緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2020/08/29

フヨウ (芙蓉) No.260

フヨウ アオキ科フヨウ属 落葉低木

別名=モクフヨウ、キハチス、スイフヨウ
原産地=日本、中国、東アジア

一般家庭の庭や公園、社寺の境内などによく植えられています。

株元から枝分かれして、株立ち状になるが、幹の数は多くありません。

枝はあまり木質化せず、冬には上部が枯れ込んで翌年は株の側芽から萌芽します。

そのため扱いは寧ろ、大型の宿根草と云えるでしょう。

葉は互生し、長さ幅ともに10~20㎝ほどで浅く3~5裂します。

枝葉には白い毛が密生しています。

美人の事を「芙蓉のよう」と形容したり富士山を「芙蓉峰」と呼んだり、美しさを例える際にフヨウが使われることがありますが、この場合の芙蓉は「ハスの花」を指します。

古代中国では、ハスの花を芙蓉と呼んでいて、後代になってハスの花に匹敵する美しさを持つとして、この植物に「フヨウ」の名が与えられました。

別称のモクフヨウ(木芙蓉)、キハチス(木蓮)はそうした経緯をよく表しています。

フヨウは一年枝の上部の葉脈に、直径10~20㎝の花が単生します。

花期は7月~10月頃で、ひとつの花はアサガオなどのように朝咲いて夜に閉じます。

このような花を1日花(いちにちばな)と呼びます。

原種の花は白か淡紅色の一重ですが、園芸品種が多く栽培されています。

※代表的な「スイフヨウ=酔芙蓉」はその名の通り、朝には白かった八重咲きの花が夕方には、お酒に酔った顔色のように濃い紅色へと変化します。

※他にも同じアオキ科の🌺ハイビスカスのつぼみに似た花をつける「ヒメフヨウ」

30㎝ほどにもなる大輪の花が人気の「アメリカフヨウ」

中国の「ロザンフヨウ」との交雑種の「ハイカグラ」などがある。




◉植え付け
4月上旬~中旬が適しています。
日当たりののよい、しかもやや湿り気のある場所に植えます。

風通しと将来の枝の広がりを考えて、1メートル四方程度の広さを設けましょう。

土は砂質で、腐葉土など有機質の多いものが適しています。

植え穴は深めに掘り、下に堆肥と鶏ふんを埋めます。

◉肥料
1月~2月に寒肥として、鶏ふんや堆肥など有機質の肥料を根元に埋め込みます。

その他の時期には施肥は必要ありませんが、花を美しくするなら、追肥を7月頃、10月頃の花後に与えます。

どちらも化成肥料を株周りに与えます。

◆害虫
アブラムシやハマキムシなどが発生します。

4月~9月の虫がつきやすい時期には月1~2回、スミチオンなどの薬剤を散布します。

◉せん定
落葉期に徒長枝や枯れ枝などを整理します。

春以降に伸びた新梢に芽をつけるので冬期(11月~2月)にはどこで切ってもよく萌芽します。

株数が増えてきたら、古い株は地際で切り取ります。

樹高を低くしたい場合は、落葉期に高く伸びた枝の分岐点のすぐ上で切り戻します。

栽培できる北限の関東より北では、秋には地上部が枯れてしまうにで冬越し対策(防寒)として、枯れた株を地際から切り、敷きわらや落ち葉、土などでマルチングしておきます。

この状態づ春になれば再び萌芽してきます。

◉殖やし方
園芸品種は通常、3月下旬~4月に挿し木で殖やします

実生で殖やす場合は、11月頃に種を採取し翌年5月頃に蒔きます。



2020/08/28

ハギ (萩) No.259

ハギ マメ科 落葉半低木

原産地=日本(北海道、本州)対馬、朝鮮半島

秋の七草に数えられ、昔から日本の秋を代表してきた植物である。

外見は草のように見える。

「ハギ」の名は総称として使われているが、学問的には「ヤマハギ」のことを指す。

日当たりのよい山地にに生え、高さは2㍍ほどになる。

萩の名所として知られる、社寺に植えられているものは、枝が垂れる「ミヤギノハギ」が多い。

ハギは種類が多く、白い花もあるが一般的なのは紅紫色。

日本に自生するものだけで20種類はある。

✣代表的な品種として

ヤマハギ、ミヤギノハギ、ツクシハギ、シロバナハギ
小形のヤクシマハギなどがある。

※萩の名所として知られる社寺園
京都市
①梨木神社
②上賀茂神社(賀茂別雷神社=かもわけいかづちじんじゃ)
京都で最も古い神社
③迎称寺
④平安神宮
⑤真正極楽寺(真如堂)
⑥伏見勝念寺

東京都
龍眼寺

茨城県水戸市
偕楽園
その他、全国に多くの名所がある。

花の見頃は全国的に差はあるが、早くて7月から10月下旬頃まで




小さな蝶形のハギ花に派手さはありませんが、かえって上品な趣が人々に親しまれている。

古典文学にも度々登場し、有名な芭蕉の句では「一つ家に遊女も寝たり萩の月」がある。

万葉集には130首を超す歌が詠まれている。

◆植え付け、移植

秋から冬又は、2月下旬から3月上旬頃に行う。

根は浅く横に広がる性質があるので、植え付け場所を広く掘り起こし、堆肥を多めにすき込んで少し高植えにする。

◉せん定
冬期の12月から2月にかけて行う。

大株に仕立てる場合は別として、狭い庭などでは地際の5㎝~10㎝ほどを残して切り取り、これを毎年行えば小形の樹形で花を楽しめます。

また、萌芽力があるので低い丈にしたい時は、新芽が20㎝ぐらいに伸びたところで先端を摘み、横枝が出るようにします。

◆肥料
あまりたくさんは必要ありません
1月から2月に鶏ふんや油粕を、成木の場合で200㌘~300㌘株のまわりを軽く掘って埋め込みます。

◉病気
※さび病
発生時期9月~10月
ダイセンの400倍液を散布

※うどん粉病
発生時期4月~10月
病気を見つけしだい、10日ごとにモレスタン、トップジンM、ベンレート、水和硫黄剤などを散布

※褐斑病
発生時期5月~10月
ダイセン、ダニコール、ベンレートなどを散布

◆害虫
※ヒゲナガアブラムシ
風通しが悪いときにアブラムシが発生する。

マラソン乳剤を散布し防除する。
ほとんどの殺虫剤が効く。


★殖やし方
株分け
2月~3月、10月に1~2本ずつ行う。

挿し木は3月に前年枝を挿す。
梅雨期には新芽を挿す。

実生もまれに行われる。







2020/08/26

タラノキ No.257

タラノキ ウコギ科 山菜

原産地=日本、朝鮮、中国北東部、アムール·ウスリー地方 別名=ウドモドキ

日当たりのよい山野や雑木林に生えるが、裸地の先駆植物なので、崖や道路の法面(のりめん)など、まだ他の植物があまり入り込んでいない場所に多い。

山菜の珍味、たらの芽としてお馴染みです。

特有の香織とややしつこい味が好まれ、若芽を天ぷらや味噌漬けなどにし賞味される。

枝には鋭い大きなトゲがあるので採取には要注意。

トゲの少ないものは(メダラ)という。

日陰では育たないが、樹勢は強く生長は早い。

栽培にはトゲの少ないメダラもよい、移植は可能(11月下旬~3月頃)でせん定は不要。



◉肥料
油粕、腐葉土、化成肥料を冬に与える。

◆観賞用品種
葉に黄色の斑紋があるキモンタラノキ

葉の縁が白いフクリンタラノキ

※メダラは葉の裏が白く、脈上に褐色や汚黄色の短い毛がある。

◉タラノ芽料理
一般的なのは天ぷら外側のかたい葉を落とし、根元に十文字の切り込みを入れて熱を通りやすくする。

衣は薄めにし、天つゆに大根おろしを添えて食べてもよい。

また、茹でたものをごま和えや酢味噌あえにしてもよい。

保存しない時は味噌漬け、塩漬けなどにする。







2020/08/25

プラタナス (スズカケノキ) No.256


プラタナス すずかけの木

落葉高木


原産地=北アメリカ、メキシコ、アジア西部
別名=スズカケノキ(鈴掛木)

プラタナスと言えば並木や公園樹として有名ですが、もともとは明治時代に渡来した植物です。

「日比谷公会堂、スズカケノキ」

明治43年に当時の芝区桜田本郷町に、十数本が植えられたのが街路樹としての最初である。

樹皮が剥げ落ちまだらになるのが特徴です。

このまだら模様が迷彩服のデザインのもとになっている。

高さが30㍍にもなる高木で、葉が大きくよく日陰を作り、秋になると丸いトゲのある実を枝からぶら下げ、その姿が鈴のように見えることから、スズカケノキの名がある。




若葉の頃に密生する綿毛が、アレルギー体質の人々を悩ますと言われて問題になっている。

雌雄同株で4月頃に雌花は淡緑色、雄花は黄色または暗紅色の花を咲かせる。

寒さに強く、乾燥地や湿地以外では土質を選ばずよく生育し、公害にも強い。

肥料はほとんど必要ない。

◉害虫
※アメリカシロヒトリ 
主に落葉広葉樹に発生する。

枝先に白い糸が袋状に張られています。

この袋状の巣の中に、幼虫が群棲していて集団で葉を食べる。

老熟幼虫は3㎝ほどになり、単独で行動し葉肉だけでなく、葉脈以外の葉のすべてに部分を食べるようになり、被害も拡がる。

巣を見つけしだい枝ごと除去するか、ディプテレックス、DDVPなどの薬剤を散布します。

年に2回、6月と8月に発生します。

幼虫は樹皮のすき間などで、サナギの状態で越冬するので、秋に樹の幹にムシロを巻いておき、冬場にこれを処分します。

★せん定時期
10月下旬から2月下旬


          (果実)

★殖やし方
実生は3月頃に蒔きます。
挿し木は新枝を6月~7月頃挿し木する。






サカキ No.255

サカキ (榊)ツバキ科

雌雄異株 原産地=関東以南、四国、九州

花弁の先がやや尖った白の5弁花をつける(5月~7月)

葉の付け根に1~3個の黒い実をつける。

庭の主木、植え込み、生け垣のほか、神前に供える玉串などに用いる。

温暖地の林に見るサカキは、10㍍にも伸長するが、庭では3~5㍍に仕立てる。

性質は強健で日陰にもよく耐えるが、日当たりのよい場所に植え付けると、しだいに弱ってくる。

湿潤な所が適し、日陰を好む。
株元を乾燥させない。

生長は遅く、樹姿は自然に整うので特に混み合う部分を間引く程度でよい。

切り戻しは必ず枝分かれしている部分で行う。




◉肥料

12月から1月に有機質肥料を株の周囲に施す。

◆害虫

チャドクガ

葉の裏にケムシが群れて、葉肉だけを食べるので表からは葉の色が黄色に見えます。

このケムシは、淡黄色に黒い紋のはいった姿で、老熟幼虫は2.5㎝ほどになります。

年に2回、4月と7月頃に発生する。

この虫は毒毛を持ち、触るだけではなく近寄ってもかぶれるので、他のケムシのように捕殺するのは適切ではありません。

薬剤は、産卵初期にカルホス乳剤、スミチオン、ディプテレックス、DDVPなどで防除する。

葉の色が黄色く変わるので、これを目印に孵化(ふか)後早いうちに駆除します。

成虫も毒毛をまき散らかしますので、早期に駆除することが大切です。

◉殖やし方

実が黒く熟したら、種をよく洗って蒔く。

挿し木は2年生枝を切り、葉を2枚~3枚つけて挿し穂にして、小粒の鹿沼土に挿します。

★サカキとヒサカキの違い

サカキの葉を縁に鋸歯がなく、ヒサカキの葉の縁には鋸歯がある。

葉がサカキの方が大きい。

花期はヒサカキが少し早い。










2020/08/24

ナツツバキ No.254

ナツツバキ (夏椿)ツバキ科落葉樹

別名=シャラ、シャラノキ、サラソウジュ、サルナメリ
原産地=日本
(本州中南部、四国、九州)

宮城県以南の本州と四国、九州の比較的温度の高い山地に自生する、落葉高木です。

6月から7月にツバキに似た白色5弁の花が咲きます。

古くから観賞木として親しまれ、日本庭園、茶園には欠かせない花木の1つです。

別名「シャラ」は、釈迦が亡くなる時に近くに生えていたという、沙羅双樹ひ由来します。

実際の沙羅双樹は、樹高が30㍍にもなるインド原産のフタバカキ科の、熱帯性常緑高木で全く別種です。

一説によると、ある高僧が日本にも沙羅双樹があると信じて、山野を探した結果、ナツツバキを沙羅双樹と誤認して広めてしまった為に、「シャラ」の名がついたということです。

類似種に樹高、花径とも小ぶりの「ヒメシャラ」「ヒコサンヒメシャラ」があります。

ナツツバキは耐寒性がありますが、ヒメシャラは関東地方南部以南でないと、寒害を受けやすいようです。




◉生育管理
株元が乾燥しない腐植質に富んだ、湿潤な場所を好みます。

また、十分に根を張れる環境でもあることも重要です。

土の鎮圧が強く下層が固い盤状になっている庭は、乾燥しやすく根張りも悪いため、枯れ込む恐れがあります。

このような場所でも植え付けは、事前に土を深く耕して有機肥料を施して土壌改良する必要があります。

日光は好むが夏の強い日差しに長時間当たると、葉先から枯れ込みやすくなり、樹形を乱したり樹勢を弱くする原因になります。

午後の西日が強く当たらない場所や、半日陰などに植えるとよいでしょう。

◉肥料
冬期に完熟堆肥や腐葉土などを、寒肥として与えるとよいでしょう。

花つきが悪い場合は、秋口にリン酸分の多い化成肥料を少量与えます。

★病害虫の心配はまずありませんが、風通しが悪いとまれにカイガラムシが発生する場合があります。

混み合った枝葉を間引きせん定し、風通しを良くする。

◉せん定
若木のうちは特にせん定は必要ありません。

成木で横枝が伸び過ぎ、樹形が乱れたもの、混み枝が増えた場合は間引きをします。

枝の中間で切ると枯れやすいにで、必ず付け根から切る。

※ヒメシャラはナツツバキよりも小枝が多く出るようです。

花は前年の短枝につくので、枝先を切らないように注意しましょう。

◆殖やし方
実生は10月頃に種子を採り蒔きます。又は、乾燥しない日陰で保存し翌春に蒔きます。

挿し木は新梢を10㎝ほどきり、赤玉土(小粒)の挿し床に挿し、乾燥しないように管理します。

※ヒメシャラの挿し木は活着率が低く、困難なので実生で殖やします。