緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2025/01/22

マツの害虫③ No,752

 マツの害虫 カミキリムシ類

衰弱した樹に被害が集中

無理な移植や台風被害、大気汚染などで弱っていたマツ類にカミキリムシ(甲虫目)が寄生すると、急激に衰弱して立ち枯れ状態となります。

「松くい虫」と呼ばれるカミキリムシは24種類ほどいますが、その中で多いのはマツノマダラカミキリによるもので、この虫はマツノザイセンチュウを媒介することでマツ類に深刻な被害をもたらします。

カミキリムシ一匹に、平均15000匹のセンチュウが必ずいると言われています。

シイ、カシ、クリ、クヌギ、コナラ、ポプラ、ヤナギなどの広葉樹は健全樹であってもカミキリムシの食害をうけます。

シロスジミヤマゴマダラなどのカミキリムシの仕業で、幹の中にテッポウムシ(カミキリムシ類の幼虫)がトンネルを掘って食害します。

この食害によって樹が衰退すると、「木材腐朽菌」の侵入を招くこともあり、大きな被害となります。

マツノマダラカミキリムシは年1回の発生で、5月下旬頃から7月にかけて成虫羽化し、サナギから脱出した成虫は若い枝をかじり、カミキリムシに侵入していたセンチュウがこの時に、かじった所からマツに侵入します。

センチュウが寄生したマツは急激に衰弱します。

衰弱した樹はカミキリムシにとって絶好の産卵場所となります。

メス成虫は脱出から20日後に樹皮の下に産卵します。

孵化した幼虫は食害を続け、翌年5月頃にサナギになります。


センチュウはカミキリムシが羽化した直後に気門から気管の中に侵入して取り付きます。


カミキリムシとセンチュウの関係

カミキリムシは、センチュウがすでに寄生しているマツにしか卵を産みません。

産み付けられた卵は羽化し、マツの中に潜り込んでサナギになる部屋を作ります。

この部屋にセンチュウが集まり、カミキリムシがサナギから羽化する時に、カミキリムシに寄生するようになっています。

シロスジカミキリ

シロスジカミキリの一世代は2〜3年かかります。

5月下旬頃に成虫が現れ、メス成虫は地上から約50㌢の樹皮にはっきりした円形(直径約15㍉)の噛み跡をつけて産卵(産卵痕)します。

産卵の跡を木槌などで卵を叩きつぶして駆除します。

被害は壮齢(そうれい)から老齢樹に多く、幼虫による深材部への食害が進むと、樹皮に繊維状の虫糞を排出します。

一世代に3年かかるミヤマカミキリムシは、幼虫が健康樹の辺材部を食害するため、その跡が溝状に裂けて樹皮に大きな傷をつけます。

このカミキリムシは産卵の跡を残しません。

4月頃の発生時期にサッチューコートやスミバークなどの薬剤を散布すると有効です。

大部分は健全木には加害しないので、樹の健康を保つことが一番の予防です。

春と秋の手入れは欠かさないように注意することです。

穿孔穴から針金を入れて刺して駆除します。

ゴマフボクトウ

成虫が現れる7月中旬から8月下旬頃に枝や幹に塗布剤(サッチューコート、スミバーク)を塗っておく

赤い虫糞が目印

コウモリガ

発生は1年か2年に1回
成虫は9月頃に発生し、幼虫は5月頃に羽化します。

木くずと虫糞で作られたフタが侵入口に付いているのが目印です。









2025/01/21

マツの害虫② No,751

 マツ材線虫病

マツ材線虫病(英名:pine wilt diseasc)とは、マツ属(学名:pinus)を中心としたマツ科樹木に発生する感染症である。

病原体は北米原産で、日本を含むアジアやヨーロッパのマツ類に枯死を伴う激害をもたらしています。


日本における病害の汚染地域は徐々に拡大し、2010年以降は北海道を除く本州以南の46都府県すべてで確認されています。

関係者の間では「松枯れ」と呼ばれることが多い。

行政用語として「松くい虫」が用いられています。

世界三大樹木病害とされるニレ立枯病、クリ胴枯病、五葉松類発疹サビ病にマツ材線虫病を加えて、世界四大樹木病害と呼ぶことがあります。

また、外見上類似した病害として、ナラ枯れ(ブナ科樹木萎凋病)がある。


症状と診断

典型的な症状としは、真夏から秋にかけてそれまで正常であったマツの針葉が、急速に色あせて最終的に褐変する。

針葉の褐変は症状の最終段階であり、それに先立って外見は正常のまま樹脂(いわゆる松脂=まつやに)の滲出(しんしゅつ)が減少する。

線虫病

健康なマツは、幹に傷をつけると大量の樹脂を傷口に分泌するが、この病気を発病したマツは樹脂の量が著しく減少し、全く出ないことが多い。

このため、早期の診断には幹にピンを刺したり、ポンチで穿孔(せんこう=穴をあける)したりして、樹脂滲出異常の有無を調べます。

この簡易判定方法は、発見者の「小田久五」に因み「小田式判定法」「小田式健全度判定」などと呼ばれています。

発病した個体の幹には多数の穴が見られることが多い。

これはこの病気に限ったことではないが、マツが衰弱してくるとキクイムシとカミキリムシが集まってくるためです。

条件によって典型的な経過とならず、樹脂滲出が止まっても外見が正常のまま、翌年まで生存することがあります。

冷涼な地方ではこのような過程を辿る個体が温暖な地方より多い。

これらの個体は翌年の春から初夏に枯死して「年越し枯れ」と呼ばれたり、更に遅れて通常のマツ枯れシーズンに至って枯れて「潜在感染木」と呼ばれることもあります。

仮道管の閉塞が原因で枯死

仮道管の閉塞の原因は、線虫や細胞による物理的な管の詰まりではなく、「キャビテーション」と言う現象によって細い管内に気泡が発生するすることによって、管内部に空洞が形成されてこの空洞が栓の役割を果たして樹液の流れを妨げることで起きる。

針葉樹には道管がなく仮道管だけが水の通路となっています。


ガスエンボリズム=気体塞栓症が、継続的に発生していることが明らかになっています。

キャビテーションによる仮道管の閉塞自体は健全な個体でも乾燥時などに見られますが、症状が一時的であればそれは可逆的なことです。

可逆的とは、一度変化した状態を元の状態に戻すことができる性質、機能のことで、キャビテーションは液体中に圧力が低下して気泡が発生する現象をいう。

なぜ、継続的なキャビテーションが発生してしまうのかは分かっていません。

キャビテーション、エンボリズムの診断方法として、着色溶液をマツに吸わせてから切断して、断面を観察するという古典的方法の他にも、水が途切れる際に発生する音の一種「アコースティック·エミッション」を観察するという、「非破壊的方法」が提案、実用化されており、蒸散速度や光合成速度の低下を観察するという従来からの「非破壊的方法」に加えて、このような面からも樹木の水分異常を観測できるようになっています。

線虫は病原性を持ち、松を枯らすことができますが、他のマツへの移動手段を持っていません。

移動を手助けしているのがヒゲナガカミキリ属のカミキリムシです。

線虫は蛹(さなぎ)室内にいる新成虫カミキリムシの気門に侵入し、蛹から脱出したカミキリムシと共に他のマツに移り線虫も移動出来る。


松くい虫に効く薬

①樹幹注入剤グリーンガード
②ベニカマツケア
③マツグリーン液剤2









2025/01/20

マツの害虫① No,750

 マツの害虫

カミキリムシの幼虫(テッポウムシ)が媒介する、マツノザイセンチュウによる被害

樹幹に穿孔した穴が見つかったら、テッポウムシが潜入した穴です。

穴の中の木くずや虫糞を取り除いて、注射器や油差し、スポイドなどで穴から薬剤が溢れるまで注入します。

その後、穴はパテやビニールテープ、土などで塞いでおきます。

テッポウムシの隠れた穴に注入する薬剤と濃度

DDVP乳剤(劇物)
スミチオン乳剤(普通)
エルサン乳剤(劇物)

注入する薬剤濃度は500倍〜1000倍液


マツノザイセンチュウ

マツノザイセンチュウは北米大陸に分布するセンチュウで、輸入丸太にくっついて日本に侵入したと言われています。

それまでは、マツノマダラカミキリムシが好んで産卵する衰弱したマツはわずかで、このカミキリムシの個体数も低いものでした。

ところが、カミキリムシがセンチュウを媒介するようになると、衰弱したマツの数も激増し、カミキリムシの好産卵条件が整って個体数も増え、マツに被害が集中したのです。

マツに急激な枯死を招く原因としては、センチュウによる木材細胞の破壊という説と、センチュウの感染で生じる毒素の仕業という2つの説があります。


マツの葉が突然赤褐色に変わり、枯死する被害が出たらマツノザイセンチュウの発生が考えられます。


この線虫は体長が0.6〜1㍉と小さく、急激に増殖して葉が変色したらすでに手遅れで、樹を切り倒して焼却処分するしかありません。

この線虫はカミキリムシがマツについた傷口から樹の中に侵入し、それにカミキリムシが羽化する時に、その体に侵入して移動します。

この密接な関連からカミキリムシの防除を前提として、各地で薬剤の薬剤の空中散布が行われてきましたが、効果があったとは言えない地域もあります。

環境の面からも、薬剤の空中散布には慎重な実施が望まれます。

中には、雨の日に地上散布を行ってる自治体もありました。

マツノザイセンチュウ専用の樹幹注入剤も市販されていますが、薬害が発生して樹が枯れたという報告もあり、使用するときは専門業者に依頼することが重要です。

薬剤だけに頼らない防除方法として、線虫に対して抵抗性を持つマツの子孫を、接ぎ木で増やすなどの研究が進められています。

マツノザイセンチュウ抵抗性のマツ

新潟県で開発されたアカマツの品種で、松くい虫に強いことで知られる新潟千年松

岩手県や宮城県と連携して開発されたアカマツの品種

新潟県で開発されたクロマツの品種


その他、秋田、新潟で連帯して新たな品種のマツが開発されています。









2025/01/18

バチルス菌の役割(有効菌) No,749

 バチルス菌

病原菌の殺菌(桿菌)

桿菌(かんきん)とは、棒状、円筒状の細菌

土壌の物理学的特性を整える。

バチルス菌は高温に強いため、耐熱性のような病原菌だが殺菌されていきます。

バチルス菌の働きにより、団粒構造が形成され、土がフカフカになります。

糸状菌(カビ菌など)を抑える働きがあり、作物の病害対策に効果があります。

また、環境を改善した土壌中の糸状有害微生物の繁殖を抑えます。

関連ブログ
根頭癌腫病についてNo,524









2025/01/15

菌液の作り方 No,748

 乳酸菌酵母液

液体の発酵肥料が菌液です。

米の研ぎ汁1.5㍑に白砂糖100gを混ぜ、ペットボトルにいれます。




ペットボトルのフタを閉め、発酵させるために一晩お風呂のお湯に入れておきます。



翌朝、キャップを緩めた時に炭酸ガスが「シュッ」と出れば出来上がりです。

日当たりが良い場所に置いておくと発酵が進みます。

容器が膨張してしまう事があるので定期的にフタを開けてガスを抜きます。

1〜2週間に一度、500〜1000倍に薄めて葉面散布します。

病気の発生を抑え、果実の味を良くする効果があります。









2025/01/13

レイシ(ライチ) No,747

 レイシ 

レイシはムクロジ科の果樹でその果実は「ライチ」と呼ばれる。

常緑小高木

中国の嶺南(れいなん=現在の広東省)地方原産で、原産地の中国で特に愛される果樹です。

紀元前2000年頃から栽培されていたと言われています。

中国では縁起の良い果物とされ、夫婦円満や子孫の誕生などを象徴します。

楊貴妃(中国唐代の皇妃)がとても好んだ果実だと伝わっています。

ライチは中国国内から広まり始め、東南アジアを経由して17世紀にはインドなどの地域に広まったとされる。

その後、20世紀にはアフリカやアメリカにも広まり、現在では中国や台湾、インドを主産地とし、世界の熱帯から亜熱帯地域で栽培されています。




細長い葉が互生し、5月に咲く花は淡緑色で前年枝の先端に小花が群がるように咲きます。


果実は球形または倒卵形で、直径2〜3㌢の小果は成熟すると赤くなりますが、緑色の品種もあり、グリーンライチと呼ばれ、甘味は従来の赤いライチより強いとされます。

グリーンライチは大粒で種が小さく、食べられる部分が多いのが特徴です。

果肉は多汁で甘く、芳香があり生食が主ですが、乾果にもされます。

倒卵形(とうらんけい)とは、卵を逆さまにしたような形のもの


栽培場所

耐寒性が弱いので、越冬には10℃以上必要です。

庭植えできる地域は鹿児島県南部などに限定されます。

鉢植えは赤玉土6、ピートモス2、川砂2の混合土に植え、春から秋は屋外の直射日光に当て、冬は日当たりの良いと暖かい場所に置いて管理します。

植え替えは4月頃、鉢に根が廻ったら順次大鉢に植え替えます。

鉢底の穴から根が出始めたら植え替えの目安


肥料

生育期は2ヶ月に1回与え、5月、7月、9月に玉肥を2〜3個ずつ置き肥します。

果肉が肥大する6〜7月は特に水を好むので、1日3〜4回程度水を与えます。


せん定

収穫後、混み枝を間引きせん定して樹幹内部までよく日が当たるようにします。

鉢植えは3月下旬頃、大きくなり過ぎた枝は植え替え時に切り詰めて小柄にします。