コウヤク病
コウヤク病は厚いフェルト状のカビの膜
庭の梅の木や桜の街路樹の枝や幹に、膏薬を張り付けたようにびっしりと膜状のカビが生えていたら、コウヤク病だと思われます。
コウヤク病は、糸状菌(カビ)の仲間のコウヤク病菌属(セプトバシジウム)の病原菌類によって起こされる、枝幹に生じる病気を言う。
膜はカビの菌糸で厚い灰白色フェルト状になっていて、はじめはほぼ円形をし、膏薬を貼り付けたような外観になる。
周りが薄くなっていて枝、幹をひと巻きすると段々上下に広がり、他の膜と繋がって縦形の大きな膜になります。
菌糸層が古くなると病斑の周辺部に白い斑紋が浮かんできて、やがて全体的に灰褐色となり、亀裂を生じて樹皮が剥げ落ちたりする。
膜に被われた枝は徐々に勢いが衰え、最後には枯れてしまいます。
初夏の頃、菌糸層の表面には白色の粉状物が噴出したように現れる。
コウヤク病によって全国各地の公園や街路樹など、枯死した樹木も多く見られる。
発生しやすい植物
ウメ、エゾマツ、トドマツ、グミ、サクラ、サンショウ、モモ、クリ、ミカン類など
病気発生の原因
コウヤク病もスス病と同じように、カイガラムシの排泄物や死骸を栄養として繁殖するカビの一種で、特に古木によく見られます。
カイガラムシの吸汁痕は菌にとって植物の樹皮内部への侵入口となります。
この病気はほとんどの場合、直接樹木から栄養を取るのではないので、初期段階で樹全体をからすことはありませんが、カビが生えた部分は樹皮が締め付けられ、生育が著しく悪くなった場合には枯死に至る原因ともなる。
コウヤク病はいろんな樹木で発生しますが、樹種によって病原菌が少しずつ異なります。
また、病原菌は比較的限られた植物に感染するものと、広くさまざまな植物に感染するものがあります。
これは、カイガラムシの種類によって感染する植物の範囲が違うことによるものと思われます。
コウヤク病の種類
コウヤク病は菌糸膜の色と宿主(寄主)となった植物の種類によって、それぞれ名前が付けられています。
主な病名とそれに関係するカイガラムシと植物
①サクラ暗褐色コウヤク病
クワノカイガラムシ=ヤマザクラ
②サクラ黒色コウヤク病
サクラアカカイガラムシ=ソメイヨシノ、サトザクラ等のサクラ類
③グミ琥珀色コウヤク病
クワノカイガラムシ=ナワシログミ、カキ
④エゾマツ、トドマツコウヤク病
トドマツニセカキカイガラムシ=トドマツ、エゾマツなど
⑤原色コウヤク病
クワシロカイガラムシ=ソメイヨシノ、ヤマザクラ、コウゾなど
防除対策
カイガラムシを駆除することが重要です。
冬期間に石灰硫黄合剤や機械油乳剤を散布するとともに、春以降の生育期にはイソキサチオン剤、DMTP剤(スプラサイド)などを用いて駆除する。
コウヤク病菌に対しては、冬の間に患部へ石灰硫黄合剤10倍液、石灰乳などを塗布する。
なお、樹種によっては薬害を生じる恐れがあるので注意が必要であり、石灰硫黄合剤は冬期使用限定薬剤であるため、冬期間での使用のみを厳守する。
菌糸膜が広範囲に広がってしまっている場合は、樹皮をなるべく傷つけないようにワイヤーブラシでカビを削ぎ落としてから、防菌癒合促進剤を塗布する。
また、日当たりや風通しを良くしてやることも病気の予防となります。
灰色コウヤク病
病原菌は担子菌類に属する糸状菌の一種で、病原菌はクワシロカイガラムシと共生、或いは寄生関係にある。
宿主植物
サクラ類、ポプラ類、ケヤキ、イタチハギ、サンショウ、アカメガシワ、マサキ、キリ、シイノキ、タブノキ、クロモジ、エゴノキ、カンキツ類、リンゴ、ナシ、モモ、スモモ、アンズ、ウメなど多くの広葉樹、果樹類に発生することが知られている。
防除法
被害が激しい場合は、病枝梢を含めて思いきった剪定を行って、日射、通風を良くするとともに伝染源の排除を図る。
また、薬剤防除としては、発芽前に石灰硫黄合剤を散布する他、カイガラムシに対しても発芽前までに機械油乳剤を散布して駆除する。
ただし、石灰硫黄合剤は機械油乳剤散布の7日から10日前に散布することが重要です。
褐色コウヤク病
枝に発生し、褐色から暗褐色で周縁が白味を帯びたフェルト状の菌糸膜が円形に広がり、やがて不整形となる。
病原菌はカイガラムシと共存することが知られている。
宿主植物
ポプラ類、ヤナギ類、ナラ類、ヤマブキ、サクラ類、サンショウ、アオギリ、ツバキ、キンモクセイ、ギンモクセイ、キリ、モモ、スモモ、ウメ、クルミ
防除法
コウヤク病に準じて行う。
★関連ブログ記事
糸状菌とは何?No,557
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