緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2020/10/06

ポットマム No,298

 ポットマム キク科 宿根草

原産地=中国

秋を代表する草花のひとつで大きく「和菊」と「洋菊」に分かれ、品種は非常多く観賞用だけでなく、食用になるものもある。

中でも「ポットマム」は鉢花として出回るキクの総称でPot(鉢)とChrysanthemum(キク)のmumを合わせた言葉で、「鉢植えのキク」と言う意味です。

ポットマムは欧米生まれの洋菊から茎の伸びにくい、中輪系のものが選抜されて出来ているので、和菊に比べて手間がかからず、よく分枝してたくさんの花をつける。

盛んに品種改良が行われ、その数は100種以上あると言われています。

花色も花形も豊富で多種多彩です。




◉生育管理、環境
ポットマムの多くは開花株で、苗物はほとんど出回っていません。

花を長く楽しむには、購入した株をすぐに一回り大きな鉢に植え替えることです。

鉢のわりに地上部のボリュームが大きいので、つぼみが次々と咲き始めると、水切れを起こして株が傷むからです。

日頃の管理としては、土の表面が乾いたらたっぷり水を与えます。

9月頃に下葉取りを行います。

草丈を抑えたい時は、8月下旬と9月中旬の2回に「わい化剤」(B-9 200倍液など)を散布するとよいでしょう。

★矮化剤(わいかざい)
植物の成長を抑制して、草姿を改善する薬剤の総称で、「植物成長抑制剤」ともいう。

茎の伸長を主に抑制し、葉や花などの他の器官にはあまり作用しない。

茎の伸長を抑制するだけでなく、分枝の発生を促進する作用を持ったものもある。

使用する際には、植物ごとに適切な薬剤の種類や濃度、使用可能時期、回数などをよく調べて調整する必要があります。

◉植え付け、植え替え
購入した開花株のプラスチックの鉢やポットを外します。
この時、根鉢(土)は崩さないようにします。

一回り大きな鉢の鉢穴を底網ネットでふさぎ、軽石と市販の草花用培養土を、軽石が隠れる程度に入れ、株を鉢の中に置きます。

鉢と株の隙間が出来ないように培養土を入れます。

ウォータースペースを残すように、培養土を入れたら完成です。

植え替え後はたっぷり水を与え、春まで管理します。

2年~3年に1回、3月中に一回り大きな鉢に植え替えを行います。

植え替え時に株分けを行い、ポットに植え付けたものを作っておくと、寄せ植えの素材として使う時に便利です。

◆肥料
肥料を好むので追肥は固形の油粕を、1鉢当たり2個を目安に置き、10月以降は液肥を7日ごとに灌水がわりに与えるとよいでしょう。

◆病害虫
白さび病やアブラムシなどが発生しやすく、特に9月の長雨時に多いので週に1回薬剤散布を行います。

◉せん定
12月頃になると地上部が自然に枯れるので、地表から2~3㎝を残して、枯れた枝を切り詰めます。

その後、極端に乾かさないように時々水やりをします。

2年目以降になると、わい化剤が切れるため草丈が高くなり過ぎることがあります。

この場合は、早春に出た芽を伸ばし、4月末から5月上旬に地表から葉を4~5枚つけた位置で切り戻しをすることで、草丈を低く抑えることも出来ます。

花芽が発達を始める7月中旬のまでに、1~2回適芯を行うとよいでしょう。

◆殖やし方
6月下旬から7月上旬に伸びた芽を指で折り取り、約7㎝の長さで水平に切り、葉を上から4枚程残して、下の葉を付け根から取り除きます。

約一時間水に浸しておき、育苗箱にパーライトかバーミキュライトを入れたっぷり水を含ませた後、さし穂を約2㎝さします。

しばらくは葉面が濡れる程度に水を与え、明るい日陰に置いて管理します。

2~3週間で発根します。







2020/10/05

コトネアスター No,297

 コトネアスター バラ科 常緑小低木

別名=ベニシタン 「紅紫檀」ミルクフラワーコトネアスター

原産地=中国雲南省

日本へは昭和のはじめに渡来し、現在では全国各地に広がっています。

シャリントウ属、属名は「マルメロに似ているもの」と言う意味を持つ。

サンザシ属(ピラカンサ)と類似しているが、葉の部分に鋸歯がない、枝にトゲが生えないなどの差異がある。

コトネアスターの仲間は(旧世界·アフロ·ユーラシア大陸)北半球に約400種が分布する。

★旧世界と旧大陸は同じものを指すが、必ずしも単一の陸塊と言う意味はない。

★アフロ·ユーラシア大陸は、アフリカ大陸とユーラシア大陸を合わせた大陸であり、地球表面上における最大の陸塊(超大陸)である。

※陸塊=りくかい(大陸のこと)

主な原種、園芸品種仲間
ベニシタン、コトネアスター·ワテレリ
コーラル·ジューティ


        (コトネアスター)


中国原産のベニシタンは、赤色の果実と枝が横に広がる樹形で、最も広く栽培されています。

5月から6月に白、或いは淡い紅色の花をたくさん咲かせますがあまり目立ちません。

10月頃に鮮紅色に熟す、ナシ状果が花の少ない季節を彩り、2月頃まで楽しめます。

ちなみに花のつぼみも赤色です。

厚く光沢のある葉は互生し、5~15㍉と小さく裏面と葉柄には毛が生えています。

秋が深まると、赤紫に紅葉して落葉する種類もあります。

枝は低い位置で枝分かれして、ほとんど這うように水平に広がっていきます。

盆栽や垣根などのほか、グランドカバーとしても利用が盛んです。

◉生育管理、環境
1年枝は長く伸びて這っていくだけで分枝しません。

翌年には短枝を作って花芽を形成し、春早々に蕾となって現れ、晩春から初夏にかけて開花します。

秋になると果実が枝に連なるようにして、赤色に熟していきます。

適応性に優れた植物なので、やや日陰でもよく実をつけるなど、どんな環境でも育ちますが出来るだけ、日当たりのよい場所を選ぶ事です。

◆植え付け、植え替え
土質は選びませんが、多湿になる場所は避けましょう。
植え付け場所には、ピートモスを多めに混ぜて水はけをよくしてやります。

植え付けは2~3月頃、又は9月~11月頃に行います。

★肥料
施肥は2~3月頃に化成肥料を与えます。

追肥はほとんど必要ありません。

◉害虫
幹や枝にコブなどの異常組織が現れたり、穴や木屑、虫糞、ヤニなどがあるという状態。

葉が霧吹き状に黄色く変色したり、縮小、葉巻状に変形したり、穴やかじり痕かをある状態。

また、新芽やまだ緑色の枝が萎れたり枯れたりする状態。

果実や種子の表面にかじり痕や傷が見られたり、表面に穴が開き内部に、虫や虫糞が見られる状態。

この様な場合、毛虫、ハマキムシ、イモムシ、シャクトリムシ、ダニなどの害虫がついていると考えられます。

枝ごと取り除き、スミチオン乳剤などで予防しておきます。




◉せん定
基本的には、花つきや実つきをよくするために、せん定はせず枯れ枝などを取るだけにします。

グランドカバーとして利用する場合は、放任してもよいでしょう。

境界線に植栽した場合は刈り込みましょう。

その際、冬の間は花芽と葉芽の区別がつかないので、春に芽が伸び出してから、せん定を行いましょう。

枝があまりにも込み合ってきたら、数年に1回、4月上旬にせん定します。

新梢のせん定は5月から9月頃に、生育が悪い小枝や枯れ枝を、付け根から切り取って間引きます。

品種によりせん定の方法が変わります。

枝の長い品種の場合は、立ち枝を付け根から間引きます。

短い品種の場合は、新梢を全体的に軽く刈り込みます。

大抵は自然樹形ですが、1本の幹を中心に主幹樹形に仕立てる方法もあります。

それにはまず、支柱を立てて根元から伸びるひこばえを早めに取りましょう。

◆殖やし方
挿し木は6月から7月頃に行います。
日当たりのよい場所で育った枝を8~10㎝程の長さに切って、下葉を取り除いておきます。

さし穂の切り口は45度位の角度に切り、切り口の樹液をよく洗って、1~2時間程度水揚げをしてからさします。

種蒔きは2月から4月頃に行います。






2020/10/04

カランコエの花が咲く気配がないのは、なぜ? No,296

 カランコエ ベンケイソウ科 多年草

多肉植物 別名=ベニベンケイ

原産地=アフリカ南部、東部、アラビア半島、東アジア、東南アジア

カランコエは、ポインセチアやシャコバサボテンなどと同様、昼の長さが短くなると花芽が分化せず、いくら待っても開花に至りません。

秋以降は夜間照明がある場所に置くと、花が咲かない事があります。

例えば電灯などの影響で、日照の時間が長くなっている事も十分考えられます。

周囲の環境を一度総点検して見た方がいいでしょう。

この様な場合は、花後日の長い7月~8月に短日処理を行います。

夕方の5時から翌朝8時頃まで、段ボール箱で鉢の上から覆い、光を完全に遮断して日に当てる時間を9時間程度に制限します。

これを20~30日間、毎日繰り返せば花芽が分化していきます。


          (カランコエ)

尚、短日処理をしてよいのは、草丈が10㎝以上に成長している株です。

花芽がしっかり分化しているかどうかを確かめるには、ルーペを用いて成長点を観察する事です。

花芽は丸みを帯びており、反対に細かく尖っているのは葉芽なので見分けやすいでしょう。

開花は花芽が出来てから、1ヶ月半から2ヶ月経過した頃となります。

暑さに弱いので、夏は風通しのよい半日陰で育てます。

花柄は順次摘み取り全部咲き終わったら、3分の1程切り戻して固形肥料を与えますが、開花中は与えません。

霜に当てると枯れやすいので、冬は室内で育てます。

ベル形の花を咲かせるものは、霜の当たらない戸外で11月下旬まで管理すると、花芽がつきやすくなります。

◉肥料
5月から9月に暖効性化成肥料

10月から12月に液体肥料を与えます。

◆植え付け、植え替え
5月から6月と9月が適期で2年に1回位切り戻しと同時に植え替えます。

根鉢を崩し、古い土と根を半分程度落として、深めに植え付けます。

家庭では過湿、過乾燥になりやすいので、入手した株の花が終わり次第、赤玉土や軽石を主体として、水はけのよい用土に植え替えます。


★切り戻し
5月から6月と9月に行います。
春の切り戻しは、花後の花茎の切り取りを兼ねます。









2020/10/03

アカシデ No,295

 アカシデ カバノキ科クマシデ属

別名=シデノキ、コソネ、ソロ 「赤四手」

原産地=日本

北海道空知郡以南の各地の山野に幅広く自生するほか、朝鮮半島から中国にも分布している。

アカシデは新芽が赤く、また秋には紅葉もするのでこの名がある。

シデの仲間は黄褐色に色づくものが多いが、本種は赤く紅葉する。


        (アカシデの紅葉)


山野の川岸など、湿った肥沃な所を好む。

「シデ」と言う名称は、垂れ下がって実る果穂(かすい)の様子が、神前に供える玉串やしや、縄して下げる細長く切った白い紙に似ている事に由来します。

(四手または垂、幣=シデ)

9月から11月に一斉に垂れ下がる果穂を見れば、すぐにシデの仲間だと見分ける事ができます。
(一見ミノムシの様にも見える)

古くから雑木林や庭園、公園の植栽、盆栽などによく利用されている樹種です。

4月から5月にかけて、新葉が展開するのと同時期に、下垂した穂状の花序を付けます。


         (アカシデの花)

雌雄同株ですが、雌花と雄花が別々に咲きます。

葉は表面が鮮緑色、裏面は淡緑色でともに粗毛(伏毛)で覆われ、細かい鋸歯があります。

樹皮は暗灰色でなめらかで、隆起した皮目が多く老木では筋状のくぼみが目立つ。

果実は8月から9月に熟し、果穂は長さ4~10㎝で、クマシデやサワシバに比べて果苞がバラバラした感じで付く。

葉状の果苞がまばらに付き果苞の基部には堅果が一個つく。

★果穂=かすい(中に種子がある)
種子を抱いた果苞が房状になったもの。

★果苞=かほう
つぼみを包む様に葉が変形したもの。
     
シデ類は盆栽樹としては、「ソロ」の名で親しまれ、新緑と黄紅葉の美しい雑木盆栽として知られています。

シデ類は同属の近縁種が多く、日本各地に分布しておりいずれも庭木や盆栽樹として親しまれていますが、中でも特に人気が高いのが「アカシデ」です。

初夏の新芽が赤味を帯びて美しい事に加え、秋の紅葉も他のシデ類が黄褐色に黄葉するのに対し、アカシデは美しく紅葉することから、盆栽界ではアカメソロ(赤芽曽呂)の名で珍重されています。

◆品種
園芸種は特にありません。

近縁種として
北海道から九州までの山間の水辺を中心に分布するサワシバ(サワシデ)

本州から9月の山野に分布するイヌシデ(シロシデ)

クマシデ、イワシデなどがあります。


        (熟した果穂と果苞)


イヌシデは緑白色の新芽に、アカシデと違った味わいがあり、クマシデは大柄で緻密な葉脈を持った、葉と長く垂れ下がった果穂でそれぞれ人気がある。

昔々の話で、おじいさんは柴刈りにと言う語りがあるが、この柴とはサワシバをはじめとするシデ類の樹木の事です。

カシ類と同様に、薪炭材として古くから庶民を中心に幅広く利用されていた。

傘や農具、器具類の柄の材料、ろくろ細工の材料として用いられるなど、多岐に渡り生活に密着している樹種です。

◉生育環境
日当たり、水はけのよい腐植質に富んだ肥沃な場所を好みます。

土質は特に選びませんが、株元が乾燥すると樹勢が弱くなります。

★植え付け、植え替え
植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥を十分ににすき込んで高植えにし、必要に応じて支柱で支えます。

植え付けの適期は2月~3月と10月~11月です。

◆肥料
樹勢が強く、特に土質が悪くない限り必要ありません。

枝の生育が悪い場合は、3月または9月に油粕や粒状化成肥料などを株元に施します。


★病気
カイガラムシ
樹冠内の日照、通風が悪いと発生します。

冬期にマシン油乳剤や石灰硫黄合剤の散布で防除します。

テッポウムシ(カミカリムシの幼虫)
成虫を見つけたら捕殺します。

幹に食入口(虫穴)を見つけたら、穴にスミチオン乳剤などを注入して土などで穴を塞ぎ駆除します。

◉せん定、整姿
強せん定、刈り込みを嫌うのでせん定は最低限に止め、自然樹形で育てますが一般的です。

枝の途中で切らず、必ず付け根から切るようにします。

自然の柔らかい姿を保つためにも、枝抜きによる整姿、せん定が基になります。

単植でも美しい樹木ですが、何本かを寄せ植え風に列植すると味わいが増します。

その場合は、一律に樹形を整えるのではなく、それぞれの木の個性を生かして、多少異なった樹形にした方が趣が出ます。

◆殖やし方
9月下旬から11月上旬の実熟期に果穂を採り、2~3日陰干しします。

これを手でよく揉むと中から種子が出てくるので、すぐに蒔きます。

乾燥に注意して管理すれば、翌年の4月頃に発芽します。






2020/10/02

 ジュウガツザクラ No,294

ジュウガツザクラ バラ科 落葉低木

別名=オエシキザクラ 「十月桜」

原産地=日本
名前の通り、10月頃から可憐な花が咲きます。

地方によっては七五三の頃に咲くことから、「七五三桜」と呼ぶ地域もある。


多くは淡紅色または、白色の八重咲きですが時折、一重咲きのものが見られることもあります。

春に咲くソメイヨシノのように、一斉に開く事はありませんが、開花期間が長く12月頃までポツポツと断続的に咲き続けます。

花数が少ない上に花径(1.5~2㎝)も小さいため、一般の「桜」と言う言葉から連想する、華麗さはありませんが、さっぱりとした魅力がある花です。

また、二度咲きの樹種として知られ、3月下旬から4月上旬にかけても、一般の桜と同じように開花します。


春に咲く花は秋花より大きく、一斉に開花するがソメイヨシノなどと比べると花数は少ない。

樹高が3~4㍍と低く、一般家庭でも育成可能です。

小ぶりに育てることもできるので、小品盆栽や山野草の寄せ植え盆栽の主木として、用いられることも多い花木です。

サクラの野生種は大きく6つのグループに分けられますが、その中のエドヒガン群に分類される、コヒガンザクラの園芸品種と言われています。

★コヒガンザクラとは
房総半島、伊豆半島の山地に自生するエドヒガンとマメザクラの交雑種です。

品種改良の歴史ははっきりしていませんが、明治時代中期頃には、寺院や公園などを中心に全国で栽培されるようになりました。

特に寺院との関わりが深く、日蓮聖人の命日に行われる法要=御会式(おえしき)の頃に、花が咲くことから「オエシキザクラ」の別名があります。

◆エドヒガン(江戸彼岸)
別名=アズマヒガン、ウバヒガン
日本に自生するエドヒガン群の野生種は、エドヒガンだけだが、ソメイヨシノをはじめ栽培品種の数は多い。

この仲間はガク筒が丸く膨れ、上部がくびれてツボ形になるのが特徴、寿命の長いサクラで天然記念物に指定されている名木や巨木が多い。

春の彼岸の頃に咲き、東京に多く植えられていた事からこの名が付いた。

◆マメザクラ(豆桜)
別名=フジザクラ
マメザクラ群のサクラは、葉の展開前または同時に開花する。

マメザクラの仲間とタカネザクラの仲間の2つのグループに分けられる。


        (ジュウガツザクラ)

◆品種
同じコヒガンザクラ系の園芸種で、晩秋から冬にかけて開花するものに一重咲きの「シキザクラ」

花径が3㎝前後とやや大きい、一重の白色花が咲く「フサザクラ」などがあります。

◉生育管理、環境
日当たり、水はけのよい腐植質に富んだ肥沃な場所を好みます。

日陰や半日陰では花芽のつきが悪く、生育もよくありません。

庭の広さに余裕があればできるだけ、群植は避け日陰を作らないようにします。

乾燥を嫌うので、適度な保湿力を持った土壌に植え付けるようにします。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥を十分にすき込んで高植えにします。

植え付け、移植の適期は2月下旬~3月と11月~12月です。

◆肥料
普通の土壌であれば、寒肥として1月から2月に油粕、鶏ふん、腐葉土などを株元にすき込む程度で十分です。

造成地など土壌が痩せている所では、4月から6月に油粕と粒状化成肥料を等量混ぜたものを、必要に応じて9月から10月にも同様のものを、追肥します。

◉病害虫
サクラ類によく見られるテングス病や胴枯れ病、テッポウムシなどが発生する場合があります。

★テングス病 (天狗巣病)
5月~12月に発生
病状は色々ですが、代表的な症状は幹や枝の間からたくさんの小枝が群生して、箒「ほうき)状になる症状です。

病菌は患部の枝の中で越冬し、花が咲いた後に葉の裏側に胞子をつけ飛散し、空気感染します。

この小枝は軟弱なものが多く、葉はつきますが花は咲きません。

この病患部は年々大きくなり、枝は次第に弱まり枯れたり折れたりします。

被害の激しい樹では樹勢が著しく衰えます。

テングス病は病菌に色々な種類があるが、どの種類も薬での治療は困難です。

しかし、この菌は感染力が弱いので病気にかかった枝を取り除き、処分することでほとんど治す事ができます。

切り取った切り口に癒合剤(保護剤)を塗っておくことが予防になります。

また、1月から2月頃にダイセンや銅水和剤、石灰硫黄合剤などを散布し予防します。

★胴枯れ病
6月~10月に発生
幹が枯れる病気の総称で、病斑部はやわらかくなり指で摘まむと簡単に剥がれます。

病気が進むと病斑が褐色になり、小さな突起物が現れますが、これは病菌の繁殖器官です。

病菌は害虫による傷口、せん定などの切り口、寒害や日焼けによる裂け目などから入り込みます。

この病気に対しての、薬剤による直接的な治療法は見つかっていません。

病斑部を出来るだけ深く削り取り、幹に傷をつける樹幹害虫を見つけたらすぐに駆除しましょう。

病斑部を削り取った跡やせん定による切り口、傷口などにトップジンMや石灰硫黄合剤を塗り、乾いたら墨汁や保護剤などを塗って予防しましょう。

せん定による傷口や寒害、日焼けの幹の傷などに注意して、傷口を手入れしてあげましょう。

★テッポウムシ(カミカリムシの幼虫)
穿孔(せんこう)性の甲虫類で重要な害虫の一つ

成虫は見つけ次第捕殺します。

幹に食入口(虫穴)を見つけたら、穴にスミチオン乳剤などを注入し、土などで穴を塞ぎます。

発生時期にサッチューコートやスミバーグなどの薬剤を散布すると有効です。

大部分は健全木には加害しないので、樹の健康を保つことが一番の予防です。

◉せん定
春の花が終わったら、飛び枝や込み枝などを軽く整理すると、秋にまとまった樹形で花を楽しむことができます。

サクラの仲間は、枝などをせん定した後の傷口から水分がしみ出して乾燥しにくく、腐朽菌が侵入しやすいため、太枝の強せん定は出来るだけ避けるようにします。

必ず付け根から切り、残す枝が切る枝より細いと言う事がないように注意します。

また、地際から出るひこばえは早めに切り取ります。

★殖やし方
5月から6月に新芽が固まった新梢の枝先を、10~15㎝程に切ってさし穂とし、赤玉土小粒などのさし床にさします。

乾燥に注意しながら管理するとよく活着します。







2020/10/01

ビナンカズラ No,293

 ビナンカズラ マツブサ科 常緑蔓性

 原産地=日本  別名=サネガヅラ

学名も日本産の「蔓(ツル)性植物」を意味する。

「カズラ·ジャポニカ」と名付けられています。

日本では、関東地方以西の本州、四国九州に幅広く分布していますが、台湾、朝鮮半島南部にかけて、20種程の仲間が自生していることが、確認されています。

7月から8月にかけて、葉腋から長い花柄を出し、淡い黄白色の花を下向きに咲かせます。

雌雄異株で、雌花の花柄は4~5㎝と雄花の倍以上の長さがあるのが特徴ですが、雌雄同株で両性花が咲くものもあります。

これは、自生地の環境によって繁殖戦略を変化させてきた事の名残りと考えられます。

ツルは長さ7~8㍍程に伸び、生長すると直径2㎝程の太さになり、古くなるとコルク層が発達する。

褐色で柔らかく厚い樹皮をつけます。

この樹皮は粘液を多く含んでいて、樹液を水に溶かして煮出したものを、整髪料として用いていました。

男女ともに利用していたようですが、中世以降に男性(武士)の整髪に多く用いられた事から、ビナンカズラ(美男葛)と呼ばれるようになりました。

葉は先端が尖った楕円形で、互生しまばらな鋸歯があり、やや肉厚で表面は濃緑色で光沢がある。

葉の裏面は紫色を帯びている。

雌株は10月~12月にかけて、直径2~3㎝程の球状の果実が集まって結実する集合果で、晩秋から冬にかけて赤く熟す果実は、よく目立つ事からサネガヅラ(実葛)と言う名がある。

古代では、こちらの呼称の方が一般的で、万葉集や古今集などの歌集にもサナカズラ、サネガヅラな名で詠まれた歌が多数あります。

熟した果実を細かく崩し、天日で乾燥させたものを南五味子(なんごみ)といい鎮咳、滋養強壮の生薬として用いられています。

樹勢が強く、大気汚染にも強い事から、庭木以外に公園樹や環境緑化樹として利用されるほか、木質化する茎を使って盆栽や鉢植えでも幅広く親しまれています。


         (ビナンカズラ)

◆品種
類似種として
果実が黄白色に熟す、「スイショウカズラ」

紫黒色の実が成る「マツブサ」

葉に斑が入る「ニシキカズラ(フイリビナンカズラ)」などがあります。

◉生育環境
水はけのよい、腐植質に富んだ半日陰の土地を好みます。

自生種はやや湿潤気味の場所に多く分布しますが、実際は乾燥にも強く土質はほとんど選びません。

ただし、株元が乾燥すると実つきが悪くなりやすいので、乾燥が酷い場合は、ピートモスや敷きワラなどで、マルチングする必要があります。

◉植え付け、植え替え
根が粗いので植え付け、植え替えは地上部を切り詰め、根の負担を軽くして行います。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥、腐葉土をすき込んでから植え、植え付け後は支柱を立ててツルを誘引します。

よほどの痩せ地でない限り、肥料は必要ありませんが、必要に応じて鶏ふん、骨粉、油粕などを混ぜた有機肥料を、秋と冬に少量株元に蒔きます。

◆病害虫
神戸地域だけに棲息する、帰化昆虫のキベリハムシがビナンカズラの葉のみを、食べる事が知られていますが、基本的に病害虫の心配はほとんどありません。

◉せん定
強いせん定や刈り込みにもよく耐えます。

放任するとツルが伸び過ぎて、暗くうっそうとした雰囲気になるので随時、不要なツルは切り取ります。

棚に絡ませて仕立てる場合は、株元が雑然としないように最初は、根元から2~3本の茎を出させて他は整理します。

適当な高さに誘引してから分枝させます。

花芽は短枝の先に分化するので、この枝は残すようにします。

◆殖やし方
充実した新梢を15㎝程に切ってさし穂とし、赤玉土小粒にさします。

半日陰で乾燥に注意し管理、翌春定植します。

取り木は春に2~3年の枝を環状剥皮します。