緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/09/30

糸状菌とは何? No,557

 糸状菌について

糸状菌はカビ、菌類と呼ばれる菌糸体で栄養成長する微生物、細菌やウイルスで起こる病気より圧倒的に多い。


細菌による感染症が中心の動物とは異なり、植物病害の約7〜8割が糸状菌によるものです。

栄養繁殖期に菌糸状をなす接合菌、子嚢(しのう)菌、担子菌などの総称で、大きく変形菌類と真菌類に分けられる。


細菌に比べて一般に耐酸性が強く、酸性土壌中での有機物分解において重要な働きを担っている。


土壌中における「リグニン」の分解は主に糸状菌によって行われる。


「リグニン」とは、木質素とも呼ばれる高等植物の木化する高分子のフェノール性化合物で、「木材」を意味するラテン語から命名された。

「リグニン」は、陸上植物の細胞壁を固くしっかりした構造とするために生み出された物質のことで、木材中の繊維同士を接着される役割を果たしている。


土壌中の腐植物質の生成過程では、植物遺体に含まれる「リグニン」が、腐植物質の「芳香族成分」の主要な供給源と考えられている。

★芳香族成分=ベンゼンを含む化合物成分(石油精製、液体炭化水素混合物の製造)

糸状菌病の診断

地上部の病害と異なって土壌病害の場合は、地上部に症状が現れた時にはすでに、地上部は予想外に侵されています。

その病害個体に限らず、栽培土壌でのかなりの部分に被害が及んでいると考えてもよい。

土壌病害にかかると地下、地際部の茎や根が侵されるので、全身病の様相を現します。


一度発生してしまうと発病個体を救うことは難しいので、植え付け前に発生の予測や予防対策を行う必要があります。


土壌病害の発生は、植え付け土壌の条件や栽培管理で左右されます。

植え付け前の調査は、土壌病害の検診と呼ばれ重視されています。

そして、この検診の結果に基づいて、植え付け計画の変更や消毒などの土壌管理が行われます。


検診法では、栽培地から土壌を採取して分析するが、ほとんどの病原菌の活動好適域は地表から15〜30㎝までに限られるので、それ以上の深層から土壌採取はあまり意味がありません。


糸状菌病は種類が多く、ほとんどの樹種で主要病害の原因となっています。


空気伝染性、土壌伝染性、水媒伝染性で、通常はその第一次伝染源が樹上に分布する事が多い。


夏に「永久組織」が侵害される枝幹病害である胴枯病の種類も多い。

永久組織=分裂能力を失った細胞からできている植物の組織、表皮(樹)や維管束など







2021/09/29

梅の潰瘍病 No,556

 ウメ潰瘍病(かいようびょう)


葉、枝、果実に発生し、若木では主に枝に被害があり、成木では主に果実の被害が大きい。

葉が展開する頃のごく若い葉では黒色の葉焼け症状となり、黒変して落葉する。

生育期の若葉でははじめ小斑を生じ、やがて周縁が赤色で中心が褐色か黒褐色になり、裂けたり穴が空いたりする。


新梢では、円い初期病斑から周縁部が赤色で縦長楕円形の褐色病斑となり、やがて中心が裂ける。


秋以降の当年枝では、円形病斑が現れて越冬し、翌春やや膨らんで更に拡がり縦に裂けて、潰瘍状となるかもしくは年内は潜伏して病症を現さないが、開花前期から病症が急速に拡がって潰瘍状の症状となる。


これらは潜伏越冬病斑と呼ばれるが、越冬伝染源としての役割が大きく付近に芽枯れ、葉焼け、花腐れ、幼果発病などの諸症状を引き起こす。

また、病斑部は夏以降2次寄生菌の加害によって、表面が粗い病斑となって枝込みが起きる。


果実では、落花直後の幼果が発病すると水浸状のまま縮んで落果する。

大豆粒大以上の幼果が感染すると、周縁は紫赤色、中央部が黒褐色か灰褐色の小斑点が形成される。

病原菌はウメのほかにスモモにも寄生して同様の被害を及ぼす。


病原菌は越冬枝上の潜伏病斑から放出され、雨媒伝播によって樹幹の傷口などから侵入して伝染する。


病原菌は比較的低温を好む性質があり、冬も徐々にではあるが進行が見られ、ウメの開花期には活発に増えて伝染が起こる。


平均気温が12〜15℃、風雨を伴った環境条件で激しい果実感染が起こる。

また、樹木に潜在している病原菌も伝染に関与していることが多い。


防除法

秋の感染期に軟弱な枝が多い場合、越冬病斑を持つことが多く、翌春への伝染源となる菌量が増大する事になるので、晩秋まで若枝を発生伸長されないように適切な肥培管理を行う。

また、病斑の枝はせん定除去、焼却処分して伝染源を断つようにする。


薬剤防除法

開花前の休眠期に銅製剤を散布し、3月下旬頃から5月下旬頃にかけて、ストレプトマイシン剤の散布を3回から4回行う。

状況によって更に散布回数を増やす。

土壌の湿りやすい所や風当たりの激しい場所で多発しやすいので、排水を良くしたり防風対策を行う事が重要です。








2021/09/28

主に柑橘類に多い潰瘍病 No,555

 潰瘍病(かいようびょう)

潰瘍とは表皮の一部が剥がれることで、葉、枝、果実などに発生します。

病状ははじめに病斑ができ、病斑の色は発生する植物によって様々です。

やがて被害部に裂け目を生じて潰瘍症状を現し、被害部は枯死する。

発生時期は4月から7月

病原体はバクテリアで、枝などに潜伏して冬を越し、翌年の春に発病します。

感染経路は、空気感染や水媒感染で病菌は新梢部や花芽、または傷口などから感染し、植物体内で潜伏します。


葉でははじめに、淡黄色水浸状の円形小斑点を生じるが、のちに表面がやや盛り上がり拡大すると、中央部が褐色または赤褐色にコルク化して粗くなる。

夏、秋の葉では、ミカンハモグリガの食害痕や風でこすられた傷口から感染し、傷口に沿った形の病斑を生じる。

枝でも葉とほとんど同様の病斑を作るが、病斑の周囲が黄色になることはなく、濃緑色の★水浸状となり、病斑は古くなると灰褐色ないし褐色に変化する。

★水浸(すいしん)状とは、初期病斑の頃、病斑の周りが黒っぽい緑色になっている状態の事を言う。

発病の激しい時は、葉柄やトゲにも病斑を生じ、落葉が甚だしくなる。

発病が甚だしい時は、病斑が果実面の大半を覆い、著しく外観を損ねるほか腐敗しやすくなる。


世界のミカン産地のうち、夏に湿度が高く多雨の地域に発生が多く、日本では全国で発生があるが特に九州地方に被害が多い。


品種によって、病気に対しての耐病性に違いがあり、グレープフルーツ、レモン、オレンジ、ナツミカン、イヨカン、カラタチなどが病性で、温州ミカン、ポンカン、ハッサクは耐病性であり、キンカンやユズにはほとんど発生しない。


病原菌は葉、枝、果実の病斑内で越冬するが、発病葉は落葉するので枝の病斑が伝染源として重要で、特に夏、秋の枝の病斑で生存率が高い。

また、秋期の低温時に感染するとそのまま潜伏して、外観的には健全な状態で病原菌は越冬する。

越冬菌は翌年3月中下旬頃から発病する。

病原菌の増殖は3月げから多くなり、雨滴で分散するが風雨によって遠くまで飛散する。

冬から春先が温暖な場合は、新葉展開前に前年葉の気孔から感染し、4月頃から発病して多発の原因となる。

また、若葉でも気孔より感染し、5月上旬以降発病するが、特に中下旬が最盛期となる。


その後、感染組織が硬化すると裂け目や傷口から感染する。

葉や枝に生じた新しい病斑からは盛んに病原菌を出して、その後の果実への伝染源となる。

果実では、落花後の5月から9月頃まで感染するが、7月頃から病斑が認められるようになり、8月から9月の台風シーズン以後に発病が多くなる。


防除法

この病気に対して薬剤防除だけでは困難で、防風対策が不可欠です。

更にミカンハモグリガの防除や、チッ素質肥料の多用を避け、適切な肥培管理を行う事も重要となります。


また、せん定時には特に病患部の枝の除去を行う。

薬剤での防除は、発芽前の3月頃から開始し、銅製剤では3週間おきに、ストレプトマイシン剤では10日もしくは2週間おきに散布を繰り返し行う。

最も重要な散布時期は、成木の場合で発芽前と5月下旬及び6月下旬頃であるが、台風の影響がある場合には更にその前に散布しておく事が大切です。


潰瘍病はいわゆる細菌病である。

柑橘潰瘍病、核果類穿孔細菌病、キウイフルーツ花腐細菌病などの病害に加えて、多くの果樹類を宿主とする根頭(こんとう)癌腫病がある。


これらはいずれも難防除病害とされている。










2021/09/27

樹を枯死させる病気④=かわらたけ病 No,554

 かわらたけ病

枝幹に発生し、傷口や枯れ損傷部から病原菌が侵入し、樹幹を枯死、腐敗させる。

腐朽部は白化してもろくなり乾燥すると粉状となる。

腐朽部の表面にはキノコ(子実体)が重層状に形成される。

病原菌は担子菌類に属する糸状菌の一種で、栗のほかナラ類、樹木ではクヌギ、コナラなどに寄生する。

また、ポプラ類、ヤナギ類、ハンノキ類、ブナ類、カシ類、シイノキ類、サクラ類、ナナカマド、キリ、スギ、スモモなど多くの樹木や果樹に寄生することが知られている。

病原菌は樹上で越冬し、カワラタケから噴出、飛散する担子胞子が第一次伝染源となって風媒伝播を行なう。

担子胞子は幹や枝に生じた傷口から侵入感染するが、他の胴枯性病害などによる衰弱、枯死枝、幹に生じた病患部の古い樹皮から感染発病に至る。


防除法

被害樹の根の周囲の土を掘り上げ、病患部及び病根をすべて切除する。


切り口にはチオファネートメチル塗布剤を塗り、掘り上げた土壌にバーク堆肥と土壌殺菌剤を加えて、よく混ぜ込んで埋め戻す方法がある。


処置は樹勢が回復し根が発達し終えるまで支柱を添えておく。

枯死樹の跡地には、クロルピクリン剤、ダゾメット剤などのガスくん蒸剤による土壌消毒を行う。


✬同様の病気として知られる「ナラタケ病」については、ブログNo,549『庭木の突然枯死の原因』の項目の中で記載していますので参照ください。





2021/09/26

樹を枯死させる病気=胴枯病、枝枯病③ No,553

胴枯病 (病原体はカビ) 枝枯病

枝枯病は、枝が枯れる病気を指すのに対して、胴枯病は幹が枯れる病気の総称です。

胴枯れ、枝枯れ性病害は2つの型に大別される。

病気の初期段階では症状が現れないが、病気が進行すると樹皮に暗褐色の病斑が現れます。


病斑部はやわらかくなり指で摘むと簡単に剥がれる。


更に、病気が進むと病斑が褐色に変わり、小さな突起物が現れます。

この突起物は病菌の繁殖器官です。
発生時期は6月から10月

病菌は害虫による傷口、せん定などの切り口、寒害や日焼けによる裂け目などから入り込みます。

この病気は樹が若いうちは少なく、樹齢が進んだものほどかかりやすくなります。

感染経路は、繁殖器官で作られた胞子が、風や雨、虫の体などに付着して運ばれ感染します。

また、樹の手入れに使うノコギリの歯から感染することもあります。

この病気に対しての薬剤などを使った直接的な治療法は見つかっていません。

病斑部は出来るだけ深く削り取り、せん定による切り口、傷口などにトップジンMや石灰硫黄合剤を塗りましょう。

乾いたら墨汁や接ぎロウなどを塗って予防します。

せん定のし過ぎなどによって幹を傷つけないように注意し、幹に傷をつける樹幹害虫を見つけたら駆除しましょう。


サクラ胴枯病

大、中径木の樹幹や太枝で特に枝の分岐した部分で発生します。

はじめ樹皮の一部が突起し、内部は褐変腐敗するが、のちには乾燥して陥没する。

樹勢が旺盛な場合は、夏に患部周囲に融合組織を生じて癌腫状になるが、衰弱した樹や小枝では患部が枝幹を一周して上位部がしぼんで枯死に至る。


やや大きいイボ状の突起物が形成されたものは子のう殻の状態で越冬して、伝染源となって春から秋にかけての降雨の後に、子のう殻内の胞子を放出して風媒伝播を行う。


病原菌は糸状菌の一種で、サクラ類の他にモモ、ウメの癌腫病やヤナギ、ハンノキの腐らん病を起こす病原菌でもある。


防除法

晩秋から早春にかけて被害による枯死枝を切除、焼却処分する。

患部が幹や枝の一部であれば、少し大きめに健全部を含めて患部樹皮を削り取り、切り口からの材質腐朽菌の侵入防止と癒合促進のために、硫酸オキシキノリン剤、チオファネートメチル塗布剤を塗布する。


モミジ、カエデ類の胴枯病

樹幹や枝梢に発生し、はじめ小枝に暗褐色の病斑を生じるが、次第に太枝に拡がってやがて幹全体が枯死に至ることがある。


枯死した樹幹の表面には多数の小さな突起物を生じる。

この突起物から白色または淡黄色のヒモ状粘塊物を噴出する。

患部の樹皮を剥がすと、材の表面には白色不定形の斑紋が確認できる。

病原菌は3種の胴枯病菌が関与しているが、主にヤマモミジ系の栽培品種に多く発生する傾向があります。

いずれの病原菌も患部に形成された子のう殻、柄子殻(へいしかく)の状態で越冬して、翌年の伝染源となる。

患部は被害が大きくならないうちに健全部も含めて大きく削り取り、傷口にはチオファネートメチル塗布剤を塗って拡大防止を図る。

重症被害樹は放置しないで、早期に伐採処分を行って、伝染源を排除する事が重要です。


イチジク胴枯病

枝、幹に発生し、はじめは樹皮の表面に淡紅色のくぼんだ小さな病斑が生じる。

病斑は次第に大きくなり縦、横の亀裂を生じる。

太枝や幹は衰弱するだけですが、細い枝では枯死するものもある。

翌年の春に小さな黒い粒を生じ、夏になると胞子の塊を噴出して感染源となる。


オウトウ胴枯病

枝、幹に発生し、幹の途中から樹脂がにじみ出て、その部分とその上の部分の樹皮が暗褐色または赤色になります。

次第に水分が被害部から先に行き渡らなくなり、水分不足の状態になって枯れてしまう。

古い樹によく発生し、若い樹にはあまり発生しない。

防除法

病斑部を出来るだけ深く削り取り、せん定の切り口や傷口なども含め、トップジンMや石灰硫黄合剤を塗り、乾いたら墨汁や接ぎロウなどを塗って予防します。

幹に傷をつける害虫を見つけたらすぐに捕殺します。

せん定のし過ぎによって樹幹に傷をつけないよう注意します。


★まとめ

胴枯、枝枯病
樹体の衰退を招かないよう、土壌改良や肥培管理、防寒及び乾燥害対策によって樹勢を維持することが基本です。

病患部の削り取りが困難な場合はそのまま塗布剤を塗ります。

また、チオファネートメチル剤、ベノミル剤、銅製剤などを初期ら秋にかけて、降雨後を重点に樹幹や枝梢が充分に濡れるくらい散布する。

萌芽前に石灰硫黄合剤10倍液を散布し、越冬菌による感染防止を図ることも重要です。








2021/09/25

樹を枯死させる病気=立枯病② No,552

 ボタン立枯病

病気になった株は生育が次第に悪くなり衰弱して行く。

症状が進むと黒く枯れて立枯れ状になります。

この病気は青枯病や萎凋病(いちょうびょう)の症状と似ていて、見分けにくい場合が多いので注意が必要です。

発生時期は5月から9月

病原体は発生する植物によって、カビの場合とバクテリアの場合があります。

病原体は根の傷口から侵入しますが、根を傷つける原因は虫による傷口か、作業中にスコップなどで傷つけることによるなどが考えられます。


葉、茎、花が侵され、葉でははじめ紫褐色を帯びた類円形の病斑を生じ、激しくなると病斑が互いに融合して大型不整形となり、病葉は褐変して枯死する。

茎でははじめ、暗緑色水浸状の不規則な病斑が現れるが、次第に暗褐色のくぼんだ病斑となり茎が腐敗する。

激しい時には、茎葉全体に腐敗病斑が広がって地際から立枯れ症状となる。


花はつぼみのうちに褐色になって枯死する事が多い。

病原菌は不完全菌類に属する糸状菌の一種で、ボタンのほかシャクヤクにも寄生して立枯病を起こす。

病原菌は被害患部組織内の菌糸や表面に形成された菌核の状態で、あるいは被害植物遺体とともに土壌中で越冬し、翌春菌核の発芽によって生じた分生子または遺体上に生じた分生子が飛散して、第一次伝播を行う。


防除法

葉、枝、花などの病気になったものは摘除し、落下したものも処分する。

発生期にはベノミル剤、チオファネートメチル剤、イプロジオン剤、ビンクロゾリン剤などを用いて、月に2回から3回程度降雨前後を重点に散布し防除する。

特に開花期は、咲き終わった花柄をできるだけ早めに摘除する事が重要です。



センリョウ立枯病

株全体に症状が出て、5月から6月に発病を始めます。

病気の進行が非常に早く、地際部の茎は灰褐色になって枯れ、葉は落ちてしまいます。


根では細い根が黒変して腐ってしまいます。

病気が重い程、根の腐敗も激しく株は抜けやすくなります。

病気になった株の新梢は生育が悪くなり2年から3年で枯れてしまいます。

土の中に住む病菌が根から侵入するこの病気は、発病してからでは薬剤による治療はできません。

病気になった株は抜き取って処分しましょう。

病気が発生した土壌は消毒し、土壌に薬剤が残らないように十分にガス抜きをします。

また、なるべく連作することは避けます。

✪立枯病が発生する主な植物
カーネーション、センリョウ、ケイトウ、シャクヤク、ナデシコ、エンドウ、ジャガイモ、ニンジン、アスパラガスなど




2021/09/24

樹を枯死させる病気=樹脂病① No,551

 樹脂病(じゅしびょう)ゴム病

糸状菌による病害で原因となる菌はさまざま。

モモ、ウメ、アンズなどに広く発生する病気で、胴枯病や癌腫病、害虫の食害などによって発病する。


枝幹の一部に、はじめ暗褐色油浸状(松ヤニのような樹液)の病斑が現れるが、次第に内部に侵入して形成層が黄褐色になり、木質部も変色する。

病気の進行につれて病斑は融合して大型となり、黄褐色半透明の樹脂を出液して異臭を放つ。

のちに、病患部は乾燥して陥没(かんぼつ)し、表面に多数の黒色小粒点(柄子殻)を生じる。

✪柄子殻=へいしかくとは、葉、茎、枝幹、果実の病斑または枯死部に形成される。

はじめ表皮下に形成されるが、のちに孔口が表皮上に開口し、柄子殻内に柄胞子を形成し、内部に油球を含むものもある。




病患部は、古くなると亀裂を生じて剥がれ落ち、枝幹を一周するとそこから上位部は衰えてしぼみ枯死する。


果実にも稀に発生し、はじめ果梗(果実の柄になっている部分)が侵され次第に果実に及び、暗褐色となって軟化腐敗する。

果実面にも多数の柄子殻を生じる。


発生する条件と環境

病原菌は不完全菌類の一種で、柑橘類を侵して樹脂病を起こす。

病原菌は菌糸や柄子殻の形で病患部で越冬し、気温の上昇とともに柄子殻から出液する柄胞子が、雨滴によって伝播する。

寒害や風害などによる傷害部から侵入するが、病原菌の宿主体侵入や病症の進行は主として、梅雨期と秋期に盛んになる。


防除対策処置

樹勢を衰弱させないことが大切で、冬の寒害や夏の乾燥、風害などを防ぎ、適切な肥培管理を行って樹勢維持を強化する。


病患部に対しての処置は、5月から8月の間に行うと癒合が早いので、健全部も含めて削除し、チオファネートメチル塗布剤や接ぎロウなどを塗布する。

樹脂の出液は6月から8月に多く見られるが、この患部にはミカンナガタマムシが産卵、侵入加害して枯死を早めるのでスミチオン、EDB剤を塗布して予防する。


①冬期、発芽前に石灰硫黄合剤(冬期限定使用薬剤)10倍液を木全体に散布する。

②強剪定を行わない。

③土壌が強酸性のときには、石灰を多用し、排水の悪い場合は排水溝を作るなど水はけを良くする。

④極端に乾燥したときは十分に水やりを行う。

尚、樹脂病に侵されても元気よく枝を伸ばしている様なら、様子をしばらく見て良い状態です。








2021/09/23

ゼラニウムによくつく害虫 No,550

 ヨトウガ(ヨトウムシ)

鱗翅目=(りんしもく)ヤガ科

多数の草花類と野菜類に加害します。

昼間は土中に隠れていて、夜になると地上に出て葉を食害します。

夜になると被害を起こす事から“夜盗虫”と呼ばれます。

蛾(ガ)の仲間の食害性害虫で初夏と秋に年2回発生します。


       ヨトウムシ(ヨトウガ)


若齢幼虫のうちは昼間も葉の裏にいて、土の中に隠れるのは成長してからです。

卵は葉裏に産卵し、孵化した幼虫は集団で葉の表面を残しながら食害するため、被害を受けた葉はかすり状になります。


幼虫は成長するに従って分散し、体色が褐色になり、大きいと体長4㎝にもなって食べる量も多くなるので、放っておくと植物の葉が丸裸になり、葉芯だけが残ることもある。

幼虫は主として夜行性で被害が進んでも、葉の裏や土の中に隠れているので、発見できない事が多く厄介な害虫です。

また、土の中でサナギになって越冬する。


予防対策

かすり状になった葉の裏に群生する幼虫を見つけたら葉ごと取り除く。

被害に気付くのは幼虫が大きくなってからのことが多いので、株元の土の中や葉の裏を注意深く探して見つけ次第捕殺します。

また、雑草地で育ち被害をもたらす場合があるので、近くに雑草地がある時は手入れをして雑草を除去することが予防に繋がります。

✪ヨトウムシの天敵
カエルやヤモリ、小鳥、クモなど食虫性の生き物全般。

薬剤による防除

若齢幼虫には薬剤がよく効くので、発生初期にオルトラン粒剤を株元にまくか、オルトラン水和剤を植物全体に散布します。

オルトラン粒剤を土に混ぜて駆除する事も良いとされるが、余り効果が見られない。

毛虫を含め蛾の仲間の幼虫は、成長して大きくなると薬剤が効きにくくなります。

✪木、竹酢液の散布利用で駆除する。

ヨトウガが発生しやすい主な草花類

アイリス、アスター、オダマキ、カスミソウ
カーネーション、ガーベラ、キク
キンギョソウ、キンセンカ、グラジオラス
クレマチス、ケイトウ、コスモス
スイートアリッサム、スイートピー
ストック、ダリア、デージー、ハボタン
バラ、パンジー、プリムラ
マリーゴールドなど


✪ゼラニウム関連ブログ
ゼラニウムNo,43
ゼラニウムの植え替えNo,148





2021/09/21

庭木の突然枯死の原因  No,549

 庭木が突然枯れる原因

元気の良かった庭木が突然枯れてしまうと言う現象は多く見られることですが、その原因をいち早く突き止め、適切な処置を行うことが大切です。

植物の生育や枯死に影響を及ぼす要因として考えられるのは、害虫と病気の二つが主に考えられます。


新梢や葉、枝、幹に発症するものであれば、日頃の観察で把握できるので適切な処置を行うことで、初期の段階で防ぐことが可能ですが、根元や目に見えない土の中の根、幹の中のものは注意をしていても良く分かりません。

気がついたら葉が萎れ始めているなど、被害が進行してからその状況が分かってきます。

また、害虫や病気以外にも原因とされるものがあります。

生育環境の悪化など、自然環境の変化によっても生育障害が起きてしまいます。


なかなか見つけにくい土中害虫の被害

コガネムシ幼虫による被害

代表的な害虫としてコガネムシの幼虫による根の食害がありますが、多くの昆虫の幼虫は新芽や若葉、枝などを食害するのに対し、コガネムシ類の幼虫は土中でも生活し、土壌に含まれる有機質や植物の根を食べて生活しているので、特に数が多いと、木がぐらぐらになってしまう状態になるまで根を食べてしまいます。


有機質肥料の使い過ぎにも気を付ける必要があります。

また、成虫になると葉や花に飛来し食害を続けるので、5月から7月頃に飛来する成虫を駆除する必要があります。

次々と飛来して被害を起こしては飛び去っていくので、見つけたら捕殺するようにします。

大多数のコガネムシの幼虫は、落葉や堆肥などの有機物を食べるだけで無害な虫ですが、しかし、一部のコガネムシ類は生きた木の根までも食糧にします。


その為、根の食害により苗木などが枯死することがあります。

幼虫はジムシ類(ドウガネブイブイ幼虫)と言われ、背中を丸めたイモムシで体色は乳白色です。

種類により異なるが、春から秋にかけて被害を起こし、冬は幼虫のまま土中で越冬します。

春先の植え付け時期に土を耕した時、見つけ次第幼虫を捕殺します。

根に被害を起こすものは一部の種類だけですが、苗木を育てるときには十分に注意が必要です。


幹に孔を開けて樹幹内を食害する害虫

コスカシバの幼虫
太い幹や太い枝の樹皮下に幼虫が入って食害し、樹皮の間から樹脂(ヤニ)や糞が出て多発すると枯死する。

侵入口から胴枯れ病菌などが入り樹が枯れることもある。

成虫は5月から10月に発生し、樹の割れ目などに卵を産みます。

蛾(が)の一種ですが、羽が透明で一見すると蜂のように見える。

侵入口には虫糞と樹脂が付いているので、見つけたら樹皮を少し削り、中の幼虫を捕殺し、樹皮を削ったあとは塗布剤で傷口を保護しておきます。

また、ハンマー等で入り口付近を叩き圧殺する方法もあります。

成虫が卵を産み付ける前に、割れ目や傷口を中心に塗布剤を塗っておきます。

塗布剤には、サッチューコート、スミバークなどがあります。


ゴマフボクトウガの幼虫
カエデやツバキ、サザンカ、ツツジ等にも被害があります。

空中を飛びながら産卵した卵が雑草の中に落ち、羽化した幼虫は雑草を食べて成長します。

やがて雑草から近くの木の細い枝に孔を開けて食入し、枝の先にトンネルを作り進み、食入孔から先を枯らして行きます。

このため樹勢は衰え、幼木が立ち枯れたり被害を受けた枝が強風で折れたりします。


被害は地表近くの枝や幹に多く、内部から孔を開けて、赤褐色の丸い虫糞を排出し、これが地表に積もります。

庭木の根元の雑草などは取り除いておき、丸い糞が見つかったら食入孔から、スミチオンなどの薬剤を注入して中の幼虫を駆除していきます。

薬剤注入後は、孔を土やコルクなどで密閉する方法を取る場合もあります。


カミキリムシの幼虫(別名テッポウムシ)

マツノマダラカミキリムシ
シロスジカミキリムシ
ゴマダラカミキリムシ

幼虫が樹の幹に侵入し内部を食い荒らします。

このため、樹勢が衰えて枯れたり強風などで折れたりします。

根と幹の境目から約50~100㎝の所に産卵し、幼虫は食害しながら樹幹内部に入っていき、食入孔から繊維状の木屑を出しながら二年間、樹幹内で被害を及ぼし樹勢を衰えさせます。


カミキリムシには、松枯れ病に関与するものや草花に加害するものもいます。

成虫は見つけやすいので捕殺します。

また、成虫は葉や小枝などを食害し、産卵するとき幹に傷をつけるので、傷跡を探してその部分を切り出すか叩いて圧殺します。


4月の発生時期にサッチューコートやスミバークなどの薬剤を散布すると有効です。


しかし、大部分は健全木には加害しないので、樹の健康を保つことが一番の予防です。

その他除去法として、振動を木に与える方法などがあります。


コウモリガの幼虫

クリ、クヌギ、ヤナギ、ブドウなど多数の樹木、草花に加害する。

孵化した幼虫は初め草の茎や樹木の新梢に食入します。

やがて成長すると樹木の幹に穿孔(せんこう)して、内部を食い荒らします。

侵入口は主に樹の下の方にあり、木屑と虫糞でフタがされています。

発生は1年から2年に一回で成虫は9月頃に発生し、幼虫は5月頃に孵化します。


侵入口についたフタが目印で、これは幼虫の成長とともに大きくなり目立つようになる。

侵入口を見つけたらフタを開け、中に針金を入れて刺殺。

また、スミチオンなどの薬剤を注入して密閉する方法で駆除する。

近くの草に食入してそこで成長してから樹木に穿孔することがある。

付近に幼虫が食入しそうな雑草がある場合は除去すると予防になる。


地中の根に被害を及ぼす病気

白絹病(しらきぬびょう)

樹木の幹の土と接している部分や株の近くの地表に白い糸状の菌糸が発生し、水がにじんだようになって幹の組織が腐って枯死に至ります。


       「白絹病」


地際部やその近くの地表に小さな粒がたくさん発生します。

これは菌糸の塊で菌核といい、かなり厳しい環境でも地中に入って生きていて、次の年の発生源となります。

真夏の6月から8月に多く発生し、病気にかかった株は抜き取り処分します。

いったん発生した場合、土中に菌核を作って5年から6年間生存している可能性が高いので、5月から10月頃に土壌消毒や石灰を土に混ぜて中性からアルカリ性土壌にします。

この病気は酸性土壌で、夏期高温時の降雨の後などに発生が多い傾向があり、排水不良地、連作地で多発して激しい被害を及ぼす。

汚染土壌はクロルピクリン剤またはダゾメット剤などのガスくん蒸剤で土壌消毒を行う。

尚、PCNB剤、コブトール、ペンタゲンなどの灌注、または散布が病勢進展を阻止するとされ使用されていたが、現在では販売利用禁止農薬として指定されている。

菌核は土中の浅い所に潜伏しますので天地返しをしたり、太陽熱による殺菌をして予防します。

紋羽病(もんぱびょう)白紋羽、紫紋羽


根が侵されるとぼろぼろに腐ってしまい、あっと間に木が枯れてしまう恐ろしい病気です。


      「白紋羽病」


菌糸が繁殖するとやや厚みのある菌膜が根を覆います。

この菌膜の色によって白紋羽病、紫紋羽病に分けていますが、被害状況は全く同じです。

白絹病菌や紋羽病菌は多少なりとも庭土に潜伏しています。

庭木の剪定枝などを庭に戻してやろうと30〜50㎝の深さに掘って埋めると、せっかく眠っていた菌糸を起こしてしまうので、木の枝や落ち葉を庭木の間に埋める時には1m以上の深さが必要になります。

または、庭木の無い場所にビニールシートを敷き、この上に積んで置き、1年から2年かけて完全に腐熟させてから利用すると良いでしょう。

いずれにしても病気に侵され、菌糸膜形成時はすでに末期に近く、ほとんど治療の方法もなく回復は不可能です。


ナラタケ病(根朽病=ねくちびょう)

食用になるキノコ(ナラタケ)に侵される病気で、急に葉が萎れて枯死に至ります。


     「ナラタケ病」


樹勢が著しく弱った木、地上部を強く切り詰めた時などに発症します。

病気が進むと地際部分に白い菌糸がびっしり張り、秋に淡褐色の小さなキノコがたくさん発生します。

発症が分かってからでは治療の方法はなく、病気に侵された木は根まできれいに取り除き、4年から5年は植樹しないか、ナラタケ病にかからないイネ科の植物を植えておくことです。

枯死樹木の跡地は土壌消毒を行います。

樹勢が弱まったら、ベンレートやトップジンMを根元に散布するのも効果的です。

土壌中のナラタケ病菌を捕捉するには、4月から5月頃に直径約6㎝、長さ70㎝のコナラまたはカラマツの杭を地中に打ち込み、10月下旬に引き抜くとナラタケ菌が分布する場所では、杭の周囲に根状菌糸束が付着し、樹皮下に白色扇状の菌糸膜が形成されている。

この方法によって、ナラタケ病菌の生息場所を検診することができる。


強い切り詰めによる枯れ込み

すべての木に当てはまる訳ではありませんが、幹の太い部分で切り詰めていくと、新しい芽が出ずに枯れてしまう場合があります。

この場合、切り口の保護や幹巻きなどを行っておくことにより、ある程度防ぐことは可能です。

ただし、ハナミズキやナツツバキ、ヒメシャラなどは強い切り詰めを行うと年々太い部分が枯れ下がっていくので、細い枝の時から樹高を抑えていくようにします。


台風による枯死

根を多く出して深く地中に張っているものはまず心配ありませんが、根の粗いモクレン類や樹冠の大きくなるギンヨウアカシア、クサアカシアなどは強い風と雨で木が根元から大きく四方に揺すられて、細かい根がちぎれてしまうと風の後、木を支柱で固定しても枯死する事があります。


この場合、ちぎれた根に見合う枝葉の量を減らす為のせん定を行う事が大切です。


植え付け後3年から4年の樹はまだ根が十分に張っていない木も、雨と強風で根元が強く揉まれると細かい根が切れてしまいます。

植え付け後、ある程度の年数は支柱で固定する必要があります。


木の寿命による枯死

現在、観測されている世界一長寿の木は、北米ネバタ山脈の荒野に自生する「ブリッスルコンパイン」で、その樹齢は4787年と見られています。

★ブリッスルコンパイン関連ブログ
世界一の樹齢木ブリッスルコンパイン巨樹
No,253-1


樹木の寿命として柿や桃、栗は約50年
白樺約70年、ミズキやコナラ約80年
トチノキ150〜200年、松は500〜1000年と言われていますが、樹木が生息する自然環境によって、樹齢は個体差の違いがあります。

多くの植物は性質にあった土壌や自然環境下で生息する事で、樹齢の長さも違ってくる。

より良い環境下で育つ事が長く生きて行くための条件と言えるでしょう。









2021/09/08

9月のバラ手入れ  No,548

 バラの手入れ


お彼岸までは残暑が続き、台風も頻繁に訪れる季節です。

バラは剪定後の枝から新梢が下旬には伸びてきます。

①夏の剪定

早咲きのブッシュは早めに剪定を終えるようにします。

シュラブや四季咲きのつるバラも、咲き柄摘みをこの時期にしておくと、ブッシュに合わせて花が咲きます。

②病害虫の防除

秋のお湿りとともに病害虫も復活してきます。

黒点病、うどん粉病には予防用の薬剤の定期散布のほか、発生を確認したら治療薬で対応します。

ハダニはお彼岸過ぎまで発生します。

中旬頃からは「オオタバコガ」の幼虫が発生し、つぼみに次々ともぐり込み中を食い荒らします。


   「オオタバコガによる食入口」

殺虫剤をスピノエース、アファームなどの特効薬に切り替えます。


    「オオタバコガによる食害」

★オオタバコガ

オオタバコガは蛾(が)の一種で、バラ栽培でのオオタバコガの被害は致命的です。

6月から8月頃に成虫が夜間に飛来して、葉や茎、つぼみなどに卵を産み付ける。

幼虫はつぼみの中に食入する。


③台風対策

9月はまだ新梢が少ししか伸びていないので、風で多少傷んでも回復は可能ですが、10月の台風で、それも遅くに来ると花枝は出来上がっているので、被害は大きくなり回復も不可能となります。


④水やり

庭植えのものには基本的に不要ですが、鉢植えは剪定を済ませているので回数は少なくなります。


⑤除草と清掃

この時期は土が湿っていることが多いので、雑草を丁寧に取って処分します。






2021/09/06

資本主義社会がもたらした地球環境破壊 No,547

 資本主義社会による破壊活動と影響


働けど 働けど猶(なお)

我が暮らし楽にならざり

じっと手を見る。

歌人、石川啄木が明治の末年(ばつねん=時代の終わりの頃)、自分の貧しい生活の思いを詠んだものであるが今、世界中でも啄木がこの歌を詠んだ時以上の深刻さで、コロナ禍も影響し、貧困と格差の拡大が止まらない。


高度な経済を基盤にした、文明社会を目指したはずの現代社会でなぜ?貧困と格差が広がるのか!

どこにその原因があるのか!


18世紀の中頃、資本主義はすでにイギリスで社会の支配的な体制となり、フランスやドイツなどヨーロッパの大陸諸国にまで広がって、経済の新しい発展の時代を開いていました。


日本では、明治時代になり本格的に欧米の資本主義システムを導入しました。

元々生産に携わる庶民の貧困問題は、昔からどこにもありました。

18世紀末、フランス革命に民衆が立ち上がったのも、封建社会による貴族や地主の搾取の酷さに大きな原因があったからです。


今と違っていることは、その頃は搾取の姿が目に見えて分かっていた事です。

その後、領主や政府が強制的に取り上げる、こういう封建制度は革命によって廃止されました。

しかし、かつての強制関係は一掃されたはずなのに、新しい体制で働く労働者たちの生活は封建社会の農民より、更に苦しいものとなったのです。


資本主義による搾取は、封建社会での「年貢」の取り立てとは違って、その仕組みも姿もはっきり見えないと言う所に大きな特徴があります。

資本家と労働者は、市場経済の下での対等の関係を結んだはずなのに、そこから驚くべき貧富の格差が生まれたのです。


生産した富は資本家の側に集中し、生産者である労働者の側は困難な暮らしが続いた。

いったいこんな不公平な状態はどこから生まれてくるのか。


労働者が資本家に売っていたのは「労働」ではなく労働をする能力=「労働力」だと言うことです。

「労働力」と言う商品の価値は、他の商品と同じように、その商品の再生産の費用で決まります。

再生産の費用は、労働者が引き続き働ける状態を維持する費用ですので、労働者とその家族の生活費と言うことになります。


資本家は買い入れた「労働力」を消費する。

つまり自分の工場で働かせます。


「労働力」と言う商品は、これを働かせることである新しい価値を生み出すと言う、他の商品にはない特性を持っています。


なので、ある時間働けば賃金分の価値を生み出しますが、そこで仕事をやめさせる資本家はいないでしょう。

必ず、賃金分に相当する時間を超えて労働を続けさせます。


その時間帯に生み出された価値は、まるまる資本家のものになります。


これが剰余価値で経済学では、賃金分の
価値を生み出す労働時間を「必要労働時間」と呼び、それを超えた労働時間を「剰余労働時間」と呼びます。


資本家が市場経済の法則に従って、世間並の生活が出来るだけの賃金を支払ったとしても、その分を埋め合わせるのに必要な労働は、1日の労働時間の一部分に過ぎません。

それ以上の労働時間は剰余労働であり、資本家は間違いなく剰余価値を手に入れることができます。

これが資本主義の搾取の仕組みです。


剰余価値の生産こそが、資本主義的生産の絶対的な目的であり、決定的な意味を持つ動機である。


そもそも資本家が自分の持つ貨幣を、様々な事業に資本として投資するのは、剰余価値を手に入れて資本を増殖させるためです。

資本主義社会では、富の蓄積と言うのはただの溜め込みではない。

資本家は絶えず資本を生産に投じ、剰余価値の生産の規模をひたすら拡大することであり、「生産のための生産」が資本主義である。


「労働力」こそが剰余を生み出す源ですから、資本は買い入れた「労働力」からできるだけ、多くの剰余労働を絞り尽くすことに、あらゆる知恵と手だてを尽くしているのです。


世界的規模での「生産から生産」を必要以上に進めたけ結果、地球全体の環境破壊を引き起こすことになった。


地球大気という「生命維持装置」は、人類と人類社会が誕生してからも、資本主義の時代になるまでは、その機能を破壊するような事態が起きたことは一度もありません。

地球大気の状態に、地上の生命を脅かす危険が現れ、目に見えるようになったのは20世紀に入ってからのことです。

現在起きている地球温暖化や気候変動は自然の作用よる現象ではなく、明らかに人間の経済活動が引き起こしたものです。

これは、1世紀半にも満たない間に急激にエネルギーの消費量が膨張したことであり、「生産のための生産」を旗印に剰余価値の拡大の道をひたすら突き進んできた、資本主義的生産のあり方が原因であることは紛れもない事だろう。

地球規模で破壊を続けてきた資本主義社会であるが、人類に対するその責任を果たすことはもはや出来ない所に、辿り着いたと言えるだろう。






2021/09/04

子どもが遊んだオシロイバナ No,546

 オシロイバナ「白粉花」

別名=夕化粧、飯炊き花

オシロイバナ科の多年草または一年草。

通常は種から育てる一年草として扱いますが、関東より西の地方では、冬場地上部が枯れますが根が肥大して残り、多年草として扱うことができる。


南アメリカ原産で、江戸時代初期に渡来したとされ、花が美しいことから観賞用に栽培されるが、広く野生化したものもある。

一説には、ペルー原産とも言われる。

オシロイバナの種を潰すと白い粉がでてきます。
昔の子どもはこれを「おしろい」に見立てて遊んでいたことから、この名がある。





英名でフォーオクロック(4時)と言うように、夕方に香りの良い花を咲かせ、翌朝まで咲きます。

日本では夏の夕方6時頃に花が開きます。

そこで開花する時刻に由来する別名の、夕化粧(ゆうげしょう)の名がある。

中国名として「スダジョン、四打鐘」

メシタキバナと言われるのはこの花が開くと、夕御飯の準備を始めると言う意味でそう呼ばれています。


地植えにすると雑草化してしまうほど丈夫で、生育旺盛な草花です。

水はけのよい土に十分な元肥を与え、地植えまたは、8号以上の大きな鉢に植え付けます。


ひたなでも半日陰でもよく育つが、水が切れるとすぐに萎れてしまうので、1日1回はたっぷりと水を与えます。


花の咲く期間が長いので、2週間に1度は液肥で与えます。


オシロイバナの全草は有毒で、特に根に「トリゴネリン」と呼ばれる有毒成分を含み、誤って食べると嘔吐、腹痛、下痢を起こします。


しかし、この成分はアルツハイマー認知症予防に効果があるのてはないかと、研究されています。

トリゴネリンとは、多くの植物に含まれるピリジン環を持つアルカロイドの一種で、コーヒーの生豆に多く含まれる成分で、コーヒーにカフェインと同量含まれている。

トリゴネリンは熱により分解し、ニコチン酸に変化する。


コーヒーの生豆を焙煎する過程で、変質して無くなってしまいます。





2021/09/03

世界共通言語の必要性 番外編 No,545-1

言語は、音声や文字によって人の意志、思想や感情などの情報を表現したり、伝達する。


または、受け入れや理解するための約束や規則、またその記号の体系とされる。


意思を通わせるために、人間が発声や動作、文字などを使って行う手段や方法ですが、脳科学的には大脳の中の「言語野」の活動によって引き起こされる行動で、この感覚を言語化するのは難しいので、自分自身で体験することが一番良いことです。


★言語野(げんごや)
大脳皮質の言語中枢のある領域(言語領)
言語野とは、運動性言語中枢で主に話すことを担う。

前頭葉に聴覚性言語中枢もしくは、感覚性言語中枢、主に言葉を理解することを担う中枢が側頭葉にある。



世界中には何ヵ国もの言語を話す方々がいますが、すべての言語を話すことは難しいことです。

世界共通の言語の必要性はあるが、その国々の教育環境や国の発展のあり方によって、世界共通とされるような言語教育がなされているかと言えば、そうではないはずです。


世界で最も使用されている言語は①英語で15億人、②中国語で11億人、③ヒンドゥー語で6億5000万人、④スペイン語で4億2000万人、⑤フランス語で3億7000万人とされている。

地球には約200ヶ国ほどがあるといわれ、国の数だけ言語があると思われますが、実はその言語数は7097言語あると言われています。


その内の約2000言語は1000人以下の者しか話せなかったりします。

現代、主要言語に移行することによって少数派の言葉が失われつつあります。


多くの学者は、3000を超える言語が次世代にはなくなってしまうと予測されていますが、これは古くから根付いた言語の歴史も、消えてしまうことを意味しているように思えます。


近代化が進んでいる現代社会では、主要言語とされる英語、中国語、スペイン語などに移行し、世界でよく利用されている言語比率を大幅に占めています。

更に、グローバル化が進む現代では、数多くの人々が当たり前のように海外旅行に行き、またネット上などでも各国の人々との交流が簡単化されています。

この流れを変えることは、もはや出来ないでしょう。

その内、母国語を話せない人々が現れる時代も来るかも知れません。

人口数の多い国々の母国語だけが、残って行くと言うことも起きうることだろう。

すでに言語の逆転が起きている国々もあり、母国語よりも主要言語が使われている。

世界で最も使用されている言語は英語です。

何ヵ国語も習得して話せる方々は基本、英語を話せることは普通と言うイメージですが、英語が話せれば世界中にいる約20%の人達と繋がれると言われています。


話せて無駄なものはありません。

やはり共通語はある程度必要であり、またその教育も重要と言えます。


置き去りにされた時代の教育での主要言語教育は、現代教育とは似ても似つかないものであった為、高学歴を望めない者は自力での習得しかなかったと言える。


しかし、母国語を話せない人々の未来が来るとすれば、それは哀しいことである。






2021/09/02

自分だけのパルダリウム自然風景 No,545

 パルダリウム

パルダリウムとは、土中や空気中の湿度を好む熱帯の雨林や湿地などに生息する植物を植え込み、自然の風景を模したもので、自然環境を水槽やガラス容器内などに作ったものを指します。





森林の林床などに生息する植物を使えば、強い光が届かない場所でも育てる事ができます。

室内でライトを当てるなど、日が差さない場所でも植物観賞を楽しめることから、パルダリウムの人気も上昇しています。


パルダリウムに向く植物として、ベゴニア、セントポーリア、シダ、ウツボカズラ、ヒューケラ、ヒドノフィツム、ブロメリアなどがあります。


シダや苔などの苔テラリウムでお馴染みの植物の他に、花が咲くものや樹木に見立てて小さな自然の風景を作ることができます。

ベゴニア、セントポーリア、シンニンギアなど花が咲くものがおすすめ。



        「シンニンギア」


自分だけの、個性溢れる自然の風景を楽しむ事が出来るでしょう。


◆Facebook 「苔玉盆栽の会」より


会員の皆さんの力作を一部転載です。















2021/09/01

毒キノコ発生の季節猛毒カエンタケ No,544

 カエンタケ猛毒キノコ(殺人キノコ)

全国各地で毒キノコによる食中毒が発生する時期です。

カエンタケは、ボタンタケ科トリコデルマ属に属する子嚢菌の一種。

燃え上がる炎のような形をした姿で、非常に強い毒を持つ猛毒キノコである。


カエンタケは、赤やオレンジががった色が特徴。

棒状で、大きいものは手の指のような形になることもある。


       「猛毒のカエンタケ」

土の中から一部が出た状態で群生することが多い。

誤って食べてしまうと死に至るほどの大変危険なキノコで、内臓が破裂し、汚物を垂れ流して最悪そのような姿で死んでしまった実例がある。

食後30分ほどから、発熱や悪寒、嘔吐、下痢、腹痛、手足のしびれとともに全身麻痺の症状を起こす。


致死量はわずか「3㌘」と言われている。

初夏から秋にかけて、コナラなどの樹木の立ち枯れした木の根元や、倒木して埋もれた枯れ木などに発生が見られる。


通常の猛毒キノコは、触るだけでは何の症状も起こらないとされているが、カエンタケは強くつかむと出てくる汁に触れてしまうと、皮膚に強い炎症を引き起こしてしまう。

特に、素手で触ることは絶対やめましょう。

触ると皮膚が炎症を起こし、食ベると発熱や嘔吐(おうと)、手足の痺れるなどの症状が表れる。

消化器不全や脳神経障害を起こすことがあり、薬効があると勘違いしてお酒に浸したものを飲んで死亡した例もある。


カエンタケの毒は、かつて世界中で中毒を起こし、輸入作物など厳重な検査を行っていた。


無毒で形がよく似たキノコ(ベニナギナタタケ)もあるが、判別できない場合は絶対触らないことです。



    「無毒のベニナギナタタケ」


★ベニナギナタタケは、毒はなく食べることは出来ると言われていますが、美味しくないので一般的には食用のキノコとして分類されていないようである。


カエンタケは山野だけにあるものではありません。

生育環境、条件が良ければ身近な公園などでも発生します。

自己処理は危険が伴うので、見つけた場合は保健所に連絡しましょう。

また、地中に埋めたとしてもまた再生してしまいます。


キノコは、西日本を中心に発生量が増加傾向にあるとされ、東北地方でも発生が確認されている。


関東地方周辺でも発見例が多くなっている。

ブナやコナラなどの樹が、枯れ木となった付近に群生することが多く、ナラの樹などの枯れが毒キノコの発生に影響している可能性がある。


山中だけでなく身近な公園などの枯れ木付近でも注意が必要です。

少量程度でも食べてしまうと大人でも死んでしまう最も危険な部類の毒キノコであり、誤って触ってしまったら、なるべく早く石鹸で手を洗ってください。

似ている毒キノコの可能性があるもの、判断ができないものは食べないことです。