂木は切り接ぎの場合と同様2~3芽付けて切り、基部をクサビ形に切って台木に挿し込みます。

切り接ぎと同様の手順ですが、切り接ぎは台木の形成層の片面を使うのに対して、割り接ぎは両面を使うため、切込みは台木の中央に入れてつぎ口とします。

                       ✫割りつぎの方法



                     ✫割り接ぎの実践例


2本の穂木を割り入れて、台木の左右両側の形成層を使う「2本つぎ」という手法もあります。

穂木と台木の形成層をピッタリ合わせ、ビニールひもでしっかり固定します。

✻関連ブログ
接ぎ木果樹の殖やし方①~②
No,122,No,123










2021/02/24

セツブンソウ 山野草 No,386

 セツブンソウ キンポウゲ科

「菟葵  」多年草球根   セツブンソウ属早春に芽を出し、早々に花を咲かせて種子を宿し、春の終わりに早くも種子を熟して休眠に入るセツブンソウ。


                   (セツブンソウ)


関東地方以西の主に太平洋側に多く見られ、古くより節分の頃に花が咲く事からこの名前がある。

春の陽炎のような植物たちは、スプリング·エフェメラル「春の妖精」の名で親しまれている。

学名はエランティス·ピンナティフィダ。

属名のエランティスは「春の花」の意味を持ち、早春に開花する意味です。


石灰質を好み、岩地や落葉樹の林床等に多く自生します。

各地で乱獲採取が起きたことから保護される自生地も多い。

そんな各地の自生地として特に親しまれているのは、広島県庄原市総領町、埼玉県小鹿野町両神、栃木県栃木市星野の3箇所


          セツブンソウ、庄原市総領町 


 セ   ツブンソウ、埼玉県小鹿野町両神


            セツブンソウ、栃木県星野

セツブンソウ属はヨーロッパから中央アジア、中国、シベリア、朝鮮半島、日本に8種類が分布しています。

日本で栽培種として普及しているのは、日本に自生しているセツブンソウの他に、ヨーロッパ原産の「キバナセツブンソウ」で、分布はヨーロッパ南部から英国を含むヨーロッパ西部が主です。

その他、トルコからイラク、アフガニスタンに自生している「エランティス·キリキカ」も「キバナセツブンソウ」として時々流通している。

また、アジアの原産種として朝鮮半島に分布する「ヒナマツリソウ」は、朝鮮半島、中国東北部、ロシア極東に分布し、セツブンソウより幾分大きく、紫色を帯びる花もある。

✻植え付け、植え替え

4〜5号鉢程度の深鉢に3〜5球が目安です。


                          ❆植え付けの例

硬質鹿沼土4、赤玉土3、軽石砂2腐葉土などの有機質用土1などを、配合したものを使用します。

植え替えは2〜3年に一度を目安に、休眠後の晩夏から初秋に行います。

鉢の置き場所は芽出しから開花期間は日向に置き、花後は雨を避けて半日陰に置き、休眠後は日陰で保護します。

🚰水やり
水やりは芽出しから開花期間は多めに与え、その後は鉢の表土が乾いたらその都度与えます。

✻肥料

植え付け後に鉢の縁に有機性固形肥料を置き肥し、花後と秋に同肥料を追肥します。

花後から休眠まで2000倍液程度の液肥水やりがわりに与えます。

✻病害虫

ナメクジの食害がありますので、夜間に見つけ次第捕殺するか、予防剤を撒きます。

お酢を少し薄めてナメクジに直接かけても駆除できます。

✻殖やし方

種子を採取後に採り蒔きすれば、翌年の早春に発芽します。

その後肥培すれば2〜3年程で開花します。

また、種子の出来ない変異花などの繁殖方法として、塊茎(球根)をカットする方法がとられます。

カット後は球根の腐敗防止のため、草木灰などで切り口を覆って乾燥させてから植え付けます。

✻露地植え
落葉樹の木陰など早春に日が当たる場所の植栽に向いてます。

植栽には、周囲の除草や花後の 肥培などの個別管理が大切です。