香り高きバラのお話し
ストレスの多い現代社会において、バラの甘い香りはちょっとした気分転換やリラックスに、最適であることを知っているだろうか。
「アンネのバラ」
バラの魅力は、その美しさだけではなく、原種のバラの中には美容、健康にも効果的と言われているものがあり古くから医薬品やアロマテラピー(芳香療法)にも用いられてきました。
また、芳香浴や香水にも使われていることも知られていることでしょう。
医学の祖と言われるヒポクラテスの書物には、バラを使った数々の治療法、特に婦人科系の疾患に対する処方が記されています。
その事から、バラの持つ薬としての効果効能が、遠い古代ギリシャ時代から、認められていたと言うことになります。
アラビア医学の権威、イブン·シーナは、バラの冷却作用を説き、発熱には花弁をオリーブオイルに漬けたものを頭に注ぐとよいとか、口内炎にはローズウォーターが効
果的と著しています。
バラの効果効能は、史実によって実証されていると言ってもよいのではないでしょうか。
1930年代頃までは、医薬品のひとつに数えられた、ガリカ種のバラは別名アポテカリーローズ(薬屋のバラ)と呼ばれました。
現代でもバラの効果効能の評価は高く、アロマテラピーには欠かすことの出来ないものになっています。
また、西洋だけではなく東洋でも、バラの活用の歴史は古く、中国ではお茶としてインドでは、治療薬として取り入れられています。
また、バラの果実はローズヒップと呼ばれ、レモン以上のビタミンCを含んでいます。
特にビタミンCが多いのは、ドッグローズ(ロサ·カリナ)の果実です。
この果実にはビタミンA,Eなども豊富で、壊れやすいビタミンCの吸収を助けます。
🌿ハーブティーやジャム、ハーブ酒などに活用できるローズヒップは、バラのもうひとつの優れた恵みと言えるでしょう。
香料バラ産地のブルガリアには「バラの谷」と呼ばれる一帯があります。
すでに古代ギリシャ、ローマ時代には、人の手で栽培が行われていた事が知られています。
ブルガリアのバラの最初の記録は、紀元前に遡ると言われています。
当時ローマ帝国の支配下にあったこの地方は、12種類のバラが栽培され、そのうちの1種類はトラキアン·ローズと呼ばれていたそうです。
バラがヨーロッパに持ち込まれたのは、13世紀のことで十字軍が当時シリアで栽培されていた、ダマスクローズを持ち帰ったのが最初だと言われています。
ブルガリアも同様に、バルカン山脈とスレドナ·ゴラ山脈の間の地域に根づき、これが現在の「バラの谷」に繋がっています。
冬は寒く、開花期の5月から6月は多湿で、土地は水はけのよい森林系の砂地で、バラの栽培には理想的な条件を備えた地域でした。
それは現在も変わることはありません。
「バラの谷」の人々は、代々バラの精油の抽出技術を研究し続け、世界で最も高品質なバラの精油抽出法を確立してきました。
その結果、バラの精油の生産は、この地域の伝統的な産業として発展したのです。
17世紀のヨーロッパにおける、香料産業の発展に大きく貢献し、バラの精油では世界市場の位置を占めるようになっていきました。
ブルガリアにおけるバラの精油生産の歴史は、300年を超えます。
世界一香り高いと言われる、ブルガリアンローズオイル(バラの精油)それは長い歴史の中で、独特の技術を培ってきた「バラの谷」の人たちの成果である。
バラの花摘みはとても大変な作業です。
陽が高く昇ってしまうと、芳香成分が蒸散してしまうため花の収穫は、朝5時頃から11時頃まで、それは太陽との競争です。
多い人で二時間の内に20㎏から30㎏を摘みます。
一家総出で、大きな袋をエプロンのように下げ、両手で手早く摘みます。
花が一番よい香りを放つのは、満開直前のカップ型、控えめに頬をほころばせているようなバラ、花開く時が最も香り高い時です。
美しく咲いても、ここでは農産物としてのバラ収穫に携わる人にとっては、生活の糧に過ぎません。
でも、「バラの谷」の人々はバラを楽しんでいます。
バラの香りに癒やされ、微笑んでいます。
そうそれは、バラのアロマテラピー効果が畑いっぱいに広がっているからに違いありません。