挿し木
親木となる樹木の枝、葉、茎などの一部を切り取って発根されたものを植え付けて殖やすこと。
実生と比べて生長が早く、花木などでも短期間で開花、結実させることが出来るのが特徴です。
※実生よりも2年くらい早く開花する。
他の繁殖方法よりも実施期間に幅があり、一般に春に行う場合を「春さし」といいますが、梅雨時や秋口も適期です。
挿し木は気温が暖かく(15℃~20℃)温度が十分に保たれている時期が適しています。
発根の元となる養分を多く蓄えているのは冬ですが、この時期は気温が低いので、暖かくなり根の活動を始めた頃の「春さし」が最もよい時期と言えるでしょう。
春伸びた柔らかい枝が固まり、2回目の伸長を始める6月頃に行う「梅雨さし」も養分、水分の状態がよいので挿し木の時期に適しています。
◉挿し木のいろいろ
①さし穂に樹木の枝を用いる場合は(枝挿し)
②根を用いる場合は(根挿し、根伏せ)
③ベゴニア、イワタバコなど草木の葉を用いる場合は(葉挿し)
④カーネーション、キクなど草木の茎を用いる場合は(芽挿し)
★挿し木の時期による分け方
2月~4月に萌芽前に行う場合は「春ざし、彼岸ざし」
6月~7月の梅雨期に行う場合は「つゆざし、夏ざし」
8月に行う場合を「土用ざし、夏ざし」
9月~10月に行う場合を「秋ざし」(針葉樹と常緑広葉樹)
◆さし穂の熟度による分け方。
(枝ざしの場合)
2月~4月の萌芽前に行う春ざしでは、休眠中の枝をさし穂にするので「休眠枝ざし、熟枝ざし」という。
6月~8月の生長期間中に行う夏ざしでは、その年に伸びた新梢をさし穂にするため「緑枝ざし」という。
◉さし穂が枝のどの部分かによる分け方。
✻枝をさし穂とする場合を「天ざし」
✻枝の先と基部を除いた部分からさし穂を取る場合を「くだざし」
✻枝の先と基部に1芽だけつけてさし穂とする場合を「葉芽ざし」
★さし穂の切り口による分け方。
数時間から一昼夜
(休眠枝ざしは水上げしない)
長時間置いた場合は、切り口を切断しなおしてから使う。
長時間置いた場合は、切り口を切断しなおしてから使う。
切り直した穂木は、メネデールやルートンなどの発根促進剤を溶かした水に1~2時間程度浸けておく。
✿穂木の長さの目安は
✣常緑樹で10~15㎝(緑枝ざし)
✣落葉樹は10~20㎝(休眠枝挿し)
日当たりのよい部分に成熟している枝を選びます。
日当たりのよい部分に成熟している枝を選びます。
古い枝よりも生長力が強く養分も豊富な若い枝がよく根づく。
挿し木の時期によって異なるが、栄養が多く与えられている本年枝、または前年枝を選ぶ。
穂木を取る時間帯は、植物の活動が盛んな日中は避け、朝(午前7時~9時)または夕方(午後5時~6時)に取る。
◆さし穂に用いる枝の採取
※マツ類
カラマツ、ヤマモモなどの挿し木の活着率が低い樹種では、なるべく樹勢が強い若木からさし穂を採取することが大切です。
※ヒバ類
コウヨウザン、ヒマラヤスギ、メタセコイアなどのように枝が横に長く伸長する性質のものは、出来るだけ上向きの枝または樹芯に近い上向きの枝からさし穂を採取しないと、苗がまっすぐに伸長しにくい性質がある。
落葉樹のうち、生育活動を開始するのが早い樹種を春ざしにする場合、1月下旬から2月頃に枝を切り取って貯蔵しておいたものを、挿し木の最適期である3月から4月上旬に取り出して挿し木することがある。
これは、挿し木適期に採取するとすでに生育活動が開始しているため、枝の養分が消費されつつあり、その為に発根力が弱まるという理由によります。
1月下旬から2月頃に切り取る枝は、30~40㎝の長さにして束ね、土中に埋めておくか、ビニールに包んで冷蔵庫15℃で保存。
◉土中に埋めて保存貯蔵の仕方。
しかし、葉数(あるいは葉の面積)が多いとそれだけ蒸散作用が活発になり、さし穂が乾燥しやすくなりますので、御互いにバランスを保てるように調整する必要があります。
※アジサイ類のように、特に大きな葉をつけるものでは、2枚残してさらに葉を半分に切ります。
※サンゴジュ、ツバキ、カクレミノ程度の葉のものは2枚から3枚が目安です。
※サツキ、ツツジ類のように小さい葉をつけるものでは8枚から10枚が目安です。
※マツ類、スギ、イチイ、キャラボクなどの針葉樹では、さし穂の基部3分の1くらいの葉を取り除く。
針葉樹以外の広葉樹においても基部3分の1くらいの葉を取り除く。
◉挿し木の時期②
2月から4月の萌芽前に休眠枝を用いて挿し木する方法
常緑広葉樹、落葉樹広葉樹、針葉樹のいずれも適用。
6月から7月の梅雨ざし、8月の土用ざしは原則として常緑広葉樹に適用されますが、落葉樹、針葉樹でも行われることがあります。
9月から10月の秋ざしは原則として針葉樹と常緑広葉樹に適用されます。
最も安全なのは2月から4月に行う春ざしです。
ツバキ、サザンカ類、サンゴジュ、モッコク、ゲッケイジュなどの常緑広葉樹は一般に6月から7月の梅雨ざしを行うのが最も安全です。
★注意⚠️
冬期に霜柱が生じてさし穂が動くとか、耐寒性の弱い樹種では、ビニールで防寒しなければならないことなどを考えると、特に露地で大量に挿し木する場合などは、この時期には行わない方がよいでしょう。
◉発根促進剤
植物ホルモンと同様の働きをします。
※さし穂の切り口にまぶして使用するもの(タルク剤)
ルートン、オキシベロン、ルチエース
※希釈液に浸して使用するもの
メネデール、ハイフレッシュ
※砂糖水の1000倍液を代用
★挿し木が比較的難しい樹種では、これらの薬品で処理してから挿し木するようにする。
◆さし床を作る
さし床を作るときは、保水性、排水性、通気性をよくすること。
切り口が腐らないように清潔な土であることが大切です。
樹種によって若干異なりますが、一般には赤玉土を使い、サツキなどの酸性土壌を好む樹種には、鹿沼土を用います。
小粒と中粒を用い、箱の底に中粒を敷いて上部に小粒を入れます。
赤玉土に砂土など混ぜた混合土にすると、通気性は更に向上します。
赤玉土に砂やピートモスを2割くらい混入したもの、あるいはバーミキュライトを単用する。
挿し木する本数が比較的少ない場合は、木箱表焼き鉢などに用土を入れて床を作る。
挿し木する本数が多いときは、畑や庭に直接床を作りますが、この場合は砂壌土の土地とし、排水性が悪い場所では、砂などを混入してから床を作る。
★穂木には、肥料を吸収する根がありませんから、施肥の必要はありません。
発根後は水で薄めた液肥を少量ずつ与えるようにする。
◉さし方
さし床は、さし木を行う前に十分灌水して土を落ち着かせておく。
直接土に挿すと穂木の切り口が傷むことがあるので、あらかじめ割りばしなどでさし床に2~3㎝程の深さの穴を等間隔にあけておきます。
全体の3分の1くらいを目安にし、挿した後は手で押さえるなどして土をよく密着される。
葉の大きなものは、蒸散作用を抑えるため、さらに上部の2~3枚の葉の先端を切ります。
◆さし穂を痛めないようにピンセットを使用してさし床に挿します。表面に対して垂直に挿します。