緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/03/19

ミツマタ No,409

ミツマタ   ジンチョウゲ科

別名=オウズイコウ
落葉低木

7月頃、新しい枝の先が3本に分かれて伸びる事から「三叉」と呼ばれるようになった。

黄金色の花の外面は白いうぶ毛で覆われ、まるで自ら光を放っているかのようである。


                                                     「ミツマタ」

和紙の原料にするため、山間の畑などで栽培していたものが野生化し、今では人も立ち入らない山地にまで自生している。

お札の原料としても樹皮が使われる。

製紙ように赤木、青木、カギマタなどが栽培されていました。

日向でも半日陰でもよく育つ。

やや湿り気のある肥沃な土地を好む。

仲間のジンチョウゲほど移植は難しくない。



                      「三つ叉に分枝するのが特徴」

肥料

よく花をつけるには寒肥として油かす、鶏ふん、化成肥料を与える。

開花

3月から4月頃に白色の絹毛に覆われた、30個ほどの黄色の花が枝先に集まってボール状に咲く。

花の色は黄色が普通ですが、観賞用に赤い花の園芸品種「ベニバナミツマタ」などが作られている。

花が散ったあとから葉が伸び出してくる。

せん定

4月から5月
萌芽力はあるが、せん定は混み合った所を間引く程度にする。

移植

3月から4月頃に湿り気のある土地に移植する。

幼木は直射日光を嫌う。





2021/03/18

クマノザクラ No,408

 クマノザクラ

新種桜の発見

2018年、「クマノザクラ」は約100年ぶりの新種と判明した桜です。

紀伊半島南部が原産の日本固有種のサクラで、日本に自生する10種、もしくは11種のサクラ属。

基本野生種の内の1つ。

日本国内の野生の桜としては、100年ぶりとなる。

               「発表当時のクマノザクラ」

和歌山県田辺市本宮町(ほんぐうちょう)を中心として熊野地域の山間部や串本町、那智勝浦町の海岸部などに生える。

「クマノザクラ」はヤマザクラやソメイヨシノよりも早い、2月から3月頃に花を咲かせます。

「クマノザクラ」は個体差もあり、同じクマノザクラでも花びらの色が違うこともある。

まだまだわかっていない事も多い桜です。


                        「クマノザクラ」

田辺市本宮町は、熊野三山の中心である熊野本宮大社や、江戸時代の温泉番付では✫勧進元とされ、別格扱いされるほどに名を知られた湯の峰温泉、河原を掘ると温泉が湧く川湯温泉などがある。

✫勧進元(かんじんもと)
何か事を発起してその世話をする主催者のこと。

和歌山県古座川町には、多くの個体が自生していることが確認されている。

池野山地区には、新種として学名を記載した論文を発表するにあたり、正基準標本が採取されたタイプ木があります。

古座川町ではクマノザクラを町花として制定しました。

この地域ではごく普通に咲いていた桜ですが、まさか「100年ぶりの新種発見」という事ですが、これは極希な出来事です。

クマノザクラは、森林総合研究所多摩森林学園の勝木俊雄農学博士によって新種が確認されました。


                         「クマノザクラ」

古座川町は、紀伊半島南方の山間部に位置する町で、林業も盛んな所です。

また、天然記念物や文化財にも指定されている貴重な、自然景観や観光スポットが多い町です。










2021/03/17

アイ (藍)No,407

 藍     タデ科      イヌタデ科

一年草 別名=インジゴチン タデアイ
原産地=東南アジア

古くから藍染めの染料原料として知られる植物。

藍の歴史はとても古く、紀元前3000年まで遡ります。


                            「タデアイ」

✻「インダス文明」の遺跡から、藍染めの染織槽跡が発見されたと言う記録が、藍の存在が世界で初めて確認された時期と言われています。

✻インダス文明
紀元前2500年から1800年頃に繁栄した文明とされているが、インダス文明の文字は未だに解読されていない。

その事から、繁栄していた時代が正しいのか疑問は残る。

紀元前300年頃になると、シルクロードを通じて文明の交流が始まり、藍染めの布製品が盛んに行き来していたとされ、インドやエジプトを中心に世界各地に藍が流通して行きました。


日本の藍の歴史は、奈良時代に遡ると言われています。

当時の唐から、朝鮮半島を経て伝わったと言われ、法隆寺や正倉院に当時の藍で染められた布類が今も多数保存されています。

その藍こそが「タデ藍」で「出雲族」が最初に栽培されたと言われている。

✣出雲族とは
古代出雲地方に存在したと言う説のある種族。

出雲とは現在の島根県東部を指す。

出雲神話の担い手として想定されている出雲族は、鉄器文明を持つ「ツングース」であるとする説がある。

✻ツングースとは
出雲女は朝鮮、満州、蒙古(もうこ、モンゴル)の遺伝子があり、その民族を北東アジアに住む「ツングース」という。


出雲地域からは大量の✫銅鐸(どうたく)や銅剣などが出土した遺跡もあり、実際に古代に何らかの勢力が存在したとされている。

朝鮮、満州、蒙古から出土するものと、出雲の地下から出土する弥生式の土器はほぼ同じである。

✫銅鐸は青銅製の弥生時代後半期の遺物で、もとは楽器らしくのちに祭器に使われた。

「天孫族」に屈しまいとした出雲族の一部は東北に逃れ蝦夷(えぞ)となって最後まで戦ったとする説がある。


❆天孫族(てんそんぞく)とは
日本神話において降臨したヤマト王権をつくったとする古代勢力の総称。

また「新撰姓氏録」では天照大神などの子孫を神別の「天孫」としている。

新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)とは、平安時代初期の815年(弘仁6年)に集成された、日本古代名鑑で氏族の実態や、姓氏家系を調べる上で欠かせない文献。


蝦夷とは、古代、関東以北に住んでいた人々でえみしとも言う。

北海道の古称で北陸、関東北部から東北地方にかけて住み、朝廷に服従していなかった人々のこと。

また、出雲方言と東北方言が同じ「ズーズー弁」であるのもその証であるとされている。


江戸時代になると木綿の普及に伴い、藍染めが幅広く使用されるようになった。

阿波の国、現在の徳島県が最大の生産地だった。

徳島の「すくも」藍染めの染料は、高品質な「阿波藍」として別格の扱いを受けていた。

明治中頃には、全国の市場を席巻きするほどで、生産もピークを迎えた。

第二次世界大戦で栽培が禁止されたため、藍の生産は途絶える寸前まで行ったが、徳島の藍師が戦争中もタネを守り、副業をしながらも藍作りを続けてきた事で、現在でもその伝統が生き続けている。

現在は徳島をはじめ、北海道、青森県など、いくつかの地域で栽培されています。


「タデアイ」は古くから薬用植物として、解毒、解熱、消炎などの目的で利用されていました。

タデアイは日本に自生していない。

日本の一部の地方では、「タデアイ」はタデ酢などの食品原料としても利用されています。

食物繊維とミネラルも豊富に含まれている事から、藍の青汁や藍のサプリメントなどが商品化され、健康食品としても注目を浴びている。

✿藍特有のフラボノイド

ポリフェノール(フラボノイド)はブルーベリーの約4倍とも言われている。

トリヒドロキシ、メチレンジオキシフラボンを骨格とするフラボノイド化合物であり、藍の主要な物質群。

藍はコレステロールの低減に有効な素材である可能性がある。

藍のフラボノイド化合物は、いずれも還元酵素の阻害活性を示し、その活性は高脂血症治療薬である「ロバスタチン」とほぼ同等レベルの阻害活性を示す。


✿藍の抗酸化能

藍は昔から健康維持目的で利用されていました。

様々な疾病は、活性酸素によって引き起こされると考えられています。

藍は高い「抗酸化能」があり、活性酸素消去能が優れていると言える。

藍には、抗酸化物質や抗菌物質が含まれている事が確認されている。










2021/03/16

シナノキ No,406

 シナノキ シナノキ科

科の木
原産地=日本

北海道から九州にかけて山地に分布する。


落葉高木で、ヨーロッパなどに自生するボダイジュ類と混同して、「菩提樹」と呼ばれる事がありますが、和名としては「シナノキ」が使われます。

名前の由来は、樹皮が「シナシナしている」からとする説と、アイヌ語で「縛る、結ぶ」を意味する「シナ」からとする2説などがある。

長野県の古名である信濃は古くは「科野」と記したが、シナノキを多く産出したからではないかとも言われている。

よく似たボダイジュと同じく蜜源植物で、香りの良い花からハチミツが採れる。

山地に生え大木になるが、15年ほどのサイクルで伐採され、古くから樹皮の繊維などが利用されていた。

樹皮の繊維質が強いので昔は布を織ったり、縄を編んだりするのに使われた。

シナノキの樹皮は、古くから野良仕事着など、生活用品として利用され、古くは全国で生産された「しな布」の原料です。

三大古代織り布の1つで、その他に「芭蕉布」と「葛布」がある。

現在は、帯、のれん、バック、帽子など、工芸品として生産されている。

現在、主な「しな布」の生産地は、新潟県村上市や山形県鶴岡市の2地域のみとされる。


                          「シナノキ」


                                  「しな布」


✣芭蕉布(ばしょうふ)
芭蕉布は多年草「イトバショウ」から採取した繊維を使って織られた布で「蕉沙」とも呼ばれる。

沖縄県及び奄美群島の特産品。

                            「イトバショウ」

                                    「芭蕉布」

✣葛(くず)布
植物のクズの繊維を紡いだ糸から作られた織り布。

静岡県掛川市の伝統工芸。

                                       「クズ」

                                       「葛布」


✫類似種

オオバボダイジュは葉の径が10cmを超える大型の葉で、山地で見られます。

ヨーロッパ原産のフユボダイジュ、ナツボダイジュ類は、数品種が日本に導入されています。


✻生育環境

若木は日陰に耐えますが、高さ3㍍前後を超えると、日当たりの良い事が大切です。

やや湿り気がある土壌が最適で、水はけが良いことが大切です。

寒さに強い樹種で寒冷地にも適します。

風当たりが強い所では、葉が傷んで秋の黄葉が楽しめません。


❆病害虫

暖地では、カミキリムシ類に幹や枝を食害されやすい傾向があります。

ヨーロッパ系のボダイジュ類では、葉を傷めるハマキムシに注意します。

実生、挿し木で殖やします。







2021/03/15

植物の生理障害 No,405

 植物の生理障害について

生理障害とは、植物が生育する上で受ける様々な障害のうち、病気や害虫以外による障害の事です。

生理障害を大きく分けると、栄養の過不足が原因となる栄養障害と、水分や光、温度などが原因となる環境障害の2つがあります。

害虫やカビ、キノコなどがないのに生育が衰えている場合は、こうした生理障害を調べるようにします。

✪主な栄養障害

植物が健康に生育するには、適度の栄養分が必要になります。

この栄養分が不足すると障害が発生します。

また、養分によっては多過ぎても発生する事があるので注意します。

植物の栄養のうち、元素では窒素(N)リン酸(P)カリウム(K)が三大要素です。

この他、微量要素として鉄(Fe)やマグネシウム(Mg)カリウム(Ca)硫黄(S)などがあります。

✻窒素(N)

葉緑素やタンパク質を作るのに欠かせない元素ですが、不足すると生育が衰え、葉が小さくなって黄色くなります。

葉の色が黄色くなるのは、植物体の上部より下部で目立つことが特徴です。

窒素が多過ぎると葉が多くなって花が少なくなるので、果樹では果実の量(収穫量)が少なくなるなどの弊害が出ます。

          「チッ素不足のジンチョウゲ」

✪リン酸(P)

植物体内の整理作用を良くする働きがあります。

不足すると花の着き方が少なくなったり、葉が暗緑色に変化したりします。

特に、火山灰土のようなリン酸を含む肥料を与えても、植物に利用される分が少なくなりがちな土壌では注意が必要です。

✫カリウム(K)

植物体内の新陳代謝を良くする効果があります。

不足すると、葉の周辺部が黄色くなり果実の肥大成長を、妨げるなどの障害がでます。


✻環境障害

水分の過不足
鉢植えや排水が悪い土壌などでは、水が多過ぎると根腐れを起こす事があります。

逆に少な過ぎると葉や枝が萎れ、限度を超えてしまうとやがて枯れてしまいます。


✣光障害

植物のほとんどは成長するために、特に、庭木や園芸用の植物は光が必要です。

この障害は通常の栽培では起こりにくいですが、鉢やプランターなどの室内で栽培していたものを直射日光に当てると、急に光の量が増えることによって、葉焼けを起こすことがあります。

このような障害を「光障害」といいます。


              「葉焼けしたクンシラン」

❆温度障害

低温や高温により生育が衰えたり枯れることがあります。

特に、低温については植物ごとに耐えられる最低気温が違うので、注意が必要です。







2021/03/14

ユリノキ 百合の木 No,404

 ユリノキ モクレン科

別名=ハンテンボク、レンゲボク
英名=チューリップ·ツリー
落葉高木

北アメリカ東部に隔離分布することで知られ、中国と北アメリカにそれぞれ1種がある。

テネシー州、ケンタッキー州
インディアナ州のシンボルツリー

日本へは明治時代初期に渡来し、各地に植えられている。

本州以南での植栽が可能です。

ユリノキ属は、約3千万年から5千万年前にモクレン属の木から分岐したものとされ、これは大気中の二酸化炭素が急激に減少した時期と一致しています。

ユリノキは成長が早く、大量の炭素を貯蔵できるように進化しました。

ユリノキは、炭素を固定するのに非常に効果的であることが知られている。

CO2を空気中から取り除く特性により、気候変動対策の貴重な要素になる可能性があります。


✫名前の由来
学名は「チューリップのようなユリノ木」という意味。

葉の形が半纏に似ている事から「ハンテンボク」とも呼ばれる。

❆半纏(はんてん)
日本の伝統的な綿が入った防寒着のこと。




大きく育つと直立した幹から大枝を広げ、雄大な卵形状の樹冠を見せます。

ただ、強い風や積雪に対して枝が折れやすく、樹形を乱す事があります。

大木になるため庭木よりも、公園や街路樹などに利用される事が多い樹種です。

互生の葉は両面とも無毛。
葉柄は3〜10cmと長く、秋には黄葉する。

5月から6月頃、葉が展開してから新しく伸びた枝先に花が開きます。

花の形はチューリップに似ていて、黄緑色で付け根の部分にオレンジ色が混じります。

果実は翼果が上向きに多数集まった松かさ状の集合果。

10月頃に熟し、裂片状に剥がれます。

晩秋から初冬にかけて最も外側の翼果が、コップ状に残っている事が多い。

✫品種
葉に斑が入る「ミヤビ」や「オーレオ·ギアータム」などの品種がある。

公園や街路樹などの利用が一般的ですが、庭木として利用する時は自然樹形を基本に切り戻しを行って、高さ、枝幅とともに5㍍以内ぐらいを目安に育てます。

✫生育環境

日当たりが良く肥沃な土壌が最も適しています。

枝が折れやすいことから、雪が多い地域や風が強い場所には適しません。

✪病害虫
アメリカシロヒトリが葉を食害する事があります。

スミチオンなどの殺虫剤で、見つけ次第早めに駆除します。

✣殖やし方
実生、挿し木によりますが挿し木の活着率はあまりよくありません。


針葉樹でも広葉樹でもない仲間の木

中間微小繊維構造の存在が明らかになった。

この木は「ミッドウッド」と名付けられ、成長が早く多くの二酸化炭素を蓄える効果があるとされ、炭素隔離に効果的だそうです。

木は被子植物一般的には広葉樹で、裸子植物は針葉樹と呼ばれますが、「ミッドウッド」は中間の木とする新たな発見である。


これは地球温暖化対策に期待大か⁉️