緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/05/02

サワラ No,453

 サワラ ヒノキ科  常緑針葉高木

原産地=日本(本州、九州) 「椹」

さわらかな(すっきりしている)木を略した名前である。

ヒノキによく似ているが、樹形に隙間が多く、幹や枝がよく見える。

葉先がヒノキと異なり鋭いこと、また球果が小さいことで見分けがつく。

山地に生える針葉樹で大きいものは高さ50㍍、直径1.5㍍にも達する。

日本特産で多くは建築、器具、風呂桶、飯びつなどの用材にされるが、園芸品種も多く、庭園や公園樹、生垣用として植えられる。

樹皮は赤褐色から灰褐色で、縦に裂け目があり薄く剥がれる。

葉裏には白い気孔帯があって、これがX字形に見えるのが特徴で、Y字形になるのがヒノキ(檜)の特徴で見分けができる。

また、葉芯に沿って白い気孔帯の縦線が数本並んでいるものはアスナロ(翌檜)の特徴である。


生育環境

湿気を十分に含んだ肥沃な土壌が適している。

耐陰性に優れヒノキより生長は早い。
せん定や整枝にも耐える。
大木になると移植は困難です。

肥料

油かす、化成肥料を寒肥として施す。

殖やし方

実生と挿し木による。
実生は前年秋に採取した種子を貯蔵し、翌年3月に播く。

挿し木は水はけのよい砂質土を用い、3月から4月に行なう。


種類

サワラの園芸品種としてシノブヒバ(ニッコウヒバ)は公園や庭園で見かけられる。


主なサワラの天然記念物、巨樹

西金砂のサワラ 県指定天然記念物

所在地=茨城県常陸太田市上宮河内町1915
(西金砂神社)


               「西金砂(にしかなさ)のサワラ」


平八幡神社の大サワラ  県指定天然記念物
宮城県は自然分布上の北限とされている。
その北限地帯に巨樹が多く繁茂(はんも)しているのは、学術上貴重な事であると考えられている。

所在地=宮城県気仙沼市川原崎


「平八幡(たいらはちまん)神社の大サワラ」






2021/05/01

ハシバミ No,452

 ハシバミ カバノキ科 落葉低木

別名=オオハシバミ、オヒョウハシバミ「榛」

原産地、分布=日本(本州、北海道、九州)
ウスリー、アムール、朝鮮半島、中国

日本各地の日当たりのよい山野に自生する。

葉がオヒョウのはに似ているので「オヒョウハシバミ」とも呼ばれる。




3月から4月頃同じ株に雌雄別々の花を、葉の展開前に開花する。

若葉に紫色の斑紋がある。

花も美しいわけでもなく、また木にも特徴がない事から、庭木として利用される事は極めて少ない。

10月頃、球形のドングリ状の実をつけるが、この実は古くから食用にされている。

「ヘーゼルナッツ」の名で親しまれているのは、ヨーロッパ原産の「セイヨウハシバミ」の果実である。


✿ヘーゼルナッツ

ヘーゼルナッツは、黒海沿岸地方での栽培がおよそ60%以上を占めていると言われています。

特に、トルコでの食用としての歴史が古く、紀元前に遡る。

アメリカ、イタリアでも栽培されていますが、その範囲はアジアの西側やヨーロッパの南側にも及びます。

ヘーゼルナッツは、アーモンドやカシューナッツとともに、世界三大ナッツの一つとされている。

ヘーゼルナッツの効能も様々で、便秘や月経不順の改善、味覚の働きを保つのを改善する働きがあると言われ、また骨を強くしたり、細胞の老化を防ぐ作用もあると言われています。

含有成分は、オレイン酸やカルシウム、カリウム、鉄、亜鉛、リン、ビタミンE、食物繊維などが含まれています。

ヘーゼルナッツは美容オイルとしても利用され、ヘーゼルナッツオイルは脂性肌に向いているオイルで、特にニキビにいいと言われています。

オリーブオイルの2.5倍ほどのビタミンEが含まれ、その他ビタミンA、B、マグネシウムなども含まれているため、肌にたくさんの栄養を与えてくれます。

肌のたるみを引き締めてくれます。
オレイン酸を豊富に含むことから、肌に潤いを保つことができます。

また、石鹸のメインとなるオイルとしても向いていますが、ヘーゼルナッツオイルのみだと柔らかい石鹸になり過ぎるので、硬さを出すオイルを少量混ぜる必要があります。


生育環境

日当たりのよい土地を好むが丈夫な木であるので、あまり土壌を選ばない。

比較的寒冷地を好み、南日本には自生が少ない。

せん定にも強いが自然のままにした方が実の付きが良い。


肥料

ほとんど肥料を必要としないが、有機質肥料や化成肥料を施せば生育が更に良くなる。

殖やし方は実生か挿し木によるのが普通です。

植え付け、移植は11月から3月頃に行なう。


種類

同属にツノハシバミ果実に2本のツノがある。

オオハシバミなどがある。

日本の伝統的色名の1つの榛色(はしばみいろ)は「セイヨウハシバミ」の実の色に由来している。







2021/04/30

ギョリュウ No,451

 ギョリュウ    ギョリュウ科

落葉小高木  「御柳」
別名=タマリクス  原産地=中国

ギョリュウの仲間はヨーロッパ、アジア、アフリカに約75種が分布します。

その中でも中国中部から南部原産のタマリクス·キネンシスを指して、和名でギョリュウと呼びます。


糸のように細かい小枝に小さく細かい葉が密生し、垂れ下がる様子は独特の樹形であり、水辺の風景によく似合う。

5月から7月頃の2度花をつけるが、結実するのは夏の花だけで、花の数も夏の方が多い。

盆栽としては、シダレヤナギとともに夏の涼風を感じさせる木として観賞される。

ギョリュウの仲間は、海岸や内陸の塩分を多く含む土壌など、本来植物が育ちにくい場所に自生する塩性植物です。

枝葉に「塩腺」と呼ばれる器官があり、余分な塩分はそこから体外に排出することができるので、そのような場所でも生きられます。

日本には江戸時代に渡来したとされる。

水を非常に好む湿地に適した数少ない庭木の1つです。




生育環境

日当たりのよい湿潤地を好むが、土質を選ばず海岸の塩分の入った土壌でも育つ丈夫な木である。

萌芽力も強く、大木の移植は思いきり切り詰めて行なう。


塩性植物の種類

マングローブに自生するオヒルギ(ヒルギ科)

クロマツ(マツ科)、ハマボウ(アオイ科)、ギョリュウ科などを例外として、ほとんどが草本類である。

日本で代表的な塩性植物

アイアシ(イネ科)、シオクグ(カヤツリ草科)、アッケシソウ(ヒユ科)、オカヒジキ(ヒユ科)、ウラギク(キク科)、ハマサジ(イソマツ科)、シバナ(シバナ科)


肥料

寒肥として堆肥、鶏ふんなどを施す。

せん定は2月から3月頃と6月から7月
植え付け、移植時期は11月から3月

殖やし方

前年枝を20cmくらい切って3月から4月頃に挿し木する。

新枝なら6月から7月に箱挿しする。
実生は3月頃に播く。


種類

テトランドラ
ヨーロッパ南東部、西アジア原産で濃いピンク色の花を咲かせる。

キネンシス
中国原産、単にギョリュウと言うと本種を指すのが一般的です。

ペンタンドラ(類似種)
南東ヨーロッパ、中央アジア原産で花付きがよい。


✣オーストラリア原産の花木「ギョリュウバイ」はフトモモ科の植物で「ギョリュウ」とは関係がない。

ギョリュウバイは、オーストラリア、ニュージーランドを中心に約40種が分布する常緑の低木で、鉢植えや生垣などに利用される。







2021/04/29

スギ No,450

 スギ スギ科 常緑針葉高木  「杉」

原産地=日本(本州、四国、九州、屋久島)

スギの名は、真っ直ぐな木という意味の「直木、すき」が語源とされる。

日本の針葉樹では最も樹高が高くなり、日本一高い天然樹は秋田県にある58㍍、日本一太いのは屋久島の縄文杉で、幹囲16.4㍍と記録されている。

山地に生え、主に太平洋側に分布するが、日本海側に分布するものは、多雪でも枝が折れずに垂れ下がり、着地した部分から発根するので変種とされ「アシウスギ」と言う。


                                   「アシウスギ」

屋久杉のスギはヤクスギの名で呼ばれ樹齢1000年を超える。

スギは日本特有の樹種で高さは40㍍以上にもなる。

常緑針葉樹の中でも春の芽出しが美しい。

生育環境

水はけがよくしかもやや湿潤な所が適している。

芽吹きがよいので強いせん定や刈り込みを行うことができるが、適期以外は避ける。

庭植えでは円錐形か円筒形に仕立てるのが一般的で、放任しておくと高くなり過ぎる。

強いせん定は3月から4月に行う。
植え付け、移植時期は3月から4月頃だがやや難である。

肥料、害虫、病気

12月から1月に寒肥を施す。
無肥料でも育つが病害虫にかかりやすく、また樹姿も美しさを失う。

病害では枝先から褐色に変わってくる枝枯れ病が目立つ。

害虫はコガネムシによる被害がある。
コガネムシ対策はデナポンを5月頃に散布する。

殖やし方

挿し木で殖やす。
春挿しと秋挿しの2時期があるが、活着率が比較的よい春挿しが一般的です。

実生も可能ですが園芸品種には不向きである。


種類

庭木として最も多いのがヨシノスギ」です。
新芽が鮮やかな黄色を帯びる「オウゴスギ」

葉が長く枝が八方に下垂気味に伸びる「エンコウスギ」などの変種もある。

八つ房性のスギは、新芽が2年枝の側面まで多数発生するために小枝が極めてたくさん伸びる。

枝変わりから挿し木繁殖されたもので、✫矮性種であることから盆栽に仕立てられることが多い。

✫矮性種(わいせいしゅ)
主に園芸分野において著しく草丈、樹高が低いことを指す用語として用いられる。

遺伝的に矮性を示す矮性品種、矮性種も存在するが、矮化剤処理や接ぎ木によって人為的に矮化を行う例もある。

イネ科穀物などは短稈(たんかん)と表現する。
例えば、短稈コシヒカリなどと呼ぶ。


主なスギの天然記念物、巨樹

杉の大杉      国の特別天然記念物
推定樹齢3000年

かつて、美空ひばりさんが「日本一の歌手になれますように……」と願をかけたと言われる大杉で、実際日本一の歌手になった逸話は有名で「出世杉」の異名がある。

所在地=高知県大豊町杉794  (八坂神社境内)


                                     「杉の大杉」

三川村の将軍杉  国指定天然記念物
樹齢1400年

幹周り19.31㍍で日本一の太さがあるとされる。
所在地=新潟県東蒲原郡阿賀町岩谷2242


                                「三川村の将軍杉」


縄文杉  推定樹齢2千年〜7千2百年
屋久島では樹齢千年以上の高齢杉を屋久杉と呼び、数百年の若木は小杉と称している。

所在地=鹿児島県屋久島町宮之浦


                                   「縄文杉」






2021/04/28

イヌエンジュ No,449

 イヌエンジュ マメ科 落葉高木

「犬槐」

別名=オオエンジュ、エンジュ、クロエンジュ
原産地=日本(北海道、本州)東シベリア

山地の林縁や川岸、湿原の畔などに生える。

全国に分布し、街路樹や縁起木として植えられる他、材や樹皮はいろいろ使用される。

人家に植えられることも多い。

エンジュは中国原産で薬効がある事から、日本でも古くから植栽され、在来種のイヌエンジュはエンジュに似ていながら薬効が無いという事から「犬エンジュ」と呼ばれるようになった。

しかし、材は大変美しく床柱に使われていることから、決して役立たずではない。

北海道の林業関係者の多くは、イヌエンジュの事をエンジュと呼ぶ。


確かにエンジュと呼ばれる事もあるが、中国産のエンジュとは属が異なる。

樹高は10㍍程になるが、4㍍程の木をよく見かけることが多い。

若葉には白い毛がびっしり生えて、遠くから眺めても銀色に光って見える。

花は真夏に咲き、黄白色の蝶形の花をびっしり咲かせる。

秋になると、マメ状の果実が褐色に熟し、1つのさやの中に種が3〜6個入っている。




生育環境

日当たりを好むが、土には湿気が必要です。
樹勢が強くても枝の出方は少なく、あまり手がかからない。

枝先のせん定は行わず、間引きで整える程度で良い。
植え付け、移植時期は3月、9月頃

肥料

1月から2月に油かす、鶏ふん、化成肥料を寒肥として与える。


種類

イヌエンジュはカライヌエンジュの変種。
果実に羽のあるケハネミイヌエンジュやハネミエンジュなどの変種もある。

類似種にシマエンジがある。

✣関連ブログ
エンジュNo,273






2021/04/27

ソヨゴ No,448

 ソヨゴ モチノキ科 「 冬青」

常緑低木または小高木
別名=フクラシバ
原産地=日本、本州(新潟県以西、四国、九州)

ソヨゴとは「そよぐ、戦ぐ」と言う意味で、硬い葉が風に揺られてサラサラと音を立てることから名付けられた。

日本では冬青の字を当てているが、中国で冬青と言うと「ナナミノキ」を指す。

暖地の山地などに生え、高さは10㍍程になるが6㍍程の木が多い。

6〜7月頃に白い4弁の小花をつけ、雌株は秋に赤く熟した丸い実が垂れ下がる様子が美しい。

材は、ソロバン珠のほか小器具などに利用され、また樹皮から鳥もちがとれ、タンニンを含むので染料にも利用される。




生育環境

肥沃な砂壌土を好む。
あまりせん定はせず、自然樹形で楽しむ。

浅根性のため、台風などによって倒れやすい。
大きくなると次第に樹が傾きやすい。


肥料

5月から6月頃に油かす、化成肥料などを与える。


植え付け、移植時期は6月から10月頃に行う。

殖やし方は主に実生で、3月から4月に播く。