緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/02/10

沖縄は蘭の宝庫 No,370

 沖縄 亜熱帯県 沖縄ラン


豊かな自然が広がる沖縄は、多種多様な野生ランが自生する、亜熱帯地である。

沖縄は100を超える島々で構成されている自然豊かな所です。

年間平均気温は約22度で、年平均降水量が2000㍉と言う温暖で雨の多い、亜熱帯海洋性気候に属しています。

太古の頃、中国大陸と陸続きであったという地でもあり、様々な条件なども加わって、独特の✫植物相を形成しています。

✫植物相とはフロラとも言われ、特定の限られた地域や水域に分布、生育する植物の全種類をいい、動物相と合わせて、生物相を構成する。

沖縄における植物相の一つの特徴は、そこでしか見ることのできない固有種、亜種や変種が多いことです。

沖縄には、日本国内のラン科植物の約半数が分布していることから、ランの楽園とも言えるでしょう。

また、日本だけではなく中国やマレーシアなどの国外地域と、共通するランが多数自生し、南方系の植物の北限種も数多く見られます。


✿貴重な沖縄ラン

✻着生ラン
植物は一般的に土から生えるものですが、ランの一部種には土を離れて木にくっついて(着生)生活するものもあります。

木に着生するようになってから、根が乾燥にさらされるようになって行く過程で、独自に根を発達(進化)させたのが着生ランですが、栽培環境下でも、根に適度な湿度を保つことが重要です。

✻主な着生ラン種類
イリオモテラン、オオオサラン
オキナワセッコク、カシノキラン
クモラン、コウトウヒスイラン
シコウラン、ナゴラン、フウラン
ボウラン、マメヅタラン、ヨウラクラン


                     (イリオモテラン)

✺イリオモテラン
南西諸島からフィリピンにまで分布
春に開花し、個体によっては芳香がある。


                         (カシノキラン)

❆カシノキラン
日本の暖地から台湾にまで分布。
淡黄色のちいさな花を密に咲かせる


✿地生ラン

地生ランは、薄暗い林床に生えるものと、太陽の照りつける場所に生えるものとがある。

栽培においても、自生している場所と同じ様な環境を作ってあげる事が大切です。

✻主な地生ランの種類
オキナワチドリ、カツウダケエビネ
キバナシュスラン、タイワンエビネ
ナテラサギソウ、ナリヤラン
バイケイラン、ヒメトケンラン


                   (タイワンエビネ)

✻タイワンエビネ
台湾と沖縄に分布。
基本種のエビネとほぼ同じで、ウイルス病に弱い。
器具の殺菌や媒介虫の予防など特に気をつける。


                       (ナリヤラン)

✺ナリヤラン
熱帯、亜熱帯アジアに広く分布。
和名のナリヤとは西表島の成屋に因んで名付けられた。

✪自生環境知ってラン栽培

沖縄の自生ランであるからといって、必ずしも高温性とは限りません。
それぞれのランの自生環境を作ってあげる事が重要です。

沖縄には多くのランが自生していますが、その殆どが絶滅の危機に瀕しているのが現状です。

その原因の多くは、園芸目的の乱獲、採取です。

野生ランが山採り株でないことなど、購入時は確認してほしいと、植物管理財団より植物保護の訴えも上がっています。










2021/02/09

ギシギシ 雑草と言う名の薬草 No,369

ギシギシ タデ科ギシギシ属

ギシギシの仲間たち

全国各地の道端や荒れ果てた土地に、「ギシギシ」は生育する。


                           (ギシギシ)


大きな葉姿が牛が舌を出したように、あっかんべーしている様子に似ていることから、「ウシノシタ」とも呼ばれるが、様々な諸説もある。

ギシギシは重要薬草の一つで、お腹に優しい下剤、或いは解熱、皮膚病の改善、強い抗菌作用が知られる。

その他西洋では「春の強壮剤」として知られています。


ギシギシの根っこを掘れば、なるほどと薬草の風情たっぷりである。


            (エゾノギシギシの根茎)


夏から秋に掘りあげて乾燥させたものを薬用にする。

葉は食用に利用される。

ただ、安易な使用は皮膚病や嘔吐の危険があるのも事実であり、注意しなければならない。

また、ギシギシは「冬の山菜」でもあり、若芽にジュンサイを思わせる食感がある事から、オカジュンサイとも呼ばれます。


エゾノギシギシの新芽、赤矢印


株元の中心から生えてくる、柔らかな新芽の部分はみずみずしく、ヌメリがあり爽やかな酸味で美味。

味噌汁の具やお浸しにして、酢じょうゆや酢味噌と和えて、食しても美味しい。

ただし、痛風や結石の原因となる硝酸を豊富に含むため、よく茹で、よく水にさらして、硝酸をしっかり抜く事が肝要です。

ギシギシは見分ける事が悩みと言える薬草です。

主に食用、薬用とされるのはギシギシ、エゾノギシギシ、ナガバギシギシの3種です。

簡単に見分けるなら、果実の形に注目します。

デベソ的な突起がありますが、ここに✻瘦果が宿る。

✻瘦果(そうか)

果皮が堅い膜質で熟すと乾燥し、一室に一個のの種子を持つもの

タンポポ、菊、キンポウゲなど

多くの被子植物に見られる単純で乾いた果実の一種である。

成熟しても種を飛ばすことはなく、瘦果の種子は果皮に包まれている。

種子と思われていたものが実は、瘦果だったと言う事はよくあることである。

これを取り囲んでいるものを翼(よく)と呼ぶ。

この翼の形を比較すると覚えやすい


                      (ギシギシ)


①ギシギシは翼の回りに浅い鋸歯が並び、翼の下部が尖った三角形を描いている事も見分けるポイントです。


                      (エゾノギシギシ)


②エゾノギシギシは翼の回りが特徴的で、鋭い鋸歯を持ち、数本だけ極端に飛び出しています。


                        (ナカバギシギシ)

③ナカバギシギシは、ギシギシと非常によく似ていますが、鋸歯は緩やかで全縁に近く、翼の下部が丸みを帯びている事に気がつけば、見分ける事ができるでしょう。


ギシギシの3種は以上ですが、他種との交配も盛んであるため、中間種が増え、見分けが困難になっています。

前述したポイントを覚えておけば、見分けるための絞り込みが可能です。

ギシギシは繁殖力も旺盛であるため、栽培植物にとってはとても迷惑な存在です。

けれど、他の雑草に比べたら数も少なく、よく目立つのでわかりやすい。

みずみずしく、爽やかな食感といい、有り難い薬効もありますが、すぐに手を出せぬ薬草です。

ギシギシ君が、「あっかんべー」と
舌を出し、食べて見んねと言うけれど、ギシギシと歯ぎしりするのである。










2021/02/08

原始の地球に生まれた生物の祖先 No,368

 原始の海から生まれた生物の祖先

地球上には多種多様の生物がいますが、動物や植物などを合わせると、約130万種いると言われています。

生物は何を栄養として生きているかで、2つのタイプに分けられます。

⑴植物的な生き方

自分に必要な栄養物を自分で作って生きることで、植物は空気中の二酸化炭素を吸収し、光を使ってブドウ糖やデンプンを作っています。

⑵動物的な生き方

他の生物が作った栄養物を食べて生きることです。

だから、動物は植物や動物を食べます。

人類の周りにある全ての食べ物は、元を辿れば植物が作り出すものです。

地球上に初めて生まれた生物は、当然他の生物の作った栄養物を、食べることは出来ません。

つまり動物的な生き方をすることが出来ません。

その事から地球上で初めての生物は、植物的な生き方をする生物でなければならないと、言うことになります。

しかし、地球上に最初に生まれたのは、自分で栄養を作らない動物的な生き方をする生物だったのです。

その生物は何を食べて生きていたのでしょう?

その答えは、生物が初めて生まれた頃の「原始の海」の中にあります。

原始の海は生物が生きるために必要な栄養のスープ。

約46億年前に誕生した地球に、当時はどんな生物も存在しませんでした。

それから約6億年が過ぎた約40億年前に、地球上のあらゆる生物の祖先となる、最初の生物が誕生したのです。

初めての生物は、原始の海の中で生まれ、その頃の海はアミノ酸などの栄養になる物質が多く含まれていました。

地球上の最初の生物たちは「スープの海」に含まれる栄養物を食べていたのです。

なぜ、植物のいない当時の海に豊富な、栄養物が含まれていたのでしょう?

1953年にアメリカのスタンリー·ミラーが当時シカゴ大学、大学院生の時に行った実験
(ユーリーミラーの実験)
原始生命の進化に関する最初の実験的検証の一つで、いわゆる化学進化仮説の最初の実証実験として知られる。

この実験によって謎が解明されました。

当時の地球では、火山が噴火し、雷が鳴り、稲妻が走っていたと想像されます。

そこでミラーは、その時代に起こった稲妻に見立てて(フラスコA、図)で電気火花を長時間にわたり散らし続けました。


(ミラーの実験装置図)


それにより生成した化合物は(フラスコB)に集まるように工夫されています。

その結果、この様な気体の反応によって多種類のアミノ酸が作り出される事が解ったのです。

アミノ酸は、生物に不可欠のタンパク質を作る物質です。

つまり、地球が生まれてから生命が誕生するまで、約6億年と言うとてつもなく長い歳月をかけて、アミノ酸やタンパク質などの栄養物が蓄積され、やがて海は栄養物のスープの海になって行ったのです。

海の中には糖やミネラルも含まれ、栄養豊かで濃厚なスープであった。

生物の祖先はスープの海で生まれ、増殖して行き栄養物が十分にあったため、自分で栄養物を作る事が出来ない生物も、他の生物が作る栄養物に頼らずに生き続けられたのです。


✿植物の祖先の誕生

しかし、いつまでも栄養豊かなスープの海であるはずもなく、生物が生まれそれを食べ始めると、6億年の歳月をかけて蓄積した、栄養物もやがてつきてしまいます。

そして、30数億年前になると生物たちは、初めて地球規模の食糧危機に直面する事になります。

全ての生物が飢え死にする深刻な危機だった。

ところが、思いもよらぬ能力を持つ生物が出現したのです。

自分で栄養を作り出すことが出来る、植物の祖先の誕生です。

太陽の光を使って、ブドウ糖やデンプンを作り出す能力を身につけた生物たちです。

材料になる二酸化炭素と水は豊富にあり、植物の祖先たちが自分で栄養を作ることによって、動物の祖先はそれを食べて生きて行く事ができます。

こうして、植物の祖先が出現して以来、動物は自分たちの食糧を植物に依存して行くことになったのです。

✻関連ブログ
地球誕生での最初の地上植物は苔植物No,230







2021/02/07

花の色は2つの色素で決まる No,367

 花の色素

白色の花にも色素がある。

多くの植物の花はアントシアニンカロテノイドと言う、2つの色素で決められています。

✭アントシアニンは植物界において広く存在する色素。
青紫色をした天然色素の一種で、糖や糖鎖と結びついた配糖体成分のこと。

フラボノイドの一種で、抗酸化物質としても知られる。

アサガオ、ペチュニア、シクラメンなどの赤色の花や、キキョウ、リンドウ、パンジーなどの青色の花を色づけています。

✻カロテノイドは動植物に広く存在する黄色、橙、赤色などを示す天然色素の一群。






タンポポやマリーゴールドなどの花の色です。

因みに、カロテノイド、カロテンは英語読みで、ドイツ語読みではカロチノイド、カロチンです。

最近は英語読みが多く使われています。

✿黄色いキク、白いキクの場合
菊の花の色は多くの場合、黄色です。

これはカロチノイドによるものです。

菊の花にも赤みがかった色もありますが、それはカロテノイドにアントシアニンの赤色が混ざったものです。





カロテノイドやアントシアニンが、花びらの中に作られるためには、それらの色素を作る遺伝子が働かなければなりません。

よって、菊の黄色の花びらの中ではカロテノイドを作る遺伝子が働いているのです。

菊の黄色はカロテノイドによるものです。

それでは、白色の花を咲かせる菊の場合はどうなるのかと言うと、カロテノイドを作る遺伝子を持っていないか、あるいはカロテノイドを作る遺伝子が働いていない、と言う事になるのでしょうか?

ところが不思議な事に、黄色い花と同じ様に白い花にも、カロテノイドを作る遺伝子が存在しているのです。

しかも、白い花の中でも遺伝子が働いている事が解っています。

それならなぜ黄色くならないのかと言う疑問が出ます。

そこで更に調べられると、黄色い色素であるカロテノイドを作る遺伝子が働くと同時に、この黄色い色素を分解する遺伝子が働いている事が解明されました。

結果、作られるはずのカロテノイドが次々と分解されて、黄色くならないのです。

✿花が白色になるわけ

花が白色になる理由は別にあります。

白色の花にはフラボノイドやフラボンと言う色素が含まれています。

でもそれらは、色の色素ではなく無色透明か薄いクリーム色です。

つまり、これらの色素しか含まない花なら、花びらは無色透明か薄いクリーム色に見えるはずなのです。

ところが花はきれいな白色に見えます。

その理由は、花びらの中にたくさんの空気の泡があるからです。

小さな泡が多くあると、光が当たった時に反射して白く見えるのです。

滝などで、水しぶきは白く見えますが、滝に流れる水は普通の水です。

多くの空気の泡ができることにより、白く見えているのです。






つまり、白い花の色というのは、花びらの中に多くの小さな泡を含んでいて、それが白く見せているのです。

白い菊も花びらから空気の泡を追い出したら、白色ではなくなります。

花びらを指でつまんで強く押し付けると、その部分が透明の花びらになります。

アントシアニンを含んでいる赤色や、青色の花、カロテノイドを含んでいる黄色の花にも、空気の泡は多く含まれています。

しかし、これらの場合には、2つの色素の色が強いので、泡が反射する白色は見えないのです。









天敵利用による害虫防除 No,366

 天敵による害虫の防除

春になると虫の活動が活発になり、被害も増加してきます。

害虫防除や駆除には、薬剤が使われる事が多いですが、天敵を利用して害虫防除する方法もあります。

例えば、アブラムシの天敵として
テントウムシが有名ですが、この天敵を害虫防除に利用することを、生物的防除といいます。

生物的防除は、天敵の導入によって害虫による被害を、ある程度一定の水準以下に抑えようというものです。

これは、虫をもって虫を制すと言う考えに基づくものです。

天敵にはどういうものがある?

天敵には害虫を捕食する昆虫や、害虫に寄生する昆虫がいます。

昆虫以外に、害虫に病気を起こし、死亡させてしまう微生物も天敵として扱われます。

その他にも昆虫に寄生する線虫がいます。

✿食虫性動物

害虫を捕食する天敵昆虫には、テントウムシ、オサムシ、アカヤマアリメクラカメムシなど捕食虫がいます。

捕食寄生する天敵昆虫には、寄生バチ、寄生バエがいます。

これらの寄生虫には、特異な行動により寄主である害虫を、最終的に死に至らせる。

寄生バエ、寄生バチなどのことを特に捕食寄生者と言う。

寄生バチは、産卵管を害虫の卵、幼虫に差し込んで産卵します。

孵化(ふか)したハチの幼虫は、害虫の体を食べて成長し、そのまま害虫は死んでしまいます。

この様な寄生バチの種類はかなり多く存在していて、害虫の天敵の主力と言える。

天敵に関する研究は大変盛んで、多くの害虫において個体数の変動に及ぼす日本の生物的防除も、柑橘類の大害虫である「イセリアカイガラムシ」に対する「ベアリアテントウ」による防除が、1911年から行われて成功して以来、多くの試みが行われてきました。

害虫の卵が成虫になるまでには、色々な要因で死亡するが、一般には天敵の役割が極めて大きい。

天敵保護と言う観点になった場合、殺虫剤の使用量をなるべく減らした方がよいのは言うまでもない。

これらの頻繁な散布は、✻圃場の天敵密度を低下させることになる。

✻圃場(ほじょう)
栽培する植物を植えてある畑
農園、農場など

また、天敵が生息しやすいような環境を作ることは大切であるが、天敵保護を圃場ごとに行うことは難しい。

地域を単位に行わなければ効果は上がりにくい事になる。

外部から天敵を導入し、それを定着させることによって、半永久的な防除効果を狙う方法は、果樹を中心にして行われてきた。

これまでに柑橘害虫の「ヤノネカイガラムシ」を対象にした「ヤノネキイロコバチ」と「ヤノネツヤコバチ」を用いた防除試験や、クリ害虫の「クリタマバチ」を対象にした「ウゴクオナガコバチ」を用いた防除試験などが積極的に行われてきました。

捕食、寄生するハチの種類では、コマコバチ、ヒメバチ、ヤドリタマバチ、タマゴヤドリコバチ、クロタマゴバチなどがいる。

ハエの種類では、ヤドリバエなどがいます。


✿昆虫病原微生物

微生物天敵とは害虫に病気を起こす微生物のグループのことで、昆虫病原微生物という。

昆虫に伝染性の病気を起こす微生物には、ウイルス、細菌、糸状菌(カビ)などがあります。


昆虫寄生性線虫は、分類学的には微生物ではないが、便宣的に微生物天敵として扱うことがある。


昆虫のウイルス病は600種以上の昆虫に認められています。

宿主となるのは大部分がチョウ目な幼虫で、他に一部のハチ目、ハエ目に感染する種も報告されています。

これらの天敵による補食や寄生は、自然界では害虫の大きな死亡原因となっている。

補食者は一般に広食性で多くの種類の害虫を攻撃するが、補食寄生者の多くは単食性や狭食性で、特定の害虫を攻撃するため、特定の害虫を防除するのに適しています。

✿ウイルス

昆虫に病気を起こす昆虫ウイルスで、防除に利用されているのは核多角体病ウイルス(NPV)、細胞質多角体病ウイルス(CPV)、顆粒病ウイルス(GV)です。

これらのウイルスは多角体あるいは顆粒体と言った、タンパク質でできたウイルス粒子の包理体を作る。

エサとともに昆虫体内に取り込まれた多角体や、顆粒体は中腸で消化液の作用で溶解し、その中に包理されているウイルス粒子が放出されて感染する。

ウイルスはアメリカやロシアで害虫防除に利用されている。


✿顆粒病

日本全土で発生し、活動時期は10〜30℃で棒状の形をしたウイルスで、特定の寄主にのみ感染する。

昆虫に強い病原性を示す細菌に、パチルス菌があり、この菌の生産する毒が昆虫を死に至らせる。

現在では、殺虫剤も進化し、天敵を殺すこともなく、人畜毒性も結晶性毒素を用いた殺虫剤が実用化され、蛾や蝶の幼虫の防除用に使われている。

それ以外の昆虫には毒素を示さないので、この様な色々なものが売られています。

これらを上手に使用すれば、自然に優しい防除が可能になるでしょう。


2021/02/05

ひこばえが出てくるのはなぜ? No,365

 ひこばえが出てくる理由

樹木は材木として使われるため、あるいは間引きするために、地上部を幹の基部(地際や枝など)で伐採されることがあります。

多くの樹木の場合、伐採されたとしても樹木の切り株はそのまま生涯を終えません。

それは、土の中で根は生きているので、水や養分が運ばれ、残された切り株から芽が再び出てきます。

この様に切り株から出てくる芽生えを「ひこばえ」と呼びます。

ひこばえの「ひこ」とは孫のことでつまり、孫が生えてきたという意味で、ひこばえにはそのまま樹木として成長できる能力があります。

なぜ芽のない切り株からひこばえが出てくるのか?

これは幹を作っている細胞が持っている能力によるものです。

植物の体は細胞でできていて、細胞はそれぞれが一つの個体を作る能力を持っているのです。

その能力を「分化全能性」という。

✫分化全能性(ぶんかぜんのうせい)

植物の細胞が持つ能力

個体を形成する様々な種類の細胞のどれにも、分化することができる潜在能力がある。

動物でも植物でも全ての細胞の起源となる受精卵は、明らかに分化全能性能力を持っている。

次の受精卵に繋がる生殖系列の細胞も、分化全能性を保持しているとみなされる。

植物の細胞が分化全能性を持つことは、1958年にアメリカのスチュワードらによって示されました。

スチュワードは、ニンジンの食用部である根を構成する一個の細胞を取り出して、人工的に用意した適切な条件の下で育てました。

すると細胞が増殖して細胞のかたまりになった。

これは、根や茎の一部になっていた細胞が文化していない状態に戻ったもので「カルス」と呼ばれます。

更にこのカルスを適当な条件で育てると、カルスから根、茎、葉などが作られてきて、完全なニンジンの植物体が出来上がったのです。


       カルスが形成を始めた切り口
 

 カルス形成により切り口が塞がれた状態

こうした一個の細胞からでも、植物の体は再び作り上げられることがわかりました。


これが細胞の持つ分化全能性と言う能力です。

つまり、ひこばえは切り株の断面にある細胞が、分化全能性により芽を出したものである。

ひこばえは切り株の中心部からは殆ど生まれず、周囲から多くなる。

それは切り株の周囲には若い元気な細胞があるからで、幹の中心部は年を重ねた古い細胞で出来ているためです。



枝の切り口から新しく芽が出ている状態もこの能力です。

分化全能性は光を遮断されると能力を発揮できず、やがて切り株は枯れてしまいます。

この能力を利用したのが「挿し木」での殖やし方で、挿し木を可能にしているのです。

特にキク、ばら、ツツジ、アジサイイチジク、などが挿し木で増やしやすい植物として知られています。

    (アジサイの挿し木)