緑のお医者の徒然植物記

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2020/10/02

 ジュウガツザクラ No,294

ジュウガツザクラ バラ科 落葉低木

別名=オエシキザクラ 「十月桜」

原産地=日本
名前の通り、10月頃から可憐な花が咲きます。

地方によっては七五三の頃に咲くことから、「七五三桜」と呼ぶ地域もある。


多くは淡紅色または、白色の八重咲きですが時折、一重咲きのものが見られることもあります。

春に咲くソメイヨシノのように、一斉に開く事はありませんが、開花期間が長く12月頃までポツポツと断続的に咲き続けます。

花数が少ない上に花径(1.5~2㎝)も小さいため、一般の「桜」と言う言葉から連想する、華麗さはありませんが、さっぱりとした魅力がある花です。

また、二度咲きの樹種として知られ、3月下旬から4月上旬にかけても、一般の桜と同じように開花します。


春に咲く花は秋花より大きく、一斉に開花するがソメイヨシノなどと比べると花数は少ない。

樹高が3~4㍍と低く、一般家庭でも育成可能です。

小ぶりに育てることもできるので、小品盆栽や山野草の寄せ植え盆栽の主木として、用いられることも多い花木です。

サクラの野生種は大きく6つのグループに分けられますが、その中のエドヒガン群に分類される、コヒガンザクラの園芸品種と言われています。

★コヒガンザクラとは
房総半島、伊豆半島の山地に自生するエドヒガンとマメザクラの交雑種です。

品種改良の歴史ははっきりしていませんが、明治時代中期頃には、寺院や公園などを中心に全国で栽培されるようになりました。

特に寺院との関わりが深く、日蓮聖人の命日に行われる法要=御会式(おえしき)の頃に、花が咲くことから「オエシキザクラ」の別名があります。

◆エドヒガン(江戸彼岸)
別名=アズマヒガン、ウバヒガン
日本に自生するエドヒガン群の野生種は、エドヒガンだけだが、ソメイヨシノをはじめ栽培品種の数は多い。

この仲間はガク筒が丸く膨れ、上部がくびれてツボ形になるのが特徴、寿命の長いサクラで天然記念物に指定されている名木や巨木が多い。

春の彼岸の頃に咲き、東京に多く植えられていた事からこの名が付いた。

◆マメザクラ(豆桜)
別名=フジザクラ
マメザクラ群のサクラは、葉の展開前または同時に開花する。

マメザクラの仲間とタカネザクラの仲間の2つのグループに分けられる。


        (ジュウガツザクラ)

◆品種
同じコヒガンザクラ系の園芸種で、晩秋から冬にかけて開花するものに一重咲きの「シキザクラ」

花径が3㎝前後とやや大きい、一重の白色花が咲く「フサザクラ」などがあります。

◉生育管理、環境
日当たり、水はけのよい腐植質に富んだ肥沃な場所を好みます。

日陰や半日陰では花芽のつきが悪く、生育もよくありません。

庭の広さに余裕があればできるだけ、群植は避け日陰を作らないようにします。

乾燥を嫌うので、適度な保湿力を持った土壌に植え付けるようにします。

植え穴は大きめに掘り、完熟堆肥を十分にすき込んで高植えにします。

植え付け、移植の適期は2月下旬~3月と11月~12月です。

◆肥料
普通の土壌であれば、寒肥として1月から2月に油粕、鶏ふん、腐葉土などを株元にすき込む程度で十分です。

造成地など土壌が痩せている所では、4月から6月に油粕と粒状化成肥料を等量混ぜたものを、必要に応じて9月から10月にも同様のものを、追肥します。

◉病害虫
サクラ類によく見られるテングス病や胴枯れ病、テッポウムシなどが発生する場合があります。

★テングス病 (天狗巣病)
5月~12月に発生
病状は色々ですが、代表的な症状は幹や枝の間からたくさんの小枝が群生して、箒「ほうき)状になる症状です。

病菌は患部の枝の中で越冬し、花が咲いた後に葉の裏側に胞子をつけ飛散し、空気感染します。

この小枝は軟弱なものが多く、葉はつきますが花は咲きません。

この病患部は年々大きくなり、枝は次第に弱まり枯れたり折れたりします。

被害の激しい樹では樹勢が著しく衰えます。

テングス病は病菌に色々な種類があるが、どの種類も薬での治療は困難です。

しかし、この菌は感染力が弱いので病気にかかった枝を取り除き、処分することでほとんど治す事ができます。

切り取った切り口に癒合剤(保護剤)を塗っておくことが予防になります。

また、1月から2月頃にダイセンや銅水和剤、石灰硫黄合剤などを散布し予防します。

★胴枯れ病
6月~10月に発生
幹が枯れる病気の総称で、病斑部はやわらかくなり指で摘まむと簡単に剥がれます。

病気が進むと病斑が褐色になり、小さな突起物が現れますが、これは病菌の繁殖器官です。

病菌は害虫による傷口、せん定などの切り口、寒害や日焼けによる裂け目などから入り込みます。

この病気に対しての、薬剤による直接的な治療法は見つかっていません。

病斑部を出来るだけ深く削り取り、幹に傷をつける樹幹害虫を見つけたらすぐに駆除しましょう。

病斑部を削り取った跡やせん定による切り口、傷口などにトップジンMや石灰硫黄合剤を塗り、乾いたら墨汁や保護剤などを塗って予防しましょう。

せん定による傷口や寒害、日焼けの幹の傷などに注意して、傷口を手入れしてあげましょう。

★テッポウムシ(カミカリムシの幼虫)
穿孔(せんこう)性の甲虫類で重要な害虫の一つ

成虫は見つけ次第捕殺します。

幹に食入口(虫穴)を見つけたら、穴にスミチオン乳剤などを注入し、土などで穴を塞ぎます。

発生時期にサッチューコートやスミバーグなどの薬剤を散布すると有効です。

大部分は健全木には加害しないので、樹の健康を保つことが一番の予防です。

◉せん定
春の花が終わったら、飛び枝や込み枝などを軽く整理すると、秋にまとまった樹形で花を楽しむことができます。

サクラの仲間は、枝などをせん定した後の傷口から水分がしみ出して乾燥しにくく、腐朽菌が侵入しやすいため、太枝の強せん定は出来るだけ避けるようにします。

必ず付け根から切り、残す枝が切る枝より細いと言う事がないように注意します。

また、地際から出るひこばえは早めに切り取ります。

★殖やし方
5月から6月に新芽が固まった新梢の枝先を、10~15㎝程に切ってさし穂とし、赤玉土小粒などのさし床にさします。

乾燥に注意しながら管理するとよく活着します。