緑のお医者の徒然植物記

Translate

緑のお医者の徒然植物記

検索結果

2019/11/05

植物の栄養障害 No.180

植物の栄養障害

チッソ、カリウム、リン酸の必須3要素の過不足


◉チッソ

植物の生育、養分の吸収、同化作用を盛んにする働きチッソ欠乏
葉の色が薄く黄色くなって小型になる。

葉緑素の形成も悪くなり生育不良になる。

✣チッソ過剰

葉の色が濃くなり茂りすぎになる。

組織が軟弱になったり成熟が遅れたりして、病害虫に侵入されやすくなる。

球根腐敗病を誘発しやすくなる。

花芽分化が阻害され、花が咲きにくく結実しにくくなる。

✻リン酸

植物の生育や根の伸長を促したり
開花、結実を良くする働き。

✻リン酸欠乏

花が咲きにくくなり、結実しにくくなる。

葉の艶がなくなって暗緑色となり、葉の緑や裏側は赤紫がかった色になることがある。

葉は小さくなって下葉から枯れてくる。

茎の上の方が異常に細かくなって花が少なくなり、根の発達も悪くなる。

✻リン酸過剰

一般的に症状はあまり現れないが、セントポーリアの葉は固くなって波打つ。

亜鉛、鉄、マグネシウムなどの吸収を妨げる場合がある。

✣カリウム

光合成、炭水化物の蓄積を促します。

球根を肥大させて品質を良くする働きがあります。

病害虫に対する抵抗性を持っている。

✻カリウム欠乏

葉の中心部が暗緑色、葉の先端や縁が黄色くなり、そのうち褐色に変わる。

葉の先端や周辺組織が壊死することもある。

植物体は軟弱になって、下葉から枯れあがる。

茎の伸びが悪く、折れたり倒れたりしやすくなる。

根が発育不良になり、耐寒性、耐暑性も低下する。

✻カリウム過剰

カリウム、マグネシウムの吸収を妨げる。

✫栄養障害微量要素の過不足

✻カリウム

根の発達を盛んにし、細根をたくさん発根させます。

酸性土壌を中和する効果があります。

✻カリウム欠乏

成長組織の発育不全、とくに芽の先端部は枯死することがある。

根の細根が少なくなる。
新しい葉が奇形になる。

稲ではクロロシス(白化)や枯死が起こる。

果樹類の若葉の枯死、トマトの尻腐れ、白菜の縁腐れ、キュウリやメロンの芯どまりなど。

✻カリウム過剰

障害はあまりないがマグネシウム
カリウム、リン酸の吸収を妨げる。

✣マグネシウム

葉緑素を構成する要素で、リン酸の吸収や移行に役立ちます。

✻マグネシウム欠乏

生育が遅延したり不良になったりする。

下葉の葉脈が黄色くなり徐々に上葉におよぶ。

葉全体が黄化すると落葉する。

麦類では縞(しま)やじゅずだま模様に黄化することがある。

✻マグネシウム過剰

土壌中のカルシウムに対してマグネシウムが多すぎるとカルシウム欠乏になる。

✣鉄

✻鉄欠乏

土壌がアルカリ性になると植物が吸収できないので、欠乏し若葉が黄化する。

とくに葉脈の間は激しく黄化し、ほとんど白くなってします。

葉脈部は比較的緑色が残る場合が多い。

✣その他の微量要素

マンガン、ホウ素、銅、亜鉛、モリブデン、塩素などの微量要素は
土壌中に含まれているのでほとんど欠乏する。

プランターや鉢植えの場合に、土以外の培地を利用して化学肥料を与えていると、欠乏症が発生することがあります。

◉欠乏

おもに葉のいろが退化したり、葉脈が黄化する。

また生育不良なども起きる。



2019/11/04

植物の生理障害の原因 No179

生理障害は伝染病じゃない

生理障害の原因は天候、土壌、外的なストレス。

これらの原因がいくつか重なったり複雑に絡み合うことによって、植物が生理的に変調を起こしたり障害が現れたりします。

植物の異常

病原菌感染による伝染病
害虫による障害
生理障害

◉生育環境

気温が高過ぎたり低すぎたりする
湿度が多すぎたり乾燥し過ぎたりする。

日照が多すぎたり少なすぎたりする。

風が強い、霜が降りるなど。

◉用土

通気性が悪い。
土壌のPH適性が合わない。

◉管理方法

水やりが多すぎたり少なすぎたりする。

肥料が多すぎたり少なすぎたりする。

植え替え方法の失敗(根づまり)

◉その他

薬害
煙害
有害物質、公害など
葉と葉との接触など

気温

植物によってそれぞれの成長の過程で、それぞれの生育に適した温度があります。

それがうまくかみ合わないと高温障害、低温障害となって現れてきます。

症状

✻花芽がつかない。
(花芽分化期の気温が不敵)

✻花が咲いても早く萎れてしまう。
(高温)
✻実がつかない。
(異常低温、高温)

✻果実の巣上がり症=果肉の水分がなくなってパサパサになる。
(冬期の低温)

鉢巻症=果実に薄い褐色の鉢巻部分ができる(冬期の低温)

葉やけ=(夏の高温)

ブドウの萎縮病=眠り病=発芽がたいへん遅くなる。
(凍害)

対策

それぞれの植物にとっての適温を考えてやる。

果樹では果実に袋をかけてやったり、暖かい場所に植え替え。

凍害を防ぐためには、樹を徒長させないように気をつける。

葉やけには夏の西日を避けるために日除けをしてやる


日照

植物の成長には日光が必要不可欠、植物によって日照の量の好みがちがう。

日照不足の病状


花芽がつかない
葉や花の色が悪い(日焼け)
実を結ぶがうまく育たない、色が悪い
下枝が枯れる
枝の徒長
枝や幹の枯死や変形(夏の直射日光による熱死)

湿度と土壌

湿度

根が吸収する水の過不足や、空気の湿度が植物の生育に大きな影響をあたえます。

症状

✻葉の縁が縮れてくる。
(空気の乾燥)
✻葉が萎れたり枯れたりする。
(水不足、空気の乾燥)
✻葉の色が悪い。
(水不足、過湿の乾燥)
✻花芽はつくがつぼみが咲かない。(冬の水不足)
✻花弁にシワがよる、早くしおれる(乾燥)
✻実を結ぶがうまく育たない。
(水不足)
✻実が小さい、実にシワがよる。
(乾燥)
✻葉の先が枯れる、幹や太い枝が枯れる。
(過湿による根いたみ)

対策

土の表面が乾いたら水やりをしましょう。

水やりが多すぎると水分過剰のために、土壌中の酸素が不足し根が呼吸困難になって腐る。

土壌の排水性と通気性

植物の生育にとって良い土とは、水と空気を十分に含んだ土。

水については適度な保水性と排水性。

空気については通気性が必要。

症状

土壌の排水性と通気性が悪いと、水のやりすぎと同様に根腐れを起こして下枝が枯れたり、枝葉の伸びが悪いなどの障害が現れてきます、枯れることもある。

対策

排水性、通気性を良くするために土壌改良する。







2019/09/05

イチョウ「銀杏、公孫樹」No.178


イチョウ 落葉高木

別名=ギンナン、コウソンジュ

恐竜時代の太古から現存する歴史的樹種。

二億年前のジュラ紀から、現存するたいへん古い樹種当時は日本にも自生していましたが、古い時代の内に滅んだと考えられています。

日本で見られるイチョウは、中国浙江(せっこう)省の原産と言われ、飛鳥時代(593年~710年)の仏教伝来と共にもたらされ、初めは寺社を中心に植えられました。

室町時代(1338年~1573年)以降、一般に広まりました。

耐暑性、耐寒性ともに強く、北海道から南西諸島に至る全国に分布

樹高は30~40メートル

刈り込みに耐え、大気汚染にも強く、耐火性も高いことから寺院庭園樹、街路樹、防火樹、環境緑化樹に利用される。

その他、盆栽樹としても親しまれています。

太平洋戦争の大空襲で、焼け野原となった東京に最初に芽生えたのもイチョウで、東京都の樹木に指定されています。

イチョウは雌雄異株で、4月から5月にかけて開花します。

雄花は房状に下垂し、比較的目立ちますが、雌花は先端に2つの丸い膨らみ(これが後にぎんなんになる)を持つ小さなY字型の花で注意して見ないとよく分かりません。


                              (雄花)


                            (雌花)


イチョウは、扇形の葉が特徴的ですが、この形が鴨の足形に似ていることから鴨脚(おうきゃく)の中国読みである「イーチャオ」が転訛して、イチョウとなったと言われています。

尚、鴨脚はいちょうと読むこともできます。

秋に美しく黄葉することで知られますが、南西諸島などの暖地では黄葉しません。

雌株の果実は9月から11月に黄色く熟し、種子を銀杏(ぎんなん)として食用にするのは周知の通りです。

※「銀杏」という漢字は実を指す言葉です。

木材はまな板の高級品として使われる他、基盤などにも利用されます。

中国では、乾燥した果実を白果(はくか)と呼び、鎮咳去痰
(ちんがいきょたん=せきをしずめながらたんを取り除くこと)

葉を銀杏葉(ぎんようは)と呼び、血圧安定などの生薬として古くから用いています。

20世紀後半からドイツを中心に、イチョウ葉の研究が進み主成分であるフラボノイド、ギンコライド、ビロバノイドなどに優れた薬効があることが証明されました。

こんにちでは痴ほう症、耳鳴り、めまいなどに効く医薬品として、世界55ヵ国以上で認定されています。

イチョウには園芸種(変種)として、葉に黄色い斑が入るフイリイチョウ、葉の上に結実するオハツキイチョウ、葉が円筒状になるラッパイチョウなどがあります。


雌雄異株

雄の木と雌の木の見分け方は、開花時期になってから雄花か雌花かを見ないと判断出来ません。

街路樹の場合、実が落ちて臭くなることがないように実が落ちない、実が出来ない雄の木だけを選んで植えています。

雄の木だけを選別し、接ぎ木や挿し木で株を殖やしています。

イチョウは、花粉が運ばれて数キロ、雄、雌の木が離れていても受精することができます。

これを「風媒花=ふうばいか」といいます。

風媒花とは、花粉媒介を風に頼る形の花のことで、目立たない花をつけるものが多いヒノキやスギと同じように、風で花粉が運ばれるのです。

例えば、庭に雌の木だけを植えていても、飛んでくる花粉で受精し、結実するということがあります。

相手が全くいないように見える状況でも、結実する可能性があると言うことで、まるで遠距離恋愛のようである。

実が地上に落ちて、種になり自然に生えるものは実が出来るまで25年くらいと言われています。

当然接ぎ木や挿し木の方が、枝自体がもともと年数を経ているわけなので、実が早くなると言うことです。

実が出来るには雌の木5本くらいに対し雄の木は1本で十分で、遠距離かつ、ハーレム?なのである。

長く生き続けるイチョウの生命力の強さを感じるものです。

ギンナン食中毒?

ギンナンを食べて食中毒になることがあります。

ギンナン食中毒を引き起こす原因はビタミンB6の欠乏だと言われています。

ギンナンには、ビタミンB6に似た毒性物質が含まれていて調理などでこれを分解することが出来ません。

この物質が体内のビタミンB6の作用を低下させビタミンB6欠乏症を引き起こすことで、健康な人でも
ギンナン食中毒を起こす可能性があります。

その時々の体調によって、引き起こされる可能性があるものです。

体内のビタミンB6の状態を、把握することは困難です。

その為、防ぐには大量摂取しない。

少量でも、継続して摂取しないことが重要です。

子どもはさらに注意が必要です。
ギンナンを食べることは避けるべきと思います。



昭和20年8月の水戸空襲の際に、黒焦げになりながらも、生き残ったと言われている水戸駅北口側にある銀杏の木。


イチョウの生育管理

日当たり、水はけのよい腐植質に富んだ場所を好みます。

土質は特に選びません。

極端な乾燥地でなければ、やせ地でもよく育ちます。

ただし、潮風にはやや弱い傾向があります。

半日陰でも育ちますが、十分な日照がないと側枝が徒長しやすくなり、扱いにくくなってしまいます。

移植はかなりの大木になっても可能です。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥、腐葉土をすき込んで高植えにします。

大木もそのまま植え替えが可能ですが一般の庭では幹を途中で切って植え付け、活着するまでワラやコモなどで幹巻きして保護します。

適期は3月から4月、暖かい地方では11月も可能この時期であれば、根鉢の土が落ちても活着します。

肥料は余程のやせ地でない限り必要ありません。

やせ地や枝葉を充実させたい場合は、リン酸、カリ分の多い肥料を寒肥として与えます。

病害虫の心配はほとんどないでしょう。

せん定

放任すると大木になるので、一般家庭では強せん定が必要になります。

好みの高さで樹芯を切り、太い枝も切り詰めます。

芽吹きがよくすぐに短い枝が出るので、毎年整理して枝数を殖やします。

葉は葉柄が長く、短い枝に密に互生するので美しい葉姿を楽しめるでしょう。

また、脇枝が分枝している部分でせん定を繰り返すとコブ状になりますが、この独特の樹形を楽しむのもひとつの方法です。

殖やし方

実生、挿し木で殖やします。実生は果肉を取り除き、赤玉土(小粒)にそのまま蒔くか、翌春に蒔きます。

ギンナンは3月~4月に蒔くのが一般的ですが、秋に採り蒔きした方が発芽しやすい。

挿し木は、前年枝を20センチほどに切って挿し穂とし、赤玉土などの暖地さし床に挿します。

いずれも十分に灌水し、ピートモスなどを薄く敷いて乾燥に注意しながら管理します。

庭木からギンナンを採取するには雌木が必要ですが、公孫樹(こうそんじゅ)の名が示すように40年以上もかかります。

従って、結実年数に入った木から得た接ぎ穂を接いだ(実成りイチョウ)の苗木を求めて植えることです。


◉イチョウ関連ブログ
イチョウ葉の薬効 No,579
太古から現存するイチョウの木 No,521
銀杏(ギンナン)の実生で盆栽を作りたい。
No,66





2019/08/31

複色(ふくしょく)という色 No.177

複色(ふくしょく)について

複色とは、ひとくちで赤、ピンクとは言えないひとつのお花の中に、複数の色が含まれている色を表現するときに使われている、花業界独特の色の名前です。

一つの花の中に2つ以上の色があることを複色と呼んでいます。

複色の花色を表現する言葉として
バイカラー(二色花) トリカラー(三色花)などがよく使われますが、複色の花は2つ以上の色彩がいろいろなパターンで組合わさった模様を作り花色が複雑になることも多く、この場合にはこれらの複色をうまく表現するのが、難しい場合もあって困ることもあります。


                          (アンネのバラ)

新しく出てくる花は、複色のものがとても多い傾向にあります。

単色の花も素敵ですが、微妙な色合いの複色カラーは合わせる花色によって、まったく見え方が違ったり、色合わせをするのが楽しくなる花色でもあります。


代表的な複色の花

アジサイ、アサガオ、アストロメリア、アザレア(ニコレット)

アマリリス、カーネーション、ペチュニア、チューリップ

ビオラ、フロックス、ナデシコ、ユリ、バラ等その他多数

咲き進むと花色が変化していくもの、これを「色変わり」と言いますが、これも複色の一つと言っていいでしょう。

その他、複色と言える代表的なもの

絞り(しぼり)

「絞り」は布を糸でしばるなどして、染まらない部分を作る染色の技法ですが、花びらに現れた不規則な模様に似ていることから「絞り」と呼んでいます。


                         (ツバキ)

また、絞りを細かく分類すると
大絞り(おおしぼり) 絞りが大きく入る大小絞り(だいしょうしぼり)大小の絞りが花弁に入る小絞り(しょうしぼり)細かい点がはいる荒絞り(あらしぼり)おおざっぱな絞りが入る竪絞り(たてしぼり)花弁に明瞭な縦筋が入る伊達絞り(だてしぼり)一つの花に大絞り、竪絞りが入るこれは一部の分類であり、他にも多数あります。

覆輪(ふくりん、ピコティ、斑入りの一種)

花びらを縁取るように、縁だけに別の色が載る模様の花を「覆輪」と呼びます。

中には縁取りの幅が狭く、ほぼ「線」くらいの細さになっているものを「糸覆輪」と呼ぶこともあります。


                          (クリスマスローズ)

その他、白覆輪、紅覆輪等がある。

ブロッチ

花の中央に地色(グランドカラー)と異なった色の大きな斑点が入る模様を「ブロッチ」と呼びます。

パンジーの花の真ん中にある斑紋が代表的です。


         (ビオラ)









アガパンサス No.176

宿根草 アガパンサス

別名=ムラサキクンシラン ユリ科

ギリシャ語で「愛の花」という意味のアガパンサス。

花色 紫、白、複色

水はけの良い土に元肥を与えて植え付け、日なたでも半日陰でもよく育ちますが、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。




5月と9月の上旬には、株回りに固形肥料を与えてます。

開花時期は5月頃から9月上旬頃まで。


花が咲き終わったら花茎の根元から切りとり、寒い地方では冬に、室内に取り込んで管理します。

切り花にする場合は、切り口をきれいに洗い、水揚げをよくします。

春(3月)と秋(9月)に株分けして殖やすことができます。

植え付け時期

3月~5月 9月~10月









2019/08/20

アベリア「花園衝羽根空木」No.175

アベリア

夏から晩秋にかけて長期間、花が楽しめる。

刈り込みにも強く、和風にも洋風にもマッチする。

◆スイカズラ科
アベリア属(ツクバネウツギ属)

アベリアの仲間は、主にメキシコや中国南部を原産地とするものが大半を占めますが、一般に「アベリア」と呼ばれているのは、中国原産のアベリア·シナンシス(シナツクバネウツギ)とアベリア·ユニフローラを交配して作った園芸品種「アベリア·グランディフローラ」です。

ハナゾノツクバネウツギと言うこと和名がありますが、和名で呼ばれることは稀です。

東京以西の暖地では常緑ですが、寒地では冬に落葉します。

◉生育管理

日当たりのよい場所を好みますが、土質は特に選びません。

日照が不足すると徒長枝が伸びて樹形が乱れやすくなるほか、花つきも若干悪くなります。