緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/05/21

知っておきたい肥料の知識 ⑶ No,472

 元肥に適する肥料の種類と使い方


有機質肥料とは

動植物由来の有機質肥料は、油かす、骨粉、発酵鶏糞などがあります。


油かすとは

植物の種子や米ぬかから油を搾った後の「かす」の総称です。

主に菜種油かすが最もよく使われています。

油かすの多くはおよそチッ素5.6%、リン酸2
%、カリ1%程度含み、古くから肥料として利用されてきました。

また、肥料としての働きだけでなく、土壌の硬さや耕しやすさ、水はけや保水の程度、土の重さ、空気の通り易さ(物理性)などを改善したり、土壌微生物を増やす効果もあります。


骨粉とは

牛や豚などの動物の骨を砕いて加圧、高温蒸製した蒸製骨粉や、ゼラチン質を取り除いた脱膠(だっこう)骨粉などで、リン酸を多く含み肥料の効き方は、緩効的で残効も長く優れたリン酸肥料として使われてきたが、2000年初頭にBSE問題が発生してからは、流通量が激減し高価になったためあまり使われなくなった。

BSE問題とは、BSEプリオンと呼ばれる病原体に牛が感染し死亡する病気の一つ。

脱膠骨粉はリン酸を30%以上含んでいて、チッ素は1〜2%しか含んでいない。


発酵鶏糞とは

牛糞や豚糞に比べて、チッ素もリン酸もカリも多く含み、肥料の効果も高い有機質肥料です。

遅くまで肥料切れせず、石灰、苦土、微量要素などを含みます。

堆肥には養分供給の効果もありますが、それ以上に土中生物のバランスを整え、土壌を柔らかくし、地力の維持と保水性の良い土壌へと改良する効果があります。

元肥を施す際に一緒に入れると効果的です。

有機質肥料は使い方によって養分供給効果に大きな差が出ます。

土中に深く入れるほど、有機質の分解はゆっくりになり、土壌の表面か表面近くに有機質を使用すると、分解が早く現れ効果は短めになります。

そのため、有機質肥料を元肥として使用する場合は、土壌全体に混合するか、深い場所に埋め、追肥として用いる場合は土壌の表面に使います。


緩効性肥料とは

効果がゆっくり穏やかに長続きするように、水に溶けにくい成分を用いたり、肥料の粒をコーティングして少しずつ溶け出すように調整された化学肥料で「IB肥料」「CDU肥料」「被覆肥料」などとも表記されています。


肥料の効果がすぐに現れないため、緩効性肥料に速効性の肥料を加えた緩効性複合肥料も製造されている。

大粒、中粒、小粒に分かれている種類の肥料もありますが、肥料の粒が小さいほど効果が早く持続期間は短くなり、粒が大きいほど緩効性になり効果が長続きします。


緩効性肥料は、生育期間の長い植物の栽培に適します。

生育に必要な量を元肥に全量施し、追肥なしで栽培することも可能になります。




2021/05/20

知っておきたい肥料の知識 ⑵ No,471

 肥料の施し方

元肥の施し方には、堆肥や肥料を土地の全面にバラ撒いて耕し、土壌と肥料分をよく混ぜる「全面施肥」と種子や苗を植える所に溝を掘り、溝深くに肥料分を施す「溝施肥」があります。

全面施肥に適する浅根性植物

全面施肥は、元肥を広く浅く全面的に均一に施す方法です。

草花の苗の植え付けや、根の浅い植物野菜(果菜類)株間を狭く植え付ける生育期間が短い(葉茎菜類)などの栽培に適しています。

果菜類にはキュウリ、カボチャ、トマトなどがあり、葉茎菜類にはタマネギ、ハクサイ、キャベツなどがある。

ダイコン、ニンジン、ゴボウは根菜類でイチゴ、メロン、スイカなどは果実的野菜に属する。

浅根性の樹種はニセアカシア、ヤナギ類、エゾマツ、サクラ、他

全面施肥の方法と手順

①日本の雨が多い環境で、酸性になりがちな土壌の酸性調整と不足しがちなカルシウムとマグネシウムの補給のため、畑や花壇の全面に苦土石灰(くどせっかい)をまき、クワなどでよく耕します。

その後、1ヶ月ほど雨風に晒し土に馴染ませます。

②その後、有機質肥料や緩効性化学肥料を畑全体にばら撒き、土とよく混ぜるようにスコップなどで深く天地返しをしながら耕します。

③野菜類では畝(うね)を作ります。
花苗の場合は平らにならします。

④種子まきや苗の植え付けを行います。


土壌酸度を測定しますが、酸度計がない場合は、1㎡あたり200〜300㌘を目安に苦土石灰をまく。

尚、商品に使用量が記載されている場合は、それに従って行うこと。


溝施肥に適する深根性植物

深根性の植物や野菜、根が太く長くなる根菜類に適しています。

トマト、ナス、ダイコン、ニンジン、ゴボウなど、その他

樹種ではクヌギ、カシワ、クリ、コナラ、ケヤキ、モミ、カシ類など、その他


✻深根性の野菜には20〜30cmの深さに溝を掘って元肥を入れ、溝を土で埋めその上に畝を作ります。
苗が溝の真上にくるように植え付けると、根が溝の所まで深く伸びていきます。

✭根菜類は、種子の真下に元肥があると根が真っ直ぐに伸びず、奇形(又根ともいう)になる可能性が高いので、株間に溝を掘って元肥を施すようにします。

また種子まきは準備の後、10数日くらい経ってから行った方が、根が真っ直ぐに伸び形よく育ちます。

溝施肥の方法と手順

①全面施肥と同様に苦土石灰で土壌の酸度を調整します。

②苗を植え付ける場所、あるいは種子をまく場所に、深さ20〜30cmの苗や種子を植え付けるための溝を掘ります。

③溝の底に肥料を入れ、その上に土をかけます。

苗を植え付ける場合は、育苗ポットの土の高さと(A図)定植場所の土の高さが揃うように土を入れます。


                                    「A図」

種子をまく場合は、埋め戻してから種子をまきます。







2021/05/19

知っておきたい肥料の知識 ⑴ No,470

 施肥の時期  「元肥」

植物は生長の時期や段階によって、生長に必要な養分の種類や量が異なるため、必要な時期に必要とする成分が得られるように、肥料を施す事が大切になります。

施肥には、施す時期や目的によって「元肥」「追肥」「お礼肥」「寒肥」などがあります。

「元肥=もとごえ」は、植物の苗や苗木を植え付ける前に施します。

「追肥=ついひ」は、植物を植え付けたあとに植物の生長に応じて必要な養分を追加で与えます。

お礼肥や寒肥などは追肥に含まれます。

あらかじめ土に混ぜておく元肥は、種子から芽を出したばかりの幼苗などに、ゆっくりと緩やかに効くことが大切なので、有機質肥料をベースにした遅効性の肥料や緩効性肥料が適します。

植物の種類やそれぞれの生育段階に応じて、必要とする養分の種類や量は異なります。

施肥量は多過ぎても少な過ぎても、生長速度や実の付き具合などに影響は出ますが、有機物を多く含み団粒化した畑や花壇の土壌には、養分の濃度を調整する力があるので、厳密に計算しなくても大丈夫です。

ただし、肥料に含まれる養分は成分によって効き方が異なるので、どの成分をどの時期に与えたら良いか把握する必要があります。


                                               (A図)

✣チッ素、カリは一度に施しても流亡しやすい。
肥料成分の流亡を防ぐために、施肥してもすぐには土壌中の水に溶け出さない肥料が考え出されたのが、緩効性肥料です。

✣各要素A図参照

チッ素 (葉肥)

チッ素は1ヶ月ほどで効果がなくなるため、野菜などの収穫が目的の、生育期間が一ヶ月以上の植物を育てる場合、元肥だけでなく追肥も必要になります。


リン酸 (花肥、実肥)

リン酸はゆっくり効き、効き目も持続しますが、土の中を移動しにくい成分なので追肥で与えた場合は、成分を吸収する根まで届きません。

つまり追肥の効果が出にくい成分なのです。
そのため、リン酸は元肥で施す必要があるという事になります。


カリ (根肥)

カリは2ヶ月ほどで効果がなくなるため、チッ素同様、元肥だけでなく追肥も必要になります。





2021/05/18

ナツツバキの葉先が枯れる原因 No,469

 ナツツバキ



植物の葉が枯れる原因には、水不足、空気の乾燥、日焼け、根の障害、薬害、肥料過多、病害などがあります。



葉先が枯れる場合は根の障害が多く考えられます。

それは結果として水分不足となるためです。

土が乾燥したり、固まっていたり、根が切られているなど土壌条件が悪いと、根の酸欠や根傷みを起こし十分に水を吸うことができなくなるからです。


         「ナツツバキの葉先が枯れている状態」

このような場合は、根が呼吸したり、水を吸い上げる活動ができるように、バールなどで土壌に穴をあけ、乾燥時には十分水やりをします。

その他に、似た症状として考えられるのは薬害です。

この場合は葉の縁が枯れて縮むようになります。

ナツツバキの生育地は山中の湿気の多い場所で、葉質は薄く強い日差しや乾燥にも弱く、また西日の当たる所もよくありません。

樹種の性質にあった管理が大切です。


✣関連ブログ
ナツツバキが発芽しない  No,158
ナツツバキNo,254






2021/05/17

国際生物多様性の日 No,468

 国際生物多様性の日

「国際生物多様性の日」とは、1992年5月22日に生物の多様性を守るための国際条約で、「生物多様性条約」が国連会議で採択され、これを記念して国連は毎年5月22日を「国際生物多様性の日」と定めました。

地球には3.000万種とも言われる多様な生き物がいます。

2010年5月22日の国際生物多様性の日で、生物多様性の大切さが話題になったその中で「多くの植物種が絶滅の危機に瀕しており、それらの植物を守らねばならない」と語られた。

しかし一方では「なんの役にも立っていそうにない植物を守らなければならないのか」という疑問もでてきます。

この疑問に対しては様々な答え方があります。

なぜ絶滅しなければならないのかという疑問になれば、人間が行ってきた自然の破壊について反省を促す事は一つの答えです。

また、人間と繋がりが見えている植物たちは「役に立つ」と表現されますが、繋がりが見えない植物は「なんの役にも立っていない」ということになります。

自然界の中には、まだまだ人間が知らない繋がりがある植物が多くあり、その繋がりを知るためにも人間が植物たちの生き方をよく勉強し、また研究することが大切なのだというもう一つの答えがでます。

なんの役にも立っていそうにない植物たちが、思いがけずに役に立つと言うことを実際に示し、納得を得ることも必要になります。


「思いがけずに役に立つ植物」

「ハイブリッド」という言葉がありますが、ハイブリッドとは混成や雑種を意味します。

植物にもバラなど「ハイブリッド品種」がありますが、ある品種とそれとは別の品種を交配すると、ハイブリッド「雑種」になった種ができます。

この種をまくと交配した両方の種よりも素晴らしい性質を発現することがあります。

例えば、その性質は植物体が大きかったり、病気や環境に対する抵抗性が強かったり、美味しい果実を多く付けるなどがあります。


植物の世界では交配する事によって、様々な現象が起こるのです。

自然界でも突然変異、変種と言ったものも同じような現象が、自然環境の中で起きたからだと思います。

必要と考えられない植物たちが交配をし、必要とされる植物に何かしらの良い作用をもたらす可能性は否定できません。

よって植物の持つ多様性を保護することは重要となる。


「役に立つ植物の生きる仕組み」

1948年、スイスの✣ジョルジュ·デ·メストラル氏(氏については後記に記載)が犬と野原を散歩したとき、服や愛犬の毛にしつこくひっついている実に気付きます。

「なぜ?これほど頑固にひっつくのか」と思い、その実を顕微鏡で観察しました。

すると実にはたくさんのトゲがあり、その先端が釣り針のように鉤型に曲がっていました。

曲がったトゲの先端が服や犬の毛に引っかかって剥がれにくいのです。

この発見がきっかけとなり、張り合わせるだけでひっつく「マジックファスナー」や「マジックテープ」が生まれました。

この植物は野生のゴボウ」で、日本では野生のゴボウの実はあまり知られていないことや「オナモミ」が同じ構造をしていることから、オナモミの実がヒントになって生まれたと言われています。


                                「オナモミ」

オナモミ

オナモミはキク科の一年草で絶滅危惧種に指定されている。

ひっつき虫と呼ばれるが、我がふるさと五島列島、住んでいた地域では「トツコ」と呼んでいました。

この実を日干しにすると蒼耳子(ソウジン)と言う生薬になり、解熱、発汗、鎮痙剤(ちんけいざい)として風邪を引いた時の頭痛や鼻炎、蓄膿症、リウマチに対する効能があります。

漢方ではソウジサン」という処方に使われている。


✣ジョルジュ·デ·メストラル

スイスの電子工学者であり、面ファスナーを発明した。

(1907〜1990年没)

ファスナーへの応用を考えて1948年に研究を開始した。

その後1951年に特許出願し、1055年に認定された。

1952年にはスイスにVelcro  S.A.が設立され、面ファスナーを生産する一方で、各国企業に
ライセンスしたり現地法人を設立したりして、ベルクロの名で生産された。

日本では日本ベルクロ、現在のクラレファスニングとYKKをはじめとした会社で製造されている。







2021/05/16

トベラ No,467

 トベラ トベラ科 常緑樹

別名=トビラノキ  「扉」

本州四国、九州、沖縄、朝鮮半島、台湾、中国の沿岸地域に分布

節分に戸口にさして鬼祓いした風習から、扉の木、トビラ、トベラと変化した名である。

枝葉を切ると独特の悪臭を発散する。
枝葉や根を焼くとさらに悪臭が強くなることから、かまどで炊くのを嫌う。

かまどの神(荒神様=台所の神として祀られる)も嫌うということから、地方によってはオコウジンキライ(御荒神様嫌い)と呼ばれている。

海岸地域に生え、高さ3㍍程になる常緑樹で、葉は厚く光沢があり縁はやや裏側に反る。

枝先に5弁の花をびっしりと咲かせ、花は咲き進むに従って白から黄色へと変化する。

枝や葉には独特の臭気があるが花には良い香りがある。

香りをどのように感じるかは、国々で千差万別である。
例えば、悪臭と感じる国もあれば良い香りと感じる国もあると言うことです。

沖縄にはよく似た「リュウキュウトベラ」が分布しているが、リュウキュウトベラは小笠原諸島に分布する白トベラの変種に当たり、葉が大きく花柄が長いと言う特徴がある。



                            「リュウキュウトベラ」



暖地性の植物で、根の性質が粗く乾燥を嫌うことから移植には向いていないので苗から育てる。

どうしても移植が必要な時は、半年以上前から根切り(根まわし)をして、細根を株元に出させてから行います。

時期は寒さの心配がなくなる4月中旬から5月頃に行うのが適しています。


                                       「トベラ」

病害虫

カイガラムシとアブラムシの発生がある。

これらの害虫は、樹勢を衰えさせるので注意が必要です。

すす病の発生の原因は、カイガラムシが養分を吸汁した後の排泄物によりすす病を誘発しますが、それだけではなく病気発生の原因にもなるので、こまめに発見し駆除する事が大切です。

予防として、冬期の1月から2月に機械油乳剤20倍液の散布が効果的です。

尚、機械油乳剤や石灰硫黄合剤は冬期使用限定薬剤ですので、それ以外の使用は禁物です。
薬害の原因になりますので使用期間を厳守しましょう。


また、害虫の発生する春以降はスミチオンやオルトラン水和剤を、葉や幹などに散布し害虫退治を行います。


生育、環境

萌芽力があまり強くないので、刈り込み仕立てには向かない樹木ですので、自然樹形で育てた方が無難です。

雌雄異株で5月から6月に白い花を咲かせ、秋に球形の実がなります。

11月頃に実が裂けて赤色の種子が出てきます。
繁殖する場合は実生で、この種子を翌年春になってから種まきし殖やします。


肥料

2月と9月の年2回、化成肥料と油かすを混ぜ根元にばらまきます。

肥料を直接地面にばらまく時は、その木の枝の伸び具合を観察し、枝の先端の真下辺りと、その枝の伸びた真下辺りまでばらまきます。

たいていの根が真っ直ぐ下に伸びる「直根性」の樹種の場合は、移植を嫌うことが多いので根元にばらまくだけでよいでしょう。


せん定

自然樹形で育てるので、7月から8月に徒長枝やとび枝をせん定しますが、どちらかというと樹勢が弱い木なので強いせん定は避けます。

枝が大きく乱れる場合は、枝を切り詰め、根まわししてから植え替えを行い育て直します。


トベラの薬効

解毒作用、生理不順、皮膚病などに用いる。
寄生性の皮膚病には枝葉を突き潰して患部に塗布、あるいは煎液で患部を洗う。