緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2020/09/15

エンジュ No,273

エンジュ マメ科 「木鬼、槐花」落葉高木

原産地=中国

日本に渡来したのは、かなり古く当初は「エニス」と呼ばれていたものが、転訛して「エンジュ」となったと言われています。

「槐」=かい、の字は鬼門に植えて邪気を祓い幸福を呼ぶ事に由来しており、「古来から幸福を呼ぶ木」として珍重されてきました。

街路樹や公園樹、庭木などに利用されています。

特に新築の庭などに、縁起木として植える事が多いようです。

垂れ下がるマメ形の実は、数珠のように丸くくびれていて、中がねばねばしているのが特徴です。

中国では学問と権威の象徴を表す高貴な木とされ、古代中国では、最高の「官位槐位=かいい」と称しています。

古くに中国から伝えられたエンジュは、出世を願って植える人も多い。

日本では「槐樹=かいじゅ」と言う別名があります。

夏から秋にかけて枝先に花序を出し、淡黄白色の蝶のような形をした花をたくさんつけます。

寒さや大気汚染にも強く、街路樹として広く利用されるとともに、縁起木であると同時に実用性の高い樹木で、つぼみを乾燥されたものを漢方薬として利用しています。

エンジュの蕾は多くの「ルチン」が含まれ、これを乾燥したものを(槐花、かいか)と呼び、高血圧に効く生薬にする。

また、果実は(槐角、かいかく)と呼び、同じく薬用にする。

止血、鼻血、毛細血管の強化、動脈硬化、★中風の予防などに効果があると言われ、脳卒中の予防や痔、歯肉炎の治療に処方されます。

★中風=ちゅうぶ、ちゅうふう、ちゅうぶう
脳出血によって起こる半身不随や手足の麻痺のこと。

また、重要な蜜源植物であり、若葉は茹でると食べられ、お茶の代用にも利用されてきた。



◉生育環境
日がよく当たり、水はけもよい腐植質に富んだ肥沃な土地が理想です。

土質はあまり選ばず半日陰でもよく育ちます。

耐寒性も強く、ほぼ全国で栽培可能です。

大木になる樹種なので、庭植えの場合も十分根が張れる土壌の深さが必要になります。

◉植え付け、植え替え
2月から3月と11月から12月が適期です。

移植にも強い樹種ですが、大木を移植する場合は半年から1年前から十分な根回しをする必要があります。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥を十分に入れて高植します。

通常の土質であれば、肥料はまず必要ありません。

ただし、枝の伸びが悪い場合は、3月頃か9月頃に油粕を少量根元に与えるようにします。

◉害虫
まれに、デッポウムシ(カミキリムシの幼虫)が見られることがあります。

発見しだい虫穴に殺虫剤(スミチオン等)を注入し、土で穴をふさいで防除します。

★品種
近縁種にハリエンジュ(ニセアカシア)、イヌエンジュ
庭植えに向いてるシダレエンジュなどがある。

別種に、根を生薬に使うクララや、実が絹状毛に覆われたハネミエンジュなどがある

せん定
刈り込みにもよく耐える樹種です。

庭木として楽しむ場合は、植え付け時に切り詰め、その後も早めのせん定で高さを一定に保つようにします。

持ち味を生かすには、できるだけ自然樹形を保つ事が大切です。

生長が早く枝の先端がよく伸びるので、かなり枝抜きが必要になります。

エンジュはふところ枝が多く、混み合った形になります。

混み合った小枝や飛び出した徒長枝などを切り、円形に近い自然形に保ちます。

また、太枝も含め、枝は必ず根元から切るようにします。

太枝を切った場合は、必ず「ツギロウ」など、保護剤を切り口に塗布しておきます。

枝のほとんどが樹冠の上部に集中するので、大きくなり過ぎると形が悪くなる場合があります。

その時は、中途で幹を切り、側枝を主幹に更新させるようにします。

せん定、整姿は葉の落ちる12月から葉が動き出す3月にかけてが適期です。

◉殖やし方
10月頃に熟したサヤを採り、種子を取り出して蒔きます。

苗の生長も早いので、混み合わないように蒔き床は広く作り、間隔をあけて蒔くようにします。

種蒔き後は乾燥に注意して管理します。

貯蔵して置いた種子を、翌年の3月に蒔く時は、前の晩に水に浸けておくと生長を促進します。


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2020/09/14

アオキ No,272

アオキ (青木) ミズキ科

原産地=本州、四国、日本特産

葉も幹も緑色で「アオキ」と名付けられた。

山地の樹林下に生える雌雄異株の常緑低木。

外国の日本庭園には、必ずやと言ってよいほど植えられている木で、日本でも庭木としてよく植えられている。

耐寒西部が強く、日陰や大気汚染にも強く、庭木のほか公園や街路樹などにも幅広く利用され、冬に赤い実がつく。

腐植質に富んだ肥沃な湿潤地を好み、あまり乾燥しない土質ならば日なたでもよく育つ。

花は3月から5月に咲き、果実は秋(11月~4月)に赤くなり、楕円形で長さ2㎝ほど、翌年の4月頃までついている。

雄木と雌木があり、枝を粗く出す株と小枝を密生する株など、個体差がある。


                                 (アオキ)

◉植え替え、移植

春4月から5月と9月から10月頃が移植や植え替えの時期です。

◉肥料

乾燥気味の土質の場合、冬に堆肥や腐葉土をすき込む程度で、とくに肥料を与えなくても育ちます。

株に元気がなく、葉の色が悪い時には、ごく少量の化成肥料をばら蒔きします。

真夏の敷き藁も乾燥防止に役立ちます。

◉せん定

自然の形で育ちますが、風通しが悪くなるほど、繁った株は間引くようにして、徒長気味の枝を切り詰める程度のせん定をする。

◆害虫

夏から秋にかけて、通風の悪い時にカイガラムシが発生します。

幹の部分や葉の付け根をよく見て、貝殻状の殻を被った寄生しているカイガラムシを、早期に発見するようにします。

冬期の1月から2月に石灰硫黄合剤10倍液を2~3回葉や幹に散布してカイガラムシを予防します。

また、カイガラムシの発生が目立つ5月から7月には、スミチオン1000倍液を月に2~3回、葉や幹などカイガラムシの発生しやすい部分に散布します。

★殖やし方

実生(種蒔き)や挿し木で殖やします。

※その他の代表的品種
斑入り種やシロミアオキ
寒地性の姫アオキなど


                          (ヒメアオキ)

◉ヒメアオキ(姫青木)

全体がアオキより小型なのでこの名がある。

日本海側の多雪山地に生え、アオキが雪に適応したものと考えられている。

山地に生えるが、積雪の深さ以上には伸びず、高さは1㍍程のものが多い。

幹は直立せずやや横に這い、先は斜めに立ち上がる。

葉や果実もアオキより一回り小さい。






2020/09/13

コノテガシワ No,271

コノテガシワ ヒノキ科 常緑針葉樹

別名=ハリギ (児ノ手柏、側柏)
原産地=中国北、西部

枝葉が子どもの手のひらのように広がるので、児の手柏=「コノテガシワ」と名付けられた。

成長はやや遅く、特別手をかけなくても自然に樹形は広円錐形に整っていく。

刈り込みにも強く、単植えもよし、列植したり生け垣、芝庭、洋風建築にもよく似合う。

適度に湿気を含んだ肥沃な土壌が適している。

日当たりが良いことが大切です。

◉植え付け
真夏と真冬を除いていつでもできますが、3月から4月と9月から10月が適期です。

土質はあまり選びませんが、肥沃な土質にこしたことはありません。

基本的には、堆肥や腐葉土をすき込み、肥料が根に直接触れないようにして、鶏ふんを少量埋め込みます。




◉肥料
(2月と9月に与える)
2月に油粕、鶏ふん、牛ふん、化成肥料などを施す。

肥料の与え過ぎに注意する植物です。


◉せん定
(6月中旬から7月)(9月中旬から11月)

群植してある場合は、お互いに枝葉が触れ合うようになってきた時などに、全体を刈り込んで形を整えます。

また、枝葉が繁りすぎて見苦しくなってきた時には、間引くように枝葉を切ると、風通しもよくなり木のためにもよくなります。

枝や葉が混み合ったまま放置すると、通風や日照が悪くなり、病害虫発生の原因になります。

病害虫はムレたような状態を好むので、せん定はそのような状態をなくすためにも行います。

コノテガシワは、冬期雪によって枝が割れる事があるので、雪の降る地方では、幹をヒモで縛っておくようにしましょう。

◆害虫
カイガラムシ、アブラムシ、ハダニ

夏の高温期に強い乾燥と、水不足で株全体に勢いがなく葉色が変色したり、新芽の成長が鈍くなったりします。

予防として、春から秋の間にケルセン乳剤、オルトラン水和剤1000倍液を、1ヶ月に2回程度葉や幹を中心に散布します。

★殖やし方
実生は3月から4月
挿し木は6月から7月に行う。

◆園芸品種
✻細かい葉を持つクワビャクダン

✻主幹がなくて株立ちをするセンジュ

✻単幹で直立するタチコノテガシワ
枝が下に垂れるイトスギなどがある。


◉コノテガシワを含むコニファーの仲間

コニファーとはマツ科、スギ科、ヒノキ科、イチイ科、マキ科などの針葉樹類の総称。

外国産の樹種に人気があり、小型で樹形や葉に特徴のある美しいものが多い。

針葉樹類の特徴は寒さに強く、夏の暑さに弱いものが多く、種類により立性、ほふく性、円錐形、玉形など自然に形を整えていくものが多い。

これらの種は、全般に根が貧弱で小苗のうちは植え替えや移植ができますが、根回りをきちとしないと大株の植え替えは難しい。

土質は排水のよい砂質壌土で、日光のよく当たる場所を好みます。

肥料はあまり多く必要としないので、鶏ふんや油粕に少量の骨粉を混ぜ、2月から4月頃に株まわりを掘って埋め込む程度で十分です。

病害虫はは、定期的な殺菌剤、殺虫剤散布程度でよい。






2020/09/12

イヌマキ No,270

イヌマキ (犬真木、犬槇)

原産地=日本、台湾、中国南部 マキ科

日本では、関東南部以西の本州、四国、九州、南西諸島にかけて幅広く分布しており、大きいものは樹高20~25㍍に達します。

マキは元々「真木」と書き、ヒノキやスギ、クスノキと共に「優れた木」を意味する、高級建築材一般の総称として用いられました。

イヌマキは湿気やシロアリの食害に強く、材質が均一であることから古くから、高級建築材として知られています。

太平洋側の海辺に多く、防風、防潮の役目を兼ねて海岸付近の畑の縁などに植えられたり、生け垣などに利用します。

イヌマキの名称は、木材として最高級のマキよりはやや劣ることに由来しますが、園芸界で単に「マキ」と呼ぶ場合は、イヌマキを指すことが多いようです。

また、建築界では別種の「コウヤマキ」を指します。

雌雄異株で、雄花、雌花ともに5月から6月にかけて小枝の葉腋に開花します。

庭木としては、常緑の葉と樹形を観賞しますが10月から11月に結実する雌株の果実は、赤紫に熟す花托の部分がたいへん美味で、古くは食用に供されました。




◉園芸品種

イヌマキの変種で、枝葉、樹高ともに小ぶりで小庭での栽培に向いた「ラカンマキ」がある。

同じマキの名で呼ばれる日本特産の「コウヤマキ」は樹形や葉姿はよく似ているものの、葉がより細くスギ科の「コウヤマキ科」とする学説あるものに、分類される別種である。

◉生育環境

日当たり、水はけのよい腐植質にとんだ肥沃な場所を好みますが、樹勢がたいへん強く、土質は特に選びません。

大気汚染や潮害に強く、日陰でも育つので、都市部や海岸部での栽培も可能です。

耐寒性はあまり強くないため、冬の寒風が当たる場所への植え付け避けます。

冬に氷点下になる内陸部や、関東地方北部以北の庭植えは適しません。

寒地で育てる場合は、鉢植えにして冬期は室内に取り込むようにするとよいでしょう。

植え付け、植え替えの適期は4月から5月と9月から10月で、根の乾燥に気を付ければ、大株の移植も比較的容易です。

植え付ける場所は、排水の良い肥沃な場所を選び植え穴を大きめに掘り、堆肥や腐葉土に鶏ふんを混ぜ、根に肥料が直接触れないように、間土をして植え込みます。

★間土=まつち(肥料と根の間に土を入れること)

主木とし単植えの場合は、後で移植などをしないような場所をよく選んで植え付けます。

◆肥料

寒肥として1月から2月に堆肥に鶏ふん、油粕、牛ふんを混ぜ、株回りに浅くすき込みます。

夏の追肥は、7月から8月にチッソ分の少ない化成肥料をばら蒔きする程度で、あまり多く与える必要はありません。

◉害虫

春から秋まで虫類の被害が発生します。

ハマキムシ、アブラムシ、カイガラムシ
テッポームシ(カミキリムシ幼虫)

冬期の1月から2月に機械油乳剤30倍液を、2~3回散布します。

※春から発生するアブラムシ、カイガラムシには、市販品の浸透移行性の殺虫剤が効果的で、オルトラン乳剤1000倍液や、アクテリック乳剤1000倍液を月に2~3回散布します。

※テッポームシは、まず幹に入り込んだ虫穴を見つけ、スポイトなどを使い、オルトラン水和剤やスミチオン乳剤を虫穴に注入し、土でフタをし殺虫します。

また、発見が難しい時には、浸透性の殺虫剤であれば
木全体に薬剤散布すれば十分効果があります。

※樹冠内の日照、通風が悪いと葉先が灰白色に変色する白葉枯れ病や煤病の原因となる、カイガラムシが発生することがあります。

見苦しくなるので、こまめに整姿、せん定で適度な日照、通風を保つことが大切です。


◉せん定、整姿

新芽が伸びてきた4月から6月と、秋9月から10月の成長期には、かなりよく枝が伸びるので、様子を見ながら刈り込み、樹形を乱さないようにします。

梅雨明けの頃、刈り込んだ後から勢いの良い土用芽(土用の頃に新しく出る枝)が出ることもあります。

これも秋には、枝先をそろえて刈り込みます。

あまり季節が遅くなってからの刈り込みは、木のためによくないので注意しましょう。


いろいろな仕立てができる樹種で、樹形の仕立ては枝抜きと刈り込みを中心に行い、必要に応じて枝を誘引、矯正します。

枝は必ず葉のあるところから切ります。

葉のない所を切ると、枝枯れの原因になるので注意しましょう。


徒長枝は早めに切り取ります。

葉の途中で切ると茶色く変色するので、刈り込みは大まかな整形に止め、仕上げは木ばさみで不要な小枝や葉を一本ずつ付け根から、間引くようにすると見栄えが格段に違います。

また、マツ同様、夏の新芽のもみ上げと秋の古葉引きも必ず行い、枝の付け根や地際から出る不定芽、ひこばえ(やご)も早めに切り取ります。


             (種蒔きから3年目の苗)

◉殖やし方

10月から11月にそのまま採り蒔きにするか、冷暗所で貯蔵し、翌春に蒔きます。

よく発芽しますが、生長が遅く庭木として一応の樹形ができるまでには10年以上かかります。








2020/09/08

ネズ 、トショウ(杜松) ハイネズ(這杜松) No,269

ネズ ヒノキ科ビャクシン属

常緑針葉樹低木または高木
原産地=(日本北海道を除く)朝鮮、中国

別名=ネズミサシ、トショウ
ネズは盆栽ではトショウと呼ばれる

丘陵地=きゅうりょうち(高く広い丘)や浅山などの陽地に自生する。

貧栄養の蛇紋岩(じゃもんがん)や花崗岩(かこうがん)など露出している乾いた所を好み、岩場に多い。


                                「ハイネズ」


★花崗岩

ふつう灰白色(はいいろを帯びた白い色)で、黒いゴマのような点がある硬い石(御影石=みかげいし)

★蛇紋岩

濃い緑色で光沢があり、岩肌が蛇の皮に見える事からその名がついた。

白い脈の入った物は蛇灰岩(じゃかいがん)と言う。

5㍍ほどの低木状の木が普通だが、大きいものは高さ10~20㍍直径1㍍程になる。

「ネズミサシ」の別名は、ネズミを刺して害を防ぐ事ができるほど、鋭い針葉を持っている事からきている。

昔はネズミの通路にこの枝を置いて、被害を防ぐのに使われました。

古名のムロをはじめ、ネズ、トショウなどと呼ばれる。

樹皮は灰色を帯びた赤褐色
枝は横に伸び、老木になると小枝が下に垂れる。

葉は鋭くとがり、3個ずつ輪生し、触るとかなり痛い。

雌雄異株で花は4月頃に咲き、球果は翌年秋(9月~10月)に熟す。

排水の良い砂礫質=されきしつ(砂と小石)土壌が適している。

陽樹なので日光を十分当てる。

植え付け、移植は2月~3月

◉肥料

寒肥として、油粕、化成肥料などを施すとよい

◆殖やし方

実生が一般的ですが、挿し木もできる(適期は3月)

★園芸品種として、よれ曲がった葉を持つ「ヨレネズ」
近以種で主に欧米で栽培される「セイヨウネズ」がある


              (ハイネズ、潮来市役所)

◆ハイネズ(ネズと同属)

幹が地面を這うのでこの名がある。

ネズミサシ(ネズ)によく似ているが、幹は地面を這って伸びるだけで立ち上がらない。

海岸の砂地や乾燥ぎみの荒れ地に生える。

先端は鋭く尖るので触ると痛い。

雌雄異株で花は4月から5月に
雄花は葉の付け根に咲く。

果期は9月~10月






2020/09/06

サンゴジュ No,268

サンゴジュ スイカズラ科 常緑中高木(珊瑚樹)

原産地=日本(神藤地方南部以西の本州、四国、九州、朝鮮半島南部、台湾、インドシナ半島、フィリピン

初夏に白い小さな花が多数咲きますが、開花時期が短くあまり印象に残りません。

果実の先端に雌しべの柱頭が残っており、これを珊瑚の加工品に見立てて「サンゴジュ」と名付けられました。

雌雄異株のため雌株でないと結実しません。

赤い実は晩秋に黒く変色します。

海岸近くに自生しているので、若干湿気を好みまた潮風に強い。

肉厚で光沢のある葉は、水分を多く含み耐火性が非常に強いことでも知られ、防火樹としても古くから利用されています。

その他、亜硫酸ガスなど都会のばい煙にも強く、工場の植栽や公園、沿岸の防風樹など、幅広い用途がある樹種です。

萌芽力が強く、刈り込みに耐え、下枝も枯れにくいため生垣樹としてもよく用いられる。

生木は水分が多く大変重いため、木材を運ぶのに牛や老婆が苦しむと言う喩えで、鹿児島地方では、「ウシコロシ」「ウバコロシ」と言う別名がある。

変種にアジサイに似た葉をつける「アジサイバノサンゴジュ」斑入りの種がある。

◉生育環境
風通し、水はけがよく、しかもやや湿り気のある場所が適しています。

日陰にも強い半陰樹ですが、日当たりのよい場所でもよく育ちます。

暖地性ですが、比較的耐寒性が強く、東北地方南部までは、露地植えが可能です。

生長が早くたいへん丈夫な樹種です。

ただし、幼苗の頃は比較的寒さに弱く、寒地では防寒処理が必要です。




◉植え付け
4月から5月の春植えか、9月の秋植えが適しています。

土質は特に選びません。

完熟堆肥や鶏ふんなどをすき込んで植え付けます。

高さ1.5㍍ほどの苗木を植えると、4年から5年で開花、結実します。

移植は4月から7月頃か、9月から10月頃が適期です。

◉代表的な害虫
★サンゴジュハムシ
サンゴジュハムシが発生することがあります。

枯死に至るような事はありませんが、葉が不規則に食害され、美観を損なう事があります。

枝や葉柄などの組織内に卵を産み、翌春(4月)にゴマ模様の斑点のある、黄色い幼虫が新葉を食害します。

5月下旬頃に土中でサナギになり、いったん食害は収まりますが、約1ヶ月で成虫になり(黄褐色の小さな甲虫)7月頃から11月頃まで葉上にいて、葉の表面から片面を食害します。

発生の初期に、オルトラン水和剤の250~500倍液を散布すると効果的です。

◉ワタノメイガ
葉縁から筒状に葉が巻いた状態になり、内部に幼虫が棲んで食害する。

発生が多く、ほとんどすべての葉に捲葉(けんば)が見られ、大きな被害となる。

捲葉内で幼虫態で越冬し、翌春に再び食害を始めて4月下旬頃から、6月にかけて成虫が現れる。

★この害虫はその他に、フヨウ、タチアオイ、ワタ、オクラ、キリ、アオギリ、ムクゲが加害植物として記録されている。

被害はかなり激しい場合が多いから、年によっては防除を必要とする。

幼虫の発生初期に注意し、スミチオン、ディプテレックス、カルホス、ダイアジノンなどを散布する。

◉オオミノガ
代表的なミノムシのひとつです。

幼虫は7月頃に現れ、10月頃まで葉や枝を食害しミノムシのまま越冬して、翌年の6月~8月頃に成虫の「蛾=ガ」になります。

しかし、メスは成虫になっても蛾にならず、一生ミノのな中で過ごします。

発生量が多い時は、ミノがあるため効果が低いのでなるべく小さい時期に薬剤を散布します。

薬剤はディプテレックス、カルタップなどが適しています。

越冬中のミノムシは目につきやすいので、見つけたらこまめに捕殺して、7月からの被害を少なくします。

ミノにあまり小枝をつけないのが特徴です。

◉せん定
放任しても、樹形は株立ち状によくまとまります。

果実を楽しむ場合は、極端に伸びた徒長枝や目立つ飛び枝などを切る程度で十分です。

萌芽力が強く、ふところに込み枝が出やすいので、ふところの徒長枝はすべて切るようにします。

大木になりやすいので、狭い庭では株立ちの幹を3~4本に限定し、強いひこばえ(やご)はすべて株元から切り除きます。

生垣の場合は、上部が特に強く伸びるので、頭の部分を強く刈り込むようにします。

特に下枝が弱くなった場合は、上部をより強く刈り込んで樹勢が下部に移行するようにします。

刈り込み時期は4月、7月から8月の年2回が基本ですが、成長が早い場合は秋にもう1回刈り込みます。

◉肥料
油粕、化成肥料など寒肥を施す。

◆殖やし方
実生は秋に熟した実から種をとり、湿った砂の中などで低温貯蔵して越冬させ、翌春(3月頃)に蒔きます。


挿し木は6月~7月が適期です。

本年枝を使うのが一般的ですが、元気な枝なら古枝でも活着します。

根が密生するので、9月頃に早めに植え替えます。