緑のお医者の徒然植物記

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緑のお医者の徒然植物記

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2021/02/05

ひこばえが出てくるのはなぜ? No,365

 ひこばえが出てくる理由

樹木は材木として使われるため、あるいは間引きするために、地上部を幹の基部(地際や枝など)で伐採されることがあります。

多くの樹木の場合、伐採されたとしても樹木の切り株はそのまま生涯を終えません。

それは、土の中で根は生きているので、水や養分が運ばれ、残された切り株から芽が再び出てきます。

この様に切り株から出てくる芽生えを「ひこばえ」と呼びます。

ひこばえの「ひこ」とは孫のことでつまり、孫が生えてきたという意味で、ひこばえにはそのまま樹木として成長できる能力があります。

なぜ芽のない切り株からひこばえが出てくるのか?

これは幹を作っている細胞が持っている能力によるものです。

植物の体は細胞でできていて、細胞はそれぞれが一つの個体を作る能力を持っているのです。

その能力を「分化全能性」という。

✫分化全能性(ぶんかぜんのうせい)

植物の細胞が持つ能力

個体を形成する様々な種類の細胞のどれにも、分化することができる潜在能力がある。

動物でも植物でも全ての細胞の起源となる受精卵は、明らかに分化全能性能力を持っている。

次の受精卵に繋がる生殖系列の細胞も、分化全能性を保持しているとみなされる。

植物の細胞が分化全能性を持つことは、1958年にアメリカのスチュワードらによって示されました。

スチュワードは、ニンジンの食用部である根を構成する一個の細胞を取り出して、人工的に用意した適切な条件の下で育てました。

すると細胞が増殖して細胞のかたまりになった。

これは、根や茎の一部になっていた細胞が文化していない状態に戻ったもので「カルス」と呼ばれます。

更にこのカルスを適当な条件で育てると、カルスから根、茎、葉などが作られてきて、完全なニンジンの植物体が出来上がったのです。


       カルスが形成を始めた切り口
 

 カルス形成により切り口が塞がれた状態

こうした一個の細胞からでも、植物の体は再び作り上げられることがわかりました。


これが細胞の持つ分化全能性と言う能力です。

つまり、ひこばえは切り株の断面にある細胞が、分化全能性により芽を出したものである。

ひこばえは切り株の中心部からは殆ど生まれず、周囲から多くなる。

それは切り株の周囲には若い元気な細胞があるからで、幹の中心部は年を重ねた古い細胞で出来ているためです。



枝の切り口から新しく芽が出ている状態もこの能力です。

分化全能性は光を遮断されると能力を発揮できず、やがて切り株は枯れてしまいます。

この能力を利用したのが「挿し木」での殖やし方で、挿し木を可能にしているのです。

特にキク、ばら、ツツジ、アジサイイチジク、などが挿し木で増やしやすい植物として知られています。

    (アジサイの挿し木)









2021/02/04

スミレ 「菫」No,364

 スミレ スミレ科  宿根草

別名=フタバグサ英名=バイオレット

花言葉=誠実、小さな幸せ

海辺、高原、高山、湿地、砂礫地
北は北海道から南の西南諸島まで
広く分布し、スミレが咲かない所はないくらいです。

古くから人々に親しまれてきた花
で、神話や伝説の中にも多くの逸話が残されています。

特に日本では、スミレの種類が多
く、基本種とされるものだけでも
70種余りあって、変種を加えると
100種以上にも及ぶ。

世界でも珍しい「スミレ大国」である。




世界中では、850種が確認されています。

花色はすみれ色と言われる様に、
紫色系が多い中で、変化も多く白、紫の濃淡、絞り、紅の濃淡、黄色の濃淡などがあります。

葉についても様々な形があり、葉色は緑以外に黄斑、白斑、赤斑、黒葉葉裏の紅紫などがあります。

また、株の形も様々です。


春に咲く花は結実しにくく、花後に真夏を除いて秋まで、次々と花弁の無い花(閉鎖花)を出して種子を作ります。

目に付く頃には、結実した実となって花柄を伸ばします。


始めは下向きのサヤが横向きになって、やがて上向きのなって熟すと、3つに裂けます。

それぞれの口縁(こうえん)部分で種子を締め付けて、種を弾き飛ばします。(種子散布)

それは想像以上の力で、弾き飛ばす距離は2㍍にも達します。

更に種子についている種枕と言う
脂肪分を含むコブを、アリが好み
巣に運びます。

その途中で種子は種枕から離脱し、広範囲に散らばる事になります。

アリの種蒔き?🤔


このような植物を「蟻植物」と呼びます。

閉鎖花や種子の飛散、蟻植物の3つを合わせ持つのが、スミレの面白い特徴と言えるでしょう。

植栽しやすい種類は、明るい山野、浜辺など日向を好むものや、山地の木陰や林床の半日陰を好むものの2つの仲間です。

殆どが冬から春は十分に日に当た
り、6月から9月中旬は半日陰か、日陰になる落葉樹の下などに植えるとよく生育します。

また、✻亜高山、高山帯に分布する
仲間は、栽培の難しいものが多くあります。

✻亜高山(あこうざん)とは
植物の垂直分布帯のひとつで、高山帯と山地帯との間のことで、本州中部の山岳地方では標高1700〜2500㍍に相当する。


✿主な種類

❆明るい山野や浜辺など日向を好む種

アツバスミレ、タチツボスミレ
イソスミレ、コスミレ、マルバスミレ、ノジスミレ


✺山地の木陰や林床の半日陰を好む種

エイザンスミレ、ミヤマスミレ
シハイスミレ、アケボノスミレ
オオバキスミレ


✿栽培環境

環境に応じた育て方が大事です。

環境に合えばひとりでに殖えます。

しかし、丈夫な種類でも環境が変わると大変な場合もあります。

本来、弱い植物と思って環境を考えて植えます。

肥料、消毒、植え替え、繁殖、季節の手入れなど心掛けることも重要です。

スミレは多年草ですが、株自身の
寿命は短く、同じ株を何年も栽培していると老化して枯れるので、常に株(苗)の更新をしなければ株がなくなってしまいます。


✿植え付け、植え替え

4月中旬から6月中旬の梅雨入りする前までの、花が終わった頃と9月中旬から10月中旬が適期です。

大株は枯れやすいので小株や小苗を用います。


庭などの地面から掘り上げた株は、根をよく洗い長い根や茎、多すぎる葉は半分位に取って活着率を良くします。


✿植え付け場所

植栽環境が重要になる植物です。

庭石や飛び石などに添って、自然に生える実生はよく育ちます。

石に添わせて植えたり、植えた所に石を置くなど工夫する事で、生育環境は適してくる。

このことは鉢植えにも応用できる。


✿🚰水やり

植えた時に与えれば後はまず必要ありません。

石に添わせて植えたものは、夏の乾燥でも弱りにくい。

✿肥料

栽培するスミレは原種か、それに近い品種なので多肥と濃い肥料には弱い傾向があります。

薄い液肥と暖効性の肥料が適しています。

春の花後と秋に1回マグアンプKな
どを置き肥し、追肥は植え替え直後と夏を除き、ハイポネックスの
2000〜3000倍液を2ヶ月に1回程
施します。

✿病害虫

✻害虫
葉ダニ、アオムシ、アブラムシ
ヨトウムシ、ナメクジ、ネセンチュウがつくことがあります。

オルトランなどで駆除します。


✿病気

ソウカ病が発生する事があります。
葉柄に白いブツブツができます。

ダイファー、ダコニールの混合液
500倍液の散布で防除する。

✿殖やし方
完熟種子は初芽がしにくく、長期間経って発芽します。




採りまきにすると初芽がよく、サヤが上か斜めの上の部分で色が、緑色から白色の時に採取し、すぐにまきます。(2月〜3月、7月〜9月)

種蒔き床は清潔な土を用い、覆土はタネが隠れる程度とします。

一週間程で発芽します。

本葉が出たら液肥を10日に一度与え本葉が3枚で1回目の移植をします。

移植後は半日陰で、その後は成株同様に管理し9月中旬に庭や鉢に
定植すれば翌春には開花します。

✫その他
根伏せ、株分け、葉押しで殖やします。


❆葉押し(下図)
スミレ、エイザンスミレなど、地上茎のないグロープで成功率が高い


図①托葉

図②約一ヶ月で発根したら、葉柄を残して葉を切る。

図③切る

図④不定芽が出る。








2021/02/03

フウキラン 着生蘭 No,363

 フウキラン  富貴蘭

別名=フウラン 「着生蘭」

元々温暖な地方で、樹木に着生するラン科の植物で1属一種。

茨城県南部から九州、南西諸島に分布し、わずかに朝鮮半島や中国にも見られる。

野生種に対して、変異株を収集したものを「フウキラン」と呼びます。

江戸時代には、将軍や諸大名が金と力で300種もの貴品、珍品を山野から集めた記録がある程の流行りだったようです。

1属一種で、交雑によらず、突然変異でできた品種がこのように発展した事は、チョウセイラン(長生蘭、セッコクの園芸品種)を始め、ハナショウブ、ニホンサクラソウなど日本の独特の技とも言えるでしょう。

✿性質

フウキランは常緑短茎性の蘭で、日当たりの良い樹上や、岩上の風通しの良い所に着生します。

茎は短く、独特の堅くて厚いトヨ状の葉を左右2列に互生し、一年に2〜3枚程度の新しい葉を出します。

普通5年くらいで葉が落ちますが、品種や管理の良いものは8年くらいもつ時もあります。

葉の枚数が多いものは、状態が良く少ないものは弱っている傾向があり、その株の健康状態の目安になります。

✿花

花は葉腋から生じ、白色花、まれに淡桃色の赤花が3〜10輪、7月下旬頃に咲き、芳香を放ちます。

近年では、品種改良が進み、花色も増えているようです。




✿耐寒性

温暖な地域に自生するものは、熱帯産の洋ラン程でもありませんが、寒さには弱い。

冬越しの際に、根は水分の吸収を止め休眠します。

体内の水分を減らして、耐寒性を増やし、やや寒い地方での越冬を可能にしています。

フウキランの自生する地域では、休眠期間中、加湿や保温の必要はありませんが、冬の乾燥や寒風は水分を奪うので傷みが激しくなり、ひどい場合は枯死してしまいます。

乾燥を防ぐ為の保護や加湿が必要です。

特にフウキランは変異した株であるため、野生種より弱い傾向があります。

斑入り種は日照にも弱く、夏は十分な保護が必要です。

✿栽培のポイント

自生地では、照葉樹の中部から上部分に着生が多く見られますが、針葉樹や岩の上に着生する事もあります。

環境に対する適応性は強く、その特性を理解していれば難しい植物ではないと思います。

ただし、植物が好まない状態にすると弱ってしまい、回復も難しい事になってしまいます。

⑴根が空気に触れる事を好むので、通気性を良くする事が大切です。

⑵根先が緑色や、ルビー色に透き通っている時は、成長期ですので水も肥料も十分に与え、白く不透明な時は休眠期なので、乾燥気味に管理して肥料は与えません。

⑶朝の2〜3時間は直射日光で、それ以外は1年を通して半日陰で育てます。

斑入り種は、やや強い70%位の遮光が適しています。

✿植え付け、植え替え

一般的にランの性質として、根の動き出す直前の4月上旬頃が適しています。

また、暖かい地方では3月中下旬が適しています。

最も自然環境に近い状態で、鉢植え栽培するには、過湿を避けるために腰高の鉢を使い、排水が良く根が空気に触れやすい形に植え付けます。

✭植え付け方
木炭を使った(風蘭鉢)植え

◉鉢に入れる前の状態


①傷んだ根や枯れ葉などを取り除き植え込みの準備をします。

②木炭をミズゴケで1cm程度覆い
木炭の上部は多めに覆う。

③根を折らないように木炭の上に広げてまたがせます。

④長めのミズゴケを網目状に根に巻きつけ、根と株を固定します。


⑤鉢底の穴に防虫網を入れ、鉢にはめ込むように植え付けます。

植え込みの高さは3〜4cm程、鉢から盛り上げる程度。
✫場合によって、それ以上に高植えして植え込む事もあります。




鉢底と木炭は(防虫網と木炭の間)少し空けて通気を良くする。

⑥根を押さえたミズゴケの乱れを切りそろえ、潅水します。

✻木炭を使わない空洞植え




✻風蘭鉢

現在、花鉢の多くはビニールポットやプラスチック製の成形品の鉢が、多く出回っていますが、江戸時代には「白磁染付」の焼成された素晴らしい、瀬戸や有田焼でした。

当時、栽培するには素焼鉢や瓦焼鉢が利用され、人の目にとまる場所に置く時や、販売される時などでは、美しい鉢が使われていました。




“江戸蔵前八幡神社において展示会
当時流行した「オモト」の品種図譜”

図譜を見ると分かるように、江戸時代には植物鑑賞する為に、植木鉢にも拘っていた事が伺えます。


                            ( 現代の風蘭鉢)


✿水やり
ミズゴケに✫緑藻が付かないように管理します。

✫緑藻(りょくそう)
緑藻とは緑色植物のうち、陸上植物の苔植物、維管束植物を除いたものの総称で、緑色藻とも言う。

5〜10月の成長期は2日に1回、休眠期は週に1回を目安として与えます。

✿肥料

着生ランは一般に多肥や濃い肥料は避けます。

5月頃に根の成長を見て、豆粒大の固形の油粕を2〜3個置き肥する。

追肥には液肥を標準の3〜4倍に薄め、成長期間中に3〜4回を目安に与える程度で十分です。

✿置き場所、環境

野生の植物の栽培は、適した環境をいかに作るかが最も重要になります。

日照は、気温の高い午後の直射日光は避けます。

生育期(4月〜9月)は、通気性を良くするために、涼しい風の通る木に吊るすか、ヨシズを張った棚に置き、冬期は暖地ではビニールで覆う程度で、凍る恐れのある地方では、室内などで保護します。

最低温度5℃を目安に湿り過ぎないようにして、暖かい日には葉水を与えます。

❆病害虫

過湿または乾かし過ぎた場合、生育不良になり、生理病が発生することがあるので通風には注意します。

鉢植えは、ミズゴケが古くなると発生するので、早めの植え替えが予防になります。







2021/02/02

ダイオウショウ (大王松)No,362

 ダイオウショウ  マツ科

ダイオウマツ、英名=ロングリーフパイン


北アメリカの南東部に分布する、常緑針葉高木で、アメリカ合衆国南部に位置するアラバマ州の州木


日本へは大正時代の初期に渡来
東北地方中部以南で植栽できる。

3本ずつまとまって出る葉は、長さ20〜30cm程になり、世界中のマツ科の中で最も長い葉を持つとされる。


この為、上に向って伸びた葉でも
垂れる。

その姿が大きな特徴である。

長さ15〜25cm程の球果(マツカ
サ)が実ります。

マツカサはフラワーアシンジの材料などに利用されます。

葉が長めの種類では、同じアメリカ原産のストローブマツやリキダマツなどが渡来していますが、植物園などで見られる程度です。

✿生育環境

日当たりの場所が適します。

土壌は水はけが良く、やや乾き気味の所に適し、湿地には向きません。

自然樹形を基本に、枝を整えて利用します。

せん定はできますが、枝を切り詰め過ぎると葉が少なくなって、樹勢が衰えるため、長い枝を切り戻したり不要な枝を切り取る程度にします。




✫病害虫

春から秋にかけて、葉先から黄変する「葉枯れ病」、葉先の黃変部にすす状の斑点が出る「すす葉枯れ病」などが発生する事があります。

トップジンMの水和剤などを散布
して防除します。

害虫はマツノマダラカミキリムシが媒介する、マツノザイセンチュウ、マツカレハの食害などがあります。

特に、マツノザイセンチュウは
被害を受けると、ほとんど枯死し、これに対する適切な防除法は
ありません。

近年では、害虫が振動に弱いと言う事が、解明されている。

予防の為に樹幹に振動を与えて防除する方法も、試されている。

センチュウは樹液の中を泳ぎ廻る程の小さいもので、樹勢を衰えさせ、やがて被害樹は枯死してしまう。

早い段階での治療が重要である。










2021/02/01

ガジュマル 歩く木 No,361

 ガジュマル クワ科 (榕樹)

イチジク属

分布=九州(屋久島以南)沖縄
台湾、東南アジア、インド
オーストラリア

海岸の隆起珊瑚の上などに生える
が、海辺に自生する多くは、地面を這うように伸び、一見すると草のように見える。

大木になると四方に枝を広げ、枝から気根を多数垂らす。

気根は地面につくと支柱根となって木を支える。

✭支柱根は木の根の構造の一つで、地上にある幹や枝から出て、地中に入り、支柱のような形態になった根のこと。


幹、枝からの気根が支えるガジュマル

高さは10〜20㍍になる。

1991年に環境庁が発行した「日本の巨樹、巨木林」によると鹿児島県屋久島町栗生神社に主幹の幹周りが9㍍、幹の合計28.31㍍と言う巨木があり、沖縄県東風平(こちんだ)町には主幹23.5㍍の巨木がある。


             (東風平のガジュマル)

沖縄では、防風林、防潮林、公園樹として植えられる事が多い。

材は器具材として利用される。

雌雄同株で個体によって花期(6月〜8月)はまちまちである。

花は直径7㍉程の球形で花嚢と呼ばれ、花らしい形をしていない。

✺花嚢(かのう)については
ブログNo,348オオイタビを参照


                      (ガジュマルの花嚢)


✿“歩く木”ガジュマル

ガジュマルは幹や枝から気根と呼ばれる根を出し、その根が垂れ下り、地上に到達した気根はそこで
成長し、新たな幹となります。

新たな幹は、もとあった場所から
動いたように見える事からガジュマルは「歩く木」と呼ばれます。

ガジュマルのゲノムを中国、福建省農林大学などの国際研究グループがゲノムを解読し、他のイチジクの木のゲノムと比較しました。

✻ゲノムとは、生物が正常な生命活動を営むために必要な、最小限の遺伝子群を含む染色体の一組、DNAなどの全ての遺伝情報のことで、種によってその数は異なります。
(遺伝情報の全体、総体)



研究の結果、ガジュマルのゲノムには同じ「塩基配列」が繰り返される、重複が多い事が判明しました。

重複とは複数の同じものが重なる、そのような状態の事ですが、この領域は、ゲノム全体の約27%を占めているとされ、重複によって植物の成長を促進する植物ホルモンであるオーキシンの合成と、輸送に関与する遺伝子の数が増えていました。

研究グループのメンバーである、米イリノイ大学のレイ·ミン教授は、「気根のオーキシンのレベルの上昇が、気根の生成を引き起こしたようだ」と解説しています。

✭塩基配列(えんきはいれつ)
核酸の分子内での、4種ある塩基の並ぶ順序の事で、遺伝情報の発現はこれによる。






2021/01/31

奈良尾のアコウ の樹 No,360

 アコウ(赤榕、赤秀)クワ科

イチジク属別名=アコギ、アコノキ
分布=本州、紀伊半島、四国、九州
沖縄、中国南部、台湾

沖縄の方言からこの名があると言う説。

そのきのこが緑青(ろくしょう)色をしていることと言う説。

緑青色とは孔雀石(マラカイト)のような、銅が酸化する事で生成される、青緑色の錆のような色。

アコウは雀榕と書く事から、関係はあるのかも知れません。

海辺などに生える常緑高木で、上に伸びるより横に広がる様な樹形になるものが多い。

幹の周囲から気根を多数出し、根はぐにゃぐにゃに曲がり、石や岩を抱き込む様に這う事も多いが、ガジュマルのように高い枝から気根を垂らすことはなく、気根は幹からしか出ない。

花や果実は幹の途中に唐突につく。


                        (幹についた花嚢)

常緑樹だが、一斉に落葉したあと、すぐに新葉を出す傾向がある。

開花の時期や周期は、個体差が多く一定していない。

雌雄同株、花期はまちまちで花も
果実もほぼ一年中見られる。

花嚢(かのう)は直径約8㍉の球形で、葉腋や幹、特に枝には多数
密集してつく。


イチジク属の特徴である花嚢には、雄花、雌花、虫えい花が一緒に入っている。

花嚢は早く落ちて花期まで残らない。

✭花嚢についてはブログNo,348
オオイタビを参照

奄美大島では、この木にはケンムン(クインムン)と言う赤毛の妖怪が住んでいると言われているのだが、確かにそんな伝承も納得できる様な雰囲気のある樹木だと思う。

アコウの実を食べた鳥、コウモリ、サルなどの動物によって、他の樹木の枝や幹の上に運ばれ、種子の混じった糞を排泄する。

他の樹木で発芽したものが成長し、やがてその樹を覆い尽くし、枯らしてしまう事から「絞め殺しの木」とも呼ばれますが、この言葉は立派な学術用語です。

最終的に絞め殺した木だけが残る
と言う事ですが、全てのアコウの木がそうなる訳ではありません。

ツル植物が地面から発芽し、やがて他の植物に這い登っていくのに対し、アコウは上から下へと成長していくのです。

動物による種子の移動がなければ、他の植物を絞め殺す事も無いのかも知れない。

自らの樹幹上に種子を落として、発芽したとしても、それは生まれ変わりと言う事にもなるのではないかと、思うわけで「絞め殺しの木」と言う汚名を小生は樹医の立場から、樹木の生命力を称え、取り払ってあげたいものである。

✿奈良尾のアコウ

故郷でもある五島列島の奈良尾の郷に、国指定天然記念物(1961年4月27日)の「奈良尾のアコウ」樹齢650年以上がある。

幅約2㍍の奈良尾神社参道をまたぐように根が二股に分かれ、人が樹下を通り抜ける事ができる。


                   (奈良尾のアコウ)

幼少期、すぐ側に住んでいたおじさんの家が有り、泊りがけで行った時には何度も通り抜けたものです。

その頃から「ざぁ〜まに」大きな木だと、思ったものです。
実に大きな、大きな樹木です。

この木の下をくぐると、長生きできるという言い伝えがあるのですが幼すぎて、そんな事も知りませんでした。


今思えば、そのおかげで長生きできたんだと思える事が、これまでの人生の中で2度あった事で、迷信でも無かったのだと、、、思います。

五島には奈良尾以外にも、アコウの樹があります。

アコウの樹が育つための様々な生育条件、環境など、とても良いのだと思います。

五島樫の浦のアコウ=五島市

玉之浦のアコウ、三井楽町、宇久
島などおそらくは、無人島も多い事などから、発見されていない
樹もまだあるのかも知れません。

五島は教会も多く、また、世界遺産登録された所もあり、これから観光スポットとしても盛り上がって行く事でしょう。

もしも、五島列島に訪れる機会があった時には、”幻のうどん“とも言われる「五島うどん」もぜひ、食べてみてください。🌻🤗


✿奈良尾(ならお)のアコウ
所在地=長崎県南松浦郡新上五島町奈良尾郷34

奈良尾神社