植物の茎や幹には立つ仕組みがある
植物には人間のような骨がありません。
どうして植物は骨がないのに立つことができるのでしょう。
一般に植物は、根が地上部を支えていることと、茎や幹が立つこととは別なものです。
植物の細胞の仕組み
植物は体のすべての部分が細胞というものからできています。
植物の細胞は1665年にイギリスの物理学者「ロバート・フック」により見つけられました。
フックは、ワインの瓶の栓などに使われるコルク素材に「なぜ他の木材にない軽くて柔らかく弾力があるのか」と興味を持ちました。
コルクは南ヨーロッパ原産の『コルクの木』と呼ばれる「コルクガシ」の樹皮から作られています。
フックはコルクを薄く切り、自作の顕微鏡でコルクを観察し、その結果、コルクはハチの巣のように中が空洞になっているたくさんの小さな部屋からできていることを発見しました。
そして、この小さな部屋のようなものにセル(cell)と名付けました。
これが日本語で言う「細胞」のことです。
しかし、フックが細胞を見つけた当時は、この小さな部屋のようなものが、植物の体を作り上げる基本的なものになっているとは認識されなかったのです。
フックは非常に多彩な研究者であり、生物学や物理学など多方面に業績を残している。
アイザック・ニュートンに消された男
(ニュートンに消された男、角川ソフィア文庫)
17世紀の時代に活躍したフックですが、しかし、彼の肖像画は1枚も遺されていない。
それは死後にニュートンが彼を学界から消して行ったかである。
時が過ぎ、約170年後の1838年になってようやく、ドイツの植物学者「シュライデン」が“植物の体は細胞からできている”と唱えたのです。
❉マティアス·ヤーコブ·シュライデン
(1804〜1881)現ドイツハンブルク出身元弁護士
シュワンと協力して、生物の細胞説を提唱した先駆者で、ドイツの植物学者。
更にその翌年、シュライデンの友人であるドイツの動物学者「シュワン」が“動物の体も細胞からできている”と提唱しました。
現ドイツ、ノイス出身の生理学者、動物学者
解剖学的な研究業績も残している。
神経繊維を研究して軸索=じくさく(神経細胞から電線状に伸びる長い突起)を包む鞘(さや)を発見した。
今日「シュワン細胞」と呼ばれている。
この二人の研究者の考えが基になって、細胞が植物や動物の体を作る基本単位であるとする、細胞説が確立されたのです。
その後、細胞説には「すべての細胞は細胞から生じる」という考えが加えられました。
しかし、植物細胞と人間などの動物の体を構成する細胞とは大きな違いがあります。
動物の細胞の外側は細胞膜という薄く柔らかい膜で包まれています。
一方、植物の細胞も細胞膜に包まれていますが、更にその外側には「細胞壁」という厚くて丈夫な壁に囲まれいます。
動物の細胞には細胞壁はありません。
動物にはない厚く強固な細胞壁を持つ植物は、細胞内にある核や葉緑体などを保護する働きをしますが、植物の体を支える働きもしているのです。
細胞壁の主な物質は「セルロース」ですが、さらに「リグニン」という成分を含むことにより、細胞壁をより硬くしている。
茎や幹はこのリグニンを多く含んだ、硬い細胞壁を持つ細胞を積み重ねて立っているのです。
よって、骨がなくても立つことができるのです。
セルロース
植物の細胞壁及び繊維の主成分で、植物はすべてセルロースを主構成成分として含んでいる。
地球上で最も多く存在する炭水化物です。
このセルロースが病菌(腐朽菌)などに侵入されると、樹は枯死してしまう。
白色腐朽型では、セルロース、ヘミセルロースそして、リグニンのすべての木材成分が分解され、灰白色から白色となる。
リグニン
セルロースなどとともに、高等植物の木化に関与する高分子のフェノール性化合物であり、「木質素」とも呼ばれる。
木材中の20〜30%を占め、セルロースと結合した状態で存在する。
「木材」を意味するラテン語(lignum)から命名された。
コルクガシ
ブナ科コナラ属の常緑高木
スペインを中心とする南ヨーロッパ原産
幹の肥大生長とともに、樹皮の中にコルク層が10cm以上にも発達する。
関東地方南部以西で一部植栽されている。
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