緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2020/09/24

リヨウブ No,285

リヨウブ「令法」落葉中高木 

リヨウブ科別名=ハタツモリ、サルダメシ

北海道南部から九州にかけて、山麓や低山地に幅広く自生する日本原産の樹木で、その他朝鮮半島にも分布が見られる。

「リヨウブ」の仲間は世界で数十種が確認されていますが、日本に自生しているのはリヨウブ1種だけです。

樹皮に特徴があり、赤褐色または灰褐色の樹皮が剥がれ落ち、まだら模様になる様子には深い味わいがあります。

すべすべした幹肌は中国から伝来した、「サルスベリ」によく似ていますが、実際にリヨウブをサルスベリと呼ぶ地方もあるようです。

また「サルダメシ」と言う別名もあります。

7月から9月にかけて枝先に、白い小花を密につけた円錐花序を形成します。

ひとつの花は5ミリ程の小さなものですが、蜜腺が発達していて、蜜を求めて多くの昆虫が集まります。

花は5弁で花びらより雄しべの方が長く伸びる。

葉は枝先近くに多く集まり互生し、先端が尖り鋸歯があります。

花もそれなりに楽しむことも出来ますが、リヨウブの魅力は何と言っても、樹皮の趣と一斉に出る、新芽の芽吹きの美しさにあります。

庭木だけでなく茶花や生花の材料としても幅広く利用されています。

大量に芽吹く若芽や若葉は柔らかく、古くは食用に共されました。

塩ゆでにした若芽を刻んで米に混ぜた「リヨウブ飯」や、天ぷらが今日でも郷土料理として残っている地方があります。

一説によると令法(りょうぶ)と言う表記は、飢饉(ききん)の時に山村の非常食として、リヨウブの葉の採取、貯蔵を命じる官令がよく発せられた事に、由来すると言われています。

リヨウブは伐採に強い、再生能力の高い樹木として知られています。

リヨウブの根は浅く広がり、地中深く伸びる直根がほとんどありません。

そのため、野生のものは強風を避けるように松やコナラなどの大木の下に、二次的発生し群生します。

浅い根は太い幹を支えるためには不利ですが、地表近くに豊富にある栄養分を吸収するには有利です。

倒れやすい反面、栄養を十分取れるので大変丈夫で幹元付近に常に、休眠状態の不定芽を多数準備しています。

そして幹が倒れたり傾くとすぐに活性化し、新しい幹として伸長すると言う面白い性質を持っています。

◆品種
園芸種として、樹高2㍍前後で花が咲く「一才リヨウブ」

日本のリヨウブより低木で小庭に向く「アメリカリヨウブ」があります。

◆生育環境
日当たり、水はけともによい腐植質に富んだ肥沃な土地を好みますが、痩せ地や乾燥地、酸性土壌にもよく耐えます。

◉植え付け
植え穴に完熟堆肥、腐葉土を十分すき込み高植えにします。

強風に当たると倒れやすいので、樹高の高い木の下など、風避けが出来る場所に植えるようにします。

植え付け後は必要に応じて支柱などで支えます。

耐寒性は強く、北海道南部まで庭植えが可能です。

◉肥料
生長力が強くよほどの痩せ地でない限り、肥料は余り必要としません。

与える場合は、鶏ふんなどの有機肥料を冬期に寒肥として、株元にすき込みます。

★病害虫
まれに「うどん粉病」が発生する場合があります。

白いカビが若い葉や若い茎、新芽などの表面にうどん粉をまぶした様に、びっしりと生える病気の総称です。

病気が進行すると、葉が変形して形状が小さくなります。

発生する時期は植物によって異なりますが、高温(20度前後)多湿を好み、4月から10月に発生します。

病気を見つけ次第、10日ごとにモレスタン、トップジンM、ベンレート、水和硫黄剤などを散布します。

チッソ肥料を与え過ぎると発生しやすくなります。

チッソ肥料を減らし、カリ肥料を多めに与えましょう。

樹木の場合は、枝で越冬している菌糸を殺すために、1月から2月に冬期限定使用薬剤の、石灰硫黄合剤を1~2回散布するのも効果的です。

この病気は数多くの植物に発生します。

◆せん定
自然樹形で楽しむのが一般的です。

倒れやすいので樹冠が重くならないように、徒長枝や枯れ枝、込み枝は付け根から切り取り整理します。

通常のせん定は、落葉期の冬に行います。

ひこばえが盛んに出る性質があるので、見つけ次第早めに切り取るようにします。

◆殖やし方
実生は10月から11月に種子を採り、冷暗所で貯蔵し、翌春の3月から4月に蒔きます。

挿し木は、6月中旬から7月上旬に今年伸びた枝を15㎝程切り、さし穂とします。

一時間ほど水揚げしてから赤玉土、鹿沼土などの用土に挿します。


(リヨウブ)





ネズミモチ No,284

ネズミモチ 「鼠黐」モクセイ科

別名=タマツバキ、テラツバキ常緑広葉樹

原産地=日本(九州、四国、関東以西、沖縄)
中国、朝鮮半島一帯

ヨーロッパにも同種の自生種が見られる。

樹高は5~7㍍程で6月頃、枝先に円錐花序を形成し、長さ5ミリ前後の筒状の白色小花を多数咲かせる。

萌芽力が強く、よく枝分かれすることから、主に暖地の生け垣、公園樹などに幅広く利用されている。

卵形の葉はなめらかで、短い葉柄があり対生する。

花、葉ともほのかな香りを放ちます。

10月から12月にかけて、長さ1㎝前後の楕円形の果実が紫黒色に熟し、果実の表面は白い粉をまぶした様になっている。

この果実が地表に落下した様子が、ネズミの糞に似ていること、葉がモチノキの葉に似ている事から「ネズミモチ」と名付けられました。

10世紀中期頃の「★和名抄」と言う書物にネズミモチが薬用樹として利用されていたとする記述があり、古くから薬用として用いられていた事が分かります。

★和名抄とは和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)の略称。

平安時代中期(承平年間=しょうへいねんかん、931年~938年)に作られた、意義分類体の辞書の事。

約2600の漢語を分類し、その文例、語訳を漢籍から引用して、割注で字音と和訓を示す。

漢籍=かんせき(中国の漢文書物)

割注=わりちゅう(文章の途中に小さな文字で入れる注釈、二行にする事が多い)

字音=じおん(特に日本に伝わって国語化した漢字の発音)

和訓(倭訓)=わくん(漢字に固有の日本語を当てて読む事、その読み方)

果実、樹皮、葉などを乾燥したものを「女貞=じょてい、にょてい」と呼び、滋養強壮、便秘、生理不順、健胃整腸、網膜炎など幅広い薬効があり、東洋医学では貴重な生薬とされています。

木材は道具の柄や杖、楊子(つまようじ)などに用いられ、実用的価値も高い樹種です。


         (ネズミモチ)

◉品種

ネズミモチの変種でフクロモチ

樹高が10㍍以上になり葉、花、果実ともにネズミモチより一回り大きい、中国原産の類似種★トウネズミモチ(女貞の元祖の樹)

園芸変種として、フクリンネズミモチ、キマダラネズミモチ、キモンネズミモチなどがある。

★トウネズミモチは一見するとネズミモチによく似ていますが、葉が大きく先端が尖っていること、陽に当たると葉脈が透けて見えることや、花期が遅い(7月)事などから見分けることが出来ます。

◉生育環境

日光を好みますが日陰でもよく耐えます。

樹勢が大変強く、土質は特に選びませんがやや湿潤地がより適しています。

◆植え付け、移植

厳寒期を除きいつでも可能ですが、暖かくなる3月から4月と、酷暑が過ぎた9月から10月頃が適期です。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥、腐葉土をすき込んで高植えにし、十分水を与えます。

移植にも強いですが、大木は半年程前に根回しを行い細根を株回り出してから、枝葉を出来るだけ切り詰めて蒸散を防ぐ対策を取り、移植することが大切です。

◉肥料

葉の色が悪い場合は、春先にチッソ系の肥料を株元に蒔きます。

また、寒肥として堆肥、油粕を与える。

◆病害虫

新梢や若葉に「うどん粉病」が発生する事があります。

病変部を切り取り処分しますが、症状が酷い場合は、カラセン水和剤などを散布します。

カイガラムシの発生には、1月から2月にマシン油乳剤を2~3回散布し防除する。

◉せん定、整姿

せん定期間は4月から11月
萌芽力旺盛で強せん定にも耐えるため、様々な樹形に仕立てる事が出来る樹種です。

かなり大胆に切り詰めても2~3年で元に戻るので、成木になってからの仕立て直しも可能です。

樹形が乱れやすいので、こまめに整姿、せん定をして樹形を保つようにします。

徒長枝やひこばえ(やご)が盛んにでるので、早めに切り詰めます。

枝が密生すると細枝が枯れ込むので、随時枝抜きを行い、樹冠内の通気を保つことも大切です。

生け垣の場合では、樹形を保つためには最低でも年2回の刈り込みが必要です。

★殖やし方

実生は晩秋から冬にかけてよく熟した種子を採ります。

暖地ではそのまま採り蒔きにできますが、寒地では冷暗所で貯蔵し、翌春に蒔きます。

種子の表面を少し傷つけると発芽率が高くなります。




1年程で40㎝前後になるので、よい苗を選んで4月から5月に定植します。

挿し木は、充実した本年枝を15㎝程に切って指し穂とし、赤玉土、鹿沼土などの単用土に挿します。

挿し木の適期は6月から7月です。







2020/09/23

タイサンボク No,283

タイサンボク

「泰山木、大盃木」

別名=ハクレンボク(白連木) 
モクレン科

原産地=北アメリカ南部、フロリダ半島を中心とする、メキシコ湾岸沿いの暖地帯で原産地付近のいくつかの州では州の花に指定されている。

日本には明治時代初頭に伝えられましたが、芳香を放つ大輪の花が人気を呼び、急速に全国に広まりました。

樹高が10~20㍍に達することから、多くは公園樹や広いスペースのある庭のシンボルツリー、記念樹として利用されています。

公害に強く、成分を多く含み耐火性があることから、暖地では街路樹、防火樹としても利用されています。

学名のマグノリア=モクレン属の総称で植物学者のマグノールに由来

※フランスの植物学者
ピエール·マグノール (1638~1715)
植物の分類体系を考案した人物です。


グランディフローラは「モクレン属の大きな花」と言う意味でその名の通り6月から7月にかけて、直径15~20㎝にも達する巨大な6弁の白色花を咲かせます。


              (タイサンボクの花)


果実は袋果が集まった集合果で10月から11月に熟す。

袋果には種子が二個入っていて、裂開すると赤い種子が顔を出す。

葉も20㎝と大きく、葉の裏は鉄錆び色(褐色)の柔毛が密生する。

大きなカップ状の花を盃に見立てて「大盃木」と呼んだのが和名の由来と言われています。

また、雄大な樹形を山に見立てて
(泰「大」山木)としたとする説もある。

タイサンボクは樹高がかなり高くならないと、花が咲かないので、小庭での栽培は難しいが、一般の庭でも栽培可能な近縁種が多数あります。

★品種
タイサンボクよりもやや小ぶりのホソバタイサンボク。

樹高が5㍍前後で、鉢植えにもできる落葉性のウラジロタイサンボク(ヒメタイサンボク)

落葉性で樹高が低く、積雪にも耐える程の耐寒性の強いオオヤマレンゲ。

園芸種として、樹高数十センチから花が咲く、矮性の「リトルジェム」がある。

◆生育環境

日当たりがよく腐植質に富んだ、肥沃なやや湿潤地が適しています。

痩せ地や乾燥地では生育がよくありません。

庭植えに向くのは、関東地方以南の暖地ですが、耐寒性の強い類似種が多数あります。

◉植え付け、移植

植え付けは4月から5月、または9月が適期です。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥、腐葉土を十分にすき込んで植え、必ず支柱で保護するようにします。

根が太く柔らかいため、大木の移植は枯れやすく困難です。

やむを得ず移植する場合は、前年の春に根回しして、細い根を十分発根させてから乾燥に注意して素早く移植を行います。

◉肥料

冬に寒肥として油粕などの有機物を、株元に施します。

病害虫の心配はほとんどありませんが、まれにカイガラムシが発生することがあります。

冬期に石灰硫黄合剤を散布して防除します。

◉せん定

広い庭では、自然樹形を楽しみ楽しみたいものですが、花が高い所につくので適当な位置で芯を止める必要があります。

花芽は今年伸びた新梢の短枝の頂芽に夏頃分化し、翌年その位置で開花します。

通常のせん定は、花芽が分かる10月から11月に行います。

生長が早く、樹形は乱れやすい傾向にありますが、余り枝分かれしないので徒長枝や込み枝を、間引く程度で十分です。

切り口から枯れ込む事があるので、枝は必ず付け根から切り、太い枝を切った時はツギロウなどの保護剤を塗布します。

枝葉が密生して花芽が出来にくい時は、株元を掘って太い根を切り樹勢を抑えます。

◉殖やし方

11月頃に熟した種子を採り蒔きにし、乾燥に注意して管理します。

寒地では、低温貯蔵して翌春に蒔きます。

生長の早い品種は2年程で開花しますが、遅いものは10年以上かかる場合もあります。

早く開花されるには、4月に充実した枝を挿し木にする方法もありますが、発根率が悪く困難です。









ビヨウヤナギ No,282

ビヨウヤナギ

「未央柳、美容柳」

オトギリソウ科 半落葉低木
原産地=中国 別名=ビジョヤナギ

日本には江戸時代中期に伝わりました。

その美しさからすぐに人気が高まり、庭木や生け花用の切り花として、幅広く親しまれてきました。

ビジョヤナギの名は日本で名付けられましたが、出典は唐代の詩人白楽天の「長恨歌」です。

中国では、「金糸桃」と呼ばれています。

日本の花屋(店)では、専(もっぱ)らビジョヤナギ(美女柳)の名称で親しまれている。

6月から7月にかけて、直径5~6㎝の鮮黄色の5弁花が、密に茂った枝先一面に開花します。

枝は垂れ下がりますが、花は上向きに咲きます。

花の中心部からたくさん出ている細長い雄しべは、花弁よりも長く繊細でふんわりと広がる様子は、
金の糸の様で他の花にない
独特の美しさを持っています。

葉の展開する時期が非常に早く、葉の緑と後から咲く花の、黄金色との対照も見事です。


        (ビヨウヤナギ)

★園芸品種
キンシバイの仲間の類似種に、ホソバキンシバイ、オトギリソウ、ヒメオトギリソウなどがあります。

西洋の類似種であるヒペリカム(オトギリソウ科の植物の学名)には、大輪種のヒペリカム·フオレスティー

葉に黄白色の斑が入ったヒペリカム·モゼリアナムなどの園芸種がある。

◉生育環境
日当たりのよいやや湿潤地を好みますが、半日陰でもよく育ちます。

土質は特に選びませんが、乾燥が苦手です。

午後の日が当たらない肥沃で、湿潤な土の方がよく生育するので、その様な場所を選んで植えると、花もよく咲きます。

◉植え付け
植え付けは出来るだけ乾燥しない場所を選び、広めに掘った植え穴に完熟堆肥、腐葉土を十分にすき込んで植え付けます。

暖地性の植物ですが、耐寒性は比較的強く、東北地方南部まで庭植えが可能です。

植え付けの適期は3月から4月です。

◉肥料
丈夫でよく育つので、痩せ地でない限り肥料はほとんど必要ありません。

花数を増やしたい時は、花後に化成肥料や鶏ふん、油粕などを少量株元に蒔きます。

◆せん定
放任しても枝葉が密生した株立ち状に樹形がまとまります。

刈り込みにも耐えますが、自然樹形で楽しむのが一般的です。

通常の整姿、せん定は花後の9月頃に伸び過ぎた枝や込み枝を切る程度で十分です。

大きくなり過ぎたり、古枝になって柔らかい風情がなくなった枝は、地際から切り取り新枝に更新します。

花芽は春に伸びた新梢の先端に分化します。

そのため、花芽を傷めたり切ってしまわないよう、春先のせん定は控えます。

◉殖やし方

簡単に出来るのは株分けです。
新芽が出る前に大株を、3分の1程の高さに切り詰めて掘り起こし、2分け割して半日陰に高植えします。

十分に水を与え、乾燥に注意して管理します。

実生は秋に種子を採ります。
温暖地はそのまま採り蒔きにできますが、冷寒地では低温保存して、翌春に蒔きます。


2020/09/21

ドウダンツツジ No,281

ドウダンツツジ 「灯台躑躅」

ツバキ科

原産地=静岡、愛知、岐阜の各地、紀伊半島、高知、鹿児島、千葉

ドウダンとは室内照明器具の灯台が転訛したもの。

同じツツジ科のサツキよりも更に葉が小さく、秋に赤く色づくので、仕立てものとして育てるのが一般的です。

スズランのように白い壷状の小花が、花枝の頂部に数個連なって咲きますか、花よりも葉の充実ぶりと秋の紅葉の景観にあります。

岩や石が露出しているような山地の痩せた砂礫地=されきち(砂と小石)に生える。

根は浅根性で横に広がる性質があり、ほとんど全国で庭木に利用され、自然樹形そのほか、刈り込みに強いので玉仕立てや生け垣に向いている。

★代表品種
近縁種として、ベニドウダン、サラサドウダン、カイナンサラサドウダン、ヒロハドウダン、サラサドウダンの変種でベニサラサドウダンなどがある。

白花品種でまれに山地に野生する、シロバナフウリンツツジがある。

◉生育環境
根が細く極端に排水の悪い土壌では、根腐れを起こすこともあります。

冬場の凍結により根が傷む恐れもあるので、北海道や東北地方など寒気の厳しい地域では、冬期に敷きワラなどを根元に施す、マルチングを行った方が無難です。

砂が多い土質の場合は、腐葉土や切りワラなどを多めに土にすき込みます。

粘土質の土地の場合は、砂や堆肥などをすき込み通気と水はけをよくします。




◉植え付け、移植
移植は真夏と新梢の出る成長期を除けばできますが、古い株に限っては根が広がり過ぎて幹から離せているので、移植の半年前ぐらいに根回しをして、細根が出てから行います。

移植は落葉期に行いますが、幼木は特にねが弱いので、寒さが厳しくなる前の11月上旬か冬の過ぎ去った3月に、植え付けるとよいでしょう。

完熟堆肥を元に土壌に少量混ぜ、排水性を高めるため盛り土した上に植えます。

◆肥料
ドウダンツツジは紅葉も楽しむ樹種です。

赤い発色に影響を及ぼす、チッソ系の化学肥料は絶対に与えないようにします。

刈り込みを行った年にのみ、有機肥料を根元に蒔く程度でよいでしょう。

冬期にせん定をしてから施肥をします。

1月から2月に株回りに穴を掘り、堆肥に鶏ふんを混ぜて埋め込みます。

9月には、油粕に骨粉を7対3の割合で混ぜ、約500㌘ぐらい埋め込むか、ばら蒔きます。

化成肥料のバラ蒔きでもよいでしょう。

◉せん定
葉が小さく小枝も多いので、基本的には細かいせん定は行わず、刈り込みにより大まかに形を整えていきます。

秋の紅葉を考えると、刈り込みは6月中旬までに行いましょう。

刈り込んだ箇所から夏芽が出て、これが夏いっぱいかけて葉をつけ、きれいに整った樹冠は10月頃鮮やかに色づきます。

7月以降に刈り込むと、夏芽から伸びた枝が葉をつける時間がなく、せっかくの紅葉がまだらに見えてしまいます。

また、あまり強く刈り込んでしまうと、密に生えている細い枝を、大幅に切り落とすことになって葉の数が減るので、寂しい紅葉の姿となってしまいます。

強い刈り込みは、すべての葉が落ちた冬期(11月~2月)に行う事です。

ただし、3月上旬には春の芽出しを一斉行うので、2月までに刈り込み作業を終える必要があります。

◆殖やし方
ドウダンツツジは挿し木による方法でしかうまく殖やせません。

挿し木を行った場合の活着率、土壌に根付く確率が余り高くありませんが、難しいと言う訳ではありません。

挿し木は春先に芽吹いた今年の枝が、一旦生長を止める6月中旬頃に行います。

この春枝を枝先から15~18㎝の位置で切ります。

芽がついた挿し木に適した枝の中から、10本程度選んで長さを揃えるとよいでしょう。

切り取った枝は切り口を下にして、一時間ほど水揚げしてから、浅い箱に敷き詰めた鹿沼土に挿します。

挿し苗は、翌年の3月まで日当たりのよい場所で管理し、庭に植え替えます。

◉病害虫
ドウダンツツジを好んでつく病虫類はほとんどありませんが、まれに「うどん粉病」が発生することがあります。

風通しが極端に悪い時に発生するので、発症箇所を切り取るとともに、風通しのよい場所に植え替えたり、落葉期に混んでいる部分の枝を付け根から切り落とすなどの処置をします。

落葉樹なので、こうして処置することで病菌を翌年に引きずる事はありません。

害虫はハマキムシやカイガラムシが発生することがあります。

一般の防虫対策でよく、冬期に機械油乳剤30倍液を散布して予防し、また、春に発生した場合には、5月から7月にスミチオン1000倍液を散布します。









2020/09/20

ヤブツバキ No,280

ヤブツバキ 「藪椿」ツバキ科

常緑中高木

日本の照葉木を代表する樹木の1つで、主に東北地方以西の海沿いの地域や、山地に幅広く自生します。




単に「ツバキ」と呼ばれることも多く、多くの園芸品種もこのヤブツバキが基本種となっています。

古代人は冬から早春にかけて開花する貴重な花木であり、常緑の葉に神秘性を感じ、仁徳天皇の昔から神聖な木として、宮中を中心に重用されてきました。

古事記では「都婆岐」日本書記では「海石榴」の表記で登場します。

ツバキの名称は「光沢(こうたく)がある」の古語である「つば」が変化したとする説と「艶葉木」=つやばきが転訛したとする説、「厚葉木」=あつばきが転訛したとするものなど諸説があります。

いずれも光沢のある厚手の葉を名前の由来としています。

11月から4月にかけて咲く花は5弁花ですが、基部がくっついていて盃状に咲くのが特徴です。

そのため落花する時は花ごと落ちます。

夏から秋に咲く花木は、主に昆虫が花粉を媒介する「虫媒花」ですが、ヤブツバキをはじめ昆虫がほとんどいない冬場に咲く花は、メジロなどの小鳥が花粉を媒介する鳥媒花」です。




一般に鳥媒花には、ヤブツバキの赤色のように鮮やかな色のものが多く、これは嗅覚(きゅうかく)の発達していない鳥類に対し、視覚で訴えているためと言われています。

また、昆虫を遠ざけるためとする説もある。

✪鳥媒花(ちょうばいか)とは、ツバキやサザンカのように冬に咲く花は、花粉をメジロやヒヨドリなどの鳥に運んでもらって受粉する花です。

体の大きな鳥を呼ぶために、ツバキは多量の密を分泌するようです。


多雪地帯に自生する「ユキツバキ」はヤブツバキから分化したものと言われ、降雪に耐えるように枝が、地を這うように低く広がる特徴がある。

耐寒性、耐暑性、耐潮性が共に極めて強い事から、公園、庭園樹として幅広く利用されている。

木材は堅く建材や器具、彫刻材として用いられる他、油分を多く含む種子からは「ツバキ油」が採れ、灯明、薬、化粧品などに幅広く利用されている。

その他の利用として、長崎県五島列島の名産「五島うどん」には、ツバキ油が使われていて、日本三大うどんとされ、幻のうどんと言われる。

五島うどんの歴史は最も古い、しかし、離島で在る事もあって昔々から伝わりにくい状態であった為、全国にあまり知られなかったと言う歴史がある。




五島うどんの発祥地は、旧上五島の船崎と言う部落で、中国より伝わったとされる。

現在でもこの地には、製麺所(犬塚製麺)がある。

ツバキは交雑種が作りやすく、品種改良が容易な事から、園芸品種は非常に多くその数は、一万種以上あると言われています。

18世紀には、チェコスロバキアの「宣教師で植物学者でもある、ゲオルグ·ジョセフ·カメル」によって、ヨーロッパに紹介され、以来カメルの名に因んで「カメリア」の名で欧米でも大流行しました。

ヤブツバキの学名はカメリア·ジャポニカで、西洋では椿の事を「カメリア」と呼びます。

椿油は世界的には「カメリアオイル」と言われています。

このカメリアオイルは世界三大オイルの1つで、ツバキ科ツバキ属の植物から取れる油で、日本原産のヤブツバキから採取される椿油は、カメリアオイルの一種と言えます。

世界で流通しているカメリアオイルの多くは、中国などアジアに広く分布するツバキ属の、チャノキやユチャ等の実から搾られる植物油と言われています。


◉生育環境
元来は暖地性ですが、耐寒性が強く、青森県まで露地植えが可能です。

日陰にもよく耐えますが、半日陰から日当たりくらいの環境下が最適です。

腐植質に富んだ排水性、保湿性ともによい肥沃な土地を好みます。

◆植え付け、植え替え
4月から6月中旬か9月が適期です。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥をよくすき込んで高植えにします。

◉肥料
通常の庭土であれば特に必要ありません。

花つきが良くない場合は、油粕、粒状化成肥料を等量混ぜたものを、株の大きさに応じて春先と秋口に与えます。

◆病害虫
ツバキ科の植物は、チャドクガが4月と7月頃に発生しやすい傾向にあります。

被害が大きい場合は5月頃から8月の発生期に、ディプテレックス、スミチオン、DDVPなどの薬剤を散布します。

チャドクガは毒毛を持ち、触れるだけでなく近寄っても「かぶれ」るので、捕殺するのは適当ではありません。

駆除はなるべく薬剤で行うようにしましょう。

ツバキ類の葉が黄色く見えたら、チャドクガの毛虫がいるかも知れません。

注意して葉の裏側を見ましょう。

◉せん定
ヤブツバキは幹が一本真っ直ぐ上に伸びる立性『たちしょう)です。

生育が遅く、枝も極端に伸びないので、自然樹形で楽しむ事ができます。

刈り込みに強いので玉散らしや円筒形、円錐形などの仕立てものにする事もできます。

基本的なせん定は、徒長枝や弱い枝、込み枝を切ります。

特に樹冠内の枝が密生し過ぎると日照、通風が悪くなるので、込み枝は必ず透かすようにせん定します。

花芽は6月から7月に、伸びが止まった新梢の先端につきます。

翌年春にその位置で開花します。

花期は品種により多少異なりますが、せん定の時期は花の咲き終わった直後3月から4月にかけて行います。

せん定後に伸びた新梢に花芽をつける事になるので、この時期(3月~4月)ならかなり思いきったせん定も可能です。

新梢の伸びが止まった、6月から7月の間に軽くせん定する場合は、すでに花芽が出来ているので注意して、樹形を乱す伸びすぎた枝を切り詰める程度にします。

花の咲いた枝を切る場合は、枝分かれしている所から葉を、2~3枚残して上部を切り詰めます。

この様なせん定を毎年花後に行えば、常に一定の樹形を保ち、花を犠牲にすることも無いでしょう。

尚、花後に結実するとその後の樹勢に影響を与えるので、実は早めに切り取ります。

★殖やし方
実生は秋に熟した種子を採り蒔きにします。

挿し木は固まりかけた新梢を、10~15㎝程に切り挿し穂とし、鹿沼土や赤玉土小粒のさし床に挿します。
時期は7月から8月

接ぎ木は3月から4月頃に行う。