緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2020/10/25

ヒマラヤスギ No,309

 ヒマラヤスギ マツ科 常緑針葉高木

別名=ヒマラヤシーダー ヒマラヤスギ属
原産地=ヒマラヤ地方北西部からアフガニスタン東部にかけての一帯

日本に伝えられたのは、明治時代の初期と言われ、広く全国に植えられている。

原産地では樹高50㍍にも達しますが、日本では20~30㍍程です。

円錐形の自然樹形が雄大で美しい針葉樹です。

公園樹、庭園樹として世界中で親しまれ、材は建築、器具、包装材などに使われる。

コウヤマキ、アラウカリア(オーストラリア原産のナンヨウスギ科の針葉樹)と並んで「世界三大公園樹」の一つに数えられている。

学名の「デオドーラ」は「神の木」に由来する。

気候の適応力が強く、日本でもほぼ全国で栽培されています。

樹形が「スギ」に似ていることから和名には「スギ」の名が付けられていますが、葉の形を見るとマツ科の植物であることが分かります。

10月から11月にかけて開花します。

雌雄同株で雄花は黄褐色で、長さ3㎝の円柱状でよく分かります。

雌花は浅緑紫紅色で約5㍉と小さく、数も少ないためほとんど目立たない。

受粉した雌花は12月に入ると3㎝程の球果(マツカサ)を作ります。

この球果は果鱗(かりん)と呼ばれる鱗状の片に分離して落下します。

一片の果鱗には2つの種子が付いていて、風に乗って飛散して繁殖します。

生長が速く強いせん定をしてもよく芽吹くため、各種の仕立て物や高生垣など利用出来ますが、車の排気ガスに弱く街路樹には適しません。


ヒマラヤスギの仲間は2~3種が知られています。

園芸では針葉がヒマラヤシーダーより短く、やや小ぶりの「レバノンシーダー」横に広がった枝が下垂する「シダレヒマラヤスギ」などが親しまれています。

※アトラスシーダー
北アフリカのアトラス山脈を原産地とする、ヒマラヤスギの仲間で原産地では、成長が早く大木となるため建材としての需要が高い。

葉の雰囲気はヒマラヤスギよりもゴヨウマツに近い。


※レバノンシーダー(スギ)
西アジアのレバノン、キプロス島及びシリア、トルコに分布、タウルス山脈トルコ(南部)を原産地とする。

ヒマラヤスギの仲間でレバノン国旗にデザインされている。

ノアの箱舟はこの木で造られたという。

◉生育管理、環境
日当たり、水はけのよい適度な湿度を保った場所を好みます。

土質は特に選びませんが、アルカリ性土壌は好ましくありません。

耐隠性はあるがなるべく日当たりのよい場所を選びます。

◆植え付け、植え替え、移植
庭での植え付けは、生長を考えて出来るだけ広い場所にします。

植え穴は大きめに掘り、元肥として完熟堆肥をすき込みます。

大木になる割には根が浅く、乾燥にも弱いので移植後は支柱を立て、株元をマルチングして乾燥を防ぐようにします。

植え付け、植え替え、移植の適期は3月、10月から11月です。


★肥料
生育状況に応じて、2月頃に堆肥、腐葉土、鶏ふんなどの有機肥料を株回りに環状施肥します。


◆害虫
マツ科の植物につく、マツカレハ、ツガカレハによる葉の食害が発生する場合があります。

幼虫の早期発見と補殺が大切です。

薬剤はスミチオン、カルホスを散布します。


◉せん定
地際に近い程、枝を広げて下垂させ円錐形の美しい自然樹形になります。

刈り込みにも強く自然樹形以外にも、円筒形仕立て、ロウソク仕立て、段造り、散らし玉、生垣仕立てなど様々な樹形を楽しむ事が出来ます。

樹勢が強く、萌芽力も旺盛な樹種ですが晩秋のせん定や刈り込みは、軽めに行うようにします。


基本せん定は春から初夏に行います。

大きく枝が広がるので、庭などでは形のよい側枝を残して主枝を切り、幅を抑えるようにします。

枝を切り戻す時は葉の付いた小枝を残すようにします。

細い枝は枯れやすいので弱い枝は整理して、太さの揃った枝で樹形を整えます。

根が浅いことから強風で倒れやすいので、適度な枝抜きで風当たりを少なくすることも大切です。

また、強い日射しを浴びると幹焼けを起こしたり、樹木の表皮が割れたりする事があるので、初夏に
枝を抜いた後は緑化テープやコモなどで、幹巻きするなどし保護します。


◉殖やし方
晩秋から冬に落下した、果鱗を乾燥させないように低温貯蔵し、翌年の2月から3月頃に蒔きます。

挿し木も(6月~7月頃)可能ですが、挿し木苗は枝がきれいに四方に伸びず、寿命も短いと言われあまりお勧め出来ません。







2020/10/22

ガマズミ No,308

 ガマズミ スイカズラ科 落葉低木

別名=ヨウゾメ、ヨシズミ 
「莢迷」

原産地=日本、朝鮮半島、中国一帯

日本では北海道南部から四国、九州に至る全国の原野や低山地に幅広く分布し、雑木林や林縁に多い。

5月から6月にかけて、多数の可憐な白色小花が傘状に付く、★散(繖)房花序を形成する。

★散(繖)房花序=さんぼうかじょ
花軸につく花の柄が、下部程長く上部は短いため全体がドーム状になる。

葉は広い卵形で長さ10㎝以上と大きく対生する。

葉の両面に毛が生えているのも特徴で、触るとザラッとする。

10月頃から12月にかけて、球形の果実が一斉に結実します。

果実は最初、鮮紅色で次第に暗褐色に熟して行く。

自生種は林の奥深い所よりも、人里に近い林縁付近の明るい場所を好んで生育するため、人目を引きやすく古くから庭木や道具材などに、幅広く利用されていました。

樹高が2~4㍍と低く、扱いやすいことから初夏の花、晩秋から冬にかけての紅葉と色鮮やかな果実など、四季を通じて楽しめることから、鑑賞木としての価値は高い。

果実が赤くなる頃に葉もわずかに色づくが、時に真っ赤に色づくこともある。

赤い果実は、霜が何度か降りると透明になり、白い粉をふいたようになると、やわらかくて食べ頃となり、地方によっては食用にもされた。

昔の子供たちはおやつ代わりに食べたので、そんな記憶を持つ人もいる事でしょう。

味は甘酸っぱい、各地の山野にごく普通に見られるので、ヨシズミ、ヨソゾメなどの地方名も多い。

名前の由来には諸説あり、神つ実(神の実)の転訛で昔は果実を冬の神前へ供えたとする説や、果実を衣料などの染料に用いた「別名ヨウゾメ」ことから、「染め」が「スミ」になったとする説などが有力です。

ガマズミの果実は生食にする他、リキュールに漬けると美しいピンクの果実酒になります。

木材は堅く丈夫で、杖やハンマー🔨(金づち)の柄などの材料として利用されています。

ガマズミには同属の近縁種が多く、日本だけでも30種以上あると言われています。

※特に園芸品種で親しまれて居るのは果実が黄色い「キミノガマズミ」

※淡紅色を帯びた白色でほのかな芳香のある「チョウジガマズミ」

※葉の大きい「オオバチョウジガマズミ」

※花数、枚数ともガマズミより少ない「オトコヨウゾメ」

※ガマズミよりやや高地に自生し、北海道中部でも生育可能な「ミヤマガマズミ」などがあります。


◉生育管理、環境
日当たりを好みますが、一日中日の当たる場所より半日くらいの日の当たる、強い西日が当たらない場所がより適しています。

水はけがよく腐植質に富んだ土が理想的ですが、土質は特に選びません。


極端な乾燥は嫌いますが、適度に湿った土からやや乾燥した土までよく育ちます。


      (ガマズミの花)


◆植え替え、移植
植え付けは植え穴をやや大きめに掘り、根元にピートモス、完熟堆肥などを敷いて植え付けます。

ガマズミは比較的根が粗いので、植え鉢の土を崩さないように丁寧に扱うことと、乾燥を避ける事が大事です。

また、必要に応じて支柱を立てるようにします。

植え付けの適期は落葉期の2月~3月または、11月下旬~12月です。

活着してしまえば丈夫でほとんど手のかからない樹種です。

移植は11月下旬から12月と2月から3月

◆肥料
極端な痩せ地でない限り、肥料はほとんど必要ありません。

樹勢が弱い場合は、2月頃に油粕、骨粉を混ぜた有機肥料を一握り程度株元にまきます。


◉せん定
放任しても株立ち状によく樹形がまとまります。

萌芽力は強い方ですが強せん定は好みません。

自然樹形で育てるのが一般的です。

徒長枝やひこばえを整理して、3本立ち程度にして株元をすっきりさせるとよいでしょう。


花芽は枝の基部に近い短枝につきます。

せん定は12月から2月頃に、徒長枝や樹冠内部の混み枝を間引く程度にとどめ、枝の途中で切らないことが大事です。

花後は特に手を加える必要はありません。

★殖やし方
晩秋から冬にかけて熟した果実をとり、果肉を落として湿った砂などに入れて低温貯蔵します。

翌春、暖かくなり始める3月に蒔き、乾燥に注意して半日陰で管理します。







2020/10/20

シャコバサボテン No,307

 シャコバサボテン サボテン科

別名=クリスマスカクタス

多肉植物


ブラジル、リオデジャネイロ州の山岳地帯を原産とする、古木や岩肌に着生するサボテンの1種で、クリスマスシーズンに美しい花を咲かせるので、「クリスマスカクタス」と言う別名がある。

明治時代から栽培されている植物で園芸品種も多い。

反り返った花弁が可憐で花色も多いのが特徴です。

サボテンと言ってもトゲはなく、葉に見える多肉質の茎が「シャコ」の節の様に見えることから日本では「シャコバサボテン」と呼ばれています。

同種で「カニバサボテン」と言うのがありますが、こちらは滑らかな丸い葉が、カニの足に似た形をしています。

花色は赤、ピンク、白、黄と多彩で「ホワイトクリスマス」「マリー」「コールドチャーム」の名前で市販されています。

デンマークでシャコバサボテンの品種改良が盛んに行われ、様々な花色がある。

トゲがあるサボテンが、雨の降らない乾燥地に生えているのに対し、シャコバサボテンの自生地は標高が高く、気温も一年を通して10~20℃と涼しいため、日本の暑い夏はあまり得意ではありません。




◉生育管理、環境
開花株を入手する場合は、花付きが多くツボミの大きさが揃っている物を選ぶようにします。

原産地が熱帯で安定した気候にあるため、寒さや環境の変化に弱い面があります。

鉢植えを移動する場合は、屋外に近い玄関などから徐々にならしてから行いましょう。

また、ツボミが付いたらなるべく移動は避けます。

花芽が付いた後も急に屋外から、室内へ移動させると、花芽が落ちてしまう事があるので要注意です。

ツボミが1㎝以上に育つまでは移動させないようにします。

ツボミの落下を避けるには、霧吹きで葉にスプレーした後株全体に、ビニール袋をかけるなどして湿度や温度をしばらくの間、安定させてやります。





原産地では山地の岩や樹木に着生している種類で、同じサボテンでも砂漠に生育する仲間とは異なり、比較的水分を好みます。

他の一般的な植物より水やりは少なめにしますが、花期に乾燥させ過ぎると落花させる原因となり、春からの生育にも支障が出るので、用土の様子を見ながら、乾いたらたっぷり水を与えるようにしましょう。

また、花を上手に咲かせるには夏にあえて水やりを控えて、休眠状態にした方がよい場合もあると言われています。

★花をたくさん咲かせるには、早春の芽摘みと植え替え、そして秋口の新芽摘みです。

芽を摘むときは、前年に伸びた節を1~2節残します。

ハサミなどは使用せず、節の所を「くるっと」回して摘み取ります。

先端部をきっちり揃えるより、少しでこぼこを残す方が、開花時に高低差ができユニークな姿で花が咲きます。

芽摘みと植え替えが終わった株は、春から秋まで屋外の半日陰で管理します。

秋口の新芽摘みでは、赤みを帯びた1~1.5㎝以下の新芽は摘み取り、1.5㎝以上に育った芽には花芽が付くので残します。

11月からは屋内に入れ、窓ガラス越しに日の当たる場所に置きます。

4年目以降は株が老化してくると木質化し、芽が出にくくなるので、根元から茎節を摘むのは避け、先端部を芽摘みします。

茎節が混みすぎている場合は、間引くように摘み、風通しをよくするなど蒸れない様にする工夫も必要です。

根が鉢いっぱいに広がると水はけが悪くなり、株が弱るため2年に1度は植え替えを行います。

根鉢全体を軽く崩し、一回り大きな鉢に植え替えます。

用土は、市販のシャコバサボテン用の土、又は、赤玉土小粒3、完熟腐葉土3、パーライト3、珪酸塩白土1の混合土に植え付けます。

葉が痩せたり、色あせたりしているよう様なら、植え替えや挿し木をして株を更新しましょう。

※サボテン用の用土は不可

花が終わったら花柄を取り、室内で4℃前後に保ちながら、春の植え替えに備えます。




◉肥料
緩効性の化学肥料を4月から6月にかけて与え、9月頃には肥料の効力が切れるようにします。


余分な肥料が残っていると、栄養が株の生育にまわって花のつきが悪くなります。

また、新芽も花が付きにくいので、ツボミを付ける前の9月に一段摘み取っておきます。

ツボミは冬に近づき日照時間が短くなると付き始めるので、この時期に明るい室内で管理するとツボミを付けません。

一日の日照に当てる時間が長すぎると、花芽を付けない植物です。

       「11月7日花芽がつき始める」


夜間の照明に当たると、日照時間が長くなっている可能性があり、ツボミが付きにくいと考えられます。

一日の日照に当たる時間を8、9時間前後にして管理する必要があります。

◆短日処理を行います。
10月から11月の夜間は箱などで覆ってやると冬に花が楽しめます。


◆殖やし方
さし芽の時期(4月から5月)

葉を切り取って挿しますが、1枚では生育が遅くなったり失敗したりするので、2~3枚の葉節を挿すとよいでしょう。

切り取った直後の葉節(くびれた所をよく切れるナイフなどできれいに切る)は、2~3日程陰干しをして切り口を乾かします。

3号ポット程度のビニールポットや鉢にバーミキュライトなどを入れ、切り口を傷つけない様に挿します。

挿す深さは2㎝程度が適切です。


        (挿し芽、8月21日撮影)


★ポインセチアも同様に短日植物です。
参考ブログ、ポインセチア No,47


◉植物からの危険信号
葉が赤くなったり、節の途中から根が出たりしているのは、植物からの危険信号です。

根が傷んでいるサインです。

水切れもしくは、逆に過湿による根腐れで水やりに問題があります。

水やりの頻度を調節する必要があります。

症状が重い場合は、傷んだ株や根を取り除き、すぐに植え替えを行いましょう。









2020/10/19

ハボタン No,306

 ハボタン アブラナ科 一年草

別名=ボタンナ (葉牡丹)

冬枯れで寂しなくなった花壇を華やかに、彩ってくれる貴重な草花として、挙げられるのがハボタンです。

外観からも分かる様に植物学的には、キャベツやカリフラワーと同様のアブラナ科の一年草です。

★ブロッコリーはイタリア原産、カリフラワーは地中海沿岸が原産地ですが、両種はキャベツの変種です。

また、カリフラワーはブロッコリーが突然変異で白化したもので、2000年前から栽培されてきたものと言われている。


原種は食用として江戸時代に、ヨーロッパから導入されたもので、幕末の頃から観賞用としての改良がなされ、園芸品種として定着しました。

やがて明治時代になると、葉の重なる様子が「ボタン」の花弁に似ていることから、「葉牡丹」の名で親しまれる様になりました。

葉が発色するのは、霜が降りて空気が一段と冷えてくる頃で、畑で育てていたものを植え付けて観賞用としますが、あまりに寒さが厳しかったり乾燥した日が続いたりすると、早く傷んでしまう事があります。

逆に、10月下旬~11月上旬に気温が下がらない様な事があると、色づきが悪くなる事もあります。

ハボタンは、葉の形によってそれぞれの呼び名があり、いくつかの系統に分けられています。

①葉が丸いのが特徴の東京丸葉系

②葉に細かい縮れがある名古屋ちりめん系

③東京丸葉系と名古屋ちりめん系、両方の特徴を持つ大阪系があります。

この他に、葉に深い切れ込みがある切れ葉系などが知られています。

葉の色は、赤系と白がありますがこの2色を使って花壇を美しく植え付けるには、それなりの技術と経験が必要とされます。





◆生育管理、環境
日当たりを好むので生育期は、北風にさらされない暖かい日溜まりを選んで植え付けます。

霜が降りない暖地で上手に育てれば、冬も葉を増やし、春に花穂を立てます。


◉植え付け

9月から10月頃に、花壇に残った草花の古株を片付け、そこにポットや畑などで育てておいたハボタンを植え付けます。

ハボタンは掘り取りする時に、あまり土を根に付けないので、植え込みが遅れたり、植え付けまでに乾燥させたりすると根付きが悪くなったり、すぐ枯れてしまいます。

注意が必要ですが、植え込んだ後上手く根付けば暖冬ならば、2月頃まで楽しむ事が出来るでしょう。


よく育つと茎も長く伸びるので花壇では、あらかじめ深植えにしておきます。


また、茎が曲がっていたり徒長した株があれば、植え込む深さや角度を調整して、中心で鑑賞出来るようにします。

鉢植えにする場合は、大きな植え木鉢に一本、又は2~3本寄せ植えし、霜の降りない暖かい玄関や軒下に置いて楽しみます。

寄せ植えには同じサイズの株ではない大、中、小組み合わせて植えると、変化があって見た目にも華やかです。

花壇でも鉢植えでも同様ですが、冬の間に晴天が続くと乾燥して元気がなくなってしまいます。

その様な場合は、小春日和となる暖かい日を選んで、根元に十分水分を与えるようにしましょう。


◉殖やし方
種蒔きの適期は7月、8月頃でばら蒔き、又は筋蒔きにします。

蒔き終わったら、軽く土をかけて涼しい場所に置きます。

本葉が3枚程になったら、3号ビニールポットに入れ、7~8枚程度になったら4号ビニールポットに移植して、根付くまで半日陰で管理します。

いずれの場合も用土は、赤玉土や黒土などの重い土を用いて、1ヶ月に一度の割合で緩効性化成肥料を置き肥します。

尚、ハボタンの場合は、植え付けの際やその後の肥料は不要です。

多肥になるとむしろ葉の着色が悪くなります。








2020/10/18

ネーブルオレンジ No.305

 ネーブルオレンジ ミカン科

原産地=インド東部、ヨーロッパ、アメリカ

英語で「ヘソ」と言う意味を持つネーブルは、その名の通り果実の頂部に、ヘソ状の窪みがあるのが特徴です。

いわゆる「バレンシアオレンジ」と同じ「スイートオレンジ」類で、一般的には「ダイダイ」など酸味の強い「サワーオレンジ」類とは区別されます。


                     「ネーブルオレンジ」


オレンジの原産地は中国雲南から、インドアッサムにかけての照葉樹林地帯であるとされており、中国では紀元前にすでに大規模な、オレンジ栽培が行われていたと考えられています。

国産ネーブルのほとんどは、アメリカ産の「ワシントンネーブル」を母品種としており、高い糖度とバランスの良い酸味があり、柑橘類の中でも特に完成度の高い食味を誇ります。

温州みかんより耐寒性で劣るので、冬暖かく夏涼しく、雨の少ない地域が栽培の適地です。

温度管理が比較的容易な鉢植えなら、全国で育てる事が出来ますが、庭植えする場合は、紀州半島以西の暖地で雨の少ない地域に限られます。

年間平均気温が16℃以上、最低気温がマイナス4℃以下にならないことが条件です。

◉植え付け 3月中旬~4月中旬
一般に出回っている苗木は接ぎ木した、1年から2年経過した苗木です。

日当たり、水はけの良い場所を選び、接ぎ木部分が地表に出るように植え付けます。

植え付けの約一ヶ月前に深さ50㎝、直径50㎝の植え穴を掘り、掘り上げた土の半分に堆肥または腐葉土10~15㍑、鶏ふん1㍑、溶リン2握りと苦土石灰150㌘を混ぜて埋め戻します。

さらに埋め穴中央を山型に盛り、植え付けた苗木は約60㎝の高さで切り戻します。

植え付け後は、乾燥しないように落ち葉やワラを株元に敷いておきます。

◉肥料
元肥として3月に堆肥を約6~12㍑、油粕200㌘、化成肥料50㌘を施します。

樹木を中心とした半径50㎝に、円を描くように浅く溝を掘って、落ち葉などと一緒に埋め戻します。

10月には追肥として化成肥料50㌘を、樹木の周囲に蒔き土にすき込みます。

鉢植えは3月に、玉肥を5~6個
8月と10月に各2~3個置き肥します。

◆生育管理、環境
大きく質の良い実を成らせるためには、ネーブルでも摘果を行いますが、木自体が多すぎる実を落とす「生理落果」が7月上旬までにあるので、これ以降に摘果を行います。

小さな実や傷ついた実、1ヶ所に集まってついた実を間引き、基本的には葉40枚に対して1果の割合で残すようにします。

鉢植えは全体でバランスよく、3~5果残します。

冬期での鉢植えは、室内に入れて保護出来るので、寒冷地でも育てる事が出来るでしょう。

マイナス3℃以上を保てば越冬させる事が出来ます。

夏は出来るだけ戸外に置いて、寒冷紗で遮光して育てる方が強い株に育ちます。

鉢植えは赤玉土6、腐葉土3、川砂1の混合土に植え、日当たりの良い場所へ置きます。

早生のネーブルは12月中旬から1月に収穫して、2月から4月まで貯蔵してから生食します。

晩生種は冬の寒さによる落果を防ぐために、袋かけを行い2月から3月に収穫します。

最も収穫の遅いバレンシア·オレンジ🍊は、5月から6月に収穫したらすぐに生食します。


また、袋かけは年間平均気温が17℃を下回る地方では、防寒や★回青防止のために行うと効果があります。

★回青=(かいせい)とは果実が熟し、濃黄色に着色してきた時、春の新梢が伸び始めると再び果実の色が緑色に戻ってしまう現象の事です。

◉病害虫
カイヨウ病や黒点病などの病気に注意します。

若い葉や果実の表面に、病斑やかさぶた状のものが出来たらカイヨウ病です。

その部分を取り除き5月から9月頃にアグレプト水和剤1000倍液か、タレフノン200倍液を加えたコサイド水和剤2000倍液を散布します。

花や果実に黒い点が現れたら黒点病です。

5月から8月頃にラピライト水和剤500倍液を散布します。

◉せん定
前年の秋に伸びた枝は、その夏に伸びた枝との境で切り落とします。

適期は2月下旬~3月中旬です。
樹木の内側に光が十分届くように側枝を開きます。

全体に枝を開くように仕立てると実つきが早くなります。

ミカン類はネーブルも含め、生長がやや緩やかなため、樹木が高くなり過ぎることはありません。

せん定は枝が低く垂れてきた時点で切る程度にしましょう。

2年目は全体の枝数を2~3本にし、支柱を用いて開くように誘引します。

花芽は新しい枝の先端部に付くので、不用意な切り詰めせん定をすると、花芽を切ることになり結実しません。

このため間引きせん定を主にします。

込みすぎた枝弱った枝は根元から切り取り、通風日当たりをよくします。

また、側枝を更新して新梢を毎年発生させ、必要数の結実枝を維持するようにします。

◉ミカンの昔話
ミカンの原種は数千年前から知られていた様です。

それがヨーロッパに渡り、更に南北アメリカへと広がって行ったと言われています。

長い年月の間に各地へ移植されて行ったミカンは、その土地に適した品種が、次々と栽培されるようになり、現在の様に多くの品種となりました。

日本原産のミカンは「右近の橘=うこんのたちばな」
として有名な「タチバナ」です。

「温州みかん」は日本原産ですが、その原種は中国から来た物の内の一つが、偶然に実生したものではないかと言われています。

日本で最初に栽培品種となったのは「紀州ミカン」で、熊本から和歌山へ苗木を移植し育てられたものです。

江戸時代には、紀州の地がミカンの本場とされ、紀伊国屋文左衛門が20代の頃、紀州ミカンを江戸へ船で運んで財を成したとされる。

ミカンが不足していた江戸で、ミカンが高く売れ、嵐を乗り越えて江戸の人たちのために頑張ったと言う事で、江戸っ子の人気者になった。

文左衛門は人物伝によると、不明な点が多く半ば伝説上の人物である。

架空の人物とする説もあるが、実在したとする説が主流である。

※東京都江東区三好に紀伊国屋文左衛門之碑がある。

❆紀伊国屋文左衛門の碑

                「浄土宗寺院、成等院」






2020/10/15

ジャノメエリカ No.304

 ジャノメエリカ ツツジ科

常緑低木

別名=ヒース 原産地=南アフリカ
ヨーロッパ

「エリカの花散るとき」昭和38年に西田佐知子のヒット曲で、日本人にも広く知られるようになった、エリカは冬から春にかけて小さな花を小枝いっぱいにつける。

日本ではエリカ属で一番普及している。

品種によって明るく、桃、紫、白、黄、橙、緑など様々な花色があります。

また花の形も筒状や盃状、鐘状、壺状と多彩です。

品種では、スズランエリカやクリスマスパレード、カナリーヒースなどがよく知られ、いずれも鉢植えに適しています。

高さは2㍍にもなり、よく分枝して小枝の先端に3個ずつ花をつけるのが特徴です。

株全体では、かなりの花数となり冬期に寂しくなりがちな、庭を鮮やかに彩ってくれます。

花は小さな鐘形で明るいピンク色をしており、中心部には黒い★葯が見られます。

★葯とは
雄しべの先の花粉が入った袋、花粉を作る袋状の器官のこと

「ジャノメエリカ」と言う和名は、この花から黒い葯が蛇の目の様に覗くところから、名付けられたものです。





◉生育管理、環境
ヨーロッパや南アメリカの日当たりの良い、荒れ地に自生する植物で、英国では湖水地方より北方の大地でよく見かけます。


それぞれの原産地では、夏は乾季で雨が少なく、冬は寒さもそれほど厳しくない湿潤な気候です。


夏は高温多湿で冬は乾燥が続く日本で、生育させるのは簡単な事ではありません。

比較的耐寒性のある品種ですが、日陰や湿地、極端に寒い所を嫌います。

冬の寒風にさらされない、日当たりの良い場所を選んで植える必要がある事から、植え付け場所も限られます。

また、乾燥にも弱く根は細根で浅根性なので、水を切らさないように管理しなければなりません。

一端水が切れてしまうと、枝先が曲がったり葉が一斉に落ちてしまいます。

この様になると回復が望めない事になるので、要注意です。

夏の暑さには強いものの、多湿を嫌うので特別にデリケートな植物と言えるでしょう。

◉せん定
基本的には自然な樹形で育てますが、数本の主幹を作って枝数を決め他の枝は整理します。

花後の3月がせん定の適期です。

葉の付いている部分であればどこを切ってもよく、枝の分岐点のすぐ上で切るようにします。

葉がない状態の所で切ると枯れることがあります。

枯れ枝や込み合った枝は、根元から切り取り除きます。

花柄は自然に落ちる事がないので、この時に一緒に取り除いて置きましょう。

また、植えてしばらく経つと花つきが悪くなったり、下の葉がなくなったりします。

この様な枝は地際から5~10㎝ほど残した位置で、すべて切り取り株を更新する事です。


◆殖やし方
株分けは3月から4月中旬と10月から11月中旬に行います。

挿し木は4月中旬から6月
さし床は浅鉢などを利用し、パーミキュライトの用土に水あげしたさし穂を挿します。

受け皿に水を張った中に鉢を入れ、底面給水しながら明るい半日陰で、管理すると1ヶ月程で発根します。

発根後は、ビニールポットに仮植えし、1~2ヶ月後に定植します。

日当たりの良い場所が植え付けに適していますが、真夏は直射日光を避けて、風通しの良い半日陰で育てます。

◉肥料
3月に緩効性の化学肥料を施します。

◆病害虫
春から秋にかけて、ツツジグンバイムシが発生することがあります。

この虫は、湿気を嫌うので水をかけて吹き飛ばすか、マラソン乳剤、スミチオン乳剤を虫に直接散布して駆除します。